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【特集インタビュー】「オープン」であることで枝葉が広がる。企業が100年生き残る知恵としてのオープンイノベーション(前編)

【特集インタビュー】「オープン」であることで枝葉が広がる。企業が100年生き残る知恵としてのオープンイノベーション(前編)

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1912年創業のオフィス関連総合商社、株式会社文祥堂。銀座の一等地に自社ビルを構える老舗企業だ。そんな文祥堂が「CSR事業」の位置づけで取り組んでいるのが「KINOWA」。 国産木材の間伐材を使ったオフィス家具の制作、販売に加えて、なんと図面をオープンソース化することで、国産木材の利用拡大を進めている。今回は、この事業を手掛ける山川知則氏にお話を伺う。老舗の看板とオープンイノベーション……一見相反する概念に思える両者だが、背景には100年企業ゆえの、長く生き抜くための知恵が潜んでいた。

 

株式会社文祥堂 CSR事業室 室長代理 
山川知則 Tomonori Yamakawa 
大学卒業後、オフィスデザイン、文具事務用品、OA機器、システム開発などを手掛けるオフィス関連総合商社、文祥堂に入社。オフィス家具、文具事務用品、システムなど幅広いジャンルの営業、経営企画室勤務を経て現職。2012年に文祥堂の創立100周年を機に国産木材を活用したオフィス家具ブランドKINOWAを立ち上げる。オフィス空間の設計・施工を手掛けるオフィスのプロの視点から、事業として国産木材の活用に取り組むことで、都市からの森づくりに継続的に取り組むことを目指している。  

■歴史から見出したシード——国産木材を活用した森づくり

▲NPO法人ミラツクの京都オフィスに採用されている「KINOWA」シリーズ

--銀座で創業し100年以上。オフィス関連商社の文祥堂が「KINOWA」ブランドを立ち上げた理由からお聞かせいただきたいのですが。なぜ間伐材に目を付けたのですか? 

山川:元々は経営企画室で社員教育や人事制度改革などを担当していたのですが、2012年、会社が創立100周年を迎えるにあたって、「“何か”考えて」と雑なフリを頂きまして(笑)。記念すべき年に会社全体で取り組む以上、歴史にルーツを持たせた方が納得感があると思い、社史をめくったんです。すると、創業者が植林をしていた記録がありまして、とりあえず現地を見に行きました。 

静岡県浜松市の山の中、創業者が植えたかもしれない杉やヒノキは立派に育っていたのですが、こうした日本の木はあまり使われていないと言う。よっぽど質が悪いのだろうかと尋ねてみると、そうではありませんでした。 

--日本の森林が抱える問題ですね。戦後、復興のために急速な造林を行ったにも関わらず、木材の輸入自由化がスタートすると安価な外材ばかりが使われるようになり、林業は衰退。膨大な人工林だけが残った森は荒廃し、土砂災害を引き起こすリスクも増えました。国産材の積極活用は日本全体で取り組むべき課題です。 

山川:こうした問題への関心が強かったわけではないのですが、たまたまテレビで間伐材を使ってさまざまな商品を作る会社が紹介されていた番組を見ていたのがきっかけで、間伐材を使って、弊社の主要事業である「オフィスの空間づくり」をできないかと考えたのです。ちょうど、経営企画室の仕事を通じて社内から会社を変えることに限界を感じており、事業を通して会社を変えることに関心が向きはじめた時期でした。  

■つながる価値——他社との協働による事業推進とオープンソース化

 

▲文祥堂のオフィスにも、間伐材が用いられている。 

--そこで、岡山県の株式会社西粟倉・森の学校と共にオフィス向けの間伐材家具ブランド「KINOWA」を立ち上げ、販売を開始されたわけですね。 

山川:当時、iPadを持ち歩いて、会う人会う人に皆に、手当たり次第「こんな事業がやりたいんだけど……」って話しまくっていたんです(笑)。すると、この事業のきっかけを作った、あのテレビ番組で紹介されていた会社をよく御存知という方が見つかりまして。すぐにお引き合わせいただきたいとお願いしました。こうして、西粟倉・森の学校の牧大介社長(当時)と出会い、初対面のその日のうちに、「一緒にやっていきましょう」と具体的に話が進みました。 

オフィスのプロとして、オフィス特有の仕様などについてアドバイスをさせていただき、オフィス向けのユカハリタイルなどの商品を共同開発しました。環境意識の高いお客さまを中心に様々なシーンでご採用いただけましたが、爆発的ヒットとまではいかず、現在、西粟倉・森の学校さんとは、メーカーと販売店という立場に戻って協働しています。一方、“KINOWA”としては、現在第二のステージを歩んでいるところです。

--ホームページを拝見して驚いたのですが、KINOWAシリーズの製作図面が全てダウンロードできるのですよね。なぜ図面をオープンソースにされたのですか? 

山川:KINOWA第二ステージでは、デザインファームのNOSIGNER(代表:太刀川瑛弼さん)にリブランディングをお願いし、プロダクトのデザインも見直しました。新しくなったKINOWAのプロダクトでは、間伐材の丸太、角材、板材を素材そのままの形で使っています。素材そのままでシンプルなデザイン。裏返すと「誰でも作れる」ものが出来た。 

だったら、思い切ってオープンソースにしてしまおう、と。「クリエイティブ・コモンズ」というオープンソースの管理の手法に基づいて、図面を公開しました。権利を守りながらもフリーで使えるという形にすることで、間伐材を利用してオフィス家具を作る企業が増えていくことを目指しています。また、オープンソースにすると、他者が関われる余白ができます。そうした余白を持つことでコラボレーションが進むことを期待しました。 

現在、公開から3ヶ月ほど経ったところですが、京都で北山杉の間伐材を使って販売したいというご相談を頂いたり、全国の自治体から開発の相談を受けたりと、新たな展開が生まれ始めています。  


100年以上続く老舗企業の「CSR事業室 室長代理」。その肩書きのイメージとは相反し、バイタリティのある行動で周囲を次々と巻き込みながら、オープンイノベーションを実践していった山川氏。さらに、プロダクトの図面をオープンソース化するという大胆なアイディアにも驚かされた。 

次回のインタビュー後編では、山川氏が取り組むこれらのオープンイノベーションの背景にあるものを語っていただいた。それは、老舗企業ならではの“長く生き抜くための知恵”と言えるものだった。詳しくは、12/19公開 の記事をご覧ください。 

<構成:眞田幸剛、取材・文:古賀亜未子(エスクリプト)、撮影:加藤武俊>


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