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コロナの逆風を乗りこえ、箱根エリアに新しい風を――藤田観光・ユネッサンが共創にかける想いとは

コロナの逆風を乗りこえ、箱根エリアに新しい風を――藤田観光・ユネッサンが共創にかける想いとは

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予想だにしていなかったコロナ禍で、強烈な逆風を受けた観光・レジャー業界。神奈川県下にあり、古くから一大観光地として栄えてきた「箱根」もまた、言わずもがなである。その中腹に位置し、数多くの家族連れなどで賑わうアミューズメントスパ「箱根小涌園ユネッサン(以下、ユネッサン)」も、3ヶ月にわたる休館を余儀なくされた。

ユネッサンといえば、全国各地で観光・宿泊事業を展開する藤田観光株式会社の運営だが、同社は神奈川県が主催するアクセラレータプログラム「BAK」に、パートナー企業として参加することになった。これを機に、ベンチャー企業との共創により、先進的な取り組みを推進して行く方針だ。

「今までの考えの延長では、いいものは決して出てこない。」

そう語るのは、ユネッサンで営業課長を務める田中太郎氏。今回は田中氏に加え、阪本氏、松山氏の3名に、神奈川県のアクセラレータープログラム「BAK NEW NOMAL PROJECT 2021」への意気込みを聞いた。

BAK NEW NOMAL PROJECT 2021…コロナ禍で顕在化した様々な課題を、神奈川県の企業とベンチャー企業との共創で解決を目指すプロジェクト。

コロナ禍による長期休館、売上は前年と比べて約7割減

観光・レジャー業界は、コロナの影響を強く受けていると聞きます。まず、ユネッサンが置かれている現状についてお伺いしたいです。

田中: コロナによって甚大な影響を受けていることは、間違いのない事実です。特に2020年5月に加え、2021年1~2月と3ヶ月にわたる休館は、私たちも経験したことのない出来事でした。休館中は売上がゼロでしたから、2020年度は2019年度と比較して、売上は3~4割程度に。今年に入って回復基調にあるものの、現状では5~6割に届くかどうかという状況です。

また、精神面でも厳しい状況が続いています。当施設の場合、従業員にとってお客様の明るい笑顔を見ることがやりがいです。しかし現状だと、積極的にお客様を呼び込むことができません。お問い合わせをいただいても「こんなイベントを実施しているので、ぜひお越しください!」とは言いづらい雰囲気で、「開いています」と返答するしかないのです。このような状況ですから、モチベーションを維持することも難しくなっています。


▲田中氏


そうした状況下、今回、オープンイノベーションに取り組もうとお考えになった理由は?

田中: コロナによって社会情勢が変化しているため、アフターコロナにおいて、従来と同じ取り組みでは不十分だと強く感じたからです。今後、さらなる安心・安全が求められるでしょう。そうすると、サービス・ハードともに、新しい方法で安心・安全をアピールしていかねばならない。「当施設はこんな風に生まれ変わったので、ぜひ安心してお越しください」と笑顔で言える施設になりたいです。

そうしたとき、今までの考えの延長では、いいものは決して出てきません。なので、ベンチャーの皆さんの知恵もお借りして、一緒に新しい方法を見つけていきたいと考え、BAKのパートナー企業になることを決めました。

他社との共創実績はあるのでしょうか。

田中: ベンチャー企業との共創実績はありませんが、他社との共創という意味では、例えば小田急電鉄さんと組んでイベントを実施したり、「横浜ウォーカー」さんなどと一緒にプロモーションを仕掛けたり、ベルギー大使館さんと一緒にチョコレート風呂を企画したりと、様々な取り組みを実施してきました。私たちの使命は、お客様に楽しんでいただくこと。ですから、「楽しかったよ」と言っていただけるよう、多彩な企画を他社さんと一緒に形にしてきましたね。

コロナ禍中に、新たに取り組まれたことはありますか。そこから得た気づきがあれば、お伺いしたいです。

田中: 昨年の夏、初めて完全予約制を導入しました。従来だと、午前中にお客様が受付に集中し、長蛇の列ができることもありましたが、完全予約制をとることで分散させることができました。導入前は「お客様からお叱りを受けるのでは」という懸念もありましたが、予想に反して評判がよく、オペレーションもスムーズにまわるようになりました。これが、withコロナにおける成功事例のひとつです。一方で反省点としては、希望時間に入館できないことで、ご利用数が減ってしまったこと。この点は課題として残っています。

アフターコロナを見据え、掲げるテーマは3つ

今回、BAKで募集する3つのテーマについて、詳しく教えてください。

安心・安全な運営

田中: テーマは大きく分けて3つ設定しています。1つ目の「安心・安全な運営」についてですが、もっとも優先度を上げて取り組みたいことが、密の回避です。ただし、「密にならないでください」と促すのではなく、お客様が知らないうちに自然と分散するような仕組みを考えたいと思っています。

例えば、どのような仕組みですか。

田中: どこか1カ所が混み始めたら、反対側でイベントを実施して分散させるようなイメージですね。例を挙げるなら、位置情報とARを掛け合わせて、特定の場所が混雑すると、別の場所にARを表示するような企画もおもしろいのではないでしょうか。

以前は、投入パフォーマンスといって、本物のワインやコーヒーをお風呂に投入するイベントを行っていました。これらは人を集める目的で実施してきましたが、今回は逆に分散させなければなりません。分散させる取り組みはほとんど前例がなく、頭を捻っているところです。


▲ワイン風呂

現状、どういったシーンや時間、条件のときに、密になりやすいのですか。

田中: 時間と天気に左右される傾向にあります。時間については、午前中が一番のピーク。天気については、雷が鳴るような悪天候の際に屋外エリアを休止するので、屋内エリアにお客様が集中してしまいます。

遊休エリアの活用

2つ目の「遊休エリアの活用」についてですが、具体的にどのエリアが該当しているのでしょうか。

田中: ひとつは駐車場です。混雑する時間帯が分散したことや来館者数が減ったことで、200~300台分ほどの駐車場が空きました。山の傾斜地にある広大な駐車場で、木々に囲まれているため、自然を身近に感じられることが特徴です。

国立公園内にあることから、建築物を建てる場合は申請が必要ですが、それ以外は比較的自由に利用ができます。また、コロナが終息して客足が戻ったとしても、すべての駐車場が埋まることは考えづらいため、時限的にではなく半永久的に活用していただけます。

駐車場はどのようなことに使えそうですか。

田中: 今夏は試験的に、デイキャンプ場として活用することを検討中です。ほかにも、マウンテンバイクやアスレチック場、あるいは農業体験にも適しているのではないでしょうか。私たちが発想できるのはそれぐらいなので、これらを突き破るようなアイデアに期待しています。現時点の流行だけではなく、これから流行することが見込まれる取り組みにも、積極的にチャレンジしていきたいです。

駐車場以外には、どのような場所がありますか。

田中: テナント用にお貸ししているスペースにいくつか空きがあるので、そこをご活用いただくことが可能です。現在活用されていない場所を利用して、収益のあげられるビジネスを構築いただけるとありがたいのですが、来館者の満足度を高めるようなアイデアでも十分です。

「レジャー×ウェルネス」への挑戦

3つ目の「レジャー×ウェルネス」に関しては、いかがでしょうか。

田中: コロナによって「健康な体でいたい」というニーズは、以前より高まっていると感じます。ですから、温泉と健康を掛け合わせたようなサービスを開発できないか模索中です。何かを強制するのではなく、「楽しく遊んでいるうちに、自然と健康になる」といった形で、お客様に提供できることが理想ですね。

例えば、どのようなものをイメージされていますか。

田中: 例えば、ゲームで遊んでいるうちに基礎年齢が分かるものだとか、簡単に肌年齢が分かるものだとか、指を差し込むだけで血液などの健康度合いを測れるものだとか、そんなイメージです。以前、視察先でこのような体験をしたことがあり、盛り上がったんですね。そういった楽しく健康になれるものがあれば、いいのかなと思っています。

阪本: 神奈川県は現在、未病(※)に関する取り組みを実施していますが、その中で社会と交流を持つことが、健康を維持するために重要だと示されています。コロナ禍で交流の機会が減っていますから、交流を促すような企画も考えられるのではないでしょうか。例えば、当施設には休憩施設もありますから、そこにタブレットを置いてオンラインで外国の方たちなどと交流をして、旅の思い出をつくってもらうなどです。

※未病について:神奈川県では、心身の状態を健康と病気の二分論の概念で捉えるのではなく、「健康」と「病気」の間を連続的に変化するものとして捉え、この全ての変化の過程を表す概念を「未病」としている。(参考ページ) 


▲阪本氏

藤田観光のリソース活用や、箱根全体と連携できる可能性も

共創相手に提供できるリソースには、どのようなものがありますか。

田中: ひとつは、先ほど申し上げた遊休エリアです。駐車場のほか、施設内の活用していないスペースをお使いいただくことが可能です。また、マーケティングデータも開示できます。年齢・性別や、グループ・ファミリーといった顧客属性、平日・週末の入館数や季節変動なども、必要であればご提供できます。

ユネッサンの客層は、どのあたりなのでしょうか。

田中: 私たちがメインターゲットとしているのは、30代・40代のファミリー層。現状、小学校低学年のお子さまをお持ちの家族連れが5割以上です。次いで多いのが、20代・30代の女性グループです。隣接する日帰り温泉「森の湯」は、30代・40代の男性が多くいらっしゃいます。首都圏からが7~8割を占め、とくに東京・神奈川からのお客様が圧倒的に多いです。この傾向はコロナ禍でより顕著になっています。


▲女性グループも多く訪れる

藤田観光として提供できるリソースもありますか。

松山: 藤田観光グループとしては、数十万人単位の会員組織を持っているので、ご活用いただくことが可能です。また内容によりますが、藤田観光の保有するゴルフ場や結婚式場、水族館、椿山荘といったホテルと連携することもできます。


▲松山氏


箱根エリア全体に広げられる可能性もあるのでしょうか。

田中: 広域連携もしやすい環境が整ってきました。古くは箱根山戦争と表現されるような利権争いのあった場所ですが、ここ数十年で状況が変わり、グループを越えての連携が活発化しています。2018年には、箱根町観光協会が箱根DMOという組織になり、外部から人を招いて活性化に力を入れ始めました。こうした点からも、広域連携の機運はより一層、拍車がかかっています。ですから、箱根全体を巻き込むようなアイデアも大歓迎ですね。

阪本: ユネッサンは箱根の中心(へその位置)にありますし、近隣の宿泊施設とも交流があります。他の観光スポットなども巻き込んで、大きなスケールで展開することも可能です。最終的には当施設だけではなく、箱根全体にお客様が戻って、エリア全体が潤うことをゴールにしたいと思っています。

箱根エリア全体で仕掛けた企画の中で、印象に残っているものはありますか。

田中: 2020年に小田急グループさんとグラウンドワークスさん(「エヴァンゲリオン」の版元)と当社が中心になり、最新作の公開を記念して「エヴァンゲリオン×箱根 2020」と題した一大エヴァジャックを実施しました。駅やバス、トイレをラッピングしたり、スタンプラリーを企画したり、当施設でも館内装飾やお風呂の一部をエヴァ仕様にしたりと、箱根全体でエヴァンゲリオンの世界観を演出したのです。この取り組みは、多くのメディアに取り上げられましたし、お客様にも大変喜ばれました。


▲エヴァンゲリオン×箱根 2020(イメージ)

おもしろい取り組みですね!ユネッサンのカルチャーや、従業員の新しい取り組みに対する受容性はどうでしょうか。

田中: 外部からはよく「変なことを考える施設だな」と言われます(笑)。他社とコラボして、カレー風呂やお茶漬け風呂、ガリガリ君風呂という企画を実現したこともあります。「夏といえば何だろう」という話から始まり、夏を連想させるアイデアを書き出して、それを実現するために片っ端からアプローチをするといった流れで進めました。昔からおもしろいことを考えて実践する風土ですし、当たって砕けろ的なところもありますね。


▲カレー風呂

ユネッサンを起点に、箱根周辺エリアの復活・再興へ

最後に本プログラムに応募するベンチャー企業に向けて、一言メッセージをお願いします。

田中: 企業同士でのコラボレーションや地域連携でのプロモーションについては、これまでもたくさん取り組んできました。今回はより幅広い知見を集めたいと思っているので、このオープンイノベーションという取り組みに、とても期待をしています。私たちが考えたこともないような飛び越えた提案を聞いてみたいですし、そういったアイデアを受け入れる土壌もあるので、ぜひご一緒できればと思います。

阪本: 先ほどお話に出た通り、フットワークの軽さと新しいものに抵抗を感じないカルチャーがユネッサンの特徴です。いただいた提案に対して、ネガティブな思考に陥るスタッフはほとんどいません。「どうすれば具現化できるのか」を考え、短期間でトライアルに持っていく風土が組織的に根づいているので、ぜひ一緒に取り組みを進められたらと思います。

松山: 今年1月にユネッサンは開業20周年を迎えました。私は、開業時の立ち上げメンバーで、15年ほど離れた後、今年の4月に戻ってきました。阪本、田中はさることながら、私もユネッサンに対して強い愛着を持っています。コロナ禍の大変な時代ではありますが、20周年を機に全く新しいユネッサンを打ち出していきたい。そして、当施設だけではなく箱根全体、さらには神奈川県全体の活性化につなげたいと考えているので、ぜひご協力をお願いいたします。

●「BAK NEW NOMAL PROJECT 2021」のパートナー企業・藤田観光の詳しい募集テーマはこちら(応募締切:7/26まで)

(取材・編集:鈴木光平、文:林和歌子)

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BAK NEWNORMAL PROJECT2021

BAK NEW NORMAL PROJECT 2021とは、新型コロナウイルスの感染拡大により、顕在化した様々な課題を神奈川県の企業とベンチャー企業との共創で解決を目指すためのプロジェクトです。