オープンイノベーションプラットフォーム・eiiconは、「YOKOGUSHI VOL.4~物流業界各社が仕掛けるオープンイノベーションを徹底討論!~」と題したイベントを3月7日に開催した。――「YOKOGUSHI」(ヨコグシ)とは、同業界の中でオープンイノベーションに取り組むイノベーターたちが集い、それぞれの仕掛けや狙いを文字通り“横串”でディスカッションするイベントだ。

これまで『交通インフラ』、『食品業界』『IT・通信』をテーマに開催されたが、第4弾となる今回のテーマは、『物流』。そこで、寺田倉庫、日本郵便、ヤマトホールディングスの3社から、オープンイノベーションに取り組む担当者に登壇してもらい、今後の物流業界における各社の取り組みについて、物流業界の抱える課題や方向性について話を聞いた。なお、モデレーターは、eiicon 中村亜由子が務めた。


【登壇者】 寺田倉庫 MINIKURAグループ minikura+プロダクト責任者 姫野良太氏

大学卒業後、OA機器メーカー、クレジットカード会社を経て、2016年6月より現職。システムチーム統括を経て、物流プラットフォーム「minikura+」のプロダクト責任者として、サービス開発からアライアンスまで幅広く活動。レナウン”着ルダケ”のPMを担当し、提携先との新規サービスを多く手がけている。

【登壇者】 日本郵便株式会社 事業開発推進室 担当部長 地引功氏

1998年に株式会社日立製作所入社。自動車機器グループの財務部で業績管理業務に従事。2000年に野村證券株式会社入社。2006年にはアジアを統括する香港現法に駐在。2007年にモルガン・スタンレー(現・三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社)入社。2000年より18年間に渡り、一貫して投資銀行部門でM&Aアドバイザリー業務に従事し、大企業の大型経営統合、クロスボーダー案件から地方の未上場オーナー企業案件まで百数十件のM&Aに関与し、約30件を成立に導く。 2018年4月に日本郵便株式会社入社。事業開発推進室でM&A、アライアンス、ベンチャー投資、スタートアップとの協業、アクセラレータープログラム、及び新規事業開発を担当。

【登壇者】 ヤマトホールディングス株式会社 デジタルイノベーション推進室 室長 奥住智洋氏

2007年4月にヤマトWebソリューションズ株式会社 代表取締役社長に就任。その後、2015年10月 ヤマトシステム開発株式会社 執行役員を経て、2017年4月「ヤマトにDX(デジタルトランスフォーメーション)を起こす」考えのもとヤマトホールディングス株式会社にて、デジタルイノベーション推進室を設立。現在も室長として同部門を担当している。


各社が注力するオープンイノベーションの取り組み

eiicon・中村 : まずは、各社のオープンイノベーションに関する取り組みについて、ご紹介いただけたらと思います。

寺田倉庫・姫野氏 : 寺田倉庫は、余白創造の”プロフェッショナル集団”として、「ワイン」、「アート」、「メディア」(古いネガフィルムや磁気テープ)など専門的商品の保管業や、個人で箱単位の倉庫を持てる「minikura」、各種イベントや発表会の場所を提供する「イベントスペース」などを事業ドメインとして展開しています。中でも、商品(製品)を製造者名や製造日時、商品の種類だけではなく、個々の商品番号で管理する「個品管理」に特化した事業は独自のノウハウを構築しています。

「minikura」は、Web上で誰でも、どこからでも自分の倉庫を持てるB to Cのクラウド収納サービスとして、2012年からスタートしました。送っていただいた段ボールを開けて1点1点アイテムの写真を撮ることで、ユーザーがあたかも自分のクローゼットのようにWeb上でアイテムを管理できるサービスです。現在、1000万以上のアイテムを保管しています。そして現在は、この仕組みをより広く提供する為、独自のAPIを開発し、さまざまな企業様と取引させていただいております。具体的には、フュギュアに特化した保管サービスを展開している株式会社バンダイさん、スタートアップ企業の株式会社サマリーさん、また、株式会社AOKIさんや株式会社レナウンさんのファッションレンタルサービスを手がけていたりしています。

取引先事例として大手企業を挙げましたが、もっとこの仕組みをいろいろな企業様にに使っていただきたく、2018年8月から「minikura+」という物流プラットフォームをWeb上でリリースしました。通常のEC物流に加えて、レンタルサービスを実現できる機能もWeb上で全て完結できるサービスとなっています。

我々MINIKURAグループの特徴としては、社名は寺田倉庫でありながら、倉庫のアセットは大手3PL会社など外部企業と提携し、提携企業様の倉庫を活用しています。レンタルや個品管理に特化した我々独自のシステムとノウハウを、同業の倉庫会社様に提供し、我々はプラットフォーム開発に注力しています。それをすべてAPIでつなげることによって、アメーバ状に利用される事業者や倉庫会社を増やしていく構想を描いています。――特に新規事業者様やECサイト様にとっては他にはないサービスを提供できると考えています。個品という特殊な管理方法であるがゆえに、少々マニアックなお話になるかもしれません。


日本郵便・地引氏 : 日本郵便の事業開発推進室では、M&Aやアライアンス、スタートアップとの協業、また自ら新規事業開発を展開しています。2017年からスタートしたオープンイノベーションプログラムでは、「これからの時代の応じた郵便物流を提供し世界をより豊かに」というプログラムビジョンを掲げています。

2017年では、郵便物流の分野でもラストワンマイルに特化しており、具体的にはAIを活用した配達ルートの最適化といったテクノロジーを活かした業務の効率化、ドローンの会社との協業による新しい郵便物流のカタチを模索していました。また、既存の郵便物流とは別に、郵便局での荷物預かりサービスやIoTを活用した遺失物の早期返還プラットフォームとの連携といった、郵便物流のリソースを活用した新サービスでもスタートアップとの協業を行っています。

2018年に関しては、同じく郵便物流という分野ですがバリューチェーン全体に対象範囲を拡大し、ロボットを活用した物流拠点における荷物の積み降ろしの自動化や、量子コンピュータを活用した郵便局間の運送便ダイヤの最適化で、スタートアップとの協業に取り組んでおります。

こうしたオープンイノベーションプログラム以外でも会社としてさまざまな協業や実証実験を行っています。2018年秋に福島でドローンによる郵便局間の輸送の開始、2018年12月に杉並区で置き配バッグを活用した再配達削減の実証実験を行いました。他にもシリコンバレーのスタートアップと協業して、三点計測器を用いた荷物のサイズ測定に関する実証実験を行っております。あとは、配送ロボット、自動運転分野でも実証実験を実施しており、こうしたさまざまなテクノロジーによる取り組みを行っています。

ヤマト・奥住氏 : 日頃、宅急便およびヤマトグループ各社のサービスをご利用いただきありがとうございます。私たちデジタルイノベーション推進室には、3つの機能があります。

1つが「ICTプラットフォーム」を構築する機能です。例えばヤマト運輸では、年間18億個の宅急便が動いており、年間100億件のトランザクションデータがあります。このビッグデータを使って新しいビジネスに活用するため、いかにこのビッグデータを構築し、それを研究、実行するかが私たちの役割です。

2つ目が、「コーポレートベンチャリング」の機能です。国内外問わずスタートアップ、大企業や官学など、いろいろな方たちとエコシステムをつくって、おもしろいことができないかを検討し、効率的な形でビジネスモデルを推進する機能です。

3つ目が、「ビジネスモデル創出」の機能です。先端技術を活用したビジネスモデルや社会課題、事業課題に対する、新しいビジネスモデルをインキュベートする機能。

この3つの機能で推進活動を行っています。


現在の物流業界の課題と今後の動きについて

eiicon・中村 : まずは物流業界の現在についてお話を聞かせていただきたいと思います。水運が発達し船でモノを運べるようになった江戸時代から物流は始まりました。生産者から消費者へ届けるまでのサプライチェーンすべてが物流ととらえられていて、国内で10兆円に及ぶ基幹産業と言われています。ECの発達により多種多様な商品を少量で運ぶことで生じる課題、シェアリングやCtoCマーケットの誕生、また少子高齢化によるドライバーの人員不足などの課題や、新たな動きから物流が今後どう動いていくのか。いま見えている物流業界のこれからについてお聞かせください。

ヤマト・奥住氏 : ヤマトグループは今年創業100周年を迎えます。多くのお客様、社会からご支持いただき、社会におけるプラットフォームに成長させていただいたと思っています。今後はさらにECが拡大し、小口化や多頻度化されていきます。

国土交通省の発表では、宅配便の取扱個数が45億個から2020年に70億個になるといわれています。そうした状況で大きな課題となるのがドライバーの人手不足です。

そこで、必要な取り組みが3つあります。まずひとつは自動運転の車やドローン、作業のロボット化といった「省人化」です。そしてAIやIoTにおいて同業他社と競い合うだけでなく協力できる所は協力する、これを実現するためには「標準化」が必要です。そして最後にスマートフォンのような圧倒的なUXを物流用端末に搭載する「高度化」です。

eiicon・中村 : 70憶へと取扱個数が膨れ上がるなかで、業界が再編成されていくという奥住さんのご指摘に関して、姫野さんも同じ感覚ですか?

寺田倉庫・姫野氏 : 私は、サービス事業者寄りなので、大手3社に協力していただいて、ぜひ輸送コストを下げていただきたいと思います(会場笑)。輸送は同じルートを回っていることがあるので、システムやAIを使って輸送コストを下げることが必要だと奥住さんのお話を聞いていて思いました。

eiicon・中村 : 地引さんはどうですか?

日本郵便・地引氏 : 分野によっては一緒にやっていく必要があると思います。社会インフラとして考えると、これまでと違った受取サービスを考えていかないといけないと思います。

eiicon・中村 : 例えば、今後ヤマトさんと日本郵便さんが協業することも可能性としてあるのでしょうか?

ヤマト・奥住氏 : どうですかね(会場笑)。ただ、伝票ひとつとっても全く違うなかで、伝票番号を統一の桁数にするだけでも、さまざまな効率化の可能性を図れると思います。まずはできることから少しずつ協業していくべきだと思います。

また同業だけではなく、協業している例があります。地方のバス会社は過疎化や高齢化にともなう路線網の維持が課題となっていることから、バスで荷物も一緒に運んでもらうことで、バス会社の収入確保と物流会社の物流効率化、サービス向上を図る取り組みも行っています。こうした活動をコツコツとやっていくことも大切だと思います。


物流業界に必要な技術やエッセンスは?

eiicon・中村 : 人手不足や消費者ニーズはテクノロジーで解決していくということだと思うのですが、あらためて今後、物流業界に必要と思われる技術やエッセンスについて、何が必要になるのか。そして実際に動かしている事例を含めて聞かせてください。

寺田倉庫・姫野氏 : レンタルサービスの物流を担う上で必要な技術は、実はアナログなことだったりします。例えば、ファッションのレンタルサービスだと服のにおいを検知する技術が必要になります。現在の検知器はにおいの強弱しかわからない。汗や腋臭など、匂いの質で次工程であるクリーニングの選択方法が変わってきます。現在は、人が直接嗅いで判別しています。それをAIの機械学習を通じて匂いの判別ができればと考えています。

もうひとつファッション業界でいうと、撮影・採寸・原稿作成の「ささげ業務」(ECサイトで販売する商品の情報制作業務)です。これも現在は人の手で行われています。画像で身幅を測定する技術がスタートアップで出てきたので、こうしたサービスが広がると庫内作業の省人化は図れると思います。

eiicon・中村 : 他にも人からデジタルへ切り替わったことはありますか?

日本郵便・地引氏 : 先ほどのオープンイノベーションの取り組みのなかでもAIを使った配達ルートの最適化の話がありましたが、どうしてもベテラン社員の勘や経験に頼ることが多い中で、そうしたベテラン社員のノウハウをディープラーニングを使って、新人に教えています。しかし、まだまだ利用率は低いというのが現状です。

ヤマト・奥住氏 : 同じくAIを使った配達ルートの最適化やRPAによる事務作業の効率化、お預かりしている荷物の出荷量をAIで予測して、要員計画の作成に役立てています。あとは日本郵便さんと同じく自動運転の実証実験も行っています。

eiicon・中村 : 自前主義で難しくなっていることがあれば教えてください。

日本郵便・地引氏 : 人手不足から、物流拠点の作業をすべて人力で行うことが難しくなっているなか、省人化をいかに行うかが重要になっています。

ヤマト・奥住氏 : これからもオープンイノベーションは積極的に行っていきます。ただし、「ラストワンマイルの品質」については、今後も自前で担保し、自社のドライバーがお荷物を手渡しでお届けすることは譲らないと思います。

寺田倉庫・姫野氏 : 内製化ということでいうと、minikuraグループは30名のうち22名がエンジニアです。中で作れるものはすべて中でつくることでスピードが上がる。大手企業様の新規事業開発に関わることも多いのですが、物流構築込みで新しいサービスを1~2カ月で立ち上げるといったスピード感が選ばれている理由だと思います。

また、APIを通じて足りないものを連携しやすくしています。APIを連携したあとは自由につかっていただきたいという意図があるので、システムを自社完結型で終わりにするのではなく、APIを開発して提供できたのは良かったと感じます。

先ほど30名中22名がエンジニアと申し上げましたが、残りの企画担当には、私も含めて別業界からジョインしたメンバーが多くいます。私はこうした人材の確保はとても重要だと考えていますし、物流業界は、他の業界に比べて他業種からの人材流入が少ないと考えています。

eiicon・中村 : 奥住さんも同様にデジタル人材の取り込みは行っていらっしゃるのでしょうか?

ヤマト・奥住氏 : そうですね。ビッグデータとアルゴリズムに関するビジネスエッセンスが必要だと感じます。特にビジネスアナリストやデータサイエンティストは内製化して育てることが大切だと考えています。


課題として最も注力して取り組んでいることは?

eiicon・中村 : 最も課題意識を持って取り組んでいることがなにか?また、これからやりたいことについて伺えればと思います。

寺田倉庫・姫野氏 : 我々の倉庫に保管されている1000万点以上のアイテムをデータとして活用していきたいと考えています。例えば、現状ではワインやアートの購入者履歴が追えていない。こうした今後価値が上がる個品に対してより付加価値を生み出すために、ブロックチェーンを使って何かできないか、そういったことをスタートアップと一緒に実現していきたいです。7年間でモノとデータは揃ってきているので、それを活用できるスタートアップの方を求めていますね。

日本郵便・地引氏 : これまで当社のオープンイノベーションプログラムでは、郵便物流を中心に行ってきましたが、当社には郵便物流以外に郵便局というインフラがあります。親会社である日本郵政の中期経営計画として、「トータル生活サポート事業」を掲げているので、地域の皆様の役に立つサービスをカタチにしたいと考えています。

その一例として、2018年秋に「終活相談ダイヤル」という新規事業を始めました。ゆうちょ銀行の窓口業務として亡くなった方の相続手続きの際に司法書士の紹介や、お葬式・お墓の紹介などをしています。地方であれば地縁で司法書士、お葬式業者、お寺等と何かしらのつながりがあると思いますが、東京などの都市部に上京した方でどこに相談にいけばわからない方に、我々が信頼できる相手先をご紹介するといった試行サービスを東京エリアで実施しています。

終活だけでなく、地域の皆さまへの生活サポートなど、全国に2万4000局ある郵便局のネットワークを活用したサービスを提供し、トータル生活サポート企業に近づければと考えています。

ヤマト・奥住氏 : リソースがなくとも圧倒的UXを持つシステム会社など、これまではパートナーやお客様だった企業がライバルになってきていることに、危機感を持っています。その解決策はデジタルトランスフォーメーション(DX)しかないと思っています。ヤマトグループ全体のDXを実現することが当面の課題であり、実現するためにさまざまな方たちと一緒にシステムを構築する必要があると感じています。

eiicon・中村 : ありがとうございます。では、質疑応答に移りたいと思います。まずは、ドライバーの人材についての課題は、人数、年齢、生産性のどれなのでしょうか?

ヤマト・奥住氏 : 圧倒的にドライバーの数だと思います。生産性は品質などいろいろな側面で教育して育てていくことはできますが、大前提として(年齢との掛け合わせを踏まえた)数の問題があります。他業種ですが、タクシードライバーさんの平均年齢はかなり高いと聞いたことがあります。そうした状況もあり、我々も危機的な状況だと認識しています。

eiicon・中村 : こうしたドライバー問題で考えている解決策があれば聞かせてください。

寺田倉庫・姫野氏 : 我々としても課題に感じていまして、現在、寺田倉庫として自動ルート検索の技術開発をするスタートアップ企業に投資しています。この問題を解決することでコストに直結しますし、事業者サイドとしても解決したい課題です。

eiicon・中村 : 次は、段ボール箱のイノベーションについてです。

寺田倉庫・姫野氏 : そもそも段ボール箱ではなく、エアパッキンで十分ではないのかという議論にもなってくると個人的に思うのですが、サイズの大きな段ボール箱に小さい商品が入っている現状があるので、物流コストの側面からも頑丈なエアパッキンに包んで配送できる新しい技術ができると世界観が変わると思います。

日本郵便・地引氏 : 当社が扱うゆうパック等の荷物は、不定形のものが多いのですが、個人的にはEC業者のように段ボール箱等での統一化ができれば、物流拠点での荷物の積み降ろしの業務効率化につながるのではないかと思っております。

ヤマト・奥住氏 : テストとしてですが、段ボール箱に猫マークをつけて、プレゼント箱のように販売したら大変好評だった事例があります。運ぶだけではなくギフトの梱包資材をパーソナライズ化して付加価値を付けることもありだと思います。もうひとつは、まだ先の技術ですが今後4Dプリンターで時間が経つと変形していく技術ができる話が出てきています。段ボールが時間ごとに変形していく仕組みを活かしたサービスをつくることも有りだと思います。

eiicon・中村 : 次は、「人手不足と荷物の小口化が進むなか、モーダルシフトと幹線輸送の自動化以外に、どういう解決策があるのか」という質問です。

寺田倉庫・姫野氏 : 我々の提供するシステムは、どの倉庫でも導入できる強みがあるため、1拠点に集中している倉庫を分散させ、小さな倉庫を各地に設けて輸送時間を削減することを解決策として考えています。ヤマトさんのように駅の近くに多く拠点をつくるなど、物理的な移動距離を縮めることで効率化が期待できると思います。

ヤマト・奥住氏 : 個人宅や企業から集荷したものをセンターに集めて、仕分けしトラックで運ぶというハブ&スポーク型で行っているので、積み替えの回数が多く大勢の人の手が必要です。その荷物の積み替え業務の自動化により省人化できると思います。

ただ、私たちがお預かりする荷物は紙袋や段ボールなどいろいろな形・大きさがあるので、荷物をピックアップする機械のチューニングが難しいんです。ピックアップする方法はいろいろありますが、もう少し時間がかかると思います。

日本郵便・地引氏 : 吸引系だけでは全ての荷物の形や重さに対応するのが難しいという課題があります。アメリカでは、静電気で持ち上げるシステムもあります。さまざまな形や重さの荷物に、ひとつのシステムで対応するのは限界があると感じています。

eiicon・中村 : 次の質問ですが「今後、物流業界の倉庫等で勤務する従業員数は減っていくのか?」です。

ヤマト・奥住氏 : 現在、従業員は20万人以上いますが、これからは入社して働きたい、と選んでもらえるような企業にならないといけないと感じています。

日本郵便・地引氏 : 当社は、物流だけでなく郵便も運んでいるので、郵便に関与している従業員がゆうパックサイドの物流にシフトしていくところは、同業他社と異なる部分だと思います。

eiicon・中村 : ありがとうございます。次は、「物流や空間活用の領域において、ダイナミックプライシングを導入できませんか?」という質問です。

寺田倉庫・姫野氏 : 我々の領域と近いと思うのですが、サービス側としてダイナミックプライシングでできることを考えるとおもしろいと感じています。例えば、ブランド品を検品管理していく中で情報登録を行い、APIを通じて管理し、タイムセールなどをダイナミックプライシングで対応する。こうした仕組みが実現できるといいなと思います。

日本郵便・地引氏 : 郵便については法律上の関係から難しい部分もありますが、荷物については将来的に十分検討する価値があると思います。

ヤマト・奥住氏 : 特に2017年以降、お客様のご協力のもと、適正な運賃をいただくと言うプライシングの考え方を推進しています。

eiicon・中村 : 最後に、「今後どういった物流サービスが出て来そうでしょうか?」という質問です。

寺田倉庫・姫野氏 : 我々は倉庫業なので、ストックビジネスという背景からいかに保管してもらうかが重要で、保管することで徐々に売り上げが上がっていきます。「minikura.com」でいうと、弊社から送った空の段ボール箱にユーザーが物を入れて、倉庫に送り返すので、配送料が往復でかかっています。そこで、ユーザーが申し込んだ1時間後にマッチングした個人の車が直接モノを預かるといったことが事業化できれば、新たな収益につながる可能性があると思います。

日本郵便・地引氏 : 地方の郵便局では、移動スーパーのような買い物支援の発想がでてきていますが、過疎地域ゆえの収益化に対する難しさがあります。

ヤマト・奥住氏 : 例えばBBQのときに肉や野菜などの食材、コンロなど道具をピッキングから箱詰めしたBBQセットの配送までを行い、終了後は道具の回収から返品まで一貫して請け負う、あるいは自宅でパーティをするときにシェフの手配から食材の準備、そのお届けまでを一貫して行い、パーティーが終わったら回収するといったような、「運ぶ」と「その周辺」にある色々なニーズをワンストップで提供するなど、色々な可能性が考えらえると思います。


取材後記

物流の歴史のなかで、これからの数年間は物流業界の大きな変革期として位置づけられている。自前のサービスにこだわらず、オープンイノベーションを通じた共創によって、次の時代に必要とされる事業を生み出そうと各社の競争は激しくなるだろう。平成が終わり、新たな時代を迎えるなか、物流業界は新たな物流元年を迎えようとしている。


(構成:眞田幸剛、取材・文:平田一記、撮影:加藤武俊)