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【NTT Com×メトロウェザー】4年続く共創プロジェクト、大企業・スタートアップの関係構築の”肝”とは?――MIZUHO Startup WEEKセッションレポート

【NTT Com×メトロウェザー】4年続く共創プロジェクト、大企業・スタートアップの関係構築の”肝”とは?――MIZUHO Startup WEEKセッションレポート

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近年、多くの企業がオープンイノベーションに取り組んでいるが、中には「スタートアップとうまく連携できない」「そもそも着手できない」と課題を感じている企業も少なくないだろう。東京・丸の内で開催された「MIZUHO Startup WEEK」(10/23〜31)では、そのような企業に向けたオープンイノベーション推進セッションが行われた。――セッションのタイトルは、「共創事例から学ぶオープンイノベーションの在り方 ~出会いから4年、NTTコミュニケーションズxメトロウェザーの実態に迫る~」だ。

登壇したのは、アクセラレータープログラムをきっかけに出会い、4年にわたってオープンイノベーションに取り組み続けているNTTコミュニケーションズとメトロウェザー、そして、両者が取り組む共創プロジェクトをサポートしてきたeiiconだ。

みずほ銀行 イノベーション企業支援部 調査役 高瀬弘一氏をモデレーターに迎え、NTTコミュニケーションズがオープンイノベーションに着手した経緯や、メトロウェザーとの共創プロジェクトの現場を語った様子をレポートしていく。

NTT Comが保有する鉄塔というアセットを使った共創プロジェクト

セッションの冒頭では各社の取り組みが紹介され、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)とメトロウェザーのオープンイノベーションの取り組みについて説明があった。

オープンイノベーションのきっかけになったのは、NTT Comが実施している『ExTorch(エクストーチ) Open Innovation Program』だ。同プログラムのテーマの一つである「山中の無線中継所や鉄塔を活用した新たなサービス」に応募し、京都大学発スタートアップ・メトロウェザーが採択された。同社は、ドローンや空飛ぶクルマが安全・安心に運航・離発着するための必須情報である突風や乱気流をリアルタイムに可視化する3次元風計測装置(ドップラーライダー)を開発している。

NTT Comの「鉄塔というアセットを使ってほしい」というニーズに対し、メトロウェザーの「ドップラーライダーを高所に置きたい」というニーズがマッチしてオープンイノベーションがスタート。それ以来、4年にわたって共創を続け、長崎県五島市で実施されたドローンの配送実験では、ドップラーライダーによって観測した風況を可視化するなど成果をあげている。

▲メトロウェザーの独自の研究開発によって生み出されたドップラーライダー「Wind Guardian」。(画像出典:メトロウェザーHP

オープンイノベーション実践の手法とは?アクセラレータープログラムと常時募集で比べたメリット・デメリット

セッションの最初のテーマになったのは「大企業がアクセラレータープログラムを行う意義」について。これまで数多くのアクセラレータープログラムをサポートしてきたeiicon曽田氏から、改めてアクセラレーターがどのようなものなのか説明があった。アクセラレータープログラムとは、数あるオープンイノベーションの手法の一つで、企業が共創パートナーを見つけるプログラムのこと。1〜2ヶ月程度の募集期間を設け、書類選考や面談選考を経て共創パートナーを選び、実際にプロジェクトを走らせていく。

一般的には募集期間・選考・インキュベーション、そして社内審議のタイミング等、各工程の期限を区切って実施するため、事前に社内にも周知・調整がしやすくなる、各工程ごとに社内外にPRしやすい山場ができる、といったメリットがあり、近年多くの企業が導入し始めている。一方、募集期間を設けることで、タイミングが合わない企業との出会いの機会損失が発生してしまう。そのため、あえて募集期間を設けず、常に共創パートナーを募集している企業もあるという。

ただし、常時共創パートナーを募集するにもデメリットはある。いつ来るかわからない提案に対し、適切な部署を繋ぎ、適切な予算を用意するには高度なスキルや知見、社内との柔軟なコネクションや立ち回りが求められるのだ。そのため、常時共創パートナーを募集するのはオープンイノベーションに慣れた玄人向けの手法といえるだろう。

▲株式会社eiicon Enterprise事業本部 IncubationSales事業部Account Executive 曽田将弘氏

構想から約半年でプログラムの応募開始。NTT Comがアクセラに乗り出した経緯とは

次にテーマに上がったのは「NTT Comがアクセラレータープログラムを始めた理由」について。『ExTorch Open Innovation Program』(以下、ExTorch)を担当する斉藤久美子氏がその経緯について語った。

ExTorch(エクストーチ)が始まったのは2019年のこと。当時は既に名だたる大企業がアクセラレータープログラムを始めており、斉藤氏は「自分たちはやらなくて大丈夫だろうか」という焦りがあったという。プログラムの構想を考え企画書を作り、社内でメンバーを集め始め、約半年の準備期間を経て社外に向けてアクセラレータープログラムの実施をリリースした。

▲NTTコミュニケーションズ株式会社 イノベーションセンター プロデュース部門 斉藤久美子 氏

無事にアクセラレータープログラムを立ち上げ、共創パートナーの募集を開始したNTT Comだが、本当に応募が集まるかは不安もあったという。そこで、メトロウェザーへExTorchに応募した理由を聞くと「直感的に何かを生み出せると思った」と、同社代表の古本氏は話す。

メトロウェザーは光を使って風を観測しているため、見晴らしのいい場所へドップラーライダーを設置することが必要となる。アクセラレータープログラムのテーマにあった「鉄塔」は主に高層ビルの屋上にあり、まさにメトロウェザーが求めていた条件に合致。テーマを見て、直感が働くかどうかが応募のポイントになると古本氏は語った。

▲メトロウェザー株式会社 代表取締役CEO 古本淳一 氏

「ビジョンの共有」と「コミュニケーション」こそが、共創の土台であり”肝”に

次のテーマは「共創をスムーズに進める方法」。最初は他人行儀だった両者の距離をどのように詰めていったのだろうか?――NTT Comの松石紘輝氏は次のように語る。

距離が縮まるきっかけとなったのは、知的財産権について話し合った時のこと。意見に相違があったからこそ、本音をぶつけあうことができ、一気に関係性が良くなったと言う。NTT Comとしても「スタートアップはこのように考えているのだな」ということを把握でき、関係性を構築しやすくなったと松石氏は話す。

▲NTTコミュニケーションズ株式会社 イノベーションセンター プロデュース部門 松石紘輝 氏

一方、古本氏は、4年にわたって関係性を続けることができた要因は「コミュニケーションの量」だという。これまで、何があっても欠かさずにNTT Comとの定例ミーティングを毎週実施し、コミュニケーションを密にしてきた。だからこそ、食い違いをすぐに修正し、一つのチームとして機能するまでになったと話す。

また、出会いから現在に至るまでの4年間にはNTT Com側のメンバーも変更もあったという。それでも共創プロジェクトを継続することができた理由とは何だろうか。斉藤氏によれば、4年の間にメンバーが変わるだけでなく、共創プロジェクトの責任者が変わることも2度あった。大手企業には付き物の人事異動ではあるが、「申し訳ないと思っていた」と語りながらも、引き継ぎを丁寧に行い、目指しているビジョンだけはブレないように意識してきたと話した。「どのようにビジョンを実現するかのプロセスは変わっても、ビジョンだけは常にメトロウェザーさんと共有してきた。それこそが関係性を構築してきた理由だ」と話す。

第三者の視点で両者の関係を見てきた曽田氏も、4年もプロジェクトが継続している理由について「しっかりと両者の強みを活かして共創をしているから」と語る。仮に、NTT Comがメトロウェザーに鉄塔を貸し出しただけではオープンイノベーションとはいえない。プロジェクトのビジョンをしっかりと共有し、サービスとして成立するためにお互いの強みを活かしてきたからこそ、今があるという。「データを収集するためのハードウェアをメトロウェザーが、収集したデータを解析するためのソフトウェアはNTT Comが、と両社の強みを発揮したからこそいい関係が築けている」と、曽田氏は続けた。

その発言に対し、松石氏は単なる鉄塔の貸出にならないよう、NTT Comとしても社内で取り組みを行ってきたと話す。九州や関西の支社を回り、「現在、こんなプロジェクトを行っているのですが、提案できるお客さんはいませんか?」とキャラバンをしてきた。営業面でも社内のリソースを最大限活用できないか工夫してきたと明かした。

「うまくいかなくても粘って続けること」オープンイノベーションに欠かせないマインドセット

セッションの最後には、視聴者に対してそれぞれの立場からメッセージを語った。古本氏が語ったのは「続けることの重要性」。オープンイノベーションはうまくいかないことの方が多いが、それでも粘って続けることが成功の鍵だと投げかけた。

また、NTT Comのプロジェクトリーダーの黒澤氏が言及したのは「ビジョンの重要性」。まずは自分たちが実現したい世界観、ゴールを定め、継続しながらブラッシュアップしていかなければならないと話した。途中でメンバーが変わることがあっても、ビジョンを共有し自分事として取り組んでいくことが何よりも大事だと言う。

▲NTTコミュニケーションズ株式会社 イノベーションセンター プロデュース部門 担当課長 黒澤崇 氏

最後に、「NTT Comさんのようにオープンイノベーションに積極的な会社を一社でも増やしていきたい」と語ったのはeiicon曽田氏。最初はボトムアップでアクセラレータープログラムを始めたNTT Comだが、社長をはじめとする経営陣も率先してオープンイノベーションに協力して取り組んでいるという。そのように会社をあげてオープンイノベーションに取り組む企業を増やしていくために、全力でサポートしていきたいと曽田氏は語り、セッションは幕を閉じた。

※関連記事:

ドローン社会に先駆けて、空の交通インフラを創る―NTT Com×メトロウェザーによる共創プロジェクト

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取材後記

大企業とスタートアップが4年に渡って関係を強化しながらプロジェクトを続けているのは、多くの企業が見習うべき事例と言えるだろう。ビジョンを共有し、密にコミュニケーションしながらプロジェクトを進めるのはビジネスの基本と言えるかもしれないが、立場の違う大企業とスタートアップとなるとそれが難しい。

しかし、NTT Comも最初からスムーズにメトロウェザーとの距離を縮められたわけではないことにも注目してほしい。どんな企業も、試行錯誤しながらスタートアップとの関わりを深めてきたのだ。オープンイノベーションに慣れていない企業にとっては、最初は戸惑うことも多いかもしれないだろうが、メトロウェザー・古本氏が言うように「粘り続けること」の重要性を忘れずにいてほしい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:鈴木光平)

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