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【TECHWAVE×eiicon】カラス被害を回避する大学発ベンチャー「クロウラボ」に迫る(技術シーズ企画①)

【TECHWAVE×eiicon】カラス被害を回避する大学発ベンチャー「クロウラボ」に迫る(技術シーズ企画①)

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イノベーターやテクノロジーにフォーカスしたニュースメディア「TECHWAVE」とeiiconによるコラボレーション企画がスタート。国内外のオープンイノベーションにまつわるトピックを紹介していきます。


【技術シーズ】……このシリーズでは、研究機関や企業内で培われたさまざまな技術および技術ライセンス事業を担う組織を発掘し紹介していく。ここで紹介する技術シーズが、さまざまな業界業種に取り入れられることを期待する。

経済的損失も大きい害獣被害

日本全国さまざまなところに出没するカラス。ゴミをあさったり、農作物を荒らしたりといった被害は常に市民を悩ませている。数百〜数千という群れを成すケースもあり、糞害などのほか、細菌をばらまくのでは?といった不安を感じる声も多い。工場などでの被害も大きく、経済的損失をどう回避できるか?注目されている。

そうした害獣としてのカラスの行動を研究し、被害対策のさまざまな事業を展開するのが栃木県宇都宮市の「CrowLab(クロウラボ)」だ。

大学発ベンチャー「CrowLab(クロウラボ)」

CrowLab(クロウラボ)は、宇都宮大学・総合研究大学院大学で17年以上カラスの研究を行ってきたが代表取締役 塚原直樹氏が、宇都宮市の支援を受け、2017年12月に創業したスタートアップ企業。

カラス研究で実績がある宇都宮大学と連携し、また、カラス研究の第一人者である宇都宮大学の杉田昭栄教授を顧問に迎え、カラス被害対策のコンサルティングや製品開発を事業として行っている。

「CrowLab(クロウラボ)」は、塚原氏のカラス研究、特にカラスの音声コミュニケーションに関する研究の中で確立しつつある技術を使って事業を展開している。

「宇都宮大学・総合研究大学院大学での17年以上のカラス研究、特にカラスの音声コミュニケーションに関する研究の中で、カラスの鳴き声を使ってカラスの行動をコントロールする技術が確立しつつあります。その研究成果を社会に還元すべく、創業いたしました」(塚原氏)。

塚原氏の研究成果は、総合研究大学院大学の知財についてはすでに「CrowLab(クロウラボ)」に移管されており、宇都宮大学の知財については「手続きが必要となる関連権利にの使用許諾については、宇都宮大学と相談させていただく予定」(塚原氏)とのこと。

カラス被害対策の2つのサービス・製品を展開

現在「CrowLab(クロウラボ)」が提供しているサービスおよび製品は2つ。

1つ目は、ゴミ置場でのゴミ荒らしを防ぐ機器「CrowController」

▲CrowLab(クロウラボ)のオフィス。奥に見える白い箱が「CrowController」

「CrowController」は、赤外線センサーでカラスを検知し、スピーカー音声を鳴らすことでカラスがその場にいられないようにするデバイス。

「このスピーカーからはカラスが危機的状況の際に発する鳴き声が再生されます。この鳴き声を聞いたカラスは不安を感じ、飛び去っていきます」(塚原氏)。

「CrowController」は、常に進化を続けている状態。「現在のバージョンでは、センサーの検知範囲が狭い、タイマーがついていないなどの課題がありますが、それらを解決した新しいバージョンを開発しているところです。

また、こうした音声にカラスが慣れるという問題がありますが、これに対し将来的に複数のスピーカーを連動させることで、カラスの音声コミュニケーションを再現することで慣れにくい装置を開発したいと考えています」(塚原氏)。

2つ目は、広範囲での追い払いを想定した「カラス追い払い音声貸出サービス」。カラス追い払にを実現する音源だけを貸し出すサービスも展開。デバイス「CrowController」の限界であるセンサーの検知できる3m以上の範囲を超えて対策をすることができるというもの。

「CrowLab(クロウラボ)」は、17年以上におよぶカラス研究で、追い払い効果を確認した音声を多数保有。それらの音源を加工することで、無数に音声を作成する技術も保有しているとのこと。

「単純にスピーカーから音声を再生するだけのため、どうしても慣れやすいという問題があります。そこで、音声を無制限に交換することができるプランにすることで慣れを解消し、効果が持続できるようにしています」(塚原氏)。

このサービスでは、カラスの反応をふまえながら、スピーカーの貸し出しに加え、スピーカーの設置位置や音量など、適切な再生方法を提案するコンサルも合わせて提供している。

その他、パートナー企業とともに、タイマーが付きや、防水・防塵仕様など、顧客のニーズに対応したデバイスの開発にも対応する。

「CrowLab(クロウラボ)」の今後

生まれたばかりのスタートアップ企業「CrowLab(クロウラボ)」にはさまざまな課題がある。

一つは、カラスの飛来状況の把握。現在、少ないリソースで顧客からのヒアリングを行っているため、正確な状況が把握できないケースも多い。

そこで、デバイスを進化させ、太陽光発電とバッテリーで動作させるバージョンを計画。IoT化することで「カラスの飛来状況の把握・音声の交換・再生方法・再生時間の変更などを遠隔で行える仕組みを作りたい」(塚原氏)と考えている。

それに加え、現在「CrowLab(クロウラボ)」では、捕まったカラスがバタバタ暴れているなど、カラスの危機的状況を再現したロボット「カラス撃退ロボ(仮)」の開発を進めている。

これは単なる動く模型ではなく、カラスが認識する紫外線を含めた構造体を準備する必要があるほか、いかに危機的状況を表現できるハードウェアにできるかが課題となっている。

「カラスの羽は単なる黒色ではなく、見る角度により青色や紫色に変化する構造色です。

これは、規則的な微細構造による分光で発色しており、再現が難しい色になります。さらに、カラスは紫外線を認識し、4原色で色を視ていることから、わずかな色の違いも識別できていると考えられます。

そこで、このカラスの優れた色覚に対応するため、実際のカラスの翼の剥製を使用し、また、再現が難しい頭や胴体部分はアルミ蒸着シートなどで隠すという工夫をしています。

さらに、羽を動かしたり、危機的状況の際の鳴き声も同時に流すことで、カラスが捕まって暴れている状況を再現するわけです」

※参考リンク:CrowLab(クロウラボ)

https://crowlab.co.jp

僕はこう思ったッス by 増田(maskin)真樹 @TechWave

最大の課題はコストと営業。音源とノウハウは蓄積されているものの、ロボットに必要となる長時間駆動できる高トルクのモーターや、IoT化に必要な電源の確保など、資金力に乏しいハードウェアスタートアップには重たい課題がある。しかしながら、技術と知財があり、工場やプラントなど、カラス被害に悩まされる事業者とのオープンイノベーションの可能性は大きいように思う。

■増田(maskin)真樹 / Editor In Chief at TechWave.jp

1990年代初頭から記者としてまた起業家として30年以上にわたりIT業界のハードウェアからソフトウェアの事業創出に関わる。シリコンバレーやEU等でのスタートアップを経験。日本ではネットエイジに所属、大手企業の新規事業創出に協力。ブログやSNS、LINEなどの誕生から普及成長までを最前線で見てきた生き字引として注目される。通信キャリアのニュースポータルの創業デスクとして数億PV事業に。世界最大IT系メディア(スペイン)の元日本編集長を経て現在に至る。

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