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連携の裏側を実況中継 ― NTTデータ×GMS ―

連携の裏側を実況中継 ― NTTデータ×GMS ―

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株式会社NTTデータが、世界各国で繰り広げるビジネスコンテスト「豊洲の港からpresentsグローバルオープンイノベーションコンテスト"さあ、ともに世界を変えていこう"」――。2018年には第8回が行われ、国内外から寄せられた計33件を書類選考・面接し、12件(含・海外案件2件)が8月に実施された本選に進出。"誰もがモビリティを利活用できる新たな社会創造を実現する、IoT技術を活用したFinTechサービス"を提案したGlobal Mobility Service株式会社(GMS)が最優秀賞に輝いた。両社は既にビジネス創造に向け活発な動きを見せている。

10月30日、東京・日比谷BASE Qにて開催された「eiicon meet up!! vol.19」に、NTTデータが手がけるオープンイノベーションの”顔”とも言える残間光太朗氏とGMSの代表・中島徳至氏が登壇し、「連携の裏側」をテーマにトークセッションを行った。モデレーターは三井不動産・BASE Q運営責任者の光村圭一郎氏が務めた。

▲株式会社NTTデータ 金融事業推進部 オープンイノベーション事業創発室 室長 残間光太朗氏

1965年生まれ。88年北海道大学卒業後、NTTデータに入社。 90年からNTTデータ経営研究所にて、新規ビジネス、マーケティング支援コンサルティングなどに従事する。96年、NTTデータに復帰。 新規ビジネスの企画・立ち上げに多数携った後、オープンイノベーション事業創発室を創設。2013年に現職に着任。

▲Global Mobility Service株式会社 代表取締役 社長執行役員/CEO 中島 徳至氏

これまで3社を起業したシリアルアントレプレナー。2社目をフィリピンにて起業し赴任中、多くの人々が与信審査に通過できず車の購入や利用ができないという現実を目の当たりにし、Global Mobility Service株式会社を設立。モビリティを通じて真面目に働く意思のある貧困層に対して与信審査に通過する仕組みを構築し、FinTechサービスを提供している。

▲三井不動産株式会社 ベンチャー共創事業部 事業グループ 統括 光村圭一郎氏

出版社勤務を経て2007年三井不動産入社。オフィスビルの開発、プロパティマネジメントの経験を経て、新規事業開発に携わる。2014年に企業人・起業家・クリエイターのコラボ拠点「Clipニホンバシ」を立上げ、2018年には東京ミッドタウン日比谷に「BASE Q」を開設。大手企業のオープンイノベーションを支援するプログラムの提供もスタートさせた。

「豊洲の港から」とは?

ベンチャー企業、NTTデータのクライアント(金融機関、公共機関、大手企業等)とNTTデータの3者がWin-Win-Winの関係となるようなオープンイノベーションビジネスを募る「豊洲の港からpresentsグローバルオープンイノベーションコンテスト"さあ、ともに世界を変えていこう"」。同コンテストの大きな特徴として、世界10都市以上で開催しスタートアップをグローバルに募っていることが挙げられるだろう。世界にネットワークを広げるNTTデータのビジネスユニットが、何を求めているのかを可能な限り具体的にした上でオファーを出している。

残間氏は「詳細を出し過ぎると戦略が漏れるという懸念も確かにあるのですが、ざっくりした募集テーマにはざっくりした提案しか決ません。他のコンテストと差別化を図るためにも、当グループが持つ強みを活かしたオファーにしたいのです」と話した。実際に、同コンテストには”ヘルスケア・ライフサイエンス”、”金融・保険・決済”、”オートモティブ・IoT”、”RPA・バックオフィス”、”店頭・デジタルマーケティング”、”情報流通”といった募集テーマが設けられている。

一方で、具体的であればあるほど目先の話が中心になり、未来に向けた提案が集まりにくくなる。こうした弊害を防ぐために、「その他諸々何でも大歓迎」の募集テーマ(→”Disruptiveな社会変革対応”)も設定しているとのことだ。

非常に魅力あるコンテストであるが、現在はアクセラレータープログラムなどの隆盛もあり、ただ待っているだけでは応募が集まりにくい状況にある。そこで残間氏は、GMSに直接声をかけ、参加を促したという。未知のスタートアップとの出会いを望む一方で、既知のスタートアップに対して直接声がけすることも増えているという。

社会貢献性とビジネス性、両面が高い評価を得る

ローン審査に通過することの出来ない低所得者層の人々がローンを組み車両を購入することを可能にするFinTechサービスをASEAN各国で展開するGMS。――同社が応募を決めた理由について、代表の中島氏は「NTTデータの持つアセットはもちろんのこと、R&Dの相談・協力を仰ぎたかった時期でタイミングも非常に良かったところがあります」と話した。

残間氏はGMS社の持つ魅力を「テクノロジーで世界中の人々の信用を創造してローンを組めるようにし、働く機会を創出する」という大義があるところだと指摘する。コンテストではSDGsも重視しているが「みんなで大きな課題を解決しようという思いを一つにしやすいメリットも考慮している」とのこと。

中島氏は自社について「社名にモビリティとある通り、当面はモビリティ分野で活動を広げます。でも、金融機関が扱いきれないデータを可視化し、ローンを組めない人、お金を貸してもらない人や企業の代弁者になり、真面目に働く人が正しく評価される仕組みを創造することが本当に目指していることなのです」と熱意を見せた。

一方、社会的な意義が高くても、それだけでは協業とはなりにくい。その点、GMSのビジネスモデルは将来性を高く評価されている。事実、同社はフィリピンやカンボジアで事業化を実現。そのエビデンスがあってこそ、NTTデータとの連携が進んだ点は見逃せないだろう。合わせて、やや複雑なビジネスモデルを「通訳」して伝える残間氏の存在もやはり忘れてはならない。

NTTデータの信用力でビジネス展開を加速させる

今後、GMSでは、フィリピンで成功したモデルをベトナムで展開することを視野に入れている。その際、「NTTデータの信用力が、ビジネスを加速させる」と中島氏。同社の場合、金融機関との連携が必須になるが、その点、NTTデータと協業しているという事実は大きな意味がある。

残間氏は「ベトナムには既に金融ビジネスを手がけている当社グループのチームがあります。そこと連携を図り、GMS、金融機関、当社のwin-win-winを目指したい」と強調した。ベトナムでのマネタイズ化は「ほぼ確実」(中島氏)で、こうした成功事例を積み重ねながら、さらなる展開を行っていきたいという。

なお、「豊洲の港から」で最優秀賞を獲得した企業には、「アクセラレーター」と呼ばれる、専任の担当者がつく。その担当者がNTTデータグループのビジネスユニットとの仲立ちを果たすと共に、中長期的には共にビジネスモデルを構築するという。GMSにとってはよき「相談役」と言える。

「スピード感の違い」が課題

今後の懸念点として上がったのが、両社の「スピード感の違い」だ。大手企業はスタートアップのスピードについていくことが難しい。残間氏は「当社のビジネスユニットには既存プロジェクトがあり、その上で、新しいことを始めることになります。新しいビジネスを創るイノベーターはたいてい仕事が集中していて、時間の確保が難しく、スタートアップが期待するスピード感を発揮するのが難しいことが多いです。これは、当社が解決していかなければならない課題」と述べた。

また、大手企業側が主導権を握るケースもあり、オープンイノベーションの本来の姿からはかけ離れてしまうこともある。その点にも注意が必要と言える。どのような連携の仕方をするかが、今後のジャンプアップを左右する大きなポイントだ。中島氏は「互いの強いところを持ち寄って、共創でビジネスモデルを生み出したい」と将来の希望を述べた。

取材後記

アクセラレータープログラムやビジネスコンテストで優勝すると、その時点で話が完結したような錯覚に陥る。しかし、実際にはスタート地点に立ったに過ぎない。しかも、いかにも互いにとってメリットが大きそうに見えても、連携がスムーズにいくとは限らないと言える。では、成功の大きな要因はどこにあるのか。社内的な体制などを整えた上で、最終的には「人」にあるという。これについて、残間氏と中島氏の両氏が同様のことを述べていたのが印象に残る。今後、NTTデータとGMSでどのような未来を描き、創造していくのか。注目していきたい。

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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