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【39Meisterインタビュー<後編>】大手とベンチャーのいいとこ取り。共同事業という共創のカタチ。

【39Meisterインタビュー<後編>】大手とベンチャーのいいとこ取り。共同事業という共創のカタチ。

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NTTドコモの「39works」(https://www.39works.net/)をご存じだろうか。社外のベンチャーやパートナー企業とタッグを組み、爆速で新たなビジネスを創造する、新規ビジネス特区だ。CTO直下のスーパーフラットな組織で、社内稟議よりも社会の課題にアプローチすることに集中し、CTOの承認を得ればすぐに事業を立ち上げることができる。

事業に関しては担当者に全権委任。プロジェクト内における決定事項は、ほとんどの事項が上司への事前報告や了承の必要はなく、ドコモ本体ではありえないほどの意思決定スピードが実現している。「失敗は挑戦の結果」として捉えるため、恐れず新しいことへの挑戦が可能だ。さらに、主な活動をドコモの「外」で行うことで、いい意味でドコモからの中立性を保とうとしている。大企業のしがらみを取り払い、ドコモ内部から破壊的イノベーションを起こそうとしている。

その39worksから生まれたのが、IoTプロダクトの設計・開発を行うベンチャー企業・ハタプロとの共同事業「39Meister」(https://39meister.jp/)だ。出資とも事業提携とも異なる“共同事業”ならではのメリットや、39Meisterによる事例、そしてオープンイノベーション成功のコツとは?――昨日掲載したインタビュー<前編>に引き続き、39Meisterの中心人物に集合してもらい、共同代表であるNTTドコモ菊地氏と、ハタプロ伊澤氏に話を聞いた。

▲【写真右】 39Meister/株式会社NTTドコモ 菊地大輔氏

39Meister共同代表。ハードウェア・インキュベーションに加え、LoRaやソニーLPWAなどのLPWA技術やAI、ブロックチェーンなどの最新技術をベンチャーが活用するためのプラットフォーム構築を目指す。

▲【写真左】 39Meister/株式会社ハタプロ 伊澤諒太氏

39Meister共同代表 兼 株式会社ハタプロ代表取締役。2010年に株式会社ハタプロを創業。スマートフォンアプリ開発事業、ITキャリア教育事業を開始。2012年に事業売却を経て、IoT電子機器製造業を開始。 以降、大手電機メーカーなどのクライアントに様々なIoT製品の開発に携わってきた。2016年より株式会社ハタプロと株式会社NTTドコモのジョイントベンチャーとして「39Meister」を開始。IoTに特化した通信技術と製品開発の知見や、大企業とベンチャー企業の双方の強みを活かした、新製品開発支援事業を展開中。

IoTベンチャーを支援するさまざまな取り組み

――LPWA以外には、どのような事例がありますか?

菊地氏 : 昔、起業家が事業計画をプレゼンして投資家が出資の可否を決めるテレビ番組がありましたよね。それと似たイメージで、エンジェル投資家に対してベンチャー企業がプレゼンを行って、その場で出資を決めるという企画を行いました(笑)。単なる思い付きでやっているのではなく、IoTベンチャーが資金調達に苦労しているという課題や、少額出資を行ってくれるエンジェル投資家はそういったベンチャーと出会えていないのではないか、という仮説から行った取り組みです。

これもまさに大手だけでもベンチャーだけでもできないアイデアですよね。残念ながらその場での出資決定というのはありませんでしたが、参加していただいたエンジェル投資家からも「あまり知られていないベンチャー企業でも、こんなに面白い事業を考えているとは知らなかった、参加してよかった」と評価をいただきました。

伊澤氏 : 大田区と共同で行ったベンチャー支援のためのパンフレット制作などの取組も、大きな事例ですね(http://www.city.ota.tokyo.jp/sangyo/sogyoshien/topics/support_monozukuri-venture.html)。大田区は、日本有数の工業集積地を抱えており、特有の技術を持った町工場が非常に多いという特徴があります。そうした高度な技術を持つ町工場が、ものづくりを行おうとするベンチャー企業をサポートすることを、大田区全体として、面としてサポートしていく取り組みを行っており、我々もその活動を支援しています。

パンフレットの作成では、ハタプロが実際に大田区の工場へ発注したケースをベースとして、その際に実際に対応をされた工場の方の視点でのインタビューと、ベンチャー視点でのインタビューという両面を素のまま表現することで、見る方に大田区に発注する実感を持っていただけるような、素直に大田区の魅力を高めるパンフレットを作成しました。

新規事業担当者は、孤独。彼らを支える組織、風土の醸成を!

――様々な取り組みを進めていらっしゃいますが、今後手掛けていきたいことは?

伊澤氏 : LPWAには先見の明を持って実績を作ることができました。次にくるのはAIロボットではないかなと考えています。ハードウエアのベンチャーであるハタプロと大手インフラ企業であるNTTドコモが組み合わさったからこそできる先端領域でポジションを取り、プロダクションとインキュベーションをセットでクライアントに提供していきたいですね。

菊地氏 : IoT領域は、市場における課題や実態と、事業者により提供されている既存サービスの間に、ものすごいギャップがあると感じています。たとえば、LPWAのケースだと、まだまだ実験・検証段階というのが市場の状況なのに、サービス事業者側は月額で支払う大型のインフラ型サービスを提供していて、その間には誰にも解決してもらえないギャップがある。このようなギャップを抱える事業領域はまだたくさんあります。

その一つがロボットです。今後、様々なロボットのニーズが増加してくると予想していますが、ペッパーのような標準ロボットだと差別化できないし、作ろうと思っても、ロボット開発を気軽に依頼できる先がありません。AIを入れるにしても、複雑な機構の設計にしても、それらをどうインテグレートして良いのか分からない。そのギャップを埋める存在になっていきたいですね。

――最後に、オープンイノベーションに取り組もうとしている大企業やベンチャー企業に向けて、アドバイスをお願いします。

伊澤氏 : まずは大企業に向けて。ご存知の通り、今オープンイノベーションに取り組む大企業は増加しています。優秀なベンチャーであればあるほど、パートナーとなる企業を選べる時代なのです。「うちは大企業で資本もブランドあるから、向こうから来てくれるだろう」という姿勢では、良いベンチャー企業は見つからないでしょう。オープンイノベーションに必要なのは規模やブランドの前に、風土や文化です。まずはそこをしっかりと醸成してから、パートナー探しを行うようにしていただきたいと思います。

――なるほど。

伊澤氏 : ベンチャーへ向けて言いたいのは、事業を育てるための方法は、VCからの資金調達だけではないということです。例えばハタプロではAIロボットや自社ブランドのプロダクトを開発しており、そのノウハウを39Meisterに還元しています。ハタプロが伸びると、39Meisterが伸びる。39Meisterが伸びると、ハタプロが伸びる。好サイクルができています。これはスタートアップがオープンイノベーションによって成長する、非常に良い事例なのではないでしょうか。他にも色々な選択肢があるので、自分たちに合った方法を模索してください。

菊地氏 : 大手向けのメッセージとしては、オープンイノベーションとは、そこに取り組むこと自体が大手にとっては成果という側面もあると思います。「うちのこの技術を使えるのか」や、「そこで培ったノウハウをいかに自社に持ち帰ってもらえるのか」と言った思考は、一旦切り離した方が上手く行くのではないでしょうか。また、全くの新規事業に取り組む人たちは、意外と孤独です。時には会社に言えないようなリスクをとっている場合もあります。

ですから、その人たちを支える組織体制――組織面、人事評価面、周囲の目――を、トップコミットメントで作ってほしいと思います。本人がとっているリスクを理解し、会社としてサポートするような組織を作ることが大事です。その取り組みこそが、長い視点で将来の会社の強みになってくると私は信じています。

――ベンチャーへのメッセージはいかがでしょう。

菊地氏 : ベンチャー企業は、自分たちのチームだけで来年再来年どうなるかわからない中、人生をかけて仕事をしている人たちばかりです。特に日本国内では、オープンイノベーションに興味を持つ大手企業が多い今、単なる出資とは違う手法で、そういった大手企業を上手く使ってバリューアップを図ることも一つの手ではないでしょうか。

ベンチャー一社だけでは難しい事業を、大手から技術供与と、時には資金提供を受けて実現するというのは、場合によっては資金調達以上のメリットが得られるかもしれません。そういった様々なオプションで、成長戦略や全体の経営を考えていただきたいと思います。

取材後記

お二人から話を聞いていて感じたのが、両者が真に対等だということだ。菊地氏が、「アメリカは人種のるつぼだからこそ発展していると言われるが、それと同じことが起きているのだと思う。違う視点を持つ者同士がフラットに議論を行うだけで、単一の組織内では生まれない発想が出てくる」と話していたが、もしこれが出資という形であれば、実現し得ないバランス感なのだろう。

また、伊澤氏が「オープンイノベーションは、担当者の熱意だけでは実現し得ない。その熱意を活かす組織風土が必要不可欠だ」と語ったように、オープンイノベーションの成功を担当者任せにしてはならない。イノベーションの芽を潰さず、大きく育てていく器が問われている。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:佐々木智雅)

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