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【インタビュー/Plug and Play・矢澤麻里子】 シリコンバレーを代表するアクセラレータが、日本上陸!大手7社と共に始動する、アクセラレータプログラム「Batch0」とは?

世界11カ国22ロケーションでアクセラレータプログラムを実施し、PayPalやDropboxをはじめ150社のスタートアップに出資してきたPlug and Play。そんなシリコンバレー屈指のスタートアップ・アクセラレータが、ついに日本に進出。11月から日本初開催となるアクセラレータプログラム「Batch 0」をスタートする。

Plug and Play JapanのVenture Partner/取締役として指揮を執るのは、元サムライインキュベートの矢澤麻里子氏だ。同社は日本で「Batch 0」をはじめ、どのような活動を行っていくのか。矢澤氏がPlug and Playにジョインした背景や想いと共に、話を伺った。

▲Plug and Play Japan Venture Partner/取締役 矢澤麻里子氏


スタートアップの大企業連携や海外進出を支援したいという想いからPlug and Playへ

――前職はサムライインキュベートのキャピタリストとしてご活躍でしたが、もともとインキュベーションやアクセラレータには興味があったのでしょうか。

父が事業をしていた影響で起業には強い興味がありました。学生時代には、自分で事業を立ち上げたことも。一方でITの面白さも感じていたので、大学卒業後はソフトウエアベンダに就職しました。しかしエンジニア・コンサルタントとして経験を積む中で、「世の中をもっと良くしていきたい」という想いが強くなってきたんです。色々と可能性を探っているうちにベンチャーキャピタルに魅力を感じ、シリコンバレーのVCへ。デューデリジェンスやファンドレイズを経験しました。

その後、日本に帰国することとなり、2013年にサムライインキュベートに参画。「IBM BlueHub」というアクセラレータプログラムの立ち上げのほか、キャピタリストとして40社ほどを担当しました。

――大企業とスタートアップの連携において、どのような課題を感じていらっしゃいましたか?

様々なプログラムが立ち上がっていく中で、スタートアップが大企業のアセットをうまく活用できていないと感じていました。マッチングイベントを開催しても、その場はアイデアがどんどん湧いてきて盛り上がります。しかし、そこか具体的な話には進まない。これはどちらが悪いというわけではなく、様々な課題をそれぞれ乗り越えていないだけだと思います。

例えば、大企業サイドのコミットができていなかったり。スタートアップサイドも振り回されてしまったり。そこでせっかく良いマッチングになりそうだったのに、「もう組みたくない」と悪い印象になってしまうケースもありました。

——なるほど。

また大企業との連携だけではなく、グローバルで活躍したり、海外買収される企業が少ないことにも危機感を持っていました。日本は人口の面でも、パソコン普及率の面でも他国と比較して決して高いとは言えず、ITのマーケットはまだ小さいです。そこで海外のナレッジを持ってきて、グローバルで活躍できるスタートアップをもっと増やしていきたいと考えるようになりました。それが、Plug and Playにジョインした理由です。


「Batch0」では、複数の大企業が1つのスタートアップを支援する

――Plug and Play Japanの活動について、まずはアクセラレータプログラム「Batch0」の詳細について聞かせてください。

公式パートナーとして、三菱東京UFJ銀行、東急不動産、電通、パナソニック、SOMPOホールディングス、富士通、フジクラの7社を迎えてスタートします。他にも、現在は公開できませんが、複数社の大企業との提携が決定しています。11月10日にキックオフ、2018年2月にDemo Dayの予定です。

——プログラムの特徴はどのような点にありますか?

特徴としては、まず日本だけではなく海外からもスタートアップを採択し、国内外のスタートアップを支援していくことです。また、大企業との連携でも、大企業1社に対して複数のスタートアップという図式ではなく、スタートアップ1社に対して複数の大企業のリソースを活用できるようにしようとしています。

例えば、大手2社のデータとスタートアップのアルゴリズムを掛け合わせるなど、新しい協業の形を創り出せるはずです。そこにはセキュリティや情報開示といった乗り越えるべき課題が多々ありますが、進むべき方向性は間違っていないはずです。これまで、アメリカだけではなく世界各国でPlug and Playが支援してきた大企業とスタートアップとの実りある連携を、この日本でも実現させていくことが、我々のチャレンジングなミッションだと考えています。

――スタートアップからの応募状況はどうでしたか?

今回はFinTech、IoT、InsureTech の3領域を軸として募集をかけたのですが、国内外から想定以上の応募をいただきました。具体的な数はここでは申し上げられないのですが、割合としては5割が日本、残りの5割がアメリカのスタートアップです。領域としては、IoTが最も多いですね。

――10月末には、東急不動産と組んで、渋谷にコワーキングスペースを開設予定だと聞きました。

渋谷のセルリアンタワー付近に、800平方メートルのスペースを開設予定です。アクセラレータプログラム参加スタートアップ、公式パートナー、一般スタートアップが入居します。シリコンバレー本社のように様々な企業や大学のフラッグが掲げられ、活気ある雰囲気にしていきたいですね。また、Plug and Play本社で行っているような、入居するベンチャー企業の中から毎月「Hottest Company」という注目企業を表彰するような取り組みも行っていきたいとも考えています。


日本全体に、スタートアップが生まれやすい環境をつくりたい

――「Batch0」から先の、長期的な展望としてはどう考えていらっしゃいますか?

たくさんあります!まずは大企業とスタートアップとの連携で、成功事例をもっと増やしていきたいですね。まだ日本は、大企業のほうがパワーバランスが強い印象ですが、大企業と連携した結果として、スタートアップのコア事業が圧倒的に伸びたり、競争力がついたり。日本の起業数を伸ばしていくためにも、スタートアップが大企業と組んで世の中を動かしていく事例をもっともっと増やし、「起業ってこんなに面白いんだ」という刺激を、日本社会に与えられたらいいなと思います。また、Plug and Playやパートナー企業からの出資、M&Aの支援を積極的に行っていく予定です。

——その他の展開としては?

東急不動産さんと組んでいく中で、渋谷をITの街・スタートアップの街として盛り上げていきたいという想いもあります。グローバルといった視点で、海外スタートアップが日本に進出する上での課題解決も行っていきたいですね。例えば海外から日本に来た時に良く直面するのがビザの問題。コワーキングオフィスでは登録できないなど、大使館では教えてくれない様々な壁があります。その課題を解決するために、東急さんと組んで彼らが入居できるスタートアップハウスを作るなど、もっと日本に来やすい環境をつくりたいですね。

そうすることでスタートアップ間での競争を生み出し、イノベーションが起こりやすい仕組みを作っていきたいと思っています。VCは増えていますが、スタートアップはまだ少ない。競争がなければレベルは上がっていきません。ゆくゆくは渋谷だけではなく、日本全国にその取り組みを広げていきたいですね。

――日本のスタートアップの海外進出支援も行っていくのでしょうか?

もちろんです。 Plug and Playのグローバルネットワークのみならず、提携企業のリソースを活用することにより、販路開拓だけではなく特許やオフィスなど様々な支援を行っていきたいと考えています。

――最後に、オープンイノベーションに関心のある日本の大企業にメッセージをお願いします。

もし具体的な方法が分からないと悩んでいらっしゃるのなら、ぜひPlug and Play Japanや私に声を掛けてください。ぜひ、一緒に変えていきましょう!

 

取材後記

日本進出したばかりのPlug and Playだが、見据えているビジョンはとても大きい。日本にスタートアップ・エコシステムを創り、さらにそれをグローバルに知らしめていこうとしている。アクセラレータプログラムや渋谷のコワーキングスペースから、どんなイノベーションが生まれるのか、注目していきたい。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)