Open Network Labは、生活者を起点とした住宅・暮らしの隣接領域にフォーカスしたアクセラレータープログラム「Open Network Lab Resi-Tech」をスタートさせている(エントリー受付は1/31正午まで)。同プログラムには、コスモスイニシア、竹中工務店、東急グループ、東京建物、野村不動産ホールディングス、阪急阪神不動産、三井不動産という不動産・建設・ライフライン業界を牽引する7社がパートナーとして参画。採択されたスタートアップは、Open Network Labが持つ、100社以上のスタートアップの育成・支援により培ってきたノウハウをもとにしたサポートはもちろん、パートナー企業からの支援も受けることができる。

募集領域は主にIoT、不動産サービス、生活サービス、インフラ・街開発、スマートホームとなる。また、プログラムは、シード期の育成・支援をメインとした「Seed Accelerator Program」と、パートナー企業との共創を行う「Corporate Program」の2種類のコースを用意。新規事業の立ち上げからスタートアップの育成まで、幅広く対応したプログラム内容となっている。

今回、Open Network Lab Resi-Techを開催した詳しい背景からプログラムの特徴について、運営元であるデジタルガレージ執行役員SVPの佐々木氏とエグゼクティブマネージャーの執行氏からお話をお伺いした。

写真左▲株式会社デジタルガレージ 執行役員SVP オープンネットワークラボ推進部長 佐々木智也 氏

2005年にデジタルガレージ入社。インキュベーションに強みを持ち、Twitterの国内サービス展開に大きく貢献。デジタルガレージが開催する、Open Network Lab全てのプログラムを統轄する。

写真右▲株式会社デジタルガレージ オープンネットワークラボ推進部 エグゼクティブマネージャー Resi-Tech担当 執行(しぎょう)健司 氏

2006年にデジタルガレージのグループ会社、DGコミュニケーションズに入社。2007年にカカクコムと共同で不動産のポータルサイト「mansionDB(現スマイティ新築)」の立ち上げに参画。以降、不動産分野における新規の事業開発全般を担当。Open Network Lab Resi-Techの事業責任者。


日本社会が転換期を迎え、住まいと暮らしにもイノベーションが求められる。

――最初に、Open Network Lab Resi-Tech開催の背景についてお聞かせください。

佐々木氏 : 当社は海外のスタートアップに投資し、そのサービスを日本で展開するビジネスモデルに強みを持っていました。Twitterの日本展開がその代表例ですね。しかし、海外からサービスを持ってくるだけでなく、日本のスタートアップを育て、世界に発信しようと考えるようになりました。そこで、2010年にOpen Network Lab(オンラボ)というアクセラレータープログラムを作り上げたのです。

プログラムを開催して8年間という時間の中で、東京開催の「Open Netwok Lab」は17Batchを運営、そこから派生しさまざまな領域にフォーカスしたプログラムも展開するようになりました。北海道というエリアに着目したOpen Network Lab HOKKAIDOや、バイオテクノロジー・ヘルスケア領域に特化したOpen Network Lab BioHealthがそれに当たります。そして今回、第三弾として生活者を起点とした住宅・暮らしの隣接領域を対象とする、Open Network Lab Resi-Techを開催するに至りました。

――なぜ今回のOpen Network Lab Resi-Techでは、住まい・暮らしの領域にフォーカスしたのでしょうか?

佐々木氏 : 近年、日本の働き方は大きく変化を遂げつつありますが、同様に、住まいも変革の時を迎えていると思います。しかし、いまだに家の中まではイノベーションが起こっていません。近い将来、データを活用したITによるイノベーションが家の中に起こると予想される中で、その潮流をいち早く本プログラムで生み出したいと思い、住まい・暮らしの領域にフォーカスしました。

執行氏 : 近年新築マンション数が徐々に減少に転じ、中古マンションの市場が活性化してきました。新築マンションならではの強みを活かしいかに中古マンションとの差別化を行うか、そういった視点が重要になり始めた時期と思います。。そういった背景から、デベロッパーはこれから暮らす方に向けて新しい価値を提供できるマンションの企画を常に考えています。そういった新たな技術の導入に向けてデベロッパー各社がCVCを設立するといった動きもあります。今回、そのような先進性のある不動産・建設・ライフライン業界大手7社が本プログラムに参画いただいており、各社と手を組みながら、スタートアップを発掘し育成します。

佐々木氏 : パートナー企業とスタートアップを個別でマッチングすると、A社が手をつけたから、B社は手をつけないといったセレクションが起こってしまいます。同業他社ということもあり、企業同士の横のつながりが難しいわけです。本プログラムは“コンソーシアムを構築し、業界を盛り上げましょう”をコンセプトに、パートナー企業7社が協力して取り組んでいただきます。

――「他社がやったからうちはやらない」といった動きがあると、新しいマーケットが活性化しないですよね。

佐々木氏・執行氏 : そうですね。

佐々木氏 : そうこうしている内に、海外から業界を揺るがすような新しいサービスがドン!と来てしまいますからね。各社が連携をすることで、先に行動を起こし、日本から生まれたイノベーションを、世界に持っていきたいと思います。

▲本プログラムは、生活者を起点とした住宅・暮らしの隣接領域の全てを対象としている。


業界大手7社×Open Network Labの新たな仕組みにより、新規事業を加速させる。

――海外展開という部分では、Open Network Labは大きな強みがありますね。その他、本プログラムの強みや特徴をお聞かせください。

佐々木氏 : 他のプログラムとの最大の違いは、コスモスイニシア、竹中工務店、東急グループ、東京建物、野村不動産ホールディングス、阪急阪神不動産、三井不動産という不動産・建設・ライフライン業界大手7社が参画している点でしょう。実証実験を行う場合でも各企業から場所を複数提供いただけるという点にあります。一気に3カ所で実証実験を開始するなど、ニュースバリューを持たせることも可能です。また、新築マンションに強みがある企業、商業施設に強みがある企業など、それぞれの強みを持ったパートナー企業とスタートアップが連携できます。

執行氏 : スタートアップは、一度に複数社に対してアイデアやテクノロジーを提案できますので、ビジネスがスケールするスピードも早まると思っています。例えば参画しているパートナー企業7社すべてと話ができれば、提案のどこに課題があるかもすぐに見つけることもできます。

さらに、各企業が社内の事業部と連携して参加しますので、適した部署とスタートアップがつながりやすくなる。今回の座組なら、プロダクトの提案であれば企画部などへ、すぐに届けることができます。

――逆に7社が集まることがプログラムのデメリットになってしまうことはないでしょうか?意思決定において各社が忖度してしまい、スピード感を持って進んでいかないといったことも考えられます。

佐々木氏 : そこに、私たちがいる意義があるのです。DGグループ内で業界動向を熟知する中立的な立場から「スタートアップの○○というテクノロジーに新規性があります。実証実験を進めてみませんか?」と、パートナー企業7社に投げかけます。それに対して、各社意見が違うことも想定されますので、5社が乗った、3社が乗ったという形で進めていく場合もあります。また、1社だけしか乗らなければ、「最低もう1社は入りましょうよ」とこちらが話を持っていきます。そこは、私たちの力量が問われるでしょうね。

――Open Network Labがハブになることで、スタートアップのアイデアやテクノロジーを翻訳しながら、デベロッパーさんとのオープンイノベーションを進めていくんですね。

執行氏 : はい。当社は普段から各パートナー企業とお付き合いがあるため、各社それぞれの事業やリアルな課題を理解しています。その課題解決のために「このアイデアやテクノロジーは必要です」と、スタートアップの代理人として提案もしていきます。

佐々木氏 : 今回のプログラムは、パートナー企業との共創を行うCorporate Program、シード期の育成・支援をメインとしたSeed Accelerator Programの2種類があります。Corporate Programでは、いいアイデアやテクノロジーがあれば出資して合弁会社を作るなど、プラットフォーム的なものを作っていきたいと考えています。さらに、さまざまな案件をぶつけて、各企業の価値観まで変えていくような取り組みになればと期待もしています。

そうした取り組みはすでに始まっていて、2018年11月にサンフランシスコにパートナー企業を招き、現地のスタートアップに接したり、世界から集まったResi-Tech系スタートアップのピッチを聞いてもらったりしながら、理解を深めていただいています。

――なるほど。Seed Accelerator Programにはプログラムのメリットとして資金調達もあると伺いました。アイデアやテクノロジーの内容によっては出資の可能性がありますか?

佐々木氏 : はい。Seed Accelerator Programは、出資前提と思っていますね。Corporate Programでは、出資を前提とせずフラットにスタートアップから提案を受けていきます。もちろん、事業開発費や必要な費用は、その都度検討していきます。


暮らしの先の未来を見つめた、アイデアとテクノロジーが必要。

――今回の領域において、注力したいアイデアやテクノロジーがあれば教えてください。

執行氏 : 少子高齢化など、日本が抱えるさまざまな社会課題の解決に向けたアイデアやテクノロジーを求めています。あくまでも一例としてお伝えすると、高齢者の一人暮らしが増加していく中で必要となる見守りサービス。そのほかにも、外国人の人口が増えていけば、どのように街のコミュニティを形成していくかといった視点でのアイデアやテクノロジーも必要になっていますね。他にも、マンションから子どもが落下するのを防いだり、デベロッパーがマンションを建設した後も住民と関われるアイデアも歓迎ですね。また、マンション建設が前提で街づくりが行われているケースも多くあるので、街やインフラを俯瞰した目で見ることも大切だと思います。

――街づくりやインフラづくりといった観点も求めているということですね。住まいの考え方を変えることで、新しい価値を創造していくことになりますね。

執行氏 : 安全や利便性はもちろん、「この街では電気代をゼロにしよう」と目指す街づくりなど、インフラ面の拡充に関するアイデアもあると素晴らしいと思います。さらに、住まいの周辺領域であれば、ビルやホテルにおけるオープンイノベーションも検討の余地がありますね。

佐々木氏 : センサーを使った家電のIoT化も加速していますが、メーカーごとでしか使えないのが現状です。それを、どのAIスピーカーにも合うソフトがあれば、非常に便利ですよね。そういった一つひとつのアイデアやテクノロジーから、住まいがアップデートしていくことを期待しています。

――本プログラムを通して、チャレンジしたい領域などはありますでしょうか。

佐々木氏 : さまざまな暮らしのデータを集めて、それらを病院と連携させたりできると、データの使い方にさらなる可能性が生まれると思います。

執行氏 : 家から駅までとか、駅からオフィスまでとか、その間をどうのようにつなぐか。“家での暮らしと連動させて、駅のあるべき姿とは”など、データを取りながら検討していく意味があると思っています。企業によっては、戸建からマンション、商業施設にホテルまで事業として抱えています。それら全部をつなげる仕組みだって実現できるはずです。

――本プログラムにはデジタルガレージさんが運営するOpen Network Labからのサポートが受けられると聞いています。

佐々木氏 : 100社以上のスタートアップを育成・支援してきた8年間のナレッジ・ノウハウをもとにサポートします。困っているときには、成功したスタートアップのメンバーから、アドバイスをもらうことも可能です。スタートアップのコミュニティに力を入れているのが、Open Network Labの特徴でもありますから。そして、私たちが責任をもってパートナー企業との橋渡しを行なっていきます。

――最後に、2019年7月のDEMO DAYに向けて抱負をお願いします。

佐々木氏 : DEMO DAYは2019年7月に開催しますが、実証実験をそこで終わらせようとは思っていません。継続して実証実験しているものを、発表できればと思っています。まずは、続けていくことに意味があると思っています。来年以降もプログラムを開催して、継続的な取り組みに成長させていきます。


取材後記

少子高齢化・労働人口の減少など、今後数十年で日本を取り巻く環境は大きく変わっていく。その中で、“住む”、“暮らす”という形にも変化が訪れる。その先手を打つべく、不動産・建設・ライフライン業界を牽引する大手7社がOpen Network Lab Resi-Techに参画している。暮らしの利便性やエコを追求したスマートホームはすでに存在するが、近い将来、日本が直面する社会課題の解決にはさらに斬新なアイデアとテクノロジーが必要だ。今回のプログラムにおいて、社会課題解決を加速させるイノベーションが7月のDEMO DAYで発表されることを期待している。

※Open Network Lab Resi-Techのエントリー受付は、2019年1月31日(木)正午までとなります。詳しい情報は、下記URLよりご確認ください。 https://resitech.onlab.jp 

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:古林洋平)