お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系生活工学共同専攻 長澤 夏子 准教授

更新日:2018/07/11
  •  オフィス環境、住環境、都市環境、教育環境などが利用者の健康に与える影響は少なくありません。環境と人間の健康との間には様々な要因が介在しますが、当研究室では、ストレスに重点を置き、ストレスと環境・状況のマルチ計測から、利用者の健康の維持・改善・増進に有益な提案を行います。当研究室の技術は、商業施設等における快適な空間づくりにも役立ちます。ストレスを分析・制御することでエンターテインメントや教育等への応用も期待されます。上記の事項に関心のある企業、建築会社、デベロッパーや商業施設、娯楽施設、公共施設など各種施設運営会社からの技術相談を歓迎します。

    【簡略図】

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    【背景】

     人間は様々な環境の中で生活しています。こうした環境には、物理的な環境・人工環境もあれば自然環境、社会・文化的な環境もあります。現代人にとっては情報環境も重要です。

     また、近年、「健康経営」や「健康住宅」という概念が注目されています。健康経営とは、従業員の健康増進を重視し、これを経営課題のひとつとして捉えた経営学的観念です。健康住宅は、従来はシックハウス症候群など環境由来の観点で議論されていましたが、最近では住人の心の健康等を含めた意味合いに代わってきています。

     このような状況から、環境による(住人、従業員、利用者等)の心身の健康改善・維持増進は、企業経営や住宅建設等においても重要な課題となってきています。

     もっとも、環境と健康との間には様々な要因が介在します。特に、日常生活の環境においては、物理的な空間の広さ・色彩・照明や事務用品・家具等の配置だけでなく、その場の状況も作用するため、客観的な分析が難しいという問題があります。

     すなわち、日常生活の環境において、環境と人の健康との関係の分析には、

    ・環境がの健康に及ぼす影響の多様性

    日常生活の環境という場(状況)での分析の困難性があります。

    【技術内容】

     本研究室では、
    ・環境が人の健康に及ぼすストレスに着目し、
    ・日常生活の環境におけるストレスと環境・状況のマルチ計測から、要因分析を行います。
     また、
    ・実際の日常生活環境の行動中の計測と実験的な計測を併用して分析を行うことで「日常生活の場(状況)」での分析を可能としています。

     日常生活の環境におけるストレスの計測には、可搬型の計測機器を使用します。これにより、日常生活と同様の動きをする被験者について計測できます。
     また、マルチ計測は、人(被験者)と環境について行うとともに、心理や状況記録を行うことで継時的に計測を行います。
     人(被験者)のストレス計測には様々な計測方法があり、それぞれ、計測方法上の制約や計測できるストレスに違いがあります。具体的には、脳波計測や発汗、心拍、唾液のストレス指標等の生理計測を行います。
     環境については、温度、湿度、照度、CO2、紫外線量等の計測を行います。

     実験的な計測は、モデル実験的なものから没入型のVR実験室を用いたものまで、様々な計測を行います。

    (生活環境における計測事例1 商業施設)
     学生を被験者として、商業空間(ショッピングモール)で買い物をしてもらい、その間のストレス反応を3指標(心拍、唾液のストレス指標、心理計測)により分析した例です。下図は心拍におけるLF/HFの推移を被験者の行動やショッピングモール内の位置の記録と合わせて示したものです。
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     休符ポイントは、休憩ベンチとは異なり、店舗のない開けた場所を示しています。休符ポイントではいずれもLF/HFが減少しています。なお、LF/HFは心拍変動のゆらぎにおける低周波成分LFと高周波成分HFの比を示しています。一般的には低周波成分LFが交感神経、高周波成分HFが副交感神経の働きと関係しており、LF/HFの低い方が低ストレス状態と言えますが、LF/HFだけでは正確なストレスの変動は計測できません。ただ、他の被験者でも同様の結果が得られており、ショッピングモールにおける休符ポイントの意義を示唆していると言えます。

     本研究では、総合的なストレス指標として、唾液アミラーゼの測定も行いました。但し、唾液アミラーゼの計測は連続的に行うことは難しく数カ所での測定に留まっています。こちらは買い物の嗜好(心理指標)に関連しており、個人差の大きな結果となりました。このことから、休符ポイントという場所の多さがストレス軽減と直結しているという単純な解釈には無理がありますが、買い物行動の中での休憩空間の意義や役割が明らかになっており、ストレス計測は、快適なショッピングセンターの設計や店舗配置、動線の設定に有用なことがわかります。また、分析結果がマルチ計測によってより深く解釈されることを示しています。

    (生活環境における計測事例2 階段デザイン)
     高齢者の安全にとって階段デザインは重要な要素です。しかし、老人を被験者として階段昇降実験をすることにはリスクが伴います。
     そこで、当大学の学生にハイヒールを履いて階段の昇降をしてもらい、特定の状況(足もとの不安定さ)において行動中のストレス反応を詳しく見ました。これにより階段デザインの違いについて比較検討が可能となりました。高齢者等を模した実験を行うことで高齢者等にも安全な住宅づくりにも役立ちます。

    (実験環境における計測事例1 高所デザイン)
     同様な精神性発汗(皮膚電位)の計測を用い、VRを使って「高所」などストレスの高くなる場所の要因検証を行いました。
     VRでは、窓周りのデザイン(窓の大きさや床との距離等)や状況(手すりの有無・形状や足もとの安定性)といった環境条件を変え、ストレス反応量を比較分析することにより、デザインや状況によるストレスの違いが明らかになりました。
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    生活環境における計測事例3 都市)
    被験者に可搬型の脳波計測システムを装着し、「都市環境」でのストレス変動(複数指標による分析)を計測した例です。歩行中はそれほど高くないストレスが、待ち時間で高くなることが読み取れます。このようにストレスが高くなる行動+場所が明らかになりました。
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    (生活環境における計測事例4 住宅)
     一般に、家庭はリラックスできる場所と捉えられがちですが、現実には(特に女性の場合)ストレスの多い環境です。計測により、リラックスについて本人の主観と生理の関連が明らかになりました。

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    化学的環境を重視した従来の「健康住宅」観念とは異なり、住人の心身の健康に着目した場合、リラックスできる落ち着ける場所をつくることが「健康住宅」には重要であることがわかります。

    技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)

     本研究室の分析技術の優位性としては以下の点が挙げられます。
    ・多様な要素を含む環境と人の健康との関係を「ストレス」を介して定性的・定量的に解析できる。
    ・生活環境での計測が可能である。
    ・複数指標の計測を併せて行うことにより、単一指標の計測では読み取れない要因を分析できる。
    ・生活環境での計測と併せ、実験環境での計測を行うことにより、精緻な解析が可能である。

    ・生活環境での計測手段や実験環境での計測条件の設定等を適切に選択して分析や実験を行うことができる。

    ・ストレスの計測に習熟した専門家により様々な機器・手法を用いたストレス計測ができる。

    ・可搬型脳波分析システムや没入型VR実験施設など高価かつ高度な計測機器を用いた計測ができる。

     下図は実験に用いた精神性発汗(皮膚電位)の計測装置です。当研究室では可搬型脳波分析システムも利用しています。
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     このような可搬的な装置を用いることで行動中のストレス反応の計測が可能となります。また、当大学の没入型
    VR実験室により、より広汎にストレスと環境の検証が可能です。
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    【連携企業のイメージ】
    例えば下記の企業と連携可能です。
    1)健康経営を重視する企業
    2)建築会社、デベロッパー等、健康住宅の生産を目指す企業
    3)商業施設、娯楽施設、公共施設など各種施設運営会社や公共団体
    4)介護サービス、学校等の特定の利用者(老人や子ども等)を対象とする事業を行っている企業や団体
    5)空間によるストレスのコントロールなど、当研究の技術の活用に意欲がある企業。


    【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)
     当研究室の技術によれば、実空間での環境における行動中の心理・生理が明らかになり、環境によるストレスの現れ方や、その要因がわかり、ストレス軽減やリラックスする環境づくりに展開できます。このため、行動や環境において、健康(ストレス)についての問題があるケースで、適切な条件を計測してストレス要件を探り、それをコントロールすることに役立ちます。このため、オフィスや工場、施設等でのストレスに起因する問題点の検討に活用できます。
     住宅、オフィス、商業施設、公共空間、都市空間、学校や子どものための空間その他の設計や施設の改善や改善計画の検討にも活用できます。
     他にも様々な用途に適用可能であり、多様な計測フィールド(環境と行動)の提供を期待しています。
    技術・ノウハウの活用の流れ
    本技術の活用に興味がある方はお気軽にお問合せください。

    【専門用語の解説】

    (ストレス)
     生活上のプレッシャーおよび、それを感じたときの感覚です。ストレスの概念は一般に、1930年代のハンス・セリエの研究に起源を持つとされ、の文脈では、精神的なものだけでなく、寒さ熱さなど生体的なストレスも含みます。ストレスは健康に影響を与えるものであり、様々なストレス管理の方法があります。

本掲載に関する責任者(オープンイノベーター)

オープンイノベーション推進ポータル

厳しい国際競争に勝ち抜くため、企業の研究開発戦略の手法として、産学連携・産産連携など外部の技術/ノウハウを有効に活用する「オープンイノベーション」が注目されています。 斬新な製品開発、付加価値の高い要素技術の確立、技術課題の効率的な解決、研究開発コスト削減など、オープンイノベーションは大きなメリットをもたらします。

ミッション

企業が外部機関を有効に活用する「オープンイノベーション戦略」を推進するための情報プラットフォームとなるべく立ち上げました。以下の指針に基づき、大学・企業の技術/ノウハウ/開放特許を結集

企業情報

企業名
株式会社キャンパスクリエイト
事業内容
「お客様の課題解決をオープンイノベーションで実践する広域TLO」をスローガンに様々なサービスを提供しています。
・産学官連携
・国際連携
・包括コンサルティング
・人材ソリューション
・シニア技術者の技術支援サービス
・ビジネスパートナー募集

他にも産業振興・地域振興のプロジェクト運営、自社での研究開発・製造・販売など様々な業務を行っています。
事業スキーム
当社のサービスは大きく2つの事業スキームから成り立っています。
・技術移転マネジメント事業
企業様のニーズに応じた産学連携のコーディネートを行っています。また、大学の技術を知的財産化し企業様へライセンスする活動や、大学発ベンチャーの立上げ支援などを行っています。

・ソリューション事業
企業様のニーズに応じて、マーケティング支援や公的支援事業の活用支援、人材支援など様々なソリューションを提供しています。

・広域的な連携体制
国立大学法人電気通信大学を活動拠点としつつ、様々な大学・企業と提携しています。
当社は国立大学法人電気通信大学から技術移転に関する業務委託を受け、発明の権利化を共同で行いながら、技術移転活動を行っています。

・オープンイノベーション推進ポータル
「オープンイノベーション推進ポータル」を運営し、様々な大学のシーズ、大学発ベンチャーの製品、産学連携による研究開発成果など、先端技術をご紹介しています。
 マッチングイベントなどの企画運営
 産学連携や地域の振興に繋がるイベントを企画しています。
 産業振興・地域振興
所在地
〒182-8585 東京都調布市調布ヶ丘1-5-1 国立大学法人電気通信大学産学官連携センター内
設立年月日
1999
外資区分
非外資
代表者名
安田 耕平
企業URL
https://www.campuscreate.com/
従業員数
10人〜100人未満
平均年齢
38
資本金
3千万円〜1億円未満
上場区分
非上場
株主
電気通信大学のOB、教職員を中心とした個人出資
主要顧客
メーカーの研究開発部門、新規事業部門 等

メンバー