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有識者たちが語る2020年に向けたオープンイノベーションの“いろは” | 『IROHANI ACCELERATOR TOKYO 2019』イベントレポート

有識者たちが語る2020年に向けたオープンイノベーションの“いろは” | 『IROHANI ACCELERATOR TOKYO 2019』イベントレポート

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2月7日、OPEN INNOVATION CONSORTIUM主催の『IROHANI ACCELERATOR TOKYO 2019』が、東京ミッドタウンで開催された。今回は、"いまさら聞けないイノベーションの「いろはに」”を伝えるため、オープンイノベーションに関わる有識者が、同イベントに参加した。

本イベントでは、有識者たちのパネルディスカッションをはじめとして、ビジネスマッチング、スタートアップのピッチ、イノベーション創出を支援する企業のブースが出展されており、大企業の新規事業担当者など約350名が訪れ、会場は熱気で溢れていた。 

本記事では、『IROHANI ACCELERATOR TOKYO 2019』内において、JBpress編集長・鶴岡氏がモデレーターを務め、Creww代表取締役・伊地知氏、ビザスク代表取締役CEO・端羽氏、リンカーズ代表取締役社長・前田氏がパネラーとして登壇した、“「未来志向で考える2020年に向けたオープンイノベーション」のいろは”の模様をお伝えする。

■Creww株式会社 代表取締役 伊地知 天 氏(写真左)

カリフォルニア州立大学在学中に起業し、これまで国内外で4社の企業を設立。現在は、Creww株式会社の代表取締役を務め、新経済連盟の最年少幹事をはじめ、経済産業省の「J-startup」Supportersなど、ITベンチャーのエコシステムやオープンイノベーションに関わる多くの組織やプロジェクトに参画。 

■株式会社ビザスク 代表取締役CEO 端羽 英子 氏(写真中)

ゴールドマン・サックスにて投資銀行業務、日本ロレアルにて予算立案・管理を経験。その後、MIT(マサチューセッツ工科大学)にてMBAを取得。 ユニゾン・キャピタルにおいてPE投資に携わった後、ビザスクを立ち上げる。

■リンカーズ株式会社 代表取締役社長 前田 佳宏 氏(写真右)

京セラ株式会社に入社し海外営業に従事。その後、株式会社野村総合研究所に入社。製造業を中心に、営業・マーケティング戦略立案、事業戦略立案、欧米・アジア企業のM&A戦略立案・実行支援など数多くのプロジェクトに参加。その後、Ditty株式会社(現リンカーズ株式会社)を設立し、現在に至る。

【モデレーター】 JBpress 編集長 鶴岡 弘之 氏

電機メーカー、コンピューターメーカーを経て日経BP社の記者として活躍。コンピューター雑誌、美術・デザイン雑誌、ビジネス系ウェブサイトなどの編集や運営、立ち上げを経験後、日本ビジネスプレスの設立に参画。JBpress副編集長に就任し、2015年4月より現職。

2012年と現在のオープンイノベーションに対する違いとは?

JBpress・鶴岡氏 : 今回は“「未来志向で考える2020年に向けたオープンイノベーション」のいろは”と題して、パネルディスカッションを行います。2020年に向けて、過去の振り返りと現在、そして未来を語っていただきます。

まず、2012年にそれぞれ会社を立ち上げたお三方にお伺いしたいのが、当時と比べてオープンイノベーションに対して、世の中はどのように変化したか?です。前田さんからお話しをお願いします。

リンカーズ・前田氏 : 6年半前に今の会社を設立しましたが、世界の外部環境・マクロ環境が変わっていますよね。中国やインドなど、海外の追い上げが凄いと実感しています。しかし、日本の環境はそこまで変わってない。これからもGDPを維持、拡大するためには、最適なオープンイノベーションを生み出す必要がある。良い製品が売れて、正のスパイラルを生み出さなくてはならない。その必要性は2012年に比べて、より求められていると感じています。

JBpress・鶴岡氏 : 端羽さんはいかがですか。

ビザスク・端羽氏 : 今までの企業はお客さんの依頼を受けて、商品開発をしていればビジネスが成り立っていました。しかし現在は、商品開発・研究開発主導で様々な製品を生み出し、事業を作り出していかなければ生き残れなくなっています。そのため、全体的に取り組みのスピード感が変わってきました。オープンイノベーションに対しては、各社積極的になっていますね。2012年当時は、情報流出のリスクばかりを気にして、社名を出して情報を発信していなかった。最近では業界に関わらず、メーカーも社名を出して情報を発信するようになっています。

JBpress・鶴岡氏 : 社名をかたくなに出したくないと言っていた方が、今はいなくなったと。

ビザスク・端羽氏 : 今でも答えたくない人は、答えたくないででしょうね。しかし、社外秘でなければ、情報発信は可能であるという認識が広まったのだと思います。以前は、インタビューするだけでも、高い壁を感じていました。

リンカーズ・前田氏 : 社名を出した方が問い合わせが多くなるんですけど、社名を出すなら回答しないという企業が多くいました。本当は情報のコントロールが大切で。最初に情報を出して、面談などで具体的な社名を出せば本当は心配ないはずなんですけど。

JBpress・鶴岡氏 : ありがとうございます。伊地知さんは2012年と現在を比べて、感じる部分はありますか。

Creww伊地知氏 : そうですね。当時、ベンチャーが大企業と組んで、何かやるという行為事態が理解されていませんでした。先程もあったように、リスクばかり考えて、前に進まなかった。ホント、6年ほど前はやりにくかったですよ。それが今では、オープンイノベーションという手法や言葉が浸透していると実感しています。

オープンイノベーションによる成功事例は、出てきているのか?

JBpress・鶴岡氏 : 流れが変わったとはいえ、オープンイノベーションによる成功事例が中々生まれないという意見もあります。みなさんは、どうお考えですか。

リンカーズ・前田氏 : まず、オープンイノベーションを成功に導くには、3つ必要なことがあります。それは、人とお金とスピーディーな意思決定です。その中でもスピーディーな意思決定が最も重要。意思決定が遅く、数年後にやっとサービスが形になっても、ニーズと合わないことが多々ある。いかに短期間で、トライ&エラーを繰り返せるかが大切です。

ビザスク・端羽氏 : そもそも、オープンイノベーションの実績が出ていないのか、自社のイントレプレナーが育っていないのか、判断に困る部分がありますね。一番の問題点は、大企業とスタートアップの成功の金額に差があることではないでしょうか。3年で売上100億円目標と言われたら、スタートアップも組めませんよね。まずは、何が成功だったかを既存事業の判断軸で考えず、小さな成功を積み重ねていくことです。「初めてスタートアップと組めた」、「外部と組めた」、「何かを学ぶことができた」と、そういった小さなことを、大企業の評価者がしっかりと評価する。大きな成功はその後です。

Creww伊地知氏 : やはり、既存事業に最適化された企業が、いきなり新規事業にチャレンジしても成功は難しいですよね。だからこそ、KPIを売上ではないところに置く必要がある。先程もあったように、成功の定義が各社で違う。数年で売上を数百億にしたいなら、スタートアップと組むべきでない。新しい創造は、中長期で考えていかなければならないからこそ、オープンイノベーションは年々ナレッジを貯めていくことが重要なんです。1年目にやったことが、2年目にゼロになっていたらこれは失敗。何かしらナレッジが残っていたら、それは成功なんです。

ビザスク・端羽氏 : でも、アクセラレータープログラムで時々聞くのが、「導入した担当者が2年目に異動になって、ダメになってしまった」とか、ありますよね。

Creww伊地知氏 : これは、オープンイノベーションあるあるですね(笑)。アクセラレータープログラムでもなんでも、結局は属人化してしまっている。それを剥がして、組織に溶け込ませないといけない。しっかりと定量評価制度を作る。すると見える化ができ、視覚化につながり、最終的には対策が立てられるようになります。こうすることで、ノウハウが生まれる。それをせずに異動するのは、やっぱり悪ですよね。

JBpress・鶴岡氏 : 属人化してしまうと、その人がいなくなるとリセットされてしまいます。

リンカーズ・前田氏 : 伊地知さんが言ったように手段が重要で、手段のKPIを作るべきなんですよね。それを仕組み化せずに、属人化してしまうとダメで。その仕組みを作るためには、さらにそれ自体を評価する制度を作るべきなんです。

JBpress・鶴岡氏 : しかし、大企業の担当者は、早く結果を求められるのでは。社内からのプレッシャーとか。

ビザスク・端羽氏 : ここにいる方々は、上手く取り組んでいますよね。たとえば、発表の場を作るとか。取り組みを外に発信することで、周囲の理解を得ることができます。

JBpress・鶴岡氏 : なるほど。それで言うと、上手くいく方法やコツはどこありますか。

Creww伊地知氏 : ノウハウを属人化して、プロセスをブラックボックス化してしまったら、上手くいきようがないですね。情報をオープンにして、進捗を共有し、評価制度やルールを作って、全てをオープンにしながら進んでいる企業が上手くいっていると思います。

ビザスク・端羽氏 : お伝えしたいのは、オープンイノベーションが成功していなかったら、我々がこの場にいるはずがないということ。小さな成功は多く集まっている。ただし、企業の売上が1.5倍になったというような、大きな成功事例は確かに生まれていません。

Creww伊地知氏 : これからの成功のためには、今日来場されているイントレプレナーやイノベーターの横のつながりを作っていくことが大切。みんな同じ苦労や悩みがあって、そこからトライしたことを共有すれば、ゼロからのスタートにならずボトムアップできる。僕らが前に出て、横のつながりを作っていくことは、大きなミッションだと思っています。

2020年に向けた展望は?

JBpress・鶴岡氏 : 2020年に向けたみなさんの展望を、ぜひお聞かせください。

リンカーズ・前田氏 : 先の話になりますが、日本にある約300万社ある企業の中から、ポテンシャルのある企業をどんどん引き上げていきたいですね。そこから、海外シェアをとれるような企業を、オープンイノベーションで育てていきます。そして、正のスパイラルを作るため、会社をつぶすことなく、日本企業を50万社くらいまで集約させる。会社が多ければ多いほど、過当競争による販売価格の低下、それに紐づく人件費削減が起こり、日本全体の購買意欲が下がってしまいますから。

JBpress・鶴岡氏 : まずは、世界と戦える企業を作っていくわけですね。

ビザスク・端羽氏 : オープンイノベーションという言葉がなくなるような世の中にしたいですね。イノベーションって、そもそもオープンだよねと。イノベーションは組み合わせから起こるもので、ゼロではなく今あるものを組み合わせて、新しいサービスや価値を作っていくこと。その組み合わせにスピード感を持たせるために、自前主義ではなく、オープンな外部との連携を加速させていきます。

JBpress・鶴岡氏 : 組み合わせる力を、さらにつけていくということですね。

Creww伊地知氏 : 国際競争には、望まなくとも巻き込まれてしまいます。ここでは、2020年に向けてと話していますが、海外は2030年といったさらに先を目がけて投資しており、そんな人と我々は戦っていかねばならない。だからこそ、オープンイノベーションに参加する人のコミュニティ、絶対数を増やして、日本全体のイノベーションの創出活動をボトムアップしていく必要がある。この先も多くの参加者を、私は集めていきたいですね。

JBpress・鶴岡氏 : 最後に、オープンイノベーションを起こすために必要なキーワードを教えてください。

リンカーズ・前田氏 : 失敗しても繰り返しやること!私は起業に2回失敗していて、今回で3回目です。なので、とにかくやり続けることが大切だと思います。

ビザスク・端羽氏 : 1歩踏み出すまでのスピードとそれを続けること!私は6年間同じビジネスを続けてきました。とにかく、一歩踏み出したら続けてみてください。

Creww伊地知氏 : 橋をかけて上を歩く人が必要!最近、社内で話しているのが、CVC とか出島を作ったとしても、本島と繋がってなかったらただの孤島じゃんと(笑)。橋をかけて上を歩く人が必要なんです。その人こそ、イントレプレナーなんです。パッションを持って、社内の人を巻き込むことにコミットできる人が、イントレプレナーとして活躍して欲しいですし、評価される環境になってほしいと切に願っています。

JBpress・鶴岡氏 : みなさま、本日はありがとうございました。

取材後記

2012年からの約7年で、日本のオープンイノベーションは大きく進歩している。しかし、世界に目を向けると、それは道半ばと言わざるを得ない。大企業とスタートアップ。それぞれの垣根を越え、人々が情熱を持ち、スピード感を持って取り組めば、日本のオープンイノベーションは次のフェーズに移行していくはずだ。そして、その進化こそ、日本の未来を照らす次の一手となる。IROHANI ACCELERATOR TOKYOは、次回開催も予定しているとのこと。今回参加できなかった方も是非次回に向けて注目してほしい。

(構成・文:眞田幸剛、撮影:古林洋平、保美和子)

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