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【BAK成果発表会レポート 第1弾】神奈川県をフィールドに実証実験を繰り広げた“15の共創チーム”が成果を発表!第1弾では脱炭素・サステナブル領域の4チームに迫る

【BAK成果発表会レポート 第1弾】神奈川県をフィールドに実証実験を繰り広げた“15の共創チーム”が成果を発表!第1弾では脱炭素・サステナブル領域の4チームに迫る

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神奈川県では、ベンチャー・スタートアップと大企業などのマッチングを通じて、新規事業創出や新商品・サービスの社会実装を支援する『ビジネスアクセラレーターかながわ(BAK)』を積極的に推進している。去る2月21日と22日に、今年度の活動の成果を発表するイベント『KANAGAWA INNOVATION DAYS Meetup Fes 2024』が、リアルとオンラインのハイブリッド形式で盛大に開催された。

リアルの会場となったのは、京セラ株式会社の研究開発拠点である『みなとみらいリサーチセンター』。会場を埋め尽くすほどの登壇者や関係者が集まり、発表に耳を傾けるとともに、発表後のネットワーキングで意見を交換した。また、会場の様子はリアルタイムで全国に配信され、多くの人々が視聴する、非常に注目度の高いイベントとなった。

TOMORUBAでは、本イベントを取材。この記事では、『BAK INCUBATION PROGRAM 2023』から生まれた15の共創プロジェクトに焦点を当て、全4回にわたって詳しくレポートする。第1回では、「脱炭素/サステナブル」をテーマにした4つの共創プロジェクトを紹介する。持続可能な社会の実現に向け、各チームがどのような取り組みを実行しているのか。ぜひ注目してほしい。

DAY1スタート!『BAK INCUBATION PROGRAM』から誕生した15件の共創チームが成果を発表

最初に、『ビジネスアクセラレーターかながわ(以下、BAK:バク)』の活動内容や座組、実績について触れておきたい。BAKは、『BAK INCUBATION PROGRAM(インキュベーションプログラム)』『BAK PARTNERS CONNECT(パートナーズコネクト)』『BAK 協議会』の3つの活動で構成されており、それぞれ役割が異なる。

1つ目の『BAK INCUBATION PROGRAM』は、共創プロジェクトの伴走支援を行う活動で、本記事で紹介するプロジェクトも、このプログラムから生まれたものだ。また、2つ目の『BAK PARTNERS CONNECT』は、共創の起点を生み出すマッチング支援を重点的に行うもの。そして、両プログラムを下支えするコミュニティの形成を狙うのが『BAK 協議会』である。2024年1月時点におけるBAK 協議会の参画数は633社にも達し、神奈川県に拠点を持つ多種多様な企業が加わり、有機的につながりながら各所で共創を生み出している。

2023年度の『BAK INCUBATION PROGRAM』は、「大企業提示テーマ型」「ベンチャー発自由提案型」の2つの形式で全国から共創パートナーを募集。合計327件の応募があり、そのうち15件の共創プロジェクトが採択された。採択後、10月から2月までの約4カ月間、活動資金とサポーターの支援を得て、共創アイデアの実現に向け実証実験などに取り組んだ。

成果発表会のDAY1では、サポーターから次の2名がコメンテーターとして参加した。

▲青木 志保子氏 / Wholeness Lab 代表、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター主任研究員(併任) ※オンラインで参加

▲中村 亜由子氏 / 株式会社eiicon 代表取締役社長

また、来場者には各発表に対して、『LIKE(素晴らしい)』『collaboration(協業したい)』の2つの視点でフィードバックできる付箋を配布。それらの付箋は発表後、各共創チームのブース内にあるボードに掲出。登壇者と参加者のディスカッションに役立てられた。

【01 クールフライヤー × 富士工業】 油の消費量を90%削減する、厨房ソリューションを開発

■発表タイトル『世界の揚げ調理食文化に貢献する省資源・脱炭素 厨房ソリューションの提案』

レンジフードなどの空気循環システムを製造・販売する富士工業(FUJIOH)と、フライヤー(揚げ物調理器)を開発するクールフライヤーは、飲食店などを対象とした画期的な省資源・脱炭素 厨房ソリューションを発表した。

両社が解決しようとする課題は飲食店の廃業率の高さだ。10年で90%もの飲食店が廃業に追い込まれているという。理由は様々だが、電気代や油の価格高騰も一因となっている。また、出退店時のダクト工事の費用負担も重い。こうした課題に対処するのが両社の厨房ソリューションである。

富士工業は、ダクト工事不要の空気循環システムを提供している。このシステムは、室外との温度交換が必要ないため、空調効率の良いことが特徴だ。一方で、オイルミストを除去する脱臭フィルターのランニングコストの高さが課題だという。そこで注目したのが、今回の共創パートナーであるクールフライヤーの持つ技術である。

クールフライヤーが開発した揚げ物調理器は、オイルミストや油跳ねが少なく、油が酸化劣化しにくい、つまり油が長持ちすることが特徴だ。壇上の画面で投影された動画では、170度の油に氷や冷凍コロッケを入れても、まったく跳ねることなく静かに揚がる様子も紹介された。

両社の強みをかけあわせ、ダクト工事不要で、油の消費量やエアコン電力量を抑えられる厨房ソリューションを提供したいと話す。今回のプログラム期間には、油消費量の削減効果と脱臭フィルターの負荷軽減効果を検証するため、「唐揚げをひたすら揚げ続けた」という。総量にして1.7t。これはコンビニ1店舗の9カ月相当にあたるそうだ。

その結果、油の消費量を約90%削減できることを確認できた。通常、コンビニでは2~3日に1回の油交換が必要だが、実証では25日に1回の油交換でも問題ない状態だったという。加えて、脱臭フィルターの負荷も約23%軽減できることを確認できた。通常だと半年に1回の交換が必要となるが、7.4カ月に1回の交換で足りる。これは、クールフライヤーを使うとオイルミストや油跳ねが少ないことに起因する。

油と脱臭フィルターの消費量を減らすことで店舗運用コスト削減、ひいてはCO2排出量削減も可能だという。今後も実証実験を継続して効果を検証していくとともに、神奈川工科大学 健康医療科学部 管理栄養学科の専門家と共同研究を開始し、揚げ物のおいしさも追求していくと力を込めた。

【02 CALCU × グリーンハウス】 次世代型ダストボックスを業務用キッチンに導入し、食品ロスを可視化・削減!

■発表タイトル『AI画像認識によるゴミ箱の内容物データの分析を通じた食品ロスの可視化と店舗運営改善』

グリーンハウスは企業や学校、病院、高齢者施設、ホテルなどでの食事の提供や、『とんかつ新宿さぼてん』に代表されるレストラン・デリカ事業を展開する企業だ。本プログラムでは、画像認識機能を備えたIoTダストボックスの開発を行うCALCUとともに、食品ロスの可視化や削減を目指して実証実験に取り組んだ。

日本国内では年間約522万トンもの食品ロスが発生しており、外食産業から発生する食品廃棄物の量も少なくない。脱炭素の文脈でも、食品ロス削減によるCO2削減の効果は大きいとされている。

こうした課題に技術力で立ち向かおうとしているのがCALCUだ。同社は、食品廃棄物の削減・最適化により、事業者の利益最大化を図るIoTシステムを提供している。本プログラムでは、グリーンハウスの持つキッチンにCALCUのダストボックスを設置して、食品ロスの可視化・削減に取り組む実証実験を行った。

実証の目的は3つ。(1)食品廃棄物の画像を収集し、そのデータを有効活用すること、(2)画像認識精度を向上させること、(3)ソリューションの有効活用を図ることだ。では、どのような仕組みを持つシステムなのか。

CALCUのシステムでは、ダストボックスが重さを認識すると、カメラが画像を撮影する。その画像から食品廃棄物の種類や重さ、金額などをダッシュボード上に可視化。それだけではなく、廃棄物の処理に要するCO2排出量も算出できるという。

今回のインキュベーション期間中、まずは導入先のキッチンの探索から開始した。グリーンハウスは全国に2500箇所以上のキッチンを持つが、実証先の選定には苦戦したと話す。というのも、多くのキッチンでゴミ箱を動かして使う運用になっており、固定設置が難しいからだ。また、キッチンが狭いところも多く、大きなゴミ箱を置く場所が少ないことも、導入先探しを難しくしたそうだ。

最終的に1月末より銀座にあるホテルグランバッハ東京銀座(2021年11月開業)のキッチンに、CALCUのダストボックスを置き、試験的な運用を開始。データ分析も始めているという。今回の経験を踏まえ、CALCUの金子氏は「ターゲットをより絞った形で、事業展開をしていこうと考えている」と語り、発表を締めくくった。

【03 ヘミセルロース × 小田急SCディベロップメント】 商業施設から出る食品廃棄物を、アップサイクルして製品化

■発表タイトル『廃棄物処理のアップサイクルを目指す』

続いて登壇したのは、植物由来のプラスチックを開発するヘミセルロースと、小田急電鉄沿線で商業施設の運営を手がける小田急SCディベロップメントの共創チームだ。両社は、商業施設で廃棄される野菜や果物を収集し、植物由来のプラスチック製品へとアップサイクルする実験の内容を発表した。

ヘミセルロースは、植物や樹木に含まれる原料・ヘミセルロースを活用した植物由来プラスチック『HEMIX』を開発している。石油由来プラスチックと比べてCO2を削減できること、生物分解性が高いため環境に優しいことが特徴だ。一方、小田急SCディベロップメントは、 グループ全体で『Beyond Waste』を掲げて廃棄物の削減に取り組んでいる。

今回は、商業施設で廃棄される30種類の野菜・果物からヘミセルロースを抽出して製品化し、商業施設の来店客に触れてもらう実証実験を行った。ヘミセルロース社では、杉や竹など単一の材料から製品化を行った実績はあったが、複数の材料を混合して製品化するのは初めて。水分量が問題で製品化に苦戦する果物もあったが、試行錯誤のうえで複数のアップサイクル品を完成させることに成功したという。壇上では、その実物が披露された。

▲輪止めやアクセサリープレート、キャラクターのフィギュアなどが、食品廃棄物から制作できたという。

2月初旬に、小田急SCディベロップメントの運営する商業施設『新百合ヶ丘エルミロード』で、アップサイクルをテーマとしたイベントを開催。ヘミセルロース社が作成した食品廃棄物由来のアップサイクル製品も展示された。また、廃棄物から製作したアクセサリープレートも、本イベント内の子ども向け塗り絵イベントで活用されたという。

イベント参加者からアップサイクルに関するアンケート(n=310)も取得。その結果、 59%がアップサイクルについて知らないと回答。アップサイクル製品の購入経験がある人は4%にとどまった。認知度の低さが明らかになった一方で、アップサイクル製品を「試しに購入してみたい」層も確認できた。その種類を尋ねたところ、雑貨と食品の割合が高く、既存製品と同額以上を支払う意識がある人も多いことが分かったという。これを踏まえて、今後、雑貨や食品などのアップサイクル製品を開発していく意向だという。

【04 アクポニ × 富士工業】 アクアポニックスに気流制御技術をかけあわせ、レタスの収量22%UPを実現

■発表タイトル『アクアポニックス × 気流制御が生み出す持続可能な農業』

水産養殖と水耕栽培を混合した生産方法『アクアポニックス』の普及を図るアクポニと、空気循環システムを開発する富士工業は、相模原市の廃校でアクアポニックスと気流制御技術を活用したレタス栽培実験を行い、その成果を発表した。

日本の農業における課題の一つとして、エネルギー価格の高騰が挙げられる。エネルギーや資源を循環させ、利用効率を高めていくことが重要だ。その解決策のひとつとなりうるのがアクアポニックスだという。

アクアポニックスとは、水産養殖と水耕栽培をかけあわせた循環型栽培システムで、魚と野菜を同時に生産する仕組みだ。魚のフンを微生物を使って肥料化し、野菜を育成する。綺麗に浄化された水は、再び水槽に戻って、システム内で水が循環する仕組みだ。水・電気・肥料の利用効率が高く、生産性と環境保全性の両立が可能だという。

今回は、このアクアポニックスの技術と、富士工業の気流制御(空気循環)技術を用い、「気流制御による生産性への影響」と「資源循環の可視化」の2点について実証実験を行った。

具体的には、相模原市にある『さがみロボット産業特区プレ実証フィールド』(廃校)を使い、アクアポニックスを用いてレタスを栽培。野菜ベッドと水槽、フィルターから成るアクアポニックスの周辺に、エアコンと還流ファン、センサー(BAK協議会員のマクニカ社 提供)を配置し、「空気質制御あり」と「空気質制御なし」で収量やエネルギーコストの比較を行った。

その結果、1点目の「気流制御による生産性への影響」に関しては、空気制御を行うことで、レタスの収量を22%向上させることができた。また、エアコンの電気代も76%削減できる見込みが確認できたという。2点目の「資源循環の可視化」に関してだが、循環型農業の効果として、窒素肥料の使用量の大幅な削減や脱炭素化が可能だという。

アクポニの試算によると、例えば、日本の野菜耕作面積(112万ha)のうち20%をアクアポニックスにすると、窒素削減量は年間10万トンになり、CO2の削減量も年間25万トンにも達する。これはJクレジット買取価格で換算すると、約3.9億円にもなるという。

今後の展望としては、さらなる実証を進めながら、2027年までに「全国200農園」を目指してアクアポニックスの普及を図り、産業として定着させていきたいと熱意を見せた。

* * * *

次回の第2弾記事では、引き続き「脱炭素/サステナブル」をテーマにした4つの共創プロジェクトを紹介する。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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ビジネスアクセラレーターかながわ、通称BAK(バク)。神奈川県内の大企業とベンチャー企業によるオープンイノベーションを促進のためのプログラム「BAK 2023」が始動。2023年5月30日より、ベンチャー企業が大企業と連携して取り組むプロジェクト提案の募集を開始しました。