TOMORUBA

事業を活性化させる情報を共有する
コミュニティに参加しませんか?

AUBA
  1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 【OKI:12/3イベント開催前】AI分野の最先端を走る若手研究員たちが考える「AIが社会実装される未来」
【OKI:12/3イベント開催前】AI分野の最先端を走る若手研究員たちが考える「AIが社会実装される未来」

【OKI:12/3イベント開催前】AI分野の最先端を走る若手研究員たちが考える「AIが社会実装される未来」

  • 1794
  • 1784
2人がチェック!

全社をあげて、イノベーション創出に取り組む沖電気工業株式会社(OKI)――。グループ連結で従業員数1万7,751名にもおよぶ巨大組織でありながら、その隅々に至るまで「イノベーションを興そう」という気概に満ちている。背景にあるのは、同社が2017年度より築き上げてきたイノベーション・マネジメントシステム「Yume Pro」だ。一部の有志だけではなく、組織が一体となって新しい事業の創出に取り組む「仕組みづくり」ができている。

そんな同社が、12月3日に”イノベーション”や”ニュースタンダード”をテーマとしたオンラインイベント「OKI Innovation World 2020」を開催する。このイベントでは、OKIが実践するイノベーション戦略が紹介されるほか、共創パートナー2社によるユースケースの共有、さらに若手研究員4名によるTalk Session「若手イノベーター達が描く、未来の日常」が予定されている。


▲イベントの詳細ページはこちら▲


TOMORUBA編集部ではイベント開催に先行して、Talk Session「若手イノベーター達が描く、未来の日常」に登壇予定の若手研究員たちにインタビューを実施。この4名は、先月発表された同社の「中期経営計画2022」の中で、注力分野として位置づけられた「AIエッジ」技術を研究テーマとしている。本技術の最先端を走る若い担い手たちは、今どんなことを考え、どんな未来を描いているのか、詳しく話を聞いた。


<左→右>

■OKI イノベーション推進センター AI技術研究開発部 山本康平氏

2014年入社。AIをエッジデバイスに実装するためのモデル軽量化に取り組む。30歳。

■OKI イノベーション推進センター AI技術研究開発部 近藤愛氏

2018年入社。柔軟なサプライチェーンを実現するためのAI間自動交渉技術の開発を担当。26歳。

■OKI イノベーション推進センター センシング技術研究開発部 ファン チョンフィ氏

2015年入社。車載カメラなどから得たデータをもとに、画像解析技術の開発に携わる。32歳。

■OKI イノベーション推進センター 企画室 ロボティクス技術チーム 青池祐香氏

2010年入社。AIエッジロボット開発プロジェクトに参画後、ロボティクス技術の開発に従事。33歳。

AIに関わる4つの研究分野から、若手精鋭が集結 - AI技術の潮流とは。

――まず、それぞれの研究テーマや担当業務についてお伺いしたいです。

山本氏: 現在は、AIをエッジデバイスに実装するための技術開発に取り組んでいます。とくに注目しているのが、ディープラーニングです。ここ数年、ディープラーニングがブームになり、できることが確実に増えている一方で、ディープラーニングのモデルを動かすデバイスが、マシンスペックを要求する高価なものだという課題があります。この課題に対応するために、モデル軽量化技術を開発しています。

近藤氏: 私は国のプロジェクト(SIP:内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム)に携わっていて、特にトラック輸送業界の受発注ユースケースにおけるAIの連携や協調を研究テーマとしています。AIといえば、今はひとつの会社の中で完結するものが多いのですが、私たちが取り組んでいるのは、複数の会社にあるAIを協調させるような仕組みの構築です。具体的には、AI間の自動交渉技術というものを研究していて、これはAI同士がメッセージのやり取りを自動的に行い、合意できる結論を見つけるという技術になります。

ファン氏: 私はセンシング技術研究開発部で、さまざまなセンサーを使ったモノの見える化に取り組んでいます。光ファイバーやライダーによるセンシングも行っていますが、私のチームでは主に画像や映像データからモノやヒトを認識するセンシング技術の開発を担当しています。とくに現在は、車載カメラから周囲の状況やヒトを認識して、追跡などを行う技術開発に注力中です。今後は工場内における行動認識技術の開発にも取り組んでいく予定です。

青池氏: 私は入社後10年近く、ATMや現金処理機の組み込みソフトウェアを担当してきました。そんな中、グループ内アイデアコンテストでAIエッジロボットが大賞を受賞し、開発チームを組成するためのメンバーを募っているときに、「ロボットなら、(ロボット好きの)青池だろう」と推薦していただき、AIエッジロボットの開発チームに加わることになりました。新チームに参加した後、わずか4か月弱でAIエッジロボットの試作機を完成させ、CEATECや展示会に出展。その後、今年4月にロボティクス技術チームが設立され、今はそこに所属して、ロボット技術の開発に取り組んでいます。

――みなさん、それぞれ少しずつ専門が異なるのですね。次にお伺いしたいのが、AI分野における世界的な技術トレンドや潮流についてです。AI技術は今、どのような方向に向かっているのでしょうか。

山本氏: ディープラーニング寄りの話になりますが、ディープラーニングではデータから学習をしてモデルを構築することが一連の流れとなります。最近の傾向として、性能を引き上げるためにモデルサイズが徐々に大きくなっています。また、それに伴って学習に使用するデータの量も増えてきました。このデータとモデル双方の拡大を支えるのは、学習に用いるデバイスの性能向上も関係しています。大量のデータと大きなモデルを使えば、さらに性能を高められることが分かってきた。これが今のステージです。


――ディープラーニングの可能性が見えてきたという段階ですね。他の方の意見もお聞きしたいです。

近藤氏: これまでAIは、大学や企業の研究者の間で、「こんなことができてすごい、楽しい」という風に知的好奇心を満たす対象として扱われることもありましたが、少しずつ「社会実装しないと意味がない」というように、風潮が変わってきました。この変化の中で、研究者が頭で想像していたAIの課題と、実社会に適用した際の課題に齟齬があることに気づき始めました。今はそういう時期なのではないかと感じています。

――社会実装が意識され始めたと。

山本氏: たしかに、社会実装向けの研究は増えている印象ですね。たとえば、ディープラーニングは「ブラックボックスだ」とよく言われるのですが、それを説明するための技術や、誰でも使えるようにデバイスを低消費電力化・小型化する技術、あるいはソフトウェアをイチから作るのではなく、ある程度パッケージにして用意してくれるサービスなども出始めています。AI技術の社会実装に向けて、裾野が広がりつつあります。研究の方向としても、実社会向けのものが増加傾向にありますね。

若手研究者が考える、AIが実装された先の社会とは?

――今、みなさんの手がける技術が実装されたとき、社会はどのように変化すると思いますか。それぞれが想像する「未来図」をお聞きしたいです。

山本氏: すでに、「IoTデバイス」は増えてきていますが、さらにそれにAIチップを埋め込んだものが、少しずつ出まわり始めています。これはOKIが注力している「AIエッジ」の一つになります。過去を振り返れば、10年前にスマートフォンが誕生し、さらにその10年前にはガラケーが登場して、それぞれ約10年かけて普及しました。

今まさに、「AIエッジ」が出始めた黎明期にあたるので、今後10年間で至る所に散らばっていくと思います。そして、あらゆる計測可能なものをセンシングして、安心・安全な社会につなげる。それが当たり前の社会になるのではないでしょうか。

近藤氏: 私の研究に関連した未来の話をすると、個々の企業へのAI導入から、もう一歩踏み込んだ次のステップとして、会社間のAI連携・協調が進むと思います。

なぜかというと、人材不足やリソース不足は今後さらに深刻化して、自社だけでやり繰りするのが難しくなるからです。同じ業種の中でリソースをシェアしながら、業界全体、あるいは社会全体で効率化・最適化を目指すような、そういう流れで進んでいくと思います。


――近藤さんが取り組まれている物流業界の場合、AI連携や協調はいつ頃、実装されそうですか。実装された場合、誰が主体となって全体のシステムを運営するのでしょうか。

近藤氏: 業界全体をつなぐとなると2030年頃、それぐらい未来の話になります。運営主体は、トラック協会のような物流業界を取りまとめている団体が適しているのではないでしょうか。

――なるほど。ファンさんはいかがですか。

ファン氏: 私たちが取り組んでいる画像解析は、何かを自動化するために研究開発がなされています。たとえば、車載カメラを用いた画像解析は、自動運転技術を開発するためですし、工場内カメラを用いた画像解析は、そこで働く人たちのミスを防げるように自動で管理することを主な目的としています。

完全な自動化を実現するためには、まだまだ現場のデータが足りないなどの課題はあるものの、将来的にはいろんな分野で自動化が進むだろうと想像しています。


青池氏: 私の感じていることは、スマートフォンのような形のあるものと違って、AIは一般の人にとってイメージがつきにくいものだということです。なので、ハードウェアを伴わずに、AIそのものだけを社会で使用されるものとして流行らせることは難しいと思います。

ですから、私が取り組んでいるようなAIを積んだロボットが普及することで、AIへの理解も広がっていくのではないでしょうか。AIを搭載したロボットは、まさにOKIの注力する「AIエッジ」を具現化したものです。今、少し出始めていますが、これからさらに広がって、それが当たり前になる社会が来るのではないかと思います。


AIの社会実装に向けて、OKIの強みは可能性に溢れている。

――続いての質問ですが、AI技術を社会実装していくうえで、活かせる「OKIの強み」は、どこにあるのか。それぞれの考えをお伺いしたいです。

山本氏: 社会実装を考えるとき、まず想定すべきことが「動かす環境」です。たとえば、潮風や水滴、粉塵のある環境でも、止まらずにずっと長い間稼働させなければなりません。そうした厳しい環境下においても、安定的に稼働させられる耐久性のあるデバイスを、しっかりと作り込めることがOKIの強みです。

当社はこれまで、銀行にATMなどを提供してきた実績やノウハウを持っています。ミッションクリティカルな領域においても、安定して動くものを作ることができる点は、OKIの持つ最大の特長だと考えています。

近藤氏: 業界全体をAIで協調させるマーケットプレイスのようなものを作ることが、今携わっているプロジェクトの使命です。こうした場合、1社にリーチできても意味はなく、大手・中小含めていろんなところに協力してもらう必要があります。

OKIは長い歴史を持つ企業ですし、国の活動にも参加しています。国のプロジェクトの看板を背負って、「みんなで業界をよくするために協力していきましょう」と、さまざまな企業に提案していける。そういうポジションが、OKIならではの優れた点だと感じています。

ファン氏: OKIの強みは2つあると思っていて、1つ目はリアルな「現場のデータ」を持っていることです。具体的には、車載カメラを使って公道で車両や歩行者などの映像を収集したり、工場からの協力を得て作業者の行動データを取得したりすることができます。大学の研究者からは技術開発のための実際のデータがないという声をよく聞きますが、OKIは豊富な「現場のデータ」があります。

2つ目は、技術力です。現場に適用するための技術開発の経験がある山本さんの話に出たようにハードな環境でも耐えうるものを開発することができます。

――航空路管制卓システムやETCなど、インフラ事業も手がけている御社ならではの特長ですね。青池さんはいかがでしょうか。

青池氏: 重複してしまうのですが、私も技術力が最大の強みだと思います。とくにロボットは、色んな分野の技術・知識を使うので、総合力が問われます。

当社には、通信・画像処理・運用といった幅広い分野のプロフェッショナルもいますし、その様々な技術を組み合わせてロボットを手掛けられるのはOKIとしても大きいと思っています。AIエッジロボットを完成させる過程でも、各分野の人たちに話を聞きましたが、「みんな、こんなに詳しいんだ」と驚くことが多かったですね。

社会実装をスムーズに進めるための「カギ」とは?

――新しい技術を実社会で「使われるもの」にしていくには、さまざまな壁があろうかと思います。それらを乗り越えるために、重要だと思うキーポイントについてお聞きしたいです。

山本氏: 各業界には固有のルールがあるので、AIを実装する際、それらのルールを強く意識して、各業界の人たちに負の感情が起こらないよう配慮することが重要なポイントです。AIという未知のものに対する障壁を取り除きながら、納得感を醸成していくことが大事だと思いますね。

近藤氏: 私は物流業界に直接ヒアリングに行くことが多いのですが、行った先で「前もAIを使ったけど、ダメだったよ」と言われることがあります。お客様のおっしゃるAIは、私たちの提案しているAIとは異なる配送スケジュールを立てるようなシステムなのですが、AIという大きい括りで「ダメだ」とレッテル貼りされてしまうのです。

このようなことが続くと、AIという技術分野そのものの信頼がすり減って、後に続く私たちの提案もすべて受け入れてもらえなくなる。ですから、「どういうことが実現できるとうれしいか」を現場に足を運んで確認しながら、実現できなかった場合も、しっかりアフターフォローして改善策を示していくことが、開発者の責任だと感じています。

また、現場のデータの整備ができていない業界も多くあるので、まずはそこを整備するところからステップを踏んでいく必要がありますし、実際に現場にちゃんと活かせる形を考えてデータ収集をしていくことも重要だと思っています。


ファン氏: スピード感を持って取り組むことと、現場のフィードバックを取り入れることがキーポイントだと思います。スピード感については、私の取り組む画像解析の領域に競合が多いので、スピーディに動く必要があるからです。現場のフィードバックに関しては、やはり現場で運用するものなので、フィードバックをもとに改良していく必要があります。

たとえば、工場内作業者の行動認識システムを構築し、現場で運用すると、最初は誤認識が数多く発生します。それらのフィードバックを聞きながら、こまめに改良を続けていくことが、社会実装を進めるうえで大事なポイントです。

青池氏: 開発者は、ついつい自分の作りたいものを作りがちです。そうではなくて、お客様の真の困りごとを見極めて、それに役立つかたちでロボットやAIがアシストする。目的を見失わないことが、もっとも大事だと思いますね。

目的を見失わないためには、お客様のいる現場に足を運んで、現場で試してみて、どういう形で役立てるのかを、常に考え続ける必要があると思います。

――最後に、12月3日に開催される「OKI Innovation World 2020」に向けて、注目してほしいポイントなどをお聞かせください。

近藤氏: イベント全体で見ると、役職のある人たちの登壇が多いのですが、実はOKIには若い人もいて、それぞれ考えていることがあるということが、このセッションを通して伝わればいいと思っています。大企業のイベントで、私たちのような世代の視点が共有される機会はそう多くないと思うので、ぜひご期待ください。

青池氏: OKIがイノベーションをテーマとしたイベントを開催するのは、今回が初めてです。なので、OKIが若手世代も一丸となってイノベーション創出に向けて注力している点に、ぜひ注目してほしいですね。


取材後記

インタビューの中でも触れられたが、大企業主催のイベントで、35歳以下の若手研究者が登壇するセッションは非常に珍しい。次世代を担う人たちが、何を考えてどんな研究に情熱を注いでいるのか。それが垣間見られるイベントとなっている。興味のある方は参加してみてはどうだろうか。「OKI Innovation World 2020」は、12月3日(木)14時スタート。オンラインなので、どこからでも視聴することが可能だ。


▲イベントの詳細ページ・申込はこちら▲

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント2件