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【特集インタビュー】オープンイノベーションを先駆的に進めるリコー。巨大組織がイノベーションへと向かった道筋と、共創パートナーとシナジーを起こす方法とは。(前編)

リコーは2014年にベンチャー企業支援プログラム「Ricoh Innovation Bridge」をスタートさせた。ベンチャー企業に人、技術、資金を提供し、共創シナリオを考え、検証。既に複数の共創モデルが始動している。大企業とベンチャー企業を結ぶ役割を担い、プログラムの推進に大きな貢献を果たしている澤田氏に話を伺った。

株式会社リコー
新規事業開発本部 オープンイノベーション推進室
スペシャリスト 澤田 智裕 Tomohiro Sawada
2008年入社。システムエンジニアとしてコピー機やプロジェクターのUIソフトウェアなどの開発に携わる。新製品をわずか3カ月でリリースし、社内表彰を受賞するなど実績を残した。新規事業に関するプロジェクトへの参加を経て、2016年、オープンイノベーション推進室に異動。現在に至る。

 

■投資、共同研究、開発委託など、多様な形でパートナーと共創。




――早速ですが、Ricoh Innovation Bridgeの役割を教えてください。

澤田:リコーが新規事業として注力している領域が4つあります。具体的には、スマートビジョン、ビジュアルレボリューション、ヘルスケア、アディティブマニファクチャです。これらの事業を加速度的に成長させるため、ベンチャー企業など外部のパートナーと結びつけるのがRicoh Innovation Bridgeであり、携わっている私たちのミッションです。

――人、技術、資金を提供するということですが、例えば、どのような形で行われているのでしょうか。

澤田:わかりやすいのは資金の提供だと思います。しかし、ベンチャー企業の場合、特にアーリーステージだと企業的価値を図りにくく、投資が難しいということが少なくありません。そのような時でも連携が取れるように、共同研究や開発委託を行える体制を整えています。

――2014年にスタートしていますが、既に動き出している事業はありますか。

澤田:そうですね。なかなか具体的には話せないところもあるんですが、ヘルスケアとスマートビジョンで、ベンチャー企業との連携が進んでいます。ヘルスケアでは医療機器のベンチャーと共同開発を行っており、当社から画像認識に強みを持つエンジニアを常駐で派遣しています。スマートビジョンではアメリカのセキュリティ分野のベンチャー企業と手を組んでいます。

――ベンチャー企業に常駐するというのは、珍しいですね。

澤田:開発の技術は先方にあるので。当社の製品を開発してください、というのなら、当社に呼ぶのが普通だと思いますが、今回は共創ですので、派遣が決定されました。

――派遣されたのは、担当部署のエンジニアですか。

澤田:もちろん、その通りです。

――オープンイノベーションを進めても、他部署との連携がうまく取れず、事業化が進まないという話もよく耳にします。その点、リコーの場合は新規事業本部と社内の各部署で、協力関係が築かれているように感じます。うまく連携している秘訣のようなものはあるんですか。

澤田:他の部署のメンバーには、兼任でオープンイノベーションに関わってもらっています。専任だと人は出せないということになるかもしれませんが、兼任なら柔軟な対応が可能です。兼務のメンバーは多いですよ。最初はそれほどでもなかったのですが、今はどんどん増えています。オープンイノベーション推進室だけでも今は8人います。メンバーは固定ではなく、その時の状況に応じて変わっています。

 

■新規事業への渇望感が、組織だった動きを可能にする。



――お話をお伺いしていると、とてもスムーズにオープンイノベーションが進んでいるように感じられます。

澤田:そう感じていただけて、ありがたいですね。当社はもともと新規事業には積極的で、それこそ私が入社する前から、新規事業、新規事業と言っていたそうです。

――それには、何か事業に対する危機感のようなものがあったのでしょうか。

澤田:早い段階からあったと思います。当社の主力事業は複写機/複合機なんですが、成熟産業という側面があるんです。大きな成長を望めませんので、一刻も早く新たな事業の柱を作ろうとしていました。

――それにしても、動きが速い。

澤田:当社には「ファイヤー行動」というのがあって、まずアクションを起こし、その結果を見ながら修正し、さらに次のアクションをしていくという文化が根付いていることも影響しているかもしれません。

――90年代にはシリコンバレーにCVCを設立しましたね。

澤田:そうです。シリコンバレーのCVCは非常に有効だったのですが、反省点もありました。それを今回のRicoh Innovation Bridgeに活かしています。

――それは、どのようなことでしょう。

澤田:ファンドを通じての間接投資という点が、事業を進める上でネックになっていました。投資の判断が自社でできないことに不自由さがあったんです。入手できる情報も限られており、また、シリコンバレーとは物理的に遠く、行動を起こしにくいということもありました。それらの制約を取り払い、自分たちが直接投資を行う、なおかつ、お金に限らず状況に応じて人や技術を提供するのが、プログラムの最大のメリットです。

――テックアクセルファンドとの協業やすみ分けはありますか。

澤田:場合によっては協力することもありますが、テックアクセルファンドは第三者の立場で投資を判断します。対して、私たちRicoh Innovation Bridgeが見るのは、共に成長することを目指し、あくまでリコーのビジネスにとってメリットがあるかどうかです。

――会社としてかなり組織立ってオープンイノベーションに取り組んでいる印象を受けました。でも、その上で感じている課題や、ここを変えたいなどはありますか。

澤田:細かな課題はたくさんあると思いますが、むしろ、これまでの課題があって作られたのがRicoh Innovation Bridgeです。今はプログラム成功に向け、まい進するのみです。

 




若いながらも、リコーという大企業のオープンイノベーションを推進する大役を担う澤田氏。インタビューを通して実感したのは、リコーのカルチャーの中にイノベーションマインドが浸透しているということだ。その一例が、「ファイヤー行動」。まずは、アクションしてみる。そうした姿勢が次々と新しいものを創出する源泉と感じられる。オープンイノベーションを起こすためには、このような企業文化形成も重要な要素となるはずだ。

11/24に掲載する澤田氏のインタビュー後編では、特にベンチャーとの交流の仕方、信頼関係の構築方法について伺った。

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)



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