民間事業者の「オープンイノベーション」の取組を推進し、国内産業のイノベーションの創出と競争力強化への寄与を目指し設立されたJOIC(オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会)とNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は2018年10月22日(月)から24日(水)、虎ノ門ヒルズで開催された「第6回イノベーションリーダーズサミット」へ出展。今回、NEDOが支援を行っている研究開発型ベンチャーのうち、特に成果の目覚ましい企業20社を選抜したピッチイベント「NEDO ドリームピッチ」に潜入した。スタートアップと大企業のビジネスパーソンたちは積極的に意見交換し、会場は熱気に包まれた。

前編では、素材・バイオ・医療、電子・情報における次世代の技術を有するベンチャーピッチを紹介した。後編では、前編に続き、電子・情報、バイオ・医療に加えロボット・福祉機器分野におけるハイテクベンチャーの創造性の高いプレゼンテーションを紹介したい。


第一部:電子・情報

●株式会社Xenoma https://xenoma.com/

Co-Founder & 代表取締役CEO 網盛 一郎 氏

株式会社Xenomaは東京大学・染谷隆夫研究室からのスピンオフベンチャーで、伸縮性エレクトロニクスをコア技術として、センサーを搭載したスマートアパレル「e-skin」を開発している。センサーや配線はすべて伸縮性があり洗濯も可能と耐久性も非常に高く、カメラを使わずにユーザーの動きを認識できる。服の上からデータを取るという事は体のデータを取る事と等しく、医療分野では、ドイツの大学病院と共同で、認知症患者向けのモニタリング機器として実証実験を進めている。

この1年間で18ものプロジェクトが立ち上がるほど、同社技術のニーズは高い。スマートアパレル開発に必要なパーツを全て自社で開発しており、スピーディーな生産が可能となっている事が、その理由の一つだ。今後の展開として、網盛氏は、東京マラソンの全ランナー3万人対して「e-skin」を無償で提供・着用してもらうプロジェクトを実現したいと話す。健常者の膨大な心電データを収集し、心筋梗塞になる前に状態を把握する、予防医療の実現を目指しており、そのための協力パートナーを求めている。


●株式会社クァンタリオン http://quantaglion.com/

代表取締役社長 露崎 典平 氏

株式会社クァンタリオンは原子核の崩壊を用いた世界初の量子乱数チップを製造するベンチャー企業である。「比類なき真正乱数発生機構がIoT基盤を安全にする」をビジョンとして掲げる同社は、複製不可能な多機能認証素子を開発する。原子核の自然崩壊におけるアルファ粒子の放出は完全にランダムであり、そのランダムパルスを応用することで、自然乱数を発生させる電子チップを研究開発し、従来の暗号化通信よりはるかに強靭な安全性を構築した。これは、未来のセキュリティに応用する技術となる。

現在同社はコストダウン化を図り、セキュリティチップとなるような開発を更に進めている。今後、認証の強化、改ざん防止、成りすまし防止などのアプリケーション開発、そして通信安全確保を求める金融・メーカーなど新たなパートナーと組んでいきたいとアピールした。


第二部:バイオ・医療ベンチャーピッチ

●ライトタッチテクノロジー株式会社 https://www.light-tt.co.jp/

代表取締役社長 山川 考一 氏

ライトタッチテクノロジー株式会社は世界初の採血不要の非侵襲型血糖値センサーを開発する量子科学技術研究開発機構発のベンチャーである。現在世界で4億人を超える糖尿病患者は、2035年には世界で約6億人、成人の10人に1人は糖尿病という予測がある。糖尿病患者は1日複数回血糖値を測定しなければならず、また現在の血糖測定法は、針で刺して採取した血液を測定するため、苦痛や精神的ストレスを伴う。さらに針やセンサチップ等の消耗品のコストが高いなど経済面での課題もある。

こうした中で同社は赤外線レーザーを用いることで身体を傷つけず、約5秒間光に指をかざすだけで血糖値の計測を実現可能とした。また、この方法ではリアルタイムで血糖値を計測することができ、Bluetooth対応により測定直後にスマートフォンへ結果を送信できるなど、血糖値を管理しやすい。血糖値センサーは、従来の赤外光源の約10億倍の明るさを持つ高輝度「中赤外レーザー」を採用していることから、血液中の血糖値を正確な測定が可能となった。今後モバイル化・商品化を進めるため、さらなる資金調達、協力パートナーを求める。


第三部:ロボット・福祉機器ベンチャーピッチ

株式会社人機一体 http://www.jinki.jp/

代表取締役 社長 金岡博士 氏

株式会社人機一体は、フィジカルな苦役を無用とする人型重機を開発するベンチャーである。

力学ベースのロボット制御工学技術より、現実の物理世界で強大な力を人が自在に操ることを可能とする技術を開発している。これにより、人が日常的に行う、壊れやすいものをつかむといった繊細な力を再現する一方、人の 10 倍、100 倍の力を発揮して重量物を運ぶことが可能となる。過酷な作業現場や危険地域等の極限環境での実用化を目指す。コンピュータによるオートバランスと人間によるマスタスレーブ操作を組み合わせる「ハイブリッド制御」を実装している。ロボットとして人の動きを増幅させ且つ安定化させるというハードとソフトの両立を実現できる点が同社の強みだ。

金岡氏は、「人と機械が一体となり、思い通りに力を操れるロボットプラットフォームを確立したい。この思いに共感してもらえる企業と是非出会いたい」と熱く語った。


取材後記

選抜されたスタートアップはどれも魅力的であり、革新的な技術を持ち合わせているのも驚きであったが、資金調達や提携などの実績を積み、着実にスケールアップしている企業ばかりであった。超高齢化社会・人口減少の一途をたどる中で発生している様々な難局をどう乗り越えていくのか。今後、国内にとどまらず、世界へと羽ばたいていく企業ばかりであるが、どの企業も1社だけでは掲げるビジョンを成し遂げる事は難しい。新たなパートナーとどんな未来を創るのか。引き続き、変化の兆候を見たいと思う。

(取材・文:保美和子)