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シリーズ「イノベーション支援の雄」 VOL.2 | サラリーマンが世界を変える。株式会社アルファドライブ

ここ数年、新たな成長のカギとなる「新規事業開発」に乗り出す企業が増えている。しかし、そう簡単に新規事業は実を結ばない。――例えば、社内で新規事業開発プログラムを実施しても、「なかなかエントリーが集まらない」、「新規事業としてカタチになっても、そこからドライブしない」といった悩みを抱える担当者も多いはずだ。

そんな課題を解決するべく、「企業内新規事業の支援・コンサルティング」を展開しているのが、株式会社アルファドライブだ。同社は、株式会社リクルートにて、約1500の社内プロジェクト及び約300社のベンチャー企業・スタートアップ企業のインキュベーションを支援した経験を持つ、麻生要一氏が2018年2月に創業。独自の企業内新規事業の支援・コンサルティングをベースに、企業内インキュベーションプラットフォームを提供している。

今回は、同社から「新規事業のプロフェッショナル」とも言える取締役・平尾氏、執行役員・古川氏の2名を招き、新規事業を成功に導くために必要な要素について詳しくお伺いした。

【写真右】 株式会社アルファドライブ 取締役 平尾譲二氏

株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)入社後、インターネットマーケティング局にてSEO・SEMを全社統括。じゃらんnetでは新マーケティング手法による全社表彰を受賞。2011年に社内新規事業制度「NewRING(現RING)」でグランプリを受賞後、自らゼロから事業を立ち上げた経験をベースに、一貫して新規事業開発に携わる。新規事業開発プログラム「Recruit Ventures」を立ち上げ、事務局長兼インキュベーションマネジャーとして風土醸成・案件募集から事業育成・人材育成までを統括。約2000のエントリープロジェクト、約60チームの事業検証に携わり、事業開発と事業開発人材の育成を支援。2018年8月、株式会社アルファドライブ取締役に就任。

【写真左】 株式会社アルファドライブ 執行役員 古川央士氏

学生時代に電子書籍関連のベンチャーを創業経営。その後、株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に新卒入社。SUUMOでUI/UX組織の起ち上げや、開発プロジェクトを指揮。その後ヘッドクオーターで新規事業開発室のGMとして、複数の新規事業プロジェクトを統括。パラレルキャリアとして、2013年より株式会社ノックダイスを創業。2015年にはカフェ・バー「Bottles」をオープン。2018年にはイタリアンレストラン「trattoria filo」をオープン。またNPOでの活動や、一般社団法人の理事などを兼任し、数多くのイベントをオーガナイズ。2018年11月、株式会社アルファドライブ執行役員に就任。


プログラムには、企業文化を変えるほどのインパクトがある。

――まずはじめに、アルファドライブさんが手がける新規事業支援の特徴についてお聞かせください。

古川氏 : 支援のコアな部分は、新規事業開発プログラムを主導している事務局などへのサポートですね。募集から審査、選抜、メンタリングまで一貫してサポートします。また、プログラムを進めるもっと前段階から関わることもめずらしくありません。企業文化を見たときに、どんな方向性でプログラムを進めていくべきかといった、相談ベースから入ることも。いきなりプログラムを立ち上げるのではなく、新規事業に取り組んでいける企業文化を醸成するようなイベントを考えたりもしていきます。

すでにプログラムが走っていても、メンターや事務局を対象にした研修を行うこともあります。新規事業が10案程度進んでいても、そこから伸び悩んでいるといったご相談があれば、新規事業のチームに対して私たちがメンタリングを行ったりもします。スキル的な部分だけでなく、事務局が言いにくい部分もレビューしながら、第三者から伝えることで気付きを与えます。また、事務局から「こんなことを伝えてほしい」といったご依頼もあるので、そこは状況に合わせて対応していますね。

――支援を依頼するクライアントはどんな企業が多いのですか。また、支援の成功事例があれば教えてください。

古川氏 : 日本を代表するような大企業が多いですね。ナショナルクライアントか、そのグループ会社がほとんどです。社名や業界は伏せさせていただきますが、新規事業開発プログラムがなかった企業において、プログラムを立ち上げ、新規事業案が数十案エントリーし、今現在、新規事業をカタチにしていくフェーズのクライアントがいます。

平尾氏 : 新規事業開発プログラムの立ち上げの過程で、企業文化を変えることができたクライアントもありましたね。社員1000名規模の企業でしたが社内の風通しが良いとは言えず、従業員満足度にもそれが反映してしまっている状況でした。はじめに経営企画の方から、何かを社内を変えていきたいとご依頼があり、私たちは新規事業開発プログラムの制度づくりから社長プレゼン、イベント運営、公募のための社内広報など、フルパッケージで支援を実施しました。

すると、プログラムでは150ものエントリーがあり、社員が手を挙げて新しいことチャレンジする文化が生まれ、社内の空気まで変わっていきました。昨年エントリーが開始され、今年の3月がまさに総決算。二次審査を通過すれば、来年度の社内広報で通過者の発表があり、さらに社内を盛り上げることができるでしょう。

――1000名規模の会社で、150件のエントリーがあったというのは凄いですね。ここまで社内を変えることができた理由はどこにあるのでしょうか。

平尾氏 : とにかく、エントリーへのハードルを下げました。エントリーシートを簡略化させて、「こんなことが気になっている」程度でいいですよと。新規事業のアイデアだけでなく、「○○といった課題を解決したい」という宣言でもOKにしたんですね。そして、このエントリーを見て、「会社側から怒られることはありませんよ」と明言しました。もちろん、気軽にエントリーできるので微妙な案もありました…(笑)。とにかく、手を挙げたことが凄いと賞賛するスタンスで、事務局も私たちも関わっていました。その人の小さなやる気や気付きを支援しようと考えたわけです。

――最大の問題点であった社内の雰囲気を変えるために、みんながチャレンジできるようなハードル設定にして、空気感を作っていったわけですね。

古川氏 : たしかにエントリー数を増やすために、ハードルを下げたということもあります。しかし、新規事業をカタチにするためには、「こんなことに取り組みたい」という自発的に生まれた、その人自身のコアな部分が大切なんです。

アイデアが100%正しくて、そのまま上手くいくなんてことはありません。どちらかというと、ビジネスモデルやお金の稼ぎ方、ソリューションやサービスの具体性は後々作れますし、最適化させていけばいい。どんな人が困っていて、なぜ自分が取り組みたいのかというコアな部分をちゃんと持っていれば、新規事業はいかようにも育てていけますから。アイデアを育成していく前提で、どういった支援ができるか方法を考えながら設計していけば、新規事業が生まれる土壌や文化を作っていくことができます。

――社長へのプレゼンテーションもあったと聞きましたが、どのようにして巻き込んでいきましたか。

平尾氏 : 小細工なしで世界観を提案して、「サラリーマンが世界を変えられる」とお伝えしました。すでにその時には、社員の方々とやり取りをしていて、みなさんプログラムの可能性を感じていた。新しいことにチャレンジしたい気持ちがあっても、「余計なことはするな」という社内の空気感だったので、それだけをまずは変えたいと思っていたんです。

社長ですから、どうしても近々の業績が気になるところではあります。さらに、プログラムはコストがかかって、成果もすぐには出ない(笑)。ですので、イベントの盛り上がりやエントリー数など、少しずつ実績をあげながら理解していただけるように動いていました。


新規事業開発の成功のカギは、「人」。

――こんな企業を支援したい、こんな課題を解決したい、こんな人とプログラムを作り上げていきたいといったお考えはありますか。

平尾氏 : お会いする担当者は「うちの会社は古いんですよ」とおっしゃる方が多い。そのように話す方は現状に課題を感じ、「自社を変えたい」と思っている。――アルファドライブは、これからもそういった方々の駆け込み寺でいたいですね。「いい会社だけど、かたいんですよ」と話す方は、自分の会社が好きで、可能性も感じていて、空気を変えたいと思っている。そういう方は企業の中でとても貴重です。おそらく全社員の1%もいない。そういった方と一緒に、プログラムをカタチにしていきたいですね。

古川氏 : まさに、自社に対して危機感を持っている方ですよね。中長期的なマーケットに対して考えを持っている社員は、企業にとって大切な人材です。

――印象に残っている担当者の方などはいますか。

平尾氏 : 当社には経営企画部の方が相談に来ることが多いのですが、全然関係ない部署の方が来た時がありました。権限は持っていないのですが、情熱だけはあって(笑)。その方が凄かったのは、その後に社長を連れて来たんです。それで、社長プレゼンを私たちが手伝ったところ、会社の中で本格的なプロジェクトとなりました。情熱がある社員がいれば、会社は変わるんですね。

古川氏 : 私も社内を変えていきたいと思っている情熱のある方をサポートしていきたいです。私たちは「新規事業コンサル」のように見られますが、一般的な新規事業開発に取り組む企業様のコンサルティングへのニーズは、マーケット調査であったり、提供ソリューションの競争優位性検証であったり、ビジネスをどう組み立てるかといった社外に向いたコンサルティングを求められます。

しかし私たちはクライアントの社員に会い、企業文化を知り、それらと照らし合わせながら新規事業開発プログラムなどを検討していきます。つまり、社内にどのような影響を及ぼすかを考え、取り組みを実施していくのです。だからこそ、意思があるプログラム担当者と仕事がしたいと思っています。「新しい事業で一発当てて会社を救おう」ではなく、「企業体質から変えていきたい」と自社を変える情熱がある方なら、さらに大歓迎ですね。

――最後にプログラムの立ち上げを検討していたり、新規事業がカタチになってもドライブしていかないと感じている担当者にメッセージをお願いします。

平尾氏 : 当社には、事業開発経験者や現在進行形で事業を開発している人材が多くいます。支援のバリエーションも広いですし、クライアントの企業文化や社員に寄り添いながら、“Will”を強めていくこともできます。何よりも人を大切にして、そこを起点に支援を考えていきます。

古川氏 : 私たちがいなくても、企業の中で新規事業開発プログラムを運用・運営できるところまでコミットしていきます。起業家精神が根付き、社風となっていくように協力していきます。新規事業を考える方は、環境が合わないと変人扱いされたり、扱いにくいと思われてしまうことがあります。しかし、新規事業領域では、そういった方々がキーパソンなんです。そんな可能性のある人材を再発見できるように支援していきます。


取材後記

数々の新規事業を生み出し、事業化を成功させているリクルート。アルファドライブには同社のDNAを引き継ぐメンバーが多くを占めており、新規事業開発支援を通して大企業やそのグループ企業などにポジティブな変化をもたらしている。――「会社を変えたいと思っている方々の駆け込み寺になりたい」と平尾氏が語っていたように、新規事業に関する豊富な経験・ノウハウを持ったアルファドライブには、まさにゼロの状態から、支援を実施する体制が整っている。新規事業に着手したいと思っている企業にとって大きな価値を生むパートナーになるはずだ。

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:古林洋平)