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【イベントレポート】日本郵便初のオープンイノベーションプログラムDemo Day開催!――最優秀賞に選ばれたスタートアップとは?

2017年9月、日本郵便は、スタートアップ支援を手がけるサムライインキュベートと共に、「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」というオープンイノベーションプログラムに取り組むと発表。郵便・物流イノベーションを巻き起こす、共創による新規事業等創出プログラムをスタートさせた。

以前、eiicon labでもその経緯について取材を行い、担当者のインタビュー記事(※)を掲載した「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」。同プログラムには多種多彩な105社がエントリーし、最終審査を通過して採択されたのは、オプティマインド、ecbo、MAMORIO、Drone Future Aviationの4社となった。

採択された4社は、日本郵便の役員陣や担当社員、サムライインキュベート、外部メンターらの協力のもと、2017年11月から3か月間で共創アイデアをブラッシュアップ。2018年2月1日、東京・丸の内のJPタワー ホール&カンファレンスにてDEMODAYを開催し、各社と日本郵便の共創アイデアをプレゼンテーションした。

会場には、関係者以外にも一般参加者も多く、立ち見が出るほどの熱気に包まれた。プレゼンテーションをふまえ、一体どのスタートアップが最優秀賞に輝いたのか?――その模様をレポートする。

※【インタビュー】前島密による日本の郵便事業創設以来、受け継がれているイノベーションの精神。 日本郵便がアクセラレータープログラムに取り組む理由とは? https://eiicon.net/articles/303


日本郵便の経営陣もコミットするプログラム

イベント冒頭には、日本郵便 代表取締役社長・横山邦男氏が登壇し、挨拶。「1871年に前島密によって誕生した郵便事業自体がイノベーションの原点。郵便番号制度や郵便区分機など、時代のニーズを先取りした革新的な技術を導入してきた。変化のスピードが加速する現代において、日本郵便の経営資源やノウハウとスタートアップが持つ革新性を交えて化学反応を起こし、新しい価値創造をして社会をより豊かにしていきたい」と語った。写真の通り、横山氏は「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」のロゴが施されたパーカーを着用。経営陣もコミットした取り組みであることがうかがえた。

▲日本郵便株式会社 代表取締役社長 兼執行役員社長 横山邦男氏

次に、ゲスト審査員でもある経済産業省・石井芳明氏が登壇。政府としてもオープンイノベーションを推進しており、本プログラムの成功と拡大、そして継続していくことへの期待を語った。

▲経済産業省 経済産業政策局 新規産業室 新規事業調整官 石井芳明氏

また、注目企業として、IoTプラットフォームである「ソラコム」、“まごちゃんねる”というサービスを提供する「チカク」、ロボット事業を展開する「ユカイ工学」、企業間レンタル移籍プラットフォームを提供する「ローンディール」によるプレゼンが繰り広げられた。

採択されたスタートアップ4社のプレゼンに先立ち、本プログラムの企画運営担当者である日本郵便・福井崇博氏が登壇。プログラムのメインテーマが「多様化するライフスタイル、地域コミュニティにおいて、郵便・物流のラストワンマイルをテクノロジーで変革する」であり、全国約2万4000局の郵便局などだけでなく、そのファーストステップとなる実証実験地やテストマーケティング費用などの準備が整えられている旨が述べられた。また、革新性・課題解決性・実現性という3つの評価基準で審査される点にも言及。さらに、今回は審査員の評価による「最優秀賞」に加えて、一般来場者が選ぶ「観客賞」が設けられる旨も伝えられた。

▲日本郵便株式会社 事業開発推進室 主任 福井崇博氏


採択された4社によるプレゼンテーション

■合同会社オプティマインド

▲登壇者/代表社員・松下健氏

注目のプレゼンは、オプティマインドからスタートした。同社は、「物流×人工知能」の名古屋大学発のテックベンチャー。物流における「どの訪問先を、どの車両が、どの順で回るとよいか」という配送計画部分に特化し、最適化アルゴリズムと機械学習の技術を用いて、配送の効率化に挑戦している。

今回のプログラムでは「持続可能な配送インフラを可能にすること」を目標に掲げ、草加郵便局(埼玉県)の協力のもと実地検証を実施。ルート作成の自動化とルートの最適化に取り組んだところ、オプティマインドのAIツールを使えば、新人の郵便局担当者よりも大幅に時間を短縮でき、ベテランの郵便局担当者に3分差に迫るという検証結果となった。今後は、3月頃までに草加郵便局で正式にAIツールを導入。準備が出来次第、段階的に導入局を拡大予定で、外販も視野に入れていくという。最終的には、ドローン・自動運転配達のシステムインフラになることが目標とのことだ。


■ecbo株式会社▲登壇者/代表取締役社長・工藤慎一氏

「荷物を預けたい人」と「荷物を預かるスペースを持つお店」をつなぐシェアリングサービス「ecbo cloak」を展開する同社。毎日、17.6万人のコインロッカー難民が生まれているという社会的な課題を解決するために2017年1月にサービスをスタートさせ、カフェ・飲食店、美容室、さらには神社などにも広がっている。

1月に渋谷郵便局で「ecbo cloak」のテストマーケティングを実施しており、2月21日より渋谷・新宿・東京中央・横浜中央・鎌倉の郵便局5局にてサービス提供を開始予定。3月にはさらに利用できる郵便局が26局増加する予定だ。今後は、「ecbo cloak」を進化させ、郵便局から全国のecbo加盟店へ預けた荷物を配送するサービスにも着手予定。世界一の荷物預かりインフラを目指していくと、工藤氏は語った。


■MAMORIO株式会社▲登壇者/COO・泉水亮介氏

「なくすを、なくす。」をミッションに、スマートフォンと連携してなくしたものを見つける世界最小クラスの紛失防止タグ「MAMORIO」を展開する同社。5年以内にモノを失くす確率は40%と言われており、「IoT×LOGITECHで実現する紛失の無い未来」をビジョンに掲げている。

今回のプログラムでは、日本郵便と共に「MAMORIO」の“ネットワーク拡大”と“普及拡大”に着手。2月5日から世田谷郵便局のバイク30台に新開発の移動式IoT Gatewayを搭載して、「MAMORIO」のネットワークを広げる実証実験をスタート。さらには2月1日より東京中央郵便局と世田谷郵便局のを皮切りに、「MAMORIO」を販売するテストマーケティングも行っていく。また、「MAMORIO」を世界にも輸出し、2020年までには落とし物が必ず見つかる世界を実現すると、泉水氏は語った。


■株式会社Drone Future Aviation

▲登壇者/代表取締役社長・波多野昌昭氏

「世界中の“運べない”を無くす」をミッションに掲げ、ドローンの販売・リース、実証実験の候補地準備や実験オペレーションプランの作成、パイロット育成機関の運営を手がけている同社。生産年齢人口の減少やEC物流の増加という大きな社会課題に対して、空と陸のドローンによる自動配送システムの構築により、その課題を解決していくという。

同社が扱う空のドローン「Griff350」と陸のドローン「JD001J」により、物流の省力化に寄与できると期待。このドローンの活用により、不在配達・再配達の低減につながり、新しい物流を切り拓くこととなる。今後は、日本郵便本社内など、屋内の私有地から実証実験をスタートさせていくと、波多野氏は語った。


採択企業によるトークセッション

スタートアップ4社の代表者によるプレゼンが終了後、審査員による審議が始まった。その間、スタートアップ代表の4名が一斉に登壇。サムライインキュベート Partner&Chief Strategy Officer 長野英章氏がモデレーターとなり、トークセッションが行われた。

まず、長野氏から投げかけられた質問は、「起業やイノベーションになぜこれほどまでに本気なのか?キッカケや人生のターニングポイントは?」というもの。それに対して、ecbo・工藤氏は「数年前にUberの日本事業立ち上げに携わっていた。短い期間の中で、Uberがイノベーションを起こしていくところに携わっているなかで、自分でも事業を興してみたいと思った」と返答。また、Drone Future Aviation・波多野氏は、「今のビジネスがとても楽しい。“楽しい”ということが大事で、自分にとって楽しいことをしていると、まわりも楽しくなる」とコメントした。

次に、長野氏からは「プログラム参加前と参加後のギャップや変化は?」という質問が投げかけられた。それに対して、MAMORIO・泉水氏は「日本郵便は、もともと“お役所”というイメージがあったが、それが覆った。役員陣もコミットしているし、社員からのパッションも感じる。こんなに熱量の高いプログラムはなかなかない」と答えた。


観客賞は「MAMORIO」、最優秀賞は「オプティマインド」が受賞

結果発表はまず、観客賞から行われた。同賞に輝いたのは、「MAMORIO」。プレゼンターとして登壇したサムライインキュベート 代表取締役・榊原健太郎氏は、「今回の観客賞は、“感動賞”ともいえる。法律上のクリアにしなければならないことなど難点も多くあったが、それをも乗り越えていこうとする様が素晴らしかった」と評価した。

そして、日本郵便 代表取締役社長・横山氏から最優秀賞が発表された。最優秀賞に輝いたのは、「オプティマインド」。横山氏は、「Eコマースの利用は年々増え続けており、年末年始の取扱量は以前に比べて2~3割増加している。これらの荷物を安定的に届けるという経営課題に対して、オプティマインドの技術が打ち手になる」と評価し、賛辞を贈った。

総評として、サムライインキュベート・榊原氏は「できる/できないじゃなくて、やるか/やらないかで、世界は作られているということが実感できたプログラムだった。ただ、このDemo Dayはただのプレゼンの場ではない。これをスタートとして、さらに各社の製品・サービスを磨き、実現させることが真のプログラムの成功といえる。そして、このプログラムはそれができると確信した。」と語った。

▲株式会社サムライインキュベート 代表取締役 榊原健太郎氏

最後に、日本郵便 代表取締役副社長・福田聖輝氏が登壇。閉会の挨拶として、「弊社の社員もこのプログラムに参加することで大きく変わった。今後もスタートアップとコラボレーションし、社会をより豊かなものにしていきたい」と話し、日本郵便初となるオープンイノベーションプログラムのデモデイを締めくくった。

▲日本郵便株式会社 代表取締役副社長 兼執行役員副社長・福田聖輝氏


取材後記

大規模に開催された今回の「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」Demo Day。日本郵便の「お堅い」というイメージを払拭し、郵便・物流事業という巨大インフラをさらに進化させていく。――そうした強い意志を社内外へと発信することにも成功したと実感したイベントだった。さらに、今回登壇したスタートアップ各社と日本郵便は実証実験を進めており、今後の動向にも注目していきたい。

なお、デモデイの最後には、今夏に第2回のプログラムが開催されることが発表された。日本郵便と共に社会課題を解決してみたいというスタートアップはぜひ挑戦してみてはいかがだろうか。

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:加藤武俊)