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マネーフォワードやfreeeなど、著名スタートアップとの連携~商用化実績多数。世界15都市を巻き込みイノベーションを生み出すNTTデータの狙いとは。

NTTデータがスタートアップ企業を対象に実施するオープンイノベーション活動「豊洲の港から」。

オープンイノベーションによるビジネス創発を目的として2014年にスタート、以来年2回のコンテストやマンスリーフォーラム等を継続的に開催を続けている。スタートアップ企業とのビジネス創出が多数進んでおり、その一例として、第1回コンテストで最優秀賞を受賞した株式会社マネーフォワード、優秀賞を受賞した株式会社freeeなどフィンテック企業各社との提案により、オンラインバンキングプラットフォーム「ANSER」のAPI連携によるフィンテックサービスプラットフォームの商用化を実現している。

2017年5月には、シリコンバレーに本社を持つMarkLogic社の株式を取得し、資本業務提携を締結。構造化データ及び非構造化データを活用した次世代データベースビジネスの拡大に向けて協業を強化している。さらに、9カ国10都市で開催した第5回のグランドチャンピオン、スペイン・バルセロナのSocial Coin社とは、AI技術を活用した社会課題解決ソリューション開発に合意し、日本のみならず、スペインを始め、欧米への展開をもくろんでいる。――このように、オープンイノベーション活動「豊洲の港から」を通して、スタートアップとのビジネス創発実績は、グローバルかつ着実に増加中だ。

そして、7回目となる今回の「豊洲の港からpresentsグローバルオープンイノベーションコンテスト」は、世界14カ国15都市に開催地を拡大し、欧米・アジア諸国だけではなく、オーストラリア、ブラジル、チリなどでも実施された。そして、各地で選出された最優秀企業が東京に集い、優勝者を決めるグランドフィナーレがいよいよ3月22日に催される。

世界の都市を回ったことで見えてきた各国のイノベーション事情、そしてNTTデータがスタートアップに提供できるものとは?――グランドフィナーレに向けボルテージが高まる中、オープンイノベーション事業創発室 残間光太朗室長に話を伺った。

▲株式会社NTTデータ 金融事業推進部 オープンイノベーション事業創発室 室長 残間光太朗氏

1965年生まれ。88年北海道大学卒業後、NTTデータに入社。90年からNTTデータ経営研究所にて、新規ビジネス、マーケティング支援コンサルティングなどに従事する。96年、NTTデータに復帰。新規ビジネスの企画・立ち上げに多数携った後、オープンイノベーション事業創発室を創設。2013年に現職に着任。神戸大学客員教授兼任。


世界各地で勃発するイノベーション。世界各地の課題とソリューションの掛け合わせでビジネスアイデアは異なる。

――第7回コンテストでは、14カ国15都市でコンテストを開催されましたが、開催地をグローバルに拡大している背景を教えてください。

ICT技術の急速な進化とサーバやネットワーク等のコスト低下により、アイデアさえあれば世界のどこにいてもビジネスを立ち上げられる時代となりました。そして世界を見渡すと、各地の課題や風土・文化により全く異なるビジネスアイデアや技術が世界中で育っていると感じます。今、イノベーションは世界各地で同時多発的に生まれているのです。

もはやシリコンバレーやロンドン、イスラエルといった集積地を見るだけでは、世界のイノベーションの動向を知ることはできない――そこで、世界中で勃発するエッジの効いたイノベーションを察知し、アイデアを実ビジネスとしてスピーディーに実現していくために、様々な都市でビジネスコンテストを開催しています。

――今回、オーストラリアのメルボルン、チリのサンティアゴ、ポルトガルのリスボンなどが新たなコンテストの拠点となりましたね。個人的には、あまりオープンイノベーションが盛んなイメージのない都市もあります。

オーストラリアはスマートシティや農業などイノベーションのテーマが多く、政府が積極的に推進しています。チリも国策としてイノベーションに大きな投資をしています。そしてポルトガルはエコシステムが大変発達しており、驚きましたね。政府が資金を出してスタートアップの共同施設を作っています。

これらはほんの一例で、我々が回っている各都市に限らず世界中のあらゆる地域で、政府、インキュベータ、ベンチャーキャピタル、大企業、コンサル、アクセラレータなどが一丸となってイノベーション創出に取り組んでいます。

▲ポルトガル・リスボンでのコンテストの様子


イノベーションは、多数決では決まらない

――今回15都市を回って、特に印象的だった技術やソリューションを教えてください。

イノベーションのアプローチについて大きく2つの捉え方をしています。1つは、現在見えているビジネスの後押しや拡張を目指すもの、もう1つはこれまでのビジネスをひっくり返す可能性があるディスラプティブなものです。最初のほうはAIを使うことなどは当たり前。特定の技術やソリューションを組み合わせて、AI、ブロックチェーンや認証、IoT、ペイメントなど様々な技術やソリューションを組み合わせて、新しいビジネスモデルを創り上げていくスタートアップが増えているという印象を受けました。

また2つ目は、デジタルIDとして個人の情報をどのように活用流通させるのか、新たな規制対応も含めたソリューションや、量子コンピューティングなどのようなセキュリティのあり方そのものを変えていく可能性があるものまで、いろいろなソリューションを提供するスタートアップに出会うことができました。

――各地での最優秀企業に共通点はありますか?

今回のコンテストでは、先ほど述べた1つ目の観点から、現実的な課題にマッチした、実ビジネスに近いソリューションを選定しています。我々は、イノベーションを架空のものにしたくない。PoCやニュースリリースで終わらせたくもありません。だからこそ、現実に転がっている課題解決ができるかどうかに焦点を当てて選定しています。さらには将来的にスケールできるかどうかも重要なポイントです。

スタートは小さくとも、将来的には世界の課題を解決し、グローバルなプラットフォームになる――要するに、世界を変えていく可能性を持ったアイデアを持つスタートアップが揃っています。

▲世界各都市のNTTデータのパートナー企業と共に、コンテストを運営している

――なるほど。NTTデータが支援するのは各都市での最優秀企業のみなのでしょうか?

いえいえ。我々がサポートしていくのは最優秀企業だけではありません。特に今回は、各地域にあるNTTデータグループ会社が本気でコンテストで出会ったスタートアップを育てようとしている動きがいくつも出ています。また、現実的な課題に根差したイノベーションも、もちろん重要ですが、突飛なアイデアもイノベーションの芽として育てていきます。だって、ある意味イノベーションって「そんなの無理無理!」と言われるものから生まれるじゃないですか(笑)。

コンテストは多数決になりがちですから、そういう「無理無理!」となるエッジの効いたアイデアは、決して選ばれません。しかしイノベーションは、多数決では決まらないんですよ。強いパッションを持つ人や熱狂的なファンにより火がつくことがあります。

――例えばどんなエッジの効いたアイデアがありましたか?

たくさんありますよ(笑)。例えば、シェアリングエコノミーを使った集金サービス。これはチリのスタートアップPago 46のソリューションです。キャッシュレス社会が進展していますが、クレジットカードや銀行口座を持っていない人も多い。そこで、個人が集金を代行するというサービスです。UberEatsの集金版のようなイメージですね。現実的には規制や安全性の面でいろいろ議論が出るでしょう。ですが、キャッシュレス社会に取り残される人も必ずいます。その点で、とても面白いアイデアだと感じました。実際、今大手銀行のBBVA(スペインのビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行)と実証実験を行っています。

――ほかにも印象的なアイデアはありましたか?

そうですね。もう一つは、ミラノのスタートアップSOMOSが提案した渋滞問題を解決するために「青信号をお金で買う」というサービス。お金を出した人は赤信号を青信号に変えてスムーズに走行できる。逆に赤信号続きで時間が掛かってもいい人はお金をもらえる。これが発表された時、会場はざわつきました(笑)。実際に点数も低かったのですが、これは考えてみると面白くて。会員制やネット広告みたいなリアルタイムビッティングなど、プライシングモデルで制御することができるので、やり方次第では今後面白い社会インフラに化ける可能性があります。


日本は研究開発のレベルが非常に高い。海外スタートアップとの掛け合わせで可能性は無限大

――東京開催のコンテストでは、AIを活用した文書読み取りエンジンを開発するCinnamonが優勝企業に選出されましたね。どのようなポイントが評価されたのでしょうか?

彼らの強みは、グローバルで優秀な技術者を抱え、エクスポネンシャルな技術開発を行っているということ。そして、先ほどもお話しましたが現実に根差した課題を解決できるという点ですね。ビジネス文書を業務システムに取り込むために、現状は多くの人手が必要となっています。そこで彼らのAI OCRを活用することにより、業務効率が飛躍的に向上します。これは市場として非常に大きく、社会インフラと成り得るサービス。そこを高く評価しました。

▲東京開催のコンテストで最優秀企業に選出されたCinnamon

――世界各都市のスタートアップを見て、改めて日本のスタートアップにどのような期待をしていますか?

世界には、アイデアや技術があふれています。そして多様なスタートアップが各国の課題・風土にマッチした技術やソリューションを生み出し、イノベーションを起こしています。日本のスタートアップも、もっと世界のスタートアップとつながって、互いのソリューションを掛け合わせて何が生まれるかを考えていくと、面白い展開になるのではないかと思います。特に日本は研究開発のレベルが非常に高いですから、海外スタートアップとの掛け合わせにより技術をビジネスモデルに昇華させていくと、最高のイノベーションにつながるのではないでしょうか。

――いよいよ、3月22日にグランドフィナーレですね。ここで優勝すると、ビジネス化に向けたフルサポートを受けられるのですよね。

はい。ビジネスサポートチームの組成や対象テーマ現地でのビジネス・マーケティング支援など、ビジネス化検討を3カ月間にわたってフルサポートします。このコンテストは日本市場だけではなく世界を視野に入れていますから、NTTデータの世界53か国・地域、219都市のネットワークを活用し、どの地域に馴染むビジネスなのか、現地のお客様を含め意見交換も行います。その後、実証実験や資本提携など、体制づくりまで取り組んでいきます。これまでも、10件の協業を実現しており、経験・実績は豊富にあり、スタートアップへの支援体制も万全と言えますね。


NTTデータの豊富なリソースで、スタートアップを強力にサポート

――最後に、スタートアップに向けてメッセージをお願いします。

NTTデータがスタートアップに提供できる価値は、3つあります。1つは世界53か国・地域、219都市に広がるマーケティングチャネル。 NTTデータの顧客との提携により、国内のみならず、ヨーロッパ、APAC、中国、北南米に強力な現地グループ会社があり、彼らを通じて世界に向けての展開も視野に入ります。グローバルにビジネスを展開することが可能です。

そして2つ目は、当社がインフラ企業として培ってきた技術力とソリューションです。私たちは研究所を中心に幅広い技術基盤があり、その技術を活用していくことが可能です。また、日本市場においては金融・公共分野をはじめ、全産業にソリューションを提供しています。BtoBビジネスであるため、あまり世の中に広く知られてはいませんが、実は金融機関をつなぐプラットフォーム等、日本を支える社会インフラを当社が提供しており、日本の金融機関のほとんどが当社のプラットフォームを利用しています。まさに日本を支えるインフラを提供しています。スタートアップの皆さんには、このリソースを上手く利用して、一企業と進めるよりも数百倍のレバレッジの高い展開をしていただけます。

――3つ目の価値と何でしょうか?

はい、3つ目に提供できる価値は、資金です。このコンテストには、賞金はありません。ビジネスコンテストは賞金額に注目されがちですが、数百万円賞金をもらったとして、果たしてそのビジネスはスケールするでしょうか?我々の目的は、イベントを開催することではなく、ビジネスの創出。ですから先ほどもお話した通り、3カ月間みっちりビジネス化に向けた検討を行い、その結果を受けて必要な資金やビジネス形態を含めたバックアップを行い、一緒にビジネスを創っていくのです。

――なるほど。

NTTデータには、スタートアップがスケールする上で必要となる多様なリソースやチャネルがあります。ですからぜひ、エッジの効いた技術やビジネスモデルを、どんどんぶつけてください。豊洲の港から、我々と一緒にイノベーションの大海原に船を漕ぎ出しましょう!

合言葉は“さあ、ともに世界を変えていこう”です。


取材後記

第7回はグランドフィナーレを迎えるが、残間氏に今後について伺ったところ、「NTTデータには、イノベーションを創出する使命があります。今後も、世界中の様々なパートナーと連携を強めていきたい」と頼もしい答えが返ってきた。世界中に広がる顧客基盤、インフラ企業としての技術・ソリューション、資金、そしてイノベーションに対する飽くなき情熱――NTTデータの豊かなリソースは、大海へ漕ぎ出しビジネスチャンスを掴みたいというスタートアップにとって、非常に心強いはずだ。

NTTデータへのオープンイノベーションに関するご相談やお問い合わせがございましたら、こちらのアドレスまでご連絡ください。

oibi@kits.nttdata.co.jp

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