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第一生命×かんぽ生命×NTTデータによるInsTechビジネスコンテスト開催 |24社との共創をスピーディーに推進する第一生命 執行役員・岩井氏に迫る。

第一生命グループ、かんぽ生命、NTTデータの3社は、共同で「InsTechオープンイノベーションビジネスコンテスト」を開催している(応募締切:2019年1月31日)。InsTech(インステック)とは、Insurance(保険)とTechnologyを組み合わせた造語だ。――同コンテストは3社が連携して、革新的な技術やビジネスモデルを持っているスタートアップから国民のQOL(quality of life)向上や健康寿命の延伸に繋がる新しい保険商品・サービスのビジネスアイデアを募っている。応募のテーマは、【ヘルスケア×ICT】と【健康増進と連動した生命保険商品・サービス】の2つとなる。

コンテスト開催に先立ち、11月に「Dai-ichi Life Innovation Lab Tokyo」(東京都渋谷区)で開催された「InsTech Festa」は立ち見が出るほど盛況となり、InsTechに対する注目の高さが窺い知れた。

▲第一生命グループ、かんぽ生命、NTTデータの3社のInsTechに関わるキーマンが集結した。

そこで今回、InsTechオープンイノベーションビジネスコンテストの背景や注目すべきポイントなどについて、第一生命 執行役員の岩井泰雅氏にお話を伺った。

なお、岩井氏は同社のInsTech担当役員として、健康増進アプリである「健康第一」の企画・開発を指揮。さらに、「健康第一」アプリや先端テクノロジーを導入したサービスを提供する第一生命ホールディングスの子会社、株式会社QOLead(キュオリード)の代表にも就任している。また、スピード感を持ちながら20社以上の協業を推進、自ら積極的に海外のスタートアップを発掘したり、東京・渋谷に「Dai-ichi Life Innovation Lab Tokyo」を立ち上げてInsTechに関わるスタートアップのエコシステム構築を目指したりと、テクノロジーを活用した第一生命の新しい動きを牽引するキーマンとして注目を集めている。

第一生命ホールディングス株式会社 第一生命保険株式会社 執行役員

株式会社QOLead 代表取締役社長

岩井泰雅氏

第一生命のInsTech担当として、IT企業やスタートアップとの親交も深く、InsTechオープンイノベーションビジネスコンテストを主宰。また、シリコンバレーなどを含め海外企業とのネットワークも構築している。さらに、健康増進アプリ「健康第一」の企画・開発・運用にも従事。2018年6月には第一生命ホールディングスの 100%子会社として設立された株式会社QOLeadの代表に就任。


これまで主流の「万一のための保険」から、「健康で長生きするための保険」へ

――まず、なぜ第一生命さんがInsTechに取り組むのか、その背景についてお聞かせください。

岩井氏 : 前提としてマーケットの変化があります。少子高齢社会となり、人口構造が大きく変化しました。高齢者、後期高齢者が増え、一方でいわゆるZ世代の台頭もあります。第一生命はこれまで100年以上にわたり営業活動を行い、また、グループ全体としても複数の販売チャネルを持つなど、さまざまな工夫を行ってきました。しかしながら、お客さまとの接点を持ちにくくなってきているのが現状です。そこで身近にあるデバイスやテクノロジー、例えば、スマートフォンなどを通じ、お客さまとの接点を広げようとしています。

――なるほど。

岩井氏 : これに加え、商品についても、これまでの死亡保険、定期保険などの「万一のため」の保険から、三大疾病保険など「健康に長生きするための保険」へと変わってきています。病気の予防や早期発見につながる保険、QOLを向上させる保険というものが求められるようになりました。このため、保険商品はテクノロジーを切り離して考えることができなくなっています。例えば、技術力を用いて疾病の早期発見につなげようという動きが出てきているのです。

――具体的にはどのようなことですか。これまでにInsTechが生み出された商品やサービスはあるでしょうか?

岩井氏 : 80歳を超えると2人に1人が認知症になるといわれていますが、認知症の場合保険金が支払われてもそれで治せる病気ではないのです。そこで「なった後の保険」ではなく、「ならないように予防をする保険」として、当社では、様々なサービスと保険を組み合わせた新商品、かんたん告知「認知症保険」を12月にリリースしました。これは、保険とサービスが一体化している新しい商品ということはもちろん、社会課題と合致しているということもあり、メディアにも大きく注目されました。認知症以外の分野でも、早期発見や予防の機能のついたアプリを、国内外のスタートアップと共に提供しています。

そのひとつが、シリコンバレーのスタートアップ、ニューロトラックと連携し、認知症のリスクをスマートフォンのアプリで検知するサービスです。動画を見ている目の動きをスマートフォンのカメラで撮影し、その撮影された動画を独自のアルゴリズムとAIを用いて解析し、脳の状態及び認知機能をチェックするのです。


4か月でローンチ。24社と協業するスピーディーな推進力

――予防や早期発見の面でスタートアップの技術を多く取り入れており、その流れでビジネスコンテストにも乗り出したということですね。

岩井氏 : そうです。既にお伝えしたように、当社は現在までに国内外のスタートアップと協業し成果を形にしています。その代表例が、さまざまな側面から健康増進をサポートする「健康第一」アプリです。このアプリは24社の協業で作り上げました。2017年3月のローンチまでは4カ月というスピード感です。加えて「株式会社QOLead(キュオリード)」という第一生命ホールディングス傘下の新会社を設立し、よりスタートアップとの連携や、第一生命以外のグループ会社との連携をスムーズに進めることが可能となっています。

――24社というのは、どういう会社の集まりなのでしょうか?

岩井氏 : 2016年〜2017年に実施した第1期のInsTechオープンイノベーションビジネスコンテストで大賞を獲った企業などが中心です。24社はチームとしてのまとまりがあり、まったく別の協業が生まれていることもあります。東京・渋谷に設立した「Dai-ichi Life Innovation Lab Tokyo」を拠点にして、この24社を含めたスタートアップのエコシステムを構築していきたいと考えています。

――では、今回の第2期のコンテストで注目しているポイントはどんなところでしょう。

岩井氏 : 第2期は、「ヘルスケア×ICT」と「健康増進と連動した生命保険商品・サービス」をテーマにしています。これからは「健康を増進させる機能を持った生命保険」が主流になると考えています。ICTを掲げたのは、そうした商品はお客さまに寄り添うことが必要になりますので、スマートフォンやウェアラブルデバイスとの連動が欠かせないからです。

生命保険商品・サービスということに関しては、ガンによる死亡率を越えた循環器系の病気、メンタルケア、糖尿病などについて、予防や早期発見につながるものが出てきてほしいと思っています。しかし、分野を限定するつもりはありません。ヘルスケア・健康増進に関する多様なサービスを発掘したいという思いを強く持っています。画期的なサービスを生み出すことができる方々と共にビジネスを成長させ続けられれば、これ以上のことはないでしょう。

「InsTechオープンイノベーションビジネスコンテスト」サイト。応募締切は2019年1月31日となる。


対面チャネルを中心とした顧客基盤 × グローバルネットワークを活用

――第一生命側からは、スタートアップにどんなリソースを提供できますでしょうか。

岩井氏 : まず顧客基盤があります。国内での第一生命の契約数は約1500万、お客さま数は約1000万人です。また、海外6ヶ国でも保険事業を展開しており、例えば、米国での保有契約件数は800万を超え、オーストラリアのお客さま数は約400万人ですので、国内外のグループ企業すべてのお客さま数は約2000万人にも上ります。そして、今回のコンテストではかんぽ生命様と共催ですので、2社でざっくり約5000万人の顧客基盤がある計算になります。

――かなり大きな顧客基盤ですね。

岩井氏 : はい。この規模でのテストマーケティングができるのはかなりのメリットになると思います。加えて、当社もかんぽ生命様も対面チャネルがあるのが大きな強みで、テクノロジー企業がなかなかできないことも手がけていくことができます。

例えば、「健康第一」のようなアプリをリリースしても、それで終わり、ということが少なくないのではないでしょうか。ダウンロードはリリース直後やCM後は爆発的に行われるが、その後は尻すぼみとなる、ユーザーが正しく利用しているか不明、ということもあると考えられます。しかし、対面チャネルを持っていれば、継続的に宣伝や利用の促進をしながら、マーケットやビジネスを一緒に育てていくことが可能です。

――常に新規の顧客を獲得できるのですね。

岩井氏 : そうです。このほか、当社はグローバルに展開しており、欧米やアジアなどを世界の主たる都市に拠点を構えていますので、現地の企業とのネットワーキングが可能です。私自身も海外のメンバーとよく話をしますが、新しいトレンドやテクノロジーを知ることができる良い機会になります。また、彼らと連携することで海外展開のきっかけもつかめるのではないでしょうか。

――最後に、改めてになりますがスタートアップの方々にメッセージをお願いします。

岩井氏 : ビジネスのアイデアそのものも歓迎します。従来からの保険会社では想像もつかないような商品とそれに付随するサービスのアイデアもどしどしいただきたいと思っています。こんなビジネスを一緒に進めないか、という提案をお待ちしています。ぜひ共に成長していきましょう。


取材後記

第一生命というと、いわゆる伝統的・保守的な昔ながらの日本企業というイメージがあった。しかし、お話を伺っていると、そのイメージを大きく変えなかければならないことに気づいた。スタートアップとの協業に実績があり、しかも、スピード感を持ってプロダクト・サービスをリリースしている。何より、InsTechなどイノベーションを牽引する岩井氏のフットワークの軽さ、新しい物事に対する垣根のなさが印象的だ。スタートアップは非常に有意義な協業ができるのではないか。少しでも興味を持ったのなら、ぜひビジネスコンテストにご応募いただきたい。

※「InsTechオープンイノベーションビジネスコンテスト」の詳細はコチラをご覧ください。

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)