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【シェアリング × ○○】 シェアリングが可能にする未来

車、物流、ファッションなど、シェアリングビジネスが日本国内でも徐々に広がりを見せている。”所有”から”シェア”へ。多様化するライフスタイルや消費行動、国内の人口減少などを背景にしながら、注目を浴びているシェアリングビジネス。――その現状と、未来についてイノベーターたちと考えるミートアップイベント、【SHARING NEXT INNOVATION ~シェアリングビジネスは○○業界をどうかえるのか?~】が10月17日にBASE Q(東京・千代田区)にて開催された。

会場には、シェアリングビジネスに関心を寄せる大企業からスタートアップなどのビジネスパーソンが150名以上集結。シェアリングビジネスに関わるイノベーターたちの講演やパネルディスカッションに耳を傾けた。


「助け合い」の文化が根付く日本とシェアリングビジネスの親和性は高い。

本イベントの冒頭で登壇したのは、寺田倉庫 MINIKURAのプロダクト責任者である姫野氏。【シェアリングエコノミーで業界をどう変えるか】をテーマにした基調講演が行われた。

「”寺田倉庫”と聞いて、どんな会社を想像しますか?」という問いかけから、同社の事業を説明した姫野氏。寺田倉庫はお米を預かる事業からスタートした老舗企業であるものの、倉庫事業の拡大路線から脱却し、アート・ワイン管理などの高付加価値ビジネスを大きく事業をシフトさせたという。

そして、2012年に新規事業としてスタートさせたのが「minikura」だ。minikuraは、業界初のクラウド収納サービス。「minikuraに関しては、実は自社の倉庫を使用しておらず、大手の物流会社に委託しています。私たちはminikuraというプラットフォームの構築のみに注力しています」と話す。

▲寺田倉庫 MINIKURAグループ プロダクト責任者 姫野 良太氏

法人向けOA機器の営業職や大手クレジットカード会社のWeb事業部などでキャリアを重ねた後、2016年に「minikura」の魅力に惹かれ寺田倉庫にジョイン。現在はminikuraチームにて、API管理やアライアンス系プロジェクトのマネジャーなどを務める。

実際に、minikuraはシェアリングビジネスとの親和性が高く、エアクローゼット、AOKI、レナウン、VOYAGE GROUPの4社が展開するファッションレンタルサービスを支援している。例えば、AOKIのsuitsboxというサービスの場合、システムづくりから仕組みづくりに至るまで一気通貫でビジネスをサポート。衣服の型崩れを防ぐためにハンガーを変更したり、ユーザーのサイズに合わせて裾上げして出荷するなど、細かなオペレーションについても支援を行っている。

姫野氏は、minikuraによるシェアリングビジネス支援に携わっているものの、シェアリングの浸透に関してはいまだ道半ばという。というのも、国内のシェアリングビジネス2つの大きな課題を感じているからだ。その課題というのが、“マネタイズ”と“文化的な側面”だ。

物流・倉庫は、レガシーな業界でマネタイズが難しいと思われている。しかし、レガシーだからこそ、イノベーションが起きやすいとも言える。コスト構造を改善することで、サービス展開しやすい余地があると話す。さらに、シェアリングサービスを利用したいと思う層はまだまだ低く、安心・安全面に不安を抱える消費者も少なくない。しかし、もともと「助け合い」の文化が根付いている日本人にとってシェアリングビジネスは親和性が高いはずだと姫野氏は話す。

「シェアリングサービスを受け入れる文化や価値観が広がれば、一気に拡大するビジネスだ」と話す姫野氏。さらに、国内の事業者が少ない今、シェアリングビジネスはブルーオーシャンであるとも語った。


大手企業のアセット×スタートアップの技術が、シェアリングビジネスを加速させる。

続いては、【シェアリングが起こす、日本の物流イノベーション】をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。登壇したのは、ラクスルが展開する物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」の事業部長・狭間健志氏、荷物一時預かりシェアリングサービス「ecbo cloak」を展開するecboの代表・工藤慎一氏、AIで配送ルートを最適化するオプティマインドの代表・松下健氏の3名だ。モデレーターは、再配達撲滅するための生活アプリ「ウケトル」を展開するイー・ロジットの代表・角井亮一氏が務めた。


【写真右→左】

■株式会社イー・ロジット 代表取締役社長 兼チーフコンサルタント 角井亮一氏

2000年、通販専門物流代行会社であるイー・ロジット設立、代表取締役に就任。会員企業を中心とした物流人材教育研修や物流コンサルティングを行う。2015年、再配達撲滅するための生活アプリを開発するウケトルを立ち上げる。「Amazonと物流大戦争」(NHK)「すごい物流戦略」(PHP)など、日米中韓台で26冊出版。

■ラクスル株式会社 執行役員 ハコベル事業部長 狭間健志氏

コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーなどを経て、2017年にラクスルにジョイン。PC・スマホから簡単に荷物の配車手配ができる物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」を担当し、同事業を牽引している。

■ecbo株式会社 代表取締役社長 工藤慎一氏

2015年にecbo株式会社を設立。オンデマンド収納サービス「ecbo storage」を展開。2017年1月には、世界初の荷物一時預かりシェアリングサービス「ecbo cloak」を立ち上げる。

■株式会社オプティマインド 代表取締役 松下健氏

1992年生まれ。名古屋大学情報文化学部卒業し、同大大学院情報学研究科 博士課程後期に在籍中。2015年、人工知能を活用し、配送業務の効率化を行う『物流×人工知能』のテックベンチャー・オプティマインドを創業する。


各社ともに独自性の高いビジネスで、物流におけるイノベーションを興そうとしている。コンサル業界で経験を積んでいた狭間氏は物流というマーケットの強さにポテンシャルを感じてラクスルにジョインし、運送のマッチングサービスに挑んでいる。

ハコベルの関わる国内トラック物流市場規模はおよそ14兆円。大企業を中心とした多重下請けの産業構造のため、誰かがプラットフォーマーとして市場全体の効率化を推進することが求められていると話す。そこに名乗りを上げているのがハコベルだ。「ハコベルのようなシェアリングビジネスは、テクノロジーが源泉となっている。だからこそ、私たちのようなテクノロジー企業がチャレンジすべきだ」と狭間氏は語った。

また、ecbo・工藤氏は「世界の荷物預かりのマーケットは2〜3兆円ある」と予測。国内だけでも1000億円の市場があると読んでいる。工藤氏は、国内物流の課題を解決するためにも、うまくシェアリングの概念を国内に浸透させることが必要だと説いた。さらに、シェアリングビジネスを進めていくためにも、スタートアップと技術やスピード感と大手企業のアセットを掛け合わせることの重要性にも言及した。

一方、オプティマインド・松下氏は、「物流が、一番人間くさくて、泥くさい。それを私たちの技術で改善したいと思った」と創業時の思いを振り返りつつ、人工知能を活用した配送業務の効率化によって、この2〜3年で物流の世界を変えていきたいと意気込みを語った。


ファッション業界を変革するシェアリングエコノミー

次のパネルディスカションは、【ファッション業界を変革するシェアリングエコノミー】というテーマで行われた。寺田倉庫のMINIKURAグループでプロジェクトリーダーを務める浅見開氏に加え、同社との連携によりファッションレンタルサービスをスタートさせたエアークロゼットの前川祐介氏が登壇。さらに、男性向けのファッションレンタル「leeap」を手がける大堂氏も加わり、ディスカッションが行われた。


▲寺田倉庫 MINIKURAグループ プロジェクトリーダー 浅見 開氏

2008年4月に寺田倉庫入社。トランクルーム事業部でカスタマーサポートなどを経験後、新規事業である「minikura」の立ち上げメンバーとして活躍。現在は、シェアリング特化型の物流プラットフォーム「minikura+」を担当している。

▲株式会社エアークローゼット 取締役副社長 兼 COO 前川 祐介氏

コンサルティング業界やEC業界での経験を経て、2014年に“発想とITで人々の日常に新しいワクワクを創造する”を、ミッションに掲げた株式会社エアークローゼットを創業。月額制ファッションレンタルサービス「airCloset」をスタートさせる。

▲株式会社キーザンキーザン 取締役 大堂 立氏

大学卒業後に経営コンサルティング会社に就職。その後Webシステム開発会社を起業の後、ECコンサルティング会社を起業。キーザンキーザンにはCOOとしてジョインし、メンズファッションレンタル「leeap」のシステム設計からオペレーション全般を担当している。


モデレーターであるeiicon・中村がここ数十年のファッショントレンドを振り返りながら、2010年以降にシェアリングビジネスが世界的に普及してきたと説明。エアークローゼット・前川氏は、起業してから事業プランを練るなかで、欧米で注目を浴びていたシェアリングビジネスに興味を惹かれたと明かす。

「衣食住の中で、”衣”にフォーカスをして、プロのスタイリストが一人ひとりの好みやサイズ・ファッションのお悩みに合わせる提案型のファッションレンタルサービスを計画しました。しかし、私はこれまでにファッションに関わるビジネスを手がけてきたことはありません。在庫管理、衣服のメンテナンスなども経験はなく、さまざまな倉庫会社に話を聞きに行ったのですが、どこに行っても門前払いでビジネスが成り立たないと言われてしまいました。そこで最後に寺田倉庫さんに話をしてみたら、minikuraのスキームを使ってやってみようと言ってくれたんです」(前川氏)

寺田倉庫との最初の打ち合わせからわずか3ヶ月というスピード感で、エアークローゼットのファッションレンタルサービスはスタートを切ることができたという。寺田倉庫・浅見氏は、「minikuraは個品管理に強く、ファッションアイテムの管理にも親和性が高いんです。それが提携のポイントになった」と話す。

このように二人三脚でファッションレンタルという市場を作ってきたエアークローゼットと寺田倉庫だが、ファッションアイテムの管理方法やクリーニングの仕組みづくりなど、多くのハードルがあったという。そして前川氏はこのように続ける。「エアークロゼットがこだわっているのが、サービス全体の品質管理。”また使ってみたい”と思ってもらえるように最高品質のUXを提供できるようにこだわっています」

また、エアークローゼットの特徴の一つが、東京・表参道にリアル店舗を設けていることだ。「リアルな店舗を構え、実際にスタイリストのスタイリングを体験・体感してもらう。店舗は、体験価値提供と情報発信基地としての役割を担っています」と前川氏は話す。

今後の市場について、キーザンキーザン・大堂氏は、「大手メーカーによるマスカスタマイゼーションや個人レベルでのモノづくりが増えてくることが予想されます。さらに、物流の変革もあり、より面白い市場になってくると感じている」という。さらに前川氏は、「シェアリングの市場は間違いなく大きくなっていく。同時に、クリーニングやパッキング・梱包など流通分野のオペレーションにも再度、新しい角度から注目が集まっていくはず。そうすることで今まで見えていなかった市場価値が見えてくる」と指摘した。

そして最後に浅見氏は、「minikuraというプラットフォームを利用いただくことで、シェアリング市場をさらに大きくしていきたい」と語り、ディスカッションを締めくくった。


取材後記

労働人口減少や少子高齢化といった社会課題先進国である日本において、シェアリングビジネスは大きなマーケットに広がるポテンシャルを有している。エアークローゼット・前川氏のコメントにもあったように、シェアリングビジネスが拡大していくことで、今まで見えてこなかった価値あるビジネスも出てくるだろう。社会課題の解決にも結びつきながら、新しい事業創造のチャンスも見出せるシェアリングビジネスに、今後も注目を続けていきたい。

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:加藤武俊)