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「環境事業」はオープンイノベーションで最短距離で実現できるのか?広島県内企業4社の新たな挑戦――HIROSHIMA GREEN OCEAN BUSINESS BUILDデモデイレポート<前編>

「環境事業」はオープンイノベーションで最短距離で実現できるのか?広島県内企業4社の新たな挑戦――HIROSHIMA GREEN OCEAN BUSINESS BUILDデモデイレポート<前編>

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広島県は、カーボンニュートラルやSDGsの達成に向けた世界的な潮流をチャンスと捉え、2050年までに「環境・エネルギー」分野を県内の主要産業の一つとすることを目指している。そうした中で、2023年度はオープンイノベーションを活用した新規事業創出のためのプログラム『HIROSHIMA GREEN OCEAN BUSINESS BUILD』(以下、ビジネスビルド)を開催した。

ビジネスビルドでは、広島県内のホスト企業4社が、環境・エネルギーをテーマに新規事業のアイデアを全国のスタートアップなどから募集。書類選考や面談、審査会を経て、ホスト企業がそれぞれパートナー企業を1社採択し、共創プロジェクトを組成した。それが、以下の4チームだ。

●株式会社石﨑ホールディングス(ホスト企業)×luv waves of materials株式会社(パートナー

●クニヒロ株式会社(ホスト企業)×株式会社プロジェニサイトジャパン(パートナー企業)

企業)

●三共ポリエチレン株式会社(ホスト企業)×株式会社Aladdin(パートナー企業)

●株式会社八城工業(ホスト企業)×株式会社アブソラボ(パートナー企業)

▲2023年10月に行われた『HIROSHIMA GREEN OCEAN BUSINESS BUILD』の審査会。この場で4つの共創チームが組成された。(参考記事: https://tomoruba.eiicon.net/articles/4375

その後、約4カ月にわたり社会実装に向けたインキュベーション・実証実験を進め、2024年2月27日に広島コンベンションホールにて、成果発表会『HIROSHIMA GREEN OCEAN BUSINESS BUILD DEMO DAY』(以下、デモデイ)が行われた。デモデイには、環境・エネルギー分野や新規事業創出に関心を持つ県内企業をはじめ、産学官の多様なプレイヤーが集結した。

――そこで、TOMORUBAでは『HIROSHIMA GREEN OCEAN BUSINESS BUILD DEMO DAY』の模様を前後編にわたって紹介していく。前編となる本記事は、DEMO DAYの中で実施された2つのトークセッションの模様をお届けする。

<トークセッション>

①『環境』×『オープンイノベーション』最短距離で実現する新規事業

②既存事業のシナジーを生む広島県内企業の環境・エネルギー分野での新たな挑戦

【トークセッション①】 「『環境』×『オープンイノベーション』最短距離で実現する新規事業」

DEMO DAYの冒頭では、開会挨拶としてひろしま環境ビジネス推進協議会 会長の早田氏が登壇。「ホスト企業やパートナー企業の生の声を聞き、新規事業を考える際の参考にしてほしい。本日が新しい挑戦や出会いのきっかけになることを祈念している」と述べた。この挨拶に続いて、「『環境』×『オープンイノベーション』最短距離で実現する新規事業」と題したトークセッションが行われた。

<スピーカー>

・岩田 紘宜氏(東京大学・技術経営戦略学専攻 博士課程/未来ビジョン研究センター リサーチ・アシスタント)

・村田 宗一郎氏(eiicon 執行役員)

<モデレーター>

・早田 吉伸氏(ひろしま環境ビジネス推進協議会 会長)

▲ひろしま環境ビジネス推進協議会 会長 早田 吉伸氏

冒頭で早田氏は、イノベーションという言葉について、「イノベーションは大企業や東京のベンチャー企業の専売特許ではない」と前置きし、その上で「社会課題を起点に考えると、実は身近なものだと気付くはず。1社で課題解決をするのは大きな困難を伴うが、いろんなプレイヤーを巻き込むオープンイノベーションという手法を用いれば、地方の中小企業もイノベーションを起こせる可能性は十分にある」と説明した。さらに、「大企業の場合は社内調整に時間がかかることが多く、トップダウンで動いていける中小企業が有利になるケースは大いにある」とオーディエンスに向けて強調した。

▲左から、岩田 紘宜氏、村田 宗一郎

続いて岩田氏は、「環境分野のビジネスは、エネルギーに限らず建設・モビリティ・物流・交通・金融・農業・漁業など、あらゆる産業と接点があり、様々な産業分野の企業も自社事業として取り組むことができる。イノベーションの創出に向けて、最先端技術の活用だけでなく、マーケットインの発想で市場課題を捉えることが欠かせない。気候変動や環境関連の市場は年々拡大しており機会が広がっている」と紹介した。

環境分野における地域課題をオープンイノベーションで解決するためには、どのような進め方が最適なのだろうか。この問いに対して、村田氏は「地域課題を解決し、オープンイノベーションを通して産業を発展させるためには、地域の方々が中心であるべき。実際に、自治体や地域の支援機関(金融機関や商工会など)が手を組みながら、課題解決に取り組むケースが日本国内でも徐々に増えてきている。地域のみなさんが、横のつながりを活かしながらエコシステムを作るのが、最適な進め方の一つだ」と回答した。

さいごに岩田氏は、「環境事業は規制の多い分野で調整が必要になり、都道府県等の自治体との連携が欠かせない。その意味で、広島県は事業創出に意欲的に取り組んでおり、イノベーションを起こすには最適な場所の一つ」との見解を示し、イントロダクションを締めくくった。

【トークセッション②】 「既存事業のシナジーを生む広島県内企業の環境・エネルギー分野での新たな挑戦」

続いて、「既存事業のシナジーを生む広島県内企業の環境・エネルギー分野での新たな挑戦」と題したトークセッションの模様を紹介する。このセッションに登壇したのは、『HIROSHIMA GREEN OCEAN BUSINESS BUILD』のホスト企業(=広島県内企業)4社の社長だ。オープンイノベーションに取り組み、新たな事業を生み出そうと挑戦する4名のリアルな声をお届けする。

<登壇者> 

・石﨑 泰次郎氏(株式会社石﨑ホールディングス 代表取締役社長)

・新谷 真寿美氏(クニヒロ株式会社 代表取締役社長)

・田中 寛大氏(三共ポリエチレン株式会社 代表取締役社長)

・八城 祐氏(株式会社八城工業 代表取締役社長)

<モデレーター>

・梶原 恭平氏(広島経済レポート 取締役編集次長)

●戸惑いを覚えながらも前進を続けた4名の代表者。共創で得られるものは多い

はじめに、「これまでの新規事業や環境事業に関する取り組みは?また、なぜ今回のプログラムに参加しようと思ったか」というテーマが掲げられた。3代目の社長として家業を継いだ八城氏は、「時代は急速に変化しているのに、当社は何も変わらない。どうにかしなければという危機感はあったが、どうしても目の前のことに必死で、いつも後回しになってしまっていた。」と語った。新谷氏はそれに同意し、「当社も将来を見据えて新規開発事業室を新設していたが、なかなか思うように進まないところもあった」と明かした。

石﨑氏は「新規事業をやらなければ」という思いもあったが、環境事業には不安があったという。それでも事業としての可能性と優位性を感じ、「ワクワク感を持った」と伝えた。田中氏はプラスチックを扱う事業ということもあり、環境事業には興味があったと話し、「良い機会だと捉え、思い切ってチャレンジすることにした」と当時を振り返った。

▲三共ポリエチレン株式会社 代表取締役社長 田中 寛大氏

新規事業創出プログラムに参加するにあたっての社内調整について、八城氏は、「(社長の)私には直接言ってくることはなかったが、何をやろうとしているのか、いつまでにいくらの収入が得られるのか、懸念する声が一部で上がっていた。新たなことを始める難しさや壁を実感した」と赤裸々に語った。

新谷氏も社内で同様のことがあったと言い、「どうしても短期の結果を求めてしまう」と、成果が出るまでに時間がかかる環境領域の新規事業ならではの困難さを伝えた。それでも、両者は10年先20年先を見据えながら、社内の協力者を増やしながら前進していると熱く語った。

▲クニヒロ株式会社 代表取締役社長 新谷 真寿美氏

●新規事業で求められるスピード感。受発注の関係では、共創は成り立たない

今回のプログラムは4カ月と期間が限られていた。このことについて、田中氏は「普段だったら1時間かけて行う議論を、オンラインで30分で完結させるようなスピード感だった。着いて行くことは大変だったが、今回の4か月間の実証も、社内だけだと1年近くかかっていたと思う。新規事業とはこういうものなのだと、体感することができた」と話した。それに対し、石﨑氏も「すごいスピード感だった」と同意し、「最初はまったくついていけなかった。どうしても出来る範囲のことだけで済まそうとしていた。限界を突破していく感覚に、最後のほうでようやく慣れてきた」と感想を述べた。

▲株式会社石﨑ホールディングス 代表取締役社長 石﨑 泰次郎氏

共創を行うことについて、八城氏は「これまでずっと受注生産のスタイルが当たり前だった。今回も、私たちがこれまでずっと行っていた仕事の仕方を続けてしまい、(パートナー企業の)アブソラボさんにグイグイと引っ張ってもらうばかりだったと思う。パートナーとの関係を縦のラインで考えるクセが抜けておらず、共創というよりも、相手が言うことを形にするという「受発注」の関係になりかけていたと感じる。しかし、それではいけないと気付いた。本当の意味で共創になったのが、最後の1カ月かもしれない」と振り返った。

▲株式会社八城工業 代表取締役社長 八城 祐氏

今後の展望について新谷氏は、「プログラムは今日で一つの区切りとなるが、共創プロジェクトはこのまま継続する。本当に価値のあるものが生み出せるかは未知数だが、牡蠣を100%消費するという夢を実現することが、業界のためにもなると信じている。改めて社内体制を整えて、ビジョンを達成するまで5年、10年と続ける方針だ」と熱意を伝えた。

石﨑氏、田中氏、八城氏もこれに同意。最後に「環境における新規事業は難しさがあるのも事実だが、その分、大きなチャンスがある。自社だけで課題の解決ができないことも、共創で可能にできることも多い。何より、オープンイノベーションは視野を広げてくれる。やろうか迷っているのならやったほうがいい」と登壇者から前向きなメッセージが伝えられた。

▲広島経済レポート 取締役編集次長 梶原 恭平氏

* * * *

記事の<後編>では、ホスト企業とパートナー企業による「CO-CREATION PITCH」共創ピッチにフォーカスする。4つの共創プロジェクトの具体的な中身とは?そして、審査員から高い評価を得て、「審査員賞」を獲得したのはどのチームか?――詳しく紹介していく。

(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:齊木恵太)

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  • 奥田文祥

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