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創業100年以上の老舗企業、森永製菓の“泥臭い”イノベーションの「3つの処方箋」とは?<後編>

創業100年以上の老舗企業、森永製菓の“泥臭い”イノベーションの「3つの処方箋」とは?<後編>

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様々なメディアで発信される、オープンイノベーションの成功事例。インタビュー記事やイベントレポートを見ていると、その華々しさに「うちの会社では、真似できないな」と感じる方も多いのではないだろうか。「あの会社にはスーパーマンがいるからできたのだろう」と。アクセラレータープログラムなどスタートアップとの協業が順調な森永製菓も、そのひとつかもしれない。

しかし話を聞いてみると、意外なことに「最初は何をすればいいのかも、分かりませんでした」という。そこからいかに、変貌を遂げていったのだろうか。意外に泥臭い、彼らの模索の日々とは――。昨日公開した<前編>では、戸惑いながらも新規事業に挑戦していこうというメンバーたちのマインドセットの仕方を中心にお伺いした。本日公開の<後編>では、森永製菓が生み出したイノベーションの具体的な成果について、eiicon founderである中村亜由子、eiicon lab編集長である眞田幸剛が、新領域創造事業部の大橋氏、金丸氏、渡辺氏の3名にお話を伺った。

既存事業部門を「敵」でなく「味方」にするために意識した、現場への”泥臭い”対応

eiicon・中村:アイデアソンから部門の意識は大きく変わったのだと思います。その後、アクセラレータープログラムで様々なイノベーションが生まれる中、部門を代表する成果物は?

大橋:アクセラレータープログラムとは別の動きですが、渡辺が手掛けている「おかしプリント」は、ベンチャー企業との協業で成果を出していますね。

▲おかしプリント https://okashiprint.com/

渡辺:森永ではこれまで自前主義が当たり前で、外部との協業経験はほとんどありませんでした。しかしアクセラレータープログラムを通してベンチャーと一緒に事業を創造するプロセスを学び、「こうして外部の企業と事業創造すればよかったんだ」と目から鱗が落ちる想いでした。そこで、私も実践してみようと思ったのです。

eiicon・中村:協業先はどうやって探したのですか?

渡辺:「オリジナルのハイチュウを小ロットから作れる画像アプリがあればいいな」と考え、画像加工アプリの会社をApp Storeの上位ランキングからひたすらチェックして、アンジーさんというスタートアップにアプローチしました。ゼロからアプリを作るとかなりコストがかかります。

そこで同社の「SweetCard(スイートカード)」というiPhone向け写真加工・メッセージカード作成アプリ内に、「ハイチュウ」オリジナルパッケージが作れるテンプレートを追加しました。また、印刷会社は展示会でサイバーネットさんという名刺印刷会社に出会い、同社の技術を生かして小ロットからの印刷ができないかと相談しました。姿勢として心掛けていたのは、下請けではなく、チームとして共にサービスを育てていくことですね。

▲SweetCard(スイートカード) https://itunes.apple.com/jp/app/id943390377?mt=8

eiicon・中村:既存事業からすると、あまり良く思わない気持ちもありそうですが、社内の協力体制はどのように作ったのでしょうか?

渡辺:既存事業の担当者が最も気にするのは、「自分たちの事業や得意先に何か影響を及ぼすのではないか」ということです。そこで、「私たちがこれからやろうとしていることは、決して既存事業を汚すものではない」と、事前にハイチュウの担当者に理解を得ました。通常のハイチュウとは異なり、「おかしプリント」は“ハイデザインチュウ”。まったく別のブランドだと説明していました。

金丸:まず担当者間で協力体制を作っていくことも、肝になりますね。これは会社によって異なるのかもしれませんが、上から「新規事業でこういうことをやることになったから」と下ろしていくと、現場としては「どうして勝手に決めるんだ」と抵抗勢力になりかねません。だから、まずは担当者に相談することからスタートする。現場のマーケターは色んなアイデアを持っている人が多いので、話をしてみると「こんなこともできるね」と、協力的になってくれます。

大橋:トップを通す時も、いちいちお伺いを立てるのではスタートが遅れてしまいます。全員に「いいね」と言ってもらうなんて、無理な話ですからね。そこでまずは、予算内で小さなことから始めてみる。そして上手くいったものをしっかり報告する。小さくてもいいので成功事例を積み重ねていくと、周囲からの目も好意的になります。

森永製菓から学ぶ”泥臭い”イノベーションの3つの処方箋

森永製菓には、数々の新規事業を成功させたスーパーマンがいたわけでもなく、全員がもとからイノベーションに情熱を持っていたわけでもない。しかし、部門の意識変革や、社内外との地道な協業体制づくりにより、着実に実績を上げていっている。

今回、インタビューで得られた気づきは、以下の3つだ。

1:外部の力を積極的に借りる

大企業は、事業に必要な機能をもともと備えているため、外に出ていくことが苦手だ。しかし新規事業の経験がほとんどない企業が、自力でイノベーションを創出できる可能性は限りなくゼロに近い。そこで、オープンイノベーション支援サービスなど、外部の専門家の力を積極的に借りることは有用だろう。きっと、自力では得られない新たな視点が得られ、モチベーションアップにもつながるはずだ。森永製菓の場合は、アイデアソンでベンチャー企業経営者の思考に触れたことが、ブレークスルーとなった。ここでは、知ったかぶりをせず、知らないことを受け入れる素直さも重要だろう。

2:社外はもちろん、社内各部門との協力体制も意識する

新規事業はコストセンターとして見られがちだ。「好きなことばかりやっている」と誤解されることも多いだろう。そこで「こっちだって好きでやっているわけじゃないし」とそっぽを向いてしまうと、敵ばかりが増えていってしまう。森永製菓のアイデアソンのように、自分たちの活動に「興味がありそうな他部門の社員」を巻き込むことはいい方法の一つ。バックオフィスにも味方がいると、新規事業関連で手続きが必要な際も、体制を作りやすくなる。そして既存事業の担当者に「事前相談」して、協力者を増やしていく地道な活動も、事業推進において欠かせない。

3:最初から、大きなことをしようとしない

「オープンイノベーション」という言葉の印象から、とても大きなことをしなければならないという気負いもあるかもしれない。しかし、何もないところから突然会社をひっくり返すようなイノベーションは生まれない。そもそも、予算もそれほど大きくないところがほとんどだ。ここで最初から大きなことをしようとすると、予算や承認プロセスの関係から、なかなか進まず、頓挫してしまう可能性が高い。そこで、まずはスモールスタートで結果を早く出していこう。その積み重ねにより、やがては大きな変革を育てていけるはずだ。

本連載では、決して「スーパーマン」や「スーパースターチーム」によって行われるわけではない、大企業における新規事業の取り組みを“泥臭いイノベーション”として、丁寧な取材からリアルな姿を描写し、まとめていく予定だ。多くの事業開発担当者にとって、日々の業務の参考になる内容であれば幸いである。

(編集:栗原茂<Biz/Zine編集部>、取材:中村亜由子・眞田幸剛、文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)

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