2017年に行われた総務省の調査によると、スマートフォンの保有率は、60.9%にのぼるという(※「平成30年版 情報通信白書」より)。日本人の約2/3が日常的に使用しているスマートフォンでどのような価値を提供できるのか。通信各キャリアは、さまざまな戦略を打ち立て、ユーザーに向けてサービスを届けている。

そのような中、NTTドコモでは、法人向けにグループウェアや勤怠管理、クラウド電話帳、ビジネスチャットなどスマートフォン・タブレットで利用可能なクラウド型サービス等を集めたパッケージサービス「ビジネスプラス」の提供を2013年からスタートさせた。「ビジネスプラス」のラインナップとして多くの法人顧客から高い評価を得ているのが、ヒューマンテクノロジーズが企画・開発している「KING OF TIME」というサービスだ。――同サービスは法人向けのクラウド型勤怠管理で、「働き方改革」にも貢献しているという。

2013年から始動したNTTドコモとヒューマンテクノロジーズの協創プロジェクトは、どのように進められてきたのか。NTTドコモの藤田氏・加藤氏、ヒューマンテクノロジーズ・小川氏の3名に話を伺った。

【写真左】 株式会社NTTドコモ 第一法人営業部 法人サービス企画 第二担当 担当課長 藤田武志氏

【写真右】 株式会社NTTドコモ 第一法人営業部 法人サービス第一 第二担当 担当課長 加藤尚記氏

【写真中央】 株式会社ヒューマンテクノロジーズ チャネル開発部 課長 小川毅氏


社会の多様なニーズに応えるため、”協創”に取り組むNTTドコモ。

――まず、NTTドコモさんがオープンイノベーションに着手した背景をお伺いできればと思います。

NTTドコモ・藤田氏 : 大きく2つの理由があります。一つは社会的背景です。現在、労働人口の減少に伴い、生産性の向上ということが非常に注目されています。生産性の向上というと効率化が注目されがちですが、企業側にとっては売上増も同時に取り組んでいかなければならない課題です。こうした状況にあり、当社が一社で、お客様のニーズに応える多様なサービスを提供するのは限界があります。そこでオープンイノベーションに取り組もうと考えたのです。

――なるほど、もう一点はどのような理由でしょうか?

NTTドコモ・藤田氏 : 一つ目の背景と重なる部分もあるのですが、当社を取り巻く環境の変化です。ご存知のように通信サービスのあり方が大きく変化しており、特にスマートフォンの普及でこれまでできなかったことが手軽にできるようになっています。スマートフォンで、お客様が個々に抱える課題を解決したり、個別のニーズに応えたりする機会も多くなりました。こうした状況の中、自社のリソースのみでサービスを作り出すのはやはり限界があります。パートナーとの連携は欠かせなくなったのです。

――多様なニーズに応えサービスを創造するためには、パートナーと連携し、協創するは必須ということですね。

NTTドコモ・藤田氏 : はい。これに加え、当社では「働き方改革」を自ら実践し、そのノウハウをお客様に伝えています。事実、当社はリモートワークを推進しており、テレワーク先駆者百選「総務大臣賞」も受賞しています。あくまで、実践ノウハウをパートナーと共にお客様に提供しているのです。

――2013年、NTTドコモさんが法人向けに展開を始めた「ビジネスプラス」の協創パートナーとして、ヒューマンテクノロジーズさんと手を組んだのは、スマートフォンへの対応というところが大きいのでしょうか。

NTTドコモ・藤田氏 : そうですね。スマートフォン上で価値のあるサービスを提供できればと考えていました。ヒューマンテクノロジーズさんの手がけるサービス「KING OF TIME」は、クラウド型の勤怠管理システム。当時、急速に普及していたスマートフォンにも対応しており、当社の求めていることと非常に合致していました。


▼現在の「KING OF TIME」では以下の機能が使用できる。紙のタイムカードやExcelで煩雑化した勤怠管理を自動集計で効率化。現在導入社数は1万2500社を超え、さまざまな企業の「働き方改革」に寄与している。

「KING OF TIME」Webサイトより抜粋


NTTドコモのスケールだからこそ、社会課題と向き合える。

――次にヒューマンテクノロジーズ・小川さんにお話を伺いたいと思います。NTTドコモさんとの協創について、どのように捉えていたのでしょうか?

ヒューマンテクノロジーズ・小川氏 : あくまで私の勝手イメージですが、NTTドコモさんは国内の通信インフラを確立しており、業務ソリューションということに目を向け始めたのではないかと思いました。つまり、通信インフラに限らず、社会のあらゆるインフラになろうとしていたということです。そうした中、スマートフォンが当たり前のように法人でも活用される時代がやって来ると予見していたはずです。すると勤怠管理というある意味でニッチな分野でも、スマートフォンが活用されるようになります。おそらく、そんな未来を描きながら、当社との協創が始まったのではないかと捉えました。

――ところで、NTTドコモさんとヒューマンテクノロジーズさんは、どのように出会われたのでしょうか?

NTTドコモ・加藤氏 : 法人のお客様のニーズをお聞きし、勤怠管理の話が持ち上がったのがきっかけですね。お客様の課題をもっとも解決できそうなサービスが、ヒューマンテクノロジーズさんの「KING OF TIME」だったのです。

――NTTドコモさんはパートナーとして、どのような点に魅力を感じましたか?

ヒューマンテクノロジーズ・小川氏 : 全国に広まるネットワークと、圧倒的なブランド力です。早いタイミングでスマートフォンによる出退勤管理を普及させたいと考えていたので、NTTドコモさんとの協業は、大きなメリットを感じました。そもそも、働き方改革という非常に大きな課題と向き合えるのは、NTTドコモさんの規模があるからこそでしょう。

――実際に「ビジネスプラス」に「KING OF TIME」を導入し、お客様からはどのような評価をいただいているでしょうか?

NTTドコモ・藤田氏 : 経営者の方からは、従業員の長時間労働を是正できたという声を多くいただいています。リアルタイムで管理できることで、その都度労働時間を見直すことができます。また、総務など管理部門の月末に集中しがちな業務を分散化できるという声も届いています。


互いにパートナーを尊重し合う。

――日々の業務では、どのように協創を進めていますか。

NTTドコモ・藤田氏 : 日本全国に当社の営業担当がいますので、それぞれにニーズをヒアリングし、必要に応じて、ヒューマンテクノロジーズさんに同行いただいています。特にサービスの詳細については、営業担当では把握しきれないところもありますので、そうした際に協力を仰いでいます。

――NTTドコモさんと連携することによって、「KING OF TIME」のサービスが進化したなどはありますか。

ヒューマンテクノロジーズ・小川氏 : お客様のニーズを直接聞くことで、必要とされる機能やサービスを考えることは多々ありますね。テクノロジーも進化していますので、例えば、ボタンを押すことなく出退勤管理ができるなど、そうした機能も必要とされるのではないかと感じています。

――NTTドコモさんを協創パートナーとしてどのように見えていますか。

ヒューマンテクノロジーズ・小川氏 : そうですね。パートナーのことをよく考えてくれているな、と感じています。どの企業も、お客様のことを考えるのは当たり前でしょう。でも、お客様がこう言っているのだから、とムリに話を進めることなどはありません。

――NTTドコモさんにとって、それは協創をする上で意識していることでしょうか。

NTTドコモ・加藤氏 : 意識しているということではないのですが。どちらかというと、長くビジネスを続けるうえで、一緒にサービスや商品を作ってくれるパートナーのことを大切にするという意識は、当たり前のこととして社内に浸透していることだと思います。


シーズのスタートアップと出会い、新たな価値を創造したい。

――今後、NTTドコモさん・ヒューマンテクノロジーズさんの協創によって、どのような価値を市場に提供していきたいとお考えですか。

ヒューマンテクノロジーズ・小川氏 : 当社としては、勤怠管理・時間管理の分野で新たな価値を提供し続けたいと考えています。最先端のテクノロジーにも対応し、仮にスマートフォンというデバイスを使わなくなったとしても、その時代に合ったサービスを創造していきたいですね。

NTTドコモ・加藤氏 : 当社でもスマートフォンなどモバイル回線を通じ、お客様への価値提供を伸ばしていきたいと考えています。さらに、働き方改革をはじめとする社会課題の解決にも寄与していきたいですね。

――では最後に、NTTドコモさんが今後どのようなパートナーと協創していきたいとお考えか、お聞かせください。

NTTドコモ・藤田氏 : まだ世に出てきていないスタートアップと巡り会えたらと思っています。際立った特徴を持つスタートアップと出会えれば、これまでにない価値を生み出すことも可能になるはずです。場合によっては、ヒューマンテクノロジーズさんと協業してもらうのも面白いかもしれません。そうすることで、世の中のニーズにますます応えられればと思います。


取材後記

大きな社会課題と向き合うには、NTTドコモのような一定の企業規模が必要となる。ヒューマンテクノロジーズの小川氏も指摘していたが、まさにその通りと言えるだろう。もちろん、地道なボトムアップで普及を広めることもできるが、スピード感に圧倒的な違いが出るだろう。サービスを広く知らしめたい、社会に大きなインパクトを与えたい、となると、大手企業の培ってきた信用力や販売網は大きな魅力だし、なくてはならないものと言えるはずだ。

中でも、NTTドコモはパートナーとの協業を重視し、協創の仲間という意識を当たり前のように持っていることもうかがい知れた。同社はプロダクトや技術をお持ちのシーズ期のスタートアップとの出会いを求めている。興味を持ったのなら、まずはコンタクトしていただきたい。