スポーツをテーマとしたワールド・アクセラレーションプログラム「SPORTS TECH TOKYO」。電通社が主体となり、スクラムベンチャーズがパートナーとして仕掛けた同プログラムは、今年4月8日、東京でのキックオフ・カンファレンスからスタートを切った。

キックオフでは世界19カ国からスタートアップ104社が東京に集結。日米の企業との共創を目的に世界中からスタートアップが集まっているその構図は、まだまだ他社では類を見ないものだった。それから4ヶ月。8月20日、米サンフランシスコのオラクル・パークにて、「SPORTS TECH TOKYO」の成果発表会「World Demo Day」が開催された。

日本の大企業やアメリカのVC、数々のスタートアップなど、300名以上がオラクル・パークに来場。日本からは伊藤忠商事、ソフトバンク、ソニー・ミュージックエンタテインメント、総合商社の CBC がパートナーとして参加、オラクルパーク 3Fのピッチ会場の横には、ファイナリスト12社を含む総勢25社のスタートアップブースが設けられた。

――eiiconでは、「World Demo Day」を取材。当日の模様を紹介していく。

▲サンフランシスコ・ジャイアンツのホームスタジアムでもある「オラクル・パーク」が成果発表会の舞台となった。


世界33カ国284社の中から選ばれたファイナリスト12社

事務局によると、SPORTS TECH TOKYO プログラムへの応募は実に33カ国 284社からあったと言う。その後、1次選考を通過した 23カ国159社から、ファイナリストに選ばれたスタートアップは以下の12社だ。

1.4DReplay, Inc. 本社:サンフランシスコ、米国 代表者:Hongsu Jung

2.DataPowa Limited 本社:ロンドン、英国 代表者:Michael Flynn

3.edisn.ai 本社:バンガロール、インド  代表者:Ashok Karanth

4.Fitbiomics  本社:ニューヨーク、米国  代表者:Jonathan Scheiman

5.Misapplied Sciences, Inc.  本社:レドモンド、米国 代表者:Albert Ng

6.Mobile Media Content (3D Digital Venue) 本社:バルセロナ、スペイン代表者:Michael Marino

7.Omegawave 本社:エスポー、フィンランド 代表者:Gerard Bruen

8.Pixellot LTD  本社:テルアビブ、イスラエル 代表者:Alon Werber

9.Reely 本社:サンタモニカ、米国 代表者:Cullen Gallagher 

10.SportsCastr, LLC  本社:ニューヨーク、米国 代表者:Kevin April

11.株式会社ventus  本社:東京、日本 代表者:小林 泰 

12.WILD Technologies AI Ltd  本社:サンフランシスコ、米国 代表者:Helene Guillaume


日本のスポーツテックにポテンシャルを感じる理由とは

スクラムベンチャーズ代表 宮田拓弥氏は今の日本におけるスポーツテックについてこう話す。

「日本はまだまだスポーツテックという面ではポテンシャルを持つ。一つはプロスポーツを4つ抱えているという特異な環境だ。(サッカー、野球、バスケ、卓球) 例えば、ヨーロッパではプロスポーツはサッカーのみ。プロスポーツが4つあるという日本は、グローバルで見ても非常に珍しい。

また”選手”もポテンシャルの一つ。プロ選手の引退後のキャリアもスポーツテック環境を拡大潤すためには大きなファクターである。数十年前までは、前提として”チームがあって選手がいる”という構造だった。が、今は、SNSの圧倒的な力も手伝い、選手個人が力を持ってきている。また、選手が投資家になってきている例も多い。(デビット・ベッカムはエンジェル投資家としても有名だ。セリーナ・ウィリアムズは現役アスリートでありながらファンドを持ち、エンジェル投資をしている)」

日本のスポーツテックには可能性が眠っていると語る宮田氏だが、今回のプログラムを日本に閉じて開催しても、国内にスポーツテックスタートアップは多くないといった理由から、目的に沿わないと考えていたという。

また、eiiconから「日本におけるスポーツテック拡大のボトルネックは?」と宮田氏に質問すると、私自身の仮説として、とこう答えてくれた。「まだまだスポーツとサイエンスが融合した価値観が一般化していないのではないか。」

まだまだ「スポ根」の世界がプロの現場で残っているとしたらそれは根強いものであろう。


欧米、アジアなど各スタートアップが成果を発表

当日の登壇企業も何社かピックアップしてお伝えしよう。

 

Misapplied Sciences, Inc. 本社:レドモンド、米国 代表者:Albert Ng

https://www.misappliedsciences.com

同社は、「Parallel Reality」というサービスを展開。「同一ディスプレイを見ているのにその個人によって見えるものが異なる」と言うサービスで、個々人へ最適な映像を見せるという技術を開発している。

同じディスプレイを複数の人間が同時に見ていても、精度高くそれぞれに合わせた内容を表示できると言うのだ。スマホの位置情報・顔認識などを組み合わせれば、完全なパーソナライズ化が可能となる。共創も進んでおり、今年、年末に予定されている新国立競技場のオープン式典での実演に向けて協議中であると言う。

 

Omegawave 本社:エスポー、フィンランド 代表者:Gerard Bruen

https://www.omegawave.com/

同社は神経信号などをセンシングするウェアラブル端末を用いて、アスリートにその日最適なトレーニング負荷や運動タイプを提案するソリューションを展開。プロダクト「Omegawave Team」はウェアラブルデバイスを脳や心臓に貼り付け、心拍データや反応率などを分析し、結果をチーム・コーチに伝えるというもの。

今回、SPORTS TECH TOKYOを経て、複数のスポーツチームでの実証実験が決定している。東京オリンピックのトライアスロン日本代表(日本トライアスロン連盟)、サッカーのファジアーノ岡山、アメフトの電通キャタピラーズなどだ。


SportsCastr, LLC  本社:ニューヨーク、米国 代表者:Kevin April 

https://sportscastr.com/


同社は、スマホだけで誰でも試合の実況中継を配信できるソーシャルライブ動画プラットフォームを展開。liveストリーミングサービスだ。自身が「解説者」となることできる。同社はOTTプラットフォーム事業者(社名非公開)との実証実験が決まったという。


株式会社ventus  本社:東京、日本 代表者:小林 泰 

https://ventus-inc.com/

ファイナリスト12社中、日本のスタートアップとして唯一選ばれたのがventus。同社はトレーディングカードをデジタル化したソリューション「whooop!」を展開するスポーツテックスタートアップだ。

独自に発行されたスポーツチームやアスリートのデジタルトレーディングカードを買うことでチーム運営に参加ができるファンエンゲージメントプラットフォームを提供している。オークションによって他のファンに譲ることもでき、そのほか様々な特典もあるようだ。サービスは現在、日本と韓国で展開しており、サッカーやラグビー、自転車競技チームなどで導入されている。現在、電通との長期パートナーシップに関して(スポーツチームやエンターテインメント領域での導入、等)議論を進めている。


Fitbiomics  本社:ニューヨーク、米国  代表者:Jonathan Scheiman

https://www.fitbiomics.com/

ハーバード大学発のスタートアップFitbiomicsは、身体パフォーマンスの向上を目的に独自のDNA技術を用いてプロアスリートの腸内細菌を分析、一般消費者やアスリートの健康増進・身体パフォーマンス向上に役立つ腸内細菌を精製するバイオテック企業だ。バランスを改善する腸内細菌はサプリの形で提供している。


▼そのほかのファイナリストは下記



取材後記

2020年夏に実施される東京オリンピック・パラリンピック。開催まで1年を切った中で、スポーツ×テクノロジーに大きな注目が集まっている。SPORTS TECH TOKYOでは、その最先端テクノロジーやビジネスアイデアを見ることができた。スポーツは世界共通の文化であり、国境や言語を超えて楽しめる一大コンテンツでもある。スポーツテックの進化が、スポーツという文化・コンテンツの発展に寄与していくだろう。

なお、主催者である電通・スクラムベンチャーズからは、SPORTS TECH TOKYOは今期に限らず、来期以降も開催が計画されているというアナウンスがあった。今後の展開に注目していきたい。

(eiicon編集部)