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【eiicon×日経電子版 共催イベントレポート】――ビジネスが「ものづくりからコト創りへ」とシフトする中で必要とされる事業戦略とは?

【eiicon×日経電子版 共催イベントレポート】――ビジネスが「ものづくりからコト創りへ」とシフトする中で必要とされる事業戦略とは?

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オープンイノベーションプラットフォームeiiconと日経電子版の共同イベント「ものづくりからコト創りへ―オープンイノベーションを事業戦略に活かす方法―」は8月29日、東京都千代田区のビジネス創造拠点「BASE Q」で開かれた。

同イベントはビジネスが「ものづくりからコト創り」に向かう時流の中、日本の事業会社が遂行すべき事業戦略をテーマに据えている。当日はオープンイノベーションを積極的に取り入れている3社、日本電気株式会社(NEC)、株式会社日立ハイテクノロジーズ、オリンパス株式会社でパネルディスカッションが行われ、イノベーションの取り組みの実例や考え方などが紹介された。

冒頭、ロケーションスポンサーのBASE Qの運営責任者、三井不動産株式会社の光村圭一郎氏が挨拶。同スペースは法人向けに設けられており、イノベーションを起こすさまざまプログラムが用意されていることなどが説明された。続いて、eiicon founderの中村亜由子がオープンイノベーションの市況感などを伝えた。

引き続き、日本経済新聞社の編集委員・奥平和行氏(↑画像)がモデレーターとなり、NEC、日立ハイテクノロジーズ、オリンパスによるトークセッション「オープンイノベーションを事業戦略に活かす方法」が実施された。今回のイベントレポートでは、その模様を詳しくお伝えしていきたい。

▲NEC コーポレート事業開発本部 本部長 北瀬聖光氏

1993年NEC入社。大学市場の新事業開発、大学や韓国ベンチャー育成、大学設立に関わり、世界初・日本初のプロジェクトをオープンイノベーションで推進し、大赤字事業を黒字化。2014年より全社新事業開発部門に異動。2017年現所属前身となる事業イノベーション戦略本部長に就任、北米AI新会社dotData,Incの設立などコーポレート新事業開発責任者となり、その実践知を踏まえた新事業を生み出す人事や業績評価制度改革を進めている。


▲株式会社日立ハイテクノロジーズ イノベーション推進本部 ビジネスデザインユニット ジェネラルマネージャー 堀越伸也氏

学生時代に電子工学を学び、エンジニアとして社会人キャリアをスタート。その後、金融業界に転身し、投資銀行や保険会社などに勤務し新規事業開発を一貫して担当。これまで身につけた知識・ノウハウを活かし、技術系企業のイノベーション創出を手がけようと考え、2017年に日立ハイテクノロジーズに転職。


▲オリンパス株式会社 イノベーション推進室 フェロー 石井謙介氏

1994年オリンパス株式会社に入社。2005年に米国サンディエゴに設立した子会社に赴任、2010年にシリコンバレーオフィスに異動してスタンフォード大学の客員研究員となり産学連携プロジェクト推進を担当。2012年に帰国後、新しいコンセプトのカメラで新しい価値を提供することを目指し『オープンプラットフォームカメラOLYMUS AIR』を商品化した。2017年10月より、CTO直轄組織のイノベーション推進室に在籍。

大手企業3社のイノベーション実例。

日経・奥平氏 : オープンイノベーションは昨今、大きく注目されており、日経新聞の紙面にどのくらい出ているか確認したところ、2012年には93回だったのが2017年約800回、今年は半年で500回を超えています。はやり言葉であり、バズワード化している面もあるのですが、その分「とりあえずやってみろ」と命じられるケースも多いのではないでしょうか。――そうした中、大手企業ではオープンイノベーションをどのように進めているのかを伺っていきます。早速ですが、お一人ずつ自己紹介をお願いします。

オリンパス・石井氏 : 私はかつてMITの学生と共に「オープンプラットフォームカメラ」のコンセプトを考案し、それを商品化した経験があり、昨年10月より現職(イノベーション推進室 フェロー)に就いています。現状、オリンパスは事業の7割が医療機器を占めています。一方で、医療機器、コンシューマー機器などのデバイスだけで売上を伸ばしていくのは限界があり、これからはオープンイノベーションでAIやクラウド、IoT、ロボティクスなどを用いて、ソリューションを提供するという事業を進めるべきと考えています。オリンパスの弱いところをアライアンスで解消しようという戦略になります。

日立ハイテク・堀越氏 : 当社は、社名からもわかる通り日立のグループ企業で、電子顕微鏡、医用検査装置、などを手がけています。これに加え、電子デバイスシステム、産業システム、先端産業部材が事業領域です。オープンイノベーションは、新規事業の創生、既存事業の革新を目標に進めています。これまでに、脳科学を活用したソリューションを提供する「株式会社NeU」を設立した実績があります。同社は東北大とのジョイントベンチャーです。

 NEC・北瀬氏 : NECで25年目になります。初めは教育分野に携わり、東大にiMacを売るということも行いました。当時はミッションクリティカル性の高い領域はNEC製、低いところは他社さんと作っていきましょうという考えで業務を進めていましたが、もちろん、社内からは大きな反発を受けました。NECは古い体質もありますが、現在は、オープンイノベーションに前向きな体制に移行しています。今年はイノベーションに特化した会社「NEC X」をシリコンバレーに、AI企業「dotData」を北米に設立するなど、活発に動いています。

経営陣の理解が、共通する大きな課題。

日経・奥平氏 : 三者三様で過去にもいろいろ取り組みをされていたようですが、これまでの新規事業の立ち上げとオープンイノベーションは何が違うのか。具体的な進め方などご紹介いただければと思います。

NEC・北瀬氏 : そうですね、NECではまず仕組みを整えようということで2014年に新事業開発フレームワークを作り、考え方を整理しました。その上で、経営層から考え方を変えることを試みたのです。新事業は失敗が前提、事業を作るのは技術ではなく人、ということを適切に理解してもらうことに努めていましたね。

日立ハイテク・堀越氏 : 新規事業の取り組みを始めた当初は、技術ドリブンになることが多く、事業化するまでに時間が非常にかかりました。「これではいけない」ということで、自分たちにない力を外から借りるようになったんですね。また、自分たちの責任や目標を明示することで、経営陣や周囲の理解が得られるようになったと感じます。

オリンパス・石井氏 : 私は新規事業というよりは、新しいコンセプトをどう出すかということに注力しています。もちろん、新しいコンセプトをただやりたいというだけではダメなので、どのような戦略があるかということを検討し、外部の協力を得てプロトタイプを作り、それをデモして説明するようにしています。

日経・奥平氏 : 経営陣や社内の理解を得るというのは、一つ重要なポイントであり、共通して持つ課題だと思います。どのように乗り越えたかを教えてください。

 日立ハイテク・堀越氏 : 実績を作るということに尽きると思います。「この人たちに相談すれば何かできるのではないか」と思ってもらうことが大事です。また、外部のコンサルタントにイノベーションの必要性を説いてもらうなど、啓蒙活動も行いました。

日経・奥平氏 : NECさんは相当苦労したということもお聞きしましたが。

NEC・北瀬氏 : はい、時間はかかったと思います。ただ、業績が落ち込んだ時期があり、変わらなくてはならない、という危機感が経営陣にあり、そのタイミングを活かしたのです。外部との付き合い方や人事の処遇などについて、「規制緩和」を実施し、オープンイノベーションを進めやすいように変化させていきました。

日経・奥平氏 : 先ほど、新たなコンセプトの製品を売ったということですが、具体的にはどのようなことを行いましたか。

オリンパス・石井氏 : もっとも議論になったのは、「プロダクトの仕様やAPIをオープンにする」という点です。これに対し、あくまでテスト的なトライアルと位置づけで説得を試みました。オープンにすることでどんないいことがあるのかを見せることで、少しずつ理解を得ようとしました。

オープンにすることで起こるリスクをどう回避するか。

日経・奥平氏 : オープンにすることはリスクと見られがちです。機密情報の漏えいや社員の引き抜きの話も出てくるかと思います。特に経営陣にはどのように理解を得ているのでしょう?

NEC・北瀬氏 : 社員の引き抜きについては、一度外に気持ちが動いてしまった人材が外に出るのは仕方がない面があると。無理やり引き止めるのではなく、働き続けたい、外に出ても帰ってきたいと思われるほどの魅力を自社に作りましょうと話しました。

日立ハイテク・堀越氏 : イノベーション推進本部である程度カタチを作って、その上で事業部に入ってもらうなど工夫してきています。初期のリスクを取り除き、利益が出そうなタイミングあるいは事業化のメドがたった段階で事業の受け渡しなどをしてきています。知財のリスクはオープンイノベーションをやる/やらないに関わらずあることなので、大変ですが社内の理解を得てやってきています。

日経・奥平氏 : オープンイノベーションでは社内の味方を作るということがとても大事です。皆さんはどのように行ってきましたか?

日立ハイテク・堀越氏 : ギブアンドテイクだと思います。例えば、売上目標の達成をお手伝いするというような話です。まずは自分たちが持っている外部のリソースやアイデアを提供し、その上で、協力を仰ぐという進め方です。

日経・奥平氏 : 無料の社内コンサルをするということですね。では、社外のネットワークについてはどのように形成したのでしょうか。

オリンパス・石井氏 : 社外を巻き込むのには、結局、社内のモチベーションを高めないといけないと思っています。真剣に取り組むという姿勢がないと、外部を巻き込むことは難しいですね。

日経・奥平氏 : なるほど。日立さんはもともと商社という側面もありますよね。既存の取引先などとの協業はないでしょうか。

日立ハイテク・堀越氏 : 協業は少なからずあります。実は当社には、VCやコンサルに入ってもらうオープンイノベーションと、これまでのお付き合いを活かしたオープンイノベーションがあります。営業担当から、取引先の事業について相談を受けることがよくあるんです。場合によっては、当グループ外の力を借りて、取引先にソリューションを提供することもあります。

千三つと言われる新規事業への向き合い方。

日経・奥平氏 : 先ほどから新規事業は難しいという話が出ており、やれば成功するという類のものではありません。成功可能性の低いことを始めるのには、なかなか理解を得られないという側面もあるでしょう。その点をどのように克服してきましたか?

日立ハイテク・堀越氏 : 数を増やすしかないと考えています。特にはじめのうちは、「たくさんの経験を重ねるしかない」と経営層にも理解をしてもらっていますね。経験値を積めば、成功の確率も上がってくるはずです。

NEC・北瀬氏 : 当社の場合は、今は良い種を見つけるという段階に推移しています。うまくいく確率は20%で推移できています。

オリンパス・石井氏 : 私はプロジェクトを推進する立場ですので、数値的な話はできません。ただ、なるべく早く、あまりお金をかけずカタチにするということを心掛けています。失敗するなら早めにし、ピボットしたほうがいいという考えですね。

日経・奥平氏 : では、最後に、これから注力していきたいポイントをお教えいただければと思います。また、オープンイノベーションを進める上での課題感などあれば示してください。

NEC・北瀬氏 : イノベーション資金の獲得と、業績評価です。新規事業はすぐに実績がでるものではありません。そうした中で、担当者をどう評価するか。新規事業部門の評価作りに、今まさに取り組んでいます。

日立ハイテク・堀越氏 : 人材をどのように確保するか、という点です。優秀な人材はどの事業部も手放そうとしませんので、社内から持って来るのは難しいです。一方で、半年など短期の受け入れなどは、理解を得やすいので、試験的に進めようとしています。また、ベンチャー企業に来てもらい当社の環境の中で一緒に新規事業を行う方法も検討したいと考えています。

オリンパス・石井氏 : 当社のオープンイノベーションは取り組みを始めたばかりですが、今のところ、社外からのアイデア募集や、CVCの設立はあまり積極的に検討していません。弊社として関心のある領域や、社会課題に対して、パートナーとアライアンスを組み、取り組んでいきたいと考えています。

取材後記

日経新聞の紙面に「オープンイノベーション」という単語が掲載されている数は、2012年には93回で、2017年には約800回、今年は半年で500回を超えている。ーー日経・奥平氏が示す通り、「オープンイノベーション」はバズワードとなっており、よくわからないままとにかく始めてみた、というところも増えているのではないか。おそらく、経営層の理解不足などを共通の課題として抱えているだろう。

一方で、オープンイノベーションに早くから取り組み、成功事例を持つ企業も増えている。今回登壇したNEC、日立ハイテクノロジーズ、オリンパスなどが、そうした成功体験を持つ企業だ。「社内に味方を作る」など、具体的なノウハウが語られたこともあり、参考になるところも多くあるだろう。ぜひ柔軟に取り入れ、イノベーションを成功へと導いてほしい。

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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