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【インタビュー】日本を代表するエンジニアリング企業、日揮が取り組むオープンイノベーションとは?

日本を代表するエンジニアリング企業、日揮。1928年の設立以来、石油、天然ガス、石油化学などのオイル&ガス分野を中心に、発電、原子力、非鉄金属などのエネルギーインフラ分野のプラント建設を主たる事業とする。現在は、医薬品工場や病院、空港の建設から運営まで、都市インフラの構築などへも事業領域を広げている。技術イノベーション本部長として、オープンイノベーションを推進する同社の“CTO”保田隆氏に話を聞いた。

▲保田 隆 

常務執行役員 インフラ統括本部 本部長代行/技術イノベーション本部 本部長

石油・天然ガスプラントなどの基本設計、プロセスエンジニアを長く務め、アメリカ、カナダ、ロンドンなどへの駐在経験も。2009年、技術開発本部長となり、社外とのコラボレーションを通してビジネスを意識した技術開発を推進する組織に改革。2016年9月に現職。現在、正式な肩書ではないが、同社の実質的なCTOとして、社内外と連携しながら技術に立脚した新規ビジネス創出を図る。


エンジニアリング企業は、もともとオープンな風土

――日揮のオープンイノベーションに対する取り組みについて教えてください。

 オープンイノベーション室という部門が正式に組織上つくられたのは、2016年9月のことです。でも、あらためて言うまでもなく、私たちエンジニアリング企業は、生来、オープンイノベーションを推進する企業だと言えます。

 エンジニアリング企業は、いわゆる「ものづくり」の会社ではありません。社外のさまざまな企業の技術を結集し、そこに私たちが持つ技術的なノウハウ・知見を加える。それら技術をインテグレートして、顧客のニーズに最適化したプラントを建設したり、新しいビジネスとして展開したりしています。ですから、技術を持つほかの企業と一緒に開発を進めることに対して、まったくハードルはありません。

 ただ、これまでは共同開発とは言いながらも、実際は多くの技術を自社に持ち込んで研究開発してきた経緯があります。しかし現在は、より開発スピードが求められるようになり、自社の研究開発体制だけでは追いつかなくなってきた。そこでわれわれも、より明確にオープンイノベーションを意識して新規ビジネスを創出できるよう、組織を整えたところです。


得意分野を軸にしながら、社会貢献を果たしたい

――プラント建設に限らず、事業領域を広げてこられています。今後、パートナー企業とはどの方面へビジネスを広げていきたいとお考えですか。

 私たちは、石油、天然ガス、石油化学プラントなどのオイル&ガス分野をコアビジネスにしてきました。しかし今後は、それとは別にもう一つビジネスの柱を確立したいと考えています。日本の技術には優れたものが多いので、それを海外に展開して、世界の社会課題解決につなげていきたいという思いがあります。

 方向性のキーワードはいくつかあるのですが、大きなものとしては「環境」が挙げられます。これには、太陽光・太陽熱、風力、地熱といった再生可能エネルギーや、天然ガス発電やバイオマス・アンモニア混焼による石炭火力発電など環境負荷を緩和した火力発電など、環境にやさしいエネルギー・電力システムという意味があります。環境汚染を防いだり浄化したりする、いわゆる環境技術も含まれます。

 また、現在当社が力を入れている領域としては、「医療」もキーワードの一つです。これまでも医薬品工場や病院の建設はしてきましたが、現在は、病院の建設から運営までを担うビジネスも始めています。加えて「農業」や「都市開発」といった、社会インフラ分野への事業投資も拡大しつつあります。

 ――具体的なプロジェクトとしてはどのようなものがありますか。

 「環境」の分野で一つ例を挙げるとすると、炭酸ガスへの取り組みがあります。天然ガスを処理してLNG(液化天然ガス)をつくる際に、CO2が大量に発生するのですが、それを回収して地中に埋めるCCS(Carbon Capture and Storage)のテクノロジーを、ドイツの化学企業とともに開発しました。苫小牧でもCCSの実証プラントを建設し、CO2を実際に埋め始めています。

 「医療」分野では、東京都松沢病院やカンボジアにも病院を建設し、PFI(Private Finance Initiative)方式での運営を行なっています。社会インフラの例としては、シンガポールのチャンギ空港をパートナーに、空港の建設・施設の維持管理・運営に参入しようとしています。

海外でのビジネス実績、現地とのパイプが強み

――eiiconを通じてどのようなパートナー企業と組むことをイメージしていますか。

 これまでお話しした分野に関わる何らかの面白い技術を持っている、けれども海外展開のノウハウやルートがない、そのような企業とはよい形で組めるのではないかというイメージを持っています。

 具体的な事例として、現在当社では新しい“紙”をつくる技術を持つ企業とパートナーシップを組んでいます。その企業は、石灰石と少しのプラスチック原料を混ぜ合わせて、濡れても破れない紙をつくる技術を開発しました。製造の過程で水もパルプも使わない、環境技術の一つとして捉えられます。その企業が中東でビジネス展開していくにあたり、当社のこれまでも経験から培った進出先国とのパイプやノウハウを共有しながら、一緒にビジネス展開を考えています。

 研究により原理は開発した、けれどもその先のビジネスの拡大において課題を持っている企業に対して、プロセス開発やプラント建設という技術面と、ビジネス面でのスケール拡大を一緒に考えていくようなパートナーシップの形を想定しています。

――IT系企業がパートナーになる可能性はありますか。

 当社では、オープンイノベーション室とは別に、2016年にビッグデータソリューション室という組織が立ち上がっています。われわれが建設するプラントをより効率的に運営・維持管理するという視点だけではなく、プロセス解析的なところも含めて、サービス事業として、ビッグデータの解析技術を取り入れ始めました。

 機械学習・人工知能が行うプロセス解析は統計技術によるものなので、プロセスにおけるある異常予兆と実際の異常現象の間に「何らかの関連性があること」が分かったとしても、それがなぜつながっているのかを「原理的には」説明してくれません。そこの部分を、われわれのプロセスに対する知見で埋めて、ロジカルに因果関係を解明することができます。

 その意味で、メーカーの製造工程で工場の見える化やビッグデータ解析を提供しているようなIT企業との連携も考えられると思っています。実際、IT系のベンチャー企業と組んで、データクレンジングの事業化に向けてビジネス開発を進めていたりもします。

 グローバル規模の企業から、従業員数名のベンチャーまで、会社規模にかかわらず、尖った技術を持つ企業とは積極的にパートナーシップを結んでいきたいと考えています。