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【今の建設現場はカッコいいか?】コマツとの共創で現場に変革を

【今の建設現場はカッコいいか?】コマツとの共創で現場に変革を

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1921年に創業し、まもなく100周年を迎える建設機械の老舗「コマツ」。建設機械のグローバルブランドとして、世界中の建設現場で同社の建設機械は活用されている。

近年はメーカーからソリューションカンパニーへと進化し、建設機械のICT化を実現。そこから得られるデータをもとに、建設現場の効率化を進める「SMARTCONSTRUCTION」の取り組みも進行中だ。「SMARTCONSTRUCTION」を軌道に乗せる過程では、シリコンバレーのスタートアップを始め、国内外のプレイヤーとオープンイノベーションを実践しつつ、開発を進めてきたという。

外部の技術をうまく社内に取り入れ、イノベーションの火を絶やさない。――そんな同社が建設業界の抱える課題を解決すべく、『働き方、建設現場をCOOLに変える。 コマツ アイデアソン 』を開催する。

海外ではハッカソンを開催したことのある同社だが、国内での開催は初めて。今回、溜池山王の本社を訪問し、アイデアソンを行うことになった背景やアイデアソンのテーマ、どんな人たちに集まってほしいのかについて、コマツCTO室・冨樫氏、同じくCTO室の田畑氏、羽賀氏の3名からお話を伺った。

▲コマツ CTO室 PM 冨樫良一氏(写真右)

1993年、新卒でコマツに入社。2014年のCTO室発足当時より現職。シリコンバレーのSkycatch社との業務提携を進めるなど、同社のオープンイノベーションを牽引している。

▲コマツ CTO室 技術イノベーション企画部 部長 田畑亜紀氏(写真中)

1985年、新卒でコマツに入社。2018年4月よりCTO室へ。それまでは研究所に勤務。アイデアソンでは企画を担当。

▲コマツ CTO室 技術イノベーション企画部 技師 羽賀智章氏(写真左)

2009年、新卒でコマツに入社。2017年6月より自ら手を挙げてCTO室へ。それまではホイールローダーの設計に従事。アイデアソンでは田畑氏と同じく企画を担当。

2014年CTO室の発足で、オープンイノベーションが本格化

――コマツさんは、以前からオープンイノベーションを実践している印象です。オープンイノベーションに取り組むようになった背景や変遷について、まずお伺いできればと思います。

冨樫氏 : 当社が本格的にオープンイノベーションに取り組み始めたのは2014年、CTO室の発足時からです。その前の2012年、当時社長だった野路が、「旧態依然のままではコマツはもう終わりが近い」との危機感の下、ではどのようにイノベーションを起こしていくべきか、調査・解析を開始したのです。

そこで、アメリカやヨーロッパの事例を集め、海外ではどのようなメカニズムでイノベーションが起こっているのかについて調べました。その結果、見えてきたのが産官学が連携する必要性や、オープンイノベーションの有効性でした。私たちは調べた内容をもとに、「日本企業が今後、どうイノベーションを起こしていくべきか」についてレポートにまとめ、行政や大学にも働きかけました。

野路はよくこう言います。「何かを変える時は、様々な人たちと協力しながら変えていかねばならない。その際に、お願いするのが最初ではない。自ら変わるのが最初だ」と。コマツ自身が変わる第一歩として、2014年4月に外部の技術を発掘するCTO室を設置。これにより、オープンイノベーションを実践しやすい体制が整ったと言えます。

――2014年以前にも、貴社では「KOMTRAX」「無人ダンプトラック」などの画期的なイノベーションが生まれています。これらはどのように生まれたのでしょうか。

冨樫氏 : 仰る通り、当社におけるイノベーションの歴史を語る上で欠かせないのが、「KOMTRAX(コムトラックス)」です。すべての建設機械にGPSや通信システムを搭載した「KOMTRAX」は、2001年に市場導入したものですが、これについては完全に“自前”でした。その後、2008年に世界で初めて商用導入した「無人ダンプトラック運行システム(AHS)」、これについては言うなれば“オープンイノベーション”です。

というのも、当社は無人ダンプトラック運行システムの実現に向け、10年以上にわたり社内で研究を続けてきました。ただ、研究からのブレイクスルーが難しく、なかなか量産化・商品化へと駒を進められない状況でした。

そんな時に、1996年に買収したアリゾナのMMS(モジュラーマイニングシステムズ)社に相談をし、MMS社を通して世界中の最先端技術を持つスタートアップとつながることができ、私たちが望む情報も世界中から集まるようになりました。その結果、無人ダンプトラックの開発が一気に進み、量産化のステップに駆け上がれたのです。

外部の技術を活用したことで、無人ダンプトラック の量産化・商品化を実現できたこと――これが当社にとって、大きな成功体験となりました。この時、当社の中に、「オープンイノベーションの台座」が完成したと言えます。この成功体験を経営陣が強く認識していたからこそ、その後、オープンイノベーションの積極的な推進にも舵を切れたのでしょう。

――なるほど。既に成功体験があったのですね。2014年にCTO室が発足してからは、CTO室はどのようなことに取り組んでこられたのでしょうか。

冨樫氏 : CTO室が手がけた最初のプロジェクトが「SMARTCONSTRUCTION(スマートコンストラクション)」で、ICTの活用によって建設現場を見える化・最適化するソリューションサービスです。当時、当社がソリューションカンパニーへと進化する上での成長戦略の中核にあるとても重要なものでした。

プロジェクトの準備を進める中で、「SMARTCONSTRUCTION」というからには、建設現場の「見える化」をしなければならないという議論になり、行きついた答えがドローンだったのです。

今でこそ一般化したドローンですが、2014年当時、社内はもちろん日本のどこを探しても、商業用のドローンを扱っているプレイヤーはいませんでした。そこで私たちがパートナーを求めて行ったのがシリコンバレーです。

――シリコンバレーでは、どのようなパートナーと出会えたのでしょうか?

冨樫氏 : ドローンによる3Dマッピングに強みを持つSkycatch社です。Skycatch社とは出会ってからわずか1カ月程度で、業務提携することを決めました。

「SMARTCONSTRUCTION」を支える技術を外部から見つけて社内につなげたこと――これが、CTO室として取り組んだ最初のプロジェクトです。

私たちが出会いたいのは、“建設業界をCOOLに変える”アイデア

――今回、CTO室が主体となってアイデアソンを開催されるとのことですが、アイデアソンを開催するに至った理由を教えてください。

田畑氏 : オープンイノベーションを実践する際、世界中にアンテナを張り新しい技術を発掘することはもちろん大事なのですが、同時にその技術を社内にどう取り入れるかも非常に重要です。素晴らしい技術やサービスが社外にあったとしても、それをうまく社内のリソースと掛け合わせなければ、イノベーションへと発展することはないからです。そのために新しいモノの見方も積極的に取り入れたいと考えました。

この点から、今回のアイデアソンを企画しました。当社は過去に海外でのハッカソンを数回実施したことがありますが、今回は社内の実務を担うメンバーにも参加してもらい、異なる発想を持つ社外の方とアイデアの“共創”を実践してもらいます。社内参加メンバーにはこれからのオープンイノベーションの担い手となってほしいという想いもあります。今回、日本で開催する大きな意味は、そこにあります。

――なるほど。今回のアイデアソンにどのようなテーマを設定したのでしょうか?そのテーマを選んだ理由も含めてお伺いできればと思います。

羽賀氏 : アイデアソンのテーマは、以下の3つに設定しました。

①建設業界のワークスタイルをCOOLに変えるアイデア

②建設現場・とりまく環境をCOOLに変えるアイデア

③建機の新しい活用!地球を豊かにするCOOLなアイデア

――すべてのテーマに”COOL”という言葉が入っていますね。

羽賀氏 : はい。これには建設業界を取り巻くイメージを「カッコよく変えていきたい」との想いを込めています。というのも、建設業界は今、深刻な人材不足に悩まされています。近い将来、100万人以上の労働者が不足するとも言われています。また、若手の流入が少なく、労働者の高齢化が進んでいる点も大きな課題です。この背景にある問題は、建設業界の魅力や面白さを世の中に伝えきれていないことだと考えています。

冨樫氏 : 小さな子どもに将来の夢を聞くと、「飛行機」「電車」「建機」など、乗り物の操縦士が上位にランクインしますね。子どもにとって、飛行機や電車と並んで、ブルドーザーや油圧ショベルなどの建機は大好きな乗り物のひとつなのです。ところが、20年経って大人になるとどうでしょう。パイロットや電車の運転手は引き続き人気職種でも、なぜか建機の操縦士になりたい人は、ほとんどいなくなってしまうのです。……これが現実です。

この現状をふまえ、今回のアイデアソンでは “建設現場をCOOLに変える”アイデアを募集します。建設現場のイメージを変えていくことで、建設業界に人が集まる流れを生みだしたいとの狙いです。

――より具体的に①〜③のテーマについてお聞かせください。

冨樫氏 : はい。まず、テーマ①の「建設業界のワークスタイルをCOOLに変えるアイデア」では、例えば、建設現場で働く人たちが快適に過ごせ、さらに健康になるようなアイデアや、伝える方も伝えられる方も無理がなく、自然体で技能伝承できるアイデア。また、現場で働くワクワク感や建機を運転する高揚感を高め、伝えていけるようなアイデアを想定しています。

テーマ②の「建設現場・とりまく環境をCOOLに変えるアイデア」では、例えば、危険を予測・検知・回避し、事故ゼロを実現できるアイデア、建設現場と周囲の住民がうまく共存できるアイデア、生活環境や自然環境に配慮した建設現場を実現するアイデアなどを歓迎します。

テーマ③の「建機の新しい活用!地球を豊かにするCOOLなアイデア」では、例えば災害に強い街作りへの新しい建機活用方法や、建機を使用した持続可能な新しい社会貢献活動などのアイデアが生まれると面白いと思います。

田畑氏 : 「建設業界って最先端でカッコいい、面白そう、働いてみたい」 そう感じてもらえるような、斬新なアイデア、我々だけでは発想できないアイデアが出ることを期待していますね。

業界の枠を超えた多彩なカラーの人たちとアイデアを生み出したい

――アイデアソンには、どんな人たちに参加してほしいですか。

羽賀氏 : “建設現場をCOOLに変える”というテーマに共感していただける人であれば、業界や職種は全く問いません。例えば、医者・薬剤師、弁護士、メディア関係者、俳優、農家、学生さんといった、建設業界とは普段はあまり縁のない方々の参加も大歓迎です。私たちとは全く異なる発想を持った人たち、建設業界にいる人ではなく、むしろ業界の枠を超えた多彩なカラーの人たちと議論がしたいですね。

田畑氏 : 私たちが想像もしないような発想をされる方に、ぜひお集りいただきたいです。当社はまもなく100周年を迎えますが、社内では同じ思考パターンがコマツDNAとして連綿と受け継がれています。全く異なる領域で活躍されている方は、思考パターンが全く異なるのだろうと推測しており、そんな人たちとの議論を通して起こる化学反応をとても楽しみにしています。

冨樫氏 : 建設機械は“地球の形状を変えられる唯一のツール”です。環境破壊という悪いイメージを連想される方もいらっしゃるかもしれませんが、一方で地球環境を守るために活用することもできるはずです。近年、自然災害が多発していますが、自然災害に対して何か考えをお持ちの方。あるいは、ここ数年、建設ラッシュが続いていますが、身近にある工事現場に対して何か意見を持っていらっしゃる方だと、議論が弾むのではないかと思います。

――アイデアソンに参加することで、応募者が得られるメリットはありますか。

田畑氏 : 私たちがすぐにでも実現したいというアイデアがあれば、早期に実証実験へと進んでいただくこともあるかもしれません。コマツの建機は世界約200カ国のほぼ全ての国と地域で稼働しており、世界中にお客様がいますし、建機はライフサイクルが30年にも及ぶ機種もあり、売って終わりのビジネスではないので、建設現場とのつながりも深いです。また、小型から超大型まで、サイズも用途も多様で、様々な使われ方があるので当社と一緒なら実装しやすいという特長があります。世界中に展開するコマツのネットワークを活用した、マーケティング支援やフィールドでの実証実験の可能性があります。

また、当社は全国に建設機械を体験できる施設を保有しています。東京近郊では、千葉市美浜区にIoTセンタがあり、また伊豆にテクノセンタがありますので、そこで当社の製品に触れていただくことができます。よいアイデアがあれば持ち込み、それらの建機や実際の現場から取得したデータを活用したコンセプト確認や検証を実施していただくことも可能です。

――最後に、応募者の方へメッセージをお願いします。

羽賀氏 : 参加していただくにあたっては、建設現場に対する率直な感想、ネガティブなものもポジティブなものも含めて、整理して来ていただくと議論が活発化すると思います。ぜひ、アイデアソンでは、みなさまの身近にある建設現場に関する意見を聞かせてください。

取材後記

5年後には、100万人もの人手が不足すると言われている建設業界。建設業界における担い手の年齢構成は、55歳以上が3割を超える一方、20代は1割程度にとどまる。今回お話を伺ったコマツ社は、人手不足と高齢化が深刻化する建設業界の課題に真っ向から向き合い、建設現場に最先端の技術を持ち込むことで、解決の突破口を開いている稀有な企業だ。開催が予定されているアイデアソンでは、ぜひ同社の向き合う課題に共感していただき、建設業界を少しでも“COOLに変える”アイデアを出してほしい。どなたでも参加可能なので、興味を持った方は下記URLより、ぜひ応募を。

https://eiicon.net/about/komatsu-ideathon/

(構成:眞田幸剛、取材・文:林綾、撮影:加藤武俊)

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