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各界のイノベーターや伊勢谷友介氏も登壇!オープンイノベーションの深化を紐解くイベント『ENGINE!』をレポート<後編>

経団連、財務省・財務局、金融庁、経済産業省が共催するシンポジウム&ミートアップイベント『ENGINE! 日本のミライと出会う場所』が、1月24日に経団連会館カンファレンスにて開催された。同イベントでは、「オープンイノベーションのさらなる深化」をテーマとした特別対談およびパネルディスカッションと、全国から集まった企業・金融機関・自治体・研究機関などによるミートアップを実施。――特別対談では、俳優として数々の映画・ドラマに出演しながら、社会課題解決プロジェクトを実施するリバースプロジェクトの代表も務める伊勢谷友介氏が登壇するなど、大きな注目を集めた。また、大企業、中小企業、ベンチャー、金融機関、投資家、官公庁、自治体、研究所などさまざまな分野から約400人が集まり、活気のあるイベントとなった。

eiiconでは本イベントを前編・後編の2回に渡ってレポート。後編となる今回の記事では、パネルディスカッションの第2部として実施された「オープンイノベーションと地域経済エコシステム」の模様をお届けする。


各地域のオープンイノベーションの現状とは?

大企業とスマートニッチ・スタートアップ企業との連携を促進し、オープンイノベーションを生み出すためには、各地域において、地域経済エコシステムが実効的に機能することが不可欠。――そこでパネルディスカッションの第2部は「オープンイノベーションと地域経済エコシステム」と題し、各地で活躍している企業、金融機関、行政機関の担当者が各地域でどのようにオープンイノベーションを実現しているのかが語られた。

モデレーターはfilamentの角氏が務め、下記5名のパネリストたちが、「あなたが地域で果たしている役割を一言でいうと?」・「あなたが携わっているプロジェクトが成功したもっとも重要な要素は?」・「あなたのプロジェクトを他地域で再度行うとしたら最初にするアクションは?」という3つの問いに答えていく形で、パネルディスカッションは進められた。


▲モデレーター/株式会社filament 代表取締役CEO 角勝氏

20年間にわたり大阪市役所にて勤務し「大阪イノベーションハブ」の立上げと企画運営を担当。2015年、大阪市を退職し、フィラメントを設立。多くの企業で新規事業創出プログラムの構築・実行支援や、独自設計したワークショップとコミュニティ創出手法を用いた人材開発・組織開発を手掛ける。2016年には企業アライアンス型オープンイノベーション拠点The DECKの立上げにも参画し、他のコワーキング・コラボレーションスペースのコンセプトメイクにもアドバイザリーを提供している。


▲パネリスト/合同会社フラットアワー 代表社員 銭本慧氏

長崎大学水産学部卒業。東京大学大学院大気海洋研究所特任研究員を経て、長崎大学で日本学術振興会特別研究員(PD)。ウナギ属魚類の卵稚仔輸送に関わる海洋環境変動を研究。持続可能な水産業の実現のため、長崎県対馬に移住・起業。漁師をしながら、生産した鮮魚をSNSを活用し直販する。

▲パネリスト/慶應義塾大学 先端生命科学研究所 所長 冨田勝氏

慶應義塾大学工学部数理工学科卒業。カーネギーメロン大学コンピューター科学部大学院修士課程及び博士課程修了し、その後、カーネギーメロン准教授等を経て同大学 Center for Machine Translation副所長に就任。1990年より慶應義塾大学環境情報学部助教授、教授、学部長を歴任し、現職に至る。

▲パネリスト/株式会社山陰合同銀行 執行役員 地域振興部長 安喰哲哉氏

立命館大学経済学部卒後、株式会社 山陰合同銀行入行。2005年より地域 振興部グループ長として、PPP/PFI業務を含め多数の地域開発案件に携わる。5ヵ店の営業店長・本部部長を経て、2017年より現職。2018年に実施した「SAN-IN・イノベーション・プログラム」において、事務局長兼アドバイザーとして、斬新な事業創発を支援。

▲パネリスト/株式会社セールスフォース・ドットコム 執行役員 今井早苗氏

東北大学卒業後、NTTに入社。2007 年 マイクロソフトに転職。公共インダストリー事業開発担当部長、通信メディア統括本部長などを務める。2015 年サナ・イー企画を立ち上げ、地方のベンチャー、中小企業の営業活動を支援。2016年 セールスフォース・ドットコムに入社(現職)。IT活用に夜地域課題の解決を目指している。

▲パネリスト/財務省四国財務局 徳島財務事務所 企画係長 寺西康博氏

2008年、財務省四国財務局入局。 2017年、香川大学と連携し「地方創生アイデアコンテスト」で最優秀賞である「地方創生担当大臣賞」受賞。2018年、 四国財務局徳島財務事務所企画係長に就任し、吉野川市等と連携し、再び 「地方創生アイデアコンテスト」に応募し地方創生担当大臣賞受賞。アイデアは事業化に向け関係者と検討中。


あなたが地域で果たしている役割を一言でいうと?

パネルディスカッションでまず始めの問いは、各パネリストたちの役割を聞くものとなった。


徳島県吉野川市と連携し、廃校となった小学校を利用してエディブルフラワー(食用花)栽培の新産業を生み出そうとしている財務省四国財務局・寺西氏は、「着火剤」と回答。新しい事業をおこす火がバラバラに燃え上がるよりも、その火を大きくして燃えあがるほうがいい。そのための着火剤の役割を担いたいと話した。

セールスフォース・ドットコム・今井氏は、「つなぐ」と答えた。同社では、およそ3年前に和歌山県の南紀白浜にサテライトオフィスを開設。地元の方々に釣りを教わったり、修繕ボランティアをしたり、子どもたちに向けてプログラミング教育のお手伝いをするなど、地域をつながりながら楽しく働くことで、生産性が20%もアップしたという。

続いて、フラットアワー・銭本氏は、「マーケットとの接点」と回答。海洋・水産の研究者だった銭本氏は、長崎県対馬に移住。一本釣りをして獲った魚をSNSで発信し、販売している。通常、市場を通して販売される魚だが、SNSを通じた直販をすることで、お客様のフィードバックが直接返ってくる。今までの漁業にはなかった「情報の交流接点」を銭本氏は生み出しているという。

「アレンジャー」と答えたのは、山陰合同銀行・安喰氏。「地域の課題を具体化するのが、私たちの役割だ」という安喰氏は、金融機関でありながら地域商社を設立。また、地方の大学発ベンチャーを活性化させるためにファンドを創設するなど、地域ビジネスのアレンジャーとして活躍している。

そして、慶應義塾大学・冨田氏は「地域のためではなく世界と勝負」と回答した。同大学は、冨田氏が中心となり、山形県鶴岡市にキャンパスを開設。「統合システムバイオロジー」の世界の拠点となることを目指した「先端生命科学研究所」の活動を推進している。このキャンパスからは、合成クモ糸繊維「QMONOS」の量産化に成功したバイオベンチャー・Spiber(スパイバー)が誕生。鶴岡から全世界をマーケットに勝負することで、結果的に地元を潤すことに貢献していくと話した。


あなたが携わっているプロジェクトが成功したもっとも重要な要素は?

この問いに関してパネリストたちは以下のように回答していった。


まず、慶應義塾大学・冨田氏は、「脱優等生」と答えた。Spiberを例に挙げ、「蜘蛛の糸の人工合成を研究する」というアイデアは周囲から冷ややかな目で見られたという。しかしながら、Spiberの創業者である関山氏は、“できないかもしれないけど、できるかもしれない”というマインドで研究に臨み、その成果を上げた。今の日本の教育は優等生を生み出しているが、日本に圧倒的に足りないのは「人と違うことをする人」だと話す冨田氏。ダメ元でもいいので、人と違うことに着手することが重要な要素になると語った。

続いて、財務省四国財務局・寺西氏は「熱量」と回答する。エディブルフラワー(食用花)のプロジェクトは、若手中心のアイデアが形になったもの。行政や企業といった組織の枠組みにかかわらず、結局プロジェクトを推進するには、個々の熱量が大事だと寺西氏は話す。

また、「理解してから理解される」と答えるのは、フラットアワー・銭本氏だ。このフレーズは、「7つの習慣」から引用したもの。漁業の直販ビジネスに着手したいと考えた銭本氏は、定置網漁を学ぶ中で、「未利用魚」の存在を知る。未利用魚というのは、漁獲量が少なくロットがまとまらないなどの理由から、非食用に回されたり、低い価格でしか評価されない魚のことだ。実はこうした市場に出回らない未利用魚こそが、飲食店などでニーズがある。漁業関係者と飲食店などのマーケット、その両方の困りごとやニーズを理解することが、重要だと銭本氏は言う。

セールスフォース・ドットコム・今井氏は、「リスペクト」と話す。同社会長は大の日本好きで、1999年の創業の翌年から日本でビジネスを展開。「日本にはイノベーションのヒントや機会がある」と語るほど、日本へのリスペクトがあるという。今井氏は、地域ビジネスを担当しており、地域のITベンダーや自治体に対してもリスペクトの念を持ちながらコミュニケーションを取ることが大事だ話す。

そして、「非連続的思考」と回答したのは、山陰合同銀行・安喰氏。金融機関でありながらリスクをとって地域商社を設立したり、山陰イノベーションプログラムという取り組みにも着手している。このプログラムでは、廃車のシートベルトから抱っこ紐を作るというプロジェクトが生まれ、すでに事業化している。


あなたのプロジェクトを他地域で再度行うとしたら最初にするアクションは?

最後の設問について、パネリストたちは以下のように回答を続けていった。


山陰合同銀行・安喰氏は、「地域風土の理解」と答える。同行では、地域の課題問題点を認識することに努め、リレーションシップバンキングに取り組んでいる。さらに、様々な連携先を手を組んで、地域の付加価値向上に着手している。その原点にあるのが、「地域風土の理解」だという。

「意識高い系飲み会」と回答したのは、財務省四国財務局・寺西氏。“意識高い”というのは、未来を語り合えること。まずは、未来を語れる仲間を飲み会で作っていくことが大事だと話した。

そして、慶應義塾大学・冨田氏も「意識高い系飲み会」と回答する。石油は将来的に無くなってしまう。それに代替するような素材を生み出すということに、Spiberは挑戦している。お金儲けではなく、社会課題のためにリスクを取りながら挑戦するような話を飲み会を通じてすることが、プロジェクトの出発点になるという。

一方、「誤解を解く」と話すのは、セールスフォース・ドットコム・今井氏。同社のクラウドサービスを通じて地域活性化を提案するも、「高いサービスだ」と誤解を招くケースも多々あるという。また、地方の教育機関でも、活用方法で誤解が生じるケースもある。ITの民主化を進め、地域のイノベーションを実現に寄与したい同社にとって、この誤解を解くことが最初のアクションになると今井氏は話す。

フラットアワー・銭本氏は、「奥さんを落とす」と回答した。まず、漁師さんの奥様方に対してマーケットからの良いフィードバックを話すことで喜んでもらう。それが漁師さん自身に伝わることで、気持ちよく仕事ができる素地を作ることが重要だと語った。


以上のような3つの設問に対して、5人のパネリストたちがそれぞれの立場から回答し、活気のあるパネルディスカッションとなった。モデレーターであるfilament・角氏は、「人間は人間にとって、最高のインターフェイス。やはり、人間に理解してもらうのが一番嬉しい。人と人の関係性・流れを作ってくことが、地域ビジネスやイノベーション創出の基礎となる」と感想を述べ、パネルディスカッションを締めくくった。