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【Startup Culture Lab. #10レポート】スタートアップに多様性は本当に必要?グローバル企業のキーパーソンが戦える人材&組織を作るためにとったアクションとは

【Startup Culture Lab. #10レポート】スタートアップに多様性は本当に必要?グローバル企業のキーパーソンが戦える人材&組織を作るためにとったアクションとは

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スタートアップエコシステム協会は、スタートアップの成長に必要なイノベーションを推進する人材・組織開発にフォーカスした、学びと知見を広くシェアする研究プロジェクト「Startup Culture Lab.」を立ち上げ、これまで9回のイベントを実施している。

本記事では10回目として開催された「グローバルに通用する多様性に溢れた組織とは」をテーマとしたトークセッションのレポートをお届けする。

スタートアップ経営者だけでなく、スタートアップで働く人やこれから起業を考える人、組織開発に係る人材、VCやアクセラレーターにとっても有用なノウハウが詰まったトークが繰り広げられ、示唆の深い内容となった。

【登壇者】

・高山 清光 氏 / Josys SVP of Japan Business, CRO / 日本統括

・橋本 和宏 氏 / フォースバレー・コンシェルジュ株式会社 取締役

・リュウ シーチャウ 氏 / 株式会社サニーサイドアップ 代表取締役社長

・藤本 あゆみ / 一般社団法人スタートアップエコシステム協会 代表理事 モデレーター

多様性が必要なスタートアップの特徴は

「グローバルに通用する多様性に溢れた組織とは」をテーマにしてはじまったセッションは、スタートアップ界隈のジェンダーダイバーシティに関するデータの紹介から幕を開けた。モデレーターの藤本氏は自身が代表理事を務めるスタートアップエコシステム協会が実施した調査の中から、スタートアップのCEOにIPOについて質問したところ、「予定なし」の回答が女性では半数にのぼることがわかったという(男性は3割)。

この背景には、資金調達などで外部から評価を受ける場合での対応として、結婚や子供の有無など個人的な質問をされたケース(女性28%、男性5%)が男女で異なること、頼れるネットワークの有無(男性は半数が有り、女性は6割が「十分でない」と回答)といった点から、ジェンダーギャップがあることがわかっている。

藤本氏は「今回はジェンダーギャップの話がメインではないが」と前置きしつつ本題に入り、最初のトークテーマとして「スタートアップの成長に多様性は本当に必要か」を登壇者に問いかけた。

▲高山 清光 氏 / Josys SVP of Japan Business, CRO / 日本統括

ジョーシスの日本統括を務める高山氏は「キャリアのほぼ全てをグローバルでのBtoBのSaaS立ち上げ」を担ってきた経験から、「ビジネスによるのでは」と回答した。ソフトウェア開発は「アイデア・スピード勝負の部分がある」として、競争の激しいソフトウェア市場では思いもよらないものを作らなければならないという。そのため、ソフトウェアに限って言えば組織に多様性を持たせることを重視しているとの見解を述べた。

この意見に、フォースバレーコンシェルジュに創業メンバーとして参画し取締役を務める橋本氏も同意する。自身が15年に及ぶグローバル人材採用支援コンサルティング実績経験を持つことからも、スタートアップは「国内市場はシュリンクしていくので創業時からグローバルを視野に入れる」ことが重要であり、採用の観点からも必然的に多様性は意識しなければならないという。

例えばITエンジニアは国内に100万人いるが、グローバルでは2000万人いるとされていて、人材採用の面だけ見ても多様性の重要性は増していると述べた。

▲橋本 和宏 氏 / フォースバレー・コンシェルジュ株式会社 取締役

PR企業のサニーサイドアップで2023年7月より代表取締役社長を務めるリュウ氏は、ダイバーシティの必要性について「どのフェーズでやるかは考えなければならないが」と前置きしつつ、必要であると回答した。

リュウ氏は留学生として日本にやってきてから、卒業後はP&Gやジョンソンエンドジョンソンといった米国外資企業を渡り歩き、中国企業のカルチャーを持つレノボでCMOを務めた経験を持つ。傍目に見れば多彩な分野で成果を出し続けてきたように映るが、リュウ氏はいずれの企業でも事業ドメインの専門的な知識を持っていなかったことから、自身も多様性を持つ人材だと捉えているという。

一方で、多様性が必要ない企業もあるようだ。リュウ氏がキャンプ用品メーカーの人事担当者から聞いた話では、同企業はキャンプが好きな人を採用する戦略をとっているという。新卒採用試験としてキャンプを実施して、キャンプが好きな人を採用することで、ユーザーに愛される商品開発ができていることからも、多様性を必要としない組織も少なからず存在すると考えを明かした。

グローバルとダイバーシティを兼ね備えた組織を作るためのTIPS

では、組織として多様性を武器にする場合、具体的にどういった取り組みが有効なのか。橋本氏は「創業当初から公用語を英語にして組織を作った」という。公用語を英語にすることで、候補者が「そういう会社だ」と魅力を感じて応募するため、採用がしやすくなったと実体験を語った。

藤本氏が「英語のレベルはどの程度必要か」と質問すると、橋本氏は「ポジションにもよるが、TOEICのスコアなどはあまり参考にせず業務上問題なくコミュニケーションできるかどうか」を重視していると応えた。リュウ氏もこれに賛同し「以前勤務していた企業のグローバルのトップの英語はあまり上手ではなかった」と振り返り、むしろ能力次第でトップのポジションを狙えるという意味では良い文化だと語った。

▲リュウ シーチャウ 氏 / 株式会社サニーサイドアップ 代表取締役社長

PR企業であるサニーサイドアップでは多様性を浸透させるためにチャレンジしていることがあるという。リュウ氏は「どうしてもPRで成果を出すことで営業成績が出て、PR部門が強くなりすぎる」ことを懸念点に挙げ、「PR以外の部署が定着しないことが可視化されず苦労している」と自社の課題を分析する。

PR以外の部署にもスポットをあてるための取り組みとしてリュウ氏は、エンジニアを採用してメディアリストのマスタ管理システムを構築し、業務効率を上げた事例を紹介した。狙い通り業務効率が改善され、PR以外の部署からエース社員を生むことに成功したという。

いま組織がすべきアクションのヒントは「実際に行ってみる」こと

これから組織をグローバル化したい、もしくは多様性を持たせていきたい場合、なにをヒントにして取り組みを始めればいいのだろうか。インドやシンガポールにも拠点を持つジョーシスでは、「コストがかかったとしても本社である日本に訪問してもらう」ことで企業文化を理解してもらうことが重要だと高山氏は言う。

加えて、「組織が大きくなるにつれて多様性が薄れていく」ことへの対応としてミーティングなどで小さな違和感でも話してもらうための環境づくりを徹底しているとのこと。これを「違和感マネジメント」と呼んで、さまざまな職種や役職から意見が挙がることで多様性を保つ仕組みを作っているという。

橋本氏も高山氏と同様に「実際に行ってみる」ことがヒントに繋がると実体験を語る。橋本氏が採用面接のために、世界トップクラスのIT系大学であるインド工科大学を直接訪問した際に、学生寮の壁やベッドが数式で埋まっていて、日本の学生との文化の違いを肌で感じることができたという。

加えて、部署や営業所などを「局所的にグローバル化にチャレンジする」ことでノウハウを蓄積することも可能だという。チャレンジングな組織の場合、海外人材を契約社員で雇用するなど、リスクを小さくとどめた形で組織を作ればスモールスタートしやすいとのこと。

リュウ氏は「うまくいっていない組織はチャンス」だと捉えることが多様性を浸透させるヒントになるという。例えば、うまくいかない理由が「同じメンバーで長くチームを運営している」ことである場合、まったく新しい人材を投入するとそれが起爆剤となって再び活性化するケースがあると持論を展開した。

▲藤本 あゆみ / 一般社団法人スタートアップエコシステム協会 代表理事

最後に藤本氏は組織のグローバル化と多様性の確保について「現地を訪問するなど、一次情報を自ら取りに行くこと」と「グローバルや多様性について熟知している人を採用すること」が重要であり、できれば両方とも実現できることが望ましいと総括し、セッションを締めくくった。

取材後記

「グローバルに通用する多様性に溢れた組織とは」をテーマにはじまったセッションは、調査結果を参照しながら、スタートアップの多様性はまだまだ十分ではないという背景を前提としてスタートした。そもそも「組織として多様性を受け入れるかどうか」の考え方から言語の壁や海外人材の採用など、議論は多岐に渡ったが、登壇者はみな「絶対にこうするべき」という勝ちパターンを持っているわけではなく、組織のフェーズや抱える課題などにあわせて柔軟に対応するべき、というスタンスであることが印象に残った。

(編集:眞田幸剛、文:久野太一)

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