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OKI | 人生100年時代の社会課題に取り組む、ヘルステックを活用した「金融新サービス」とは?

2018年4月から、SDGs達成をビジョンに掲げたイノベーション創出活動「Yume Pro」(ユメプロ)を推進している沖電気工業株式会社(OKI)。10月にはアジア最大級の規模を誇るIT技術とエレクトロニクスの国際展示会「CEATEC JAPAN 2018」のOKIブースにて「Yume Pro」をプレゼンし、11月には三菱総合研究所が主催する「プラチナ社会研究会 2018年度第2回総会・セミナー」に登壇し、民間企業におけるSDGsの取り組みについて具体事例を交えて紹介するなど、積極的な情報発信でその存在感を高めている。

さらにOKIは、12月4日〜5日に東京・渋谷ヒカリエで開催されたヘルステックのグローバルカンファレンス「Health 2.0 Asia - Japan 2018」に登壇。”「Yume Pro」で挑むOKIのヘルスケアイノベーション”と題したプレゼンテーションを行った。同イベントは、米国、欧州、アジアのイノベーターと、日本のキープレイヤーが産官学から一堂に会し、ヘルステックの最先端をライブで体感するというもの。OKIのプレゼンは、国内外の多くのイノベーターから大きな注目を集めた。


最先端のヘルステック事情を収集・発信を続けるOKI。

登壇したのは、OKIのイノベーション推進部長である大武氏だ。まず大武氏は、OKIのイノベーション創出活動である「Yume Pro」の特徴について語った。同組織は社長直轄という位置付けになっており、意思決定に関しても社長と膝詰めで話し合うことができるため、スピーディーな判断ができるという。さらに、ヒト・モノ・カネといったリソースについて一任されていることも、迅速な意思決定ができる要素となっているという。

▲沖電気工業株式会社 経営基盤本部 イノベーション推進部長 大武元康氏

1986年新卒入社。半導体の新規開拓営業や金融機関・官公庁向けの営業を担当した後に、コンサルティング事業の立ち上げを経験。中国・四国エリアの営業責任者を担当後、2016年よりIoTビジネス開発室 統括部長に就任し、2017年11月にはOKI史上初となるアイデアソンを実施。2018年4月より、イノベーション創出活動「Yume Pro」(ユメプロ)の始動に伴い発足されたイノベーション推進部の舵取り役として活躍。


また、「Yume Pro」が注力しているのが【医療・介護】・【物流】・【住宅・生活】という3つの領域であり、現在特に進捗しているのが【医療・介護】の分野だと話す大武氏。自身も国内外に足を運び、各地域・国で抱える医療・介護の課題や最先端のヘルステック事情の情報を収集してきた。そして、これまでに以下のようなイベントやセミナーで収集してきた情報のアウトプットの場を設け、活動の詳細を積極的にレポートしている。


●2018年5月15日開催 「インド最前線セミナー」

……日本貿易振興機構(ジェトロ)が開催したセミナーに登壇し、「ヘルスケア×IoT」を切り口にインドからのリバースイノベーションについて講演。


●2018年7月31日開催 「イスラエル デジタルヘルスケア イノベーション最前線セミナー」

……デジタルヘルスケアに国をあげて取り組んでいるイスラエルの政府関係者、病院、スタートアップのキーマンを招聘したセミナーを開催。


●2018年10月2日開催 「Fitbitセミナー(Captivate TOKYO 2018)」

……運動、食事、体重、睡眠など各種データを記録できるウェアラブルデバイスFitbitと、「睡眠×インセンティブポイント」をテーマにした連携を発表。


多様な共創パートナーとプロジェクトを推進。

引き続き大武氏は、【医療・介護】の中でも、SDGs Target 3.4「2030年までに、非感染症疾患による早期死亡を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健および福祉を促進する」の達成にフォーカスしているとコメント。そのために、以下の3点に挑んでいくという。

①早期発見……非感染症の兆候を「早期発見」することで未病・予防を行う。

②行動促進……本人の「行動促進」により、積極的に非感染症を予防する。

③家族・地域を繋ぐ……「家族・地域を繋ぐ」ことで、非感染症に関係者全員で挑む。

これを実現させるために、OKIはさまざまな共創パートナーと共に連携を開始しているという。具体的には、大学や研究所、保険会社、薬品メーカー、データ分析やセンサーに強みを持つスタートアップなどだ。実に多種多様な企業・団体・組織の有識者とディスカッションを行い、共創プロジェクトがスタートしている。さらに、実証実験のフィールドとして、北海道岩見沢市やイスラエルといった国内外の「場」を用意。それらを活用して、データ取得などに取り組んでいくという。

また、OKIは健康を維持するための5つの要素である「運動」「睡眠」「食事」「メンタル」「エイジング」にも着手。まず、「運動」に関しては、スタートアップのZEROBILLBANK、no new folkと連携し、歩行データを活用した健康支援を行うことを発表。no new folkによる歩行解析ができるシューズ「ORPHE TRACK」を用いて、歩行センシングを行い、本人へのフィードバックを通じて行動変容を起こすというものだ。

さらに歩行内容にあわせて、ZEROBILLBANKのブロックチェーン技術を導入したインセンティブポイント「Yume Coin」を付与する。そして将来的には個人のBMIのデータによって適正な消費カロリーを設定し、それを満たすとYume Coinが付与されるという仕組みを作っていく構想だ。

一方、「睡眠」に関しては、全世界に7000万人の睡眠データを持つというウェアラブルデバイスFitbitと連携。睡眠データの結果と目覚めの爽快感によって、良い睡眠が取れるとYume Coinが貯まるという仕組みだ。これにより、睡眠「負債」を睡眠「資産」に変えていくと大武氏は話す。


ヘルスケア×金融ジェロントロジーで、2019年に新サービスを提供。

上記のように、ヘルスケアに関わるイノベーション活動を着実に進めているOKI。今後着目しているのは「金融ジェロントロジー」だという。老年学と言われるジェロントロジーは、老齢期および老齢化のプロセスを研究する学問のこと。人生100年時代と言われるなか、生きていくためにはさまざまな経費が必要となる。「健康寿命」と「資産寿命」をセットで考えることが、金融ジェロントロジーだ。

そこでOKIは、運動能力や睡眠・食事などで認知症発症リスクなどを含めた健康状態をデータ化(独自の健康スコアリング)し、ヘルスケア×ジェロントロジーによる金融新サービスの提供を見据えている。超高齢化社会に対応するサービスを生み出すことで、アクティブシニアに自立したより豊かな生活を提供する考えだ。この計画を実現するために、銀行や保険会社との協議・連携も進めているという。

また、この金融新サービスは、2019年4月から企画開発を進め、同年10月には1万人規模にサービスを提供し、2020年4月にはサービスを本格展開する計画となっている。このスピーディーな展開の背景にあるのは、団塊世代が後期高齢者に突入するという「2022年問題」。間近に迫った社会課題に対して、さまざまな共創パートナーと早急にサービスを実装していきたいと大武氏は話した。

「Health 2.0 Asia - Japan 2018」の会場内では、OKIのブースも出展。ORPHE TRACKやFitbitの実機も展示されており、国内外の来場者が足を止め、OKI担当者から話を聞いていた。

▲no new folkによる歩行解析ができるシューズ「ORPHE TRACK」とウェアラブルデバイス「Fitbit」。


取材後記

2018年4月から本格始動したOKIのイノベーション推進活動「Yume Pro」だが、わずか8ヶ月という短期間で、外部パートナーとの共創プロジェクトをスタートさせ、イスラエルを巻き込んだヘルスケアイノベーションへの取り組みも始動させている。2022年には、団塊世代が後期高齢者の仲間入りを果たすという大きな社会課題が迫っている中で、まさに”爆速”で活動を推進しているOKI。2019年には金融新サービスを発表するという同社が手がける数々のイノベーションを、これからも注目していきたい。

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:加藤武俊)