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コニカミノルタ×Rist共創事例 | 3Dレーザーレーダー×AIで社会課題を解決する

コニカミノルタ×Rist共創事例 | 3Dレーザーレーダー×AIで社会課題を解決する

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空間をスキャンして人や物体を検知する「3Dレーザーレーダー」。この技術を活用した行動モニタリングシステムによって状態監視からリスク予知までを行い、交通インフラ/セキュリティ領域の社会課題解決を見据えるコニカミノルタ。同社は3Dレーザーレーダーのさらなる性能向上を実現するために、eiiconを介して精度の高い動画像解析技術を外部に求めた。

そうしたなかで出会ったのが、京都大学発のAIベンチャーであるRistだ。同社はDeep Learningを用いた判断システムを得意としており、すでに数多くの大企業との共創も実現している。

今回、コニカミノルタは、高速道路の建設・管理技術に焦点をあてた展示会である「ハイウェイテクノフェア」(11/28〜29 東京ビッグサイト)への出展にあたり、Ristとの協業成果を含む3テーマの展示を決定。――いかにして、2社はここまで辿り着けたのか。その共創の過程をコニカミノルタ・細木氏とRist・遠野氏から話を伺った。

■コニカミノルタ株式会社 産業光学システム事業本部 状態監視ソリューション事業部 マネジャー 細木哲氏

新卒で国内大手電機メーカーに入社し、デジタル家電向けプロセッサの開発に従事。2012年、コニカミノルタエムジー(のちコニカミノルタに吸収合併)に転職し、医療機器のシステム開発を担当。2017年1月に自ら手を挙げて新規事業を手がける現部門に異動。「3Dレーザーレーダー」の技術開発から戦略立案・実行まで、マネジャーとして幅広く手がけている。

■株式会社Rist 代表取締役社長 遠野宏季氏

京都大学で化学を専攻しながら、医工連携領域の博士課程リーディングプログラムに参加。医学・介護へのICT活用の研究も行う。その後、株式会社エクサインテリジェンスの立ち上げを経験。一般物体認識や心臓MRIなどの医療画像、時系列データの解析・システム開発に携わる。 2016年8月、ICTや機械学習を始めとした各種科学技術を用いた社会課題解決に取り組む株式会社Ristを創業する。

最初の打ち合わせから、明確なゴールを設定。それが大きな信頼へとつながる。

――まず初めに、コニカミノルタ さんとRistさんの出会いからお伺いしたいと思います。

コニカミノルタ・細木氏 : 我々は、3Dレーザーレーダーの性能向上を実現するために、動画像データを高速に処理・分析できる技術を外部に求めていました。取材記事も掲載していただき、広く共創パートナーを募る中で、eiiconさんからご紹介いただいたスタートアップが、Ristさんでした。――それが、2018年の5月頃ですね。その前にも何社かスタートアップと会いましたが、Ristさんは元々大手企業とのオープンイノベーションによる実績もあり、話をさせていただいていて、安定感がありましたね。

――なるほど。いま細木さんから「安定感」とお話がありましたが、遠野さんは外部企業との共創に取り組む際に、何か意識されていたことはありますか?

Rist 遠野氏 : 多くのクライアントから言われるのが、「Ristは、忌憚のない意見を言ってくれる」ということなんです。あと弊社は、パッケージがあってそれを使う前提で提案するのではなく、ゼロベースで技術の提案をしています。

コニカミノルタ・細木氏 : たしかに、「○○というパッケージ作ったのですが、これで何かできますか?」という、”パッケージありき”のご提案をいただくスタートアップさんも少なくありません。もちろんパッケージも重要ではありますが、パッケージありきだと、私たちが何をしたいかを伝える前に、方向性が一定決まってしまいます。しかしRistさんは違いました。最初の打ち合わせから、お互いの実現したいことを本音で話し、「ここまでやりましょうよ」と、提案してくれました。3Dレーザーレーダーを使った完成イメージまで想像できたので、それが非常にありがたかったですね。

――具体的に遠野さんは、どのような提案をされたのですか。

 Rist 遠野氏 : 知財に関わる部分もあるため深くはお話しできませんが、現状の3Dレーザーレーダーを使ってどの粒度までデータが取れるのか、その課題と実際のデータ形式も聞きながら、AI技術を組み合わせた解決手法の仮説を立てました。それをもとに、検証していきませんか?とお話をさせてもらいました。

会話を重ねながら意識のズレを修正。結果、技術的に大きなカベを乗り越える。

――今回の取り組みで、技術的に難しい部分はどこにありましたか。

コニカミノルタ・細木氏 : 協業によって解決したい課題は大きく2つありました。まず1つ目が、「物体検知」の部分です。走ってきた物体を検知した時に、どこまで精度の高いデータを取れるかという点ですね。そして2つ目が、3Dレーザーレーダーの大きな課題でもある、黒い車両などの「低反射率の物体」の距離をいかに推定するかという点です。

Rist 遠野氏 : 1つ目の物体検知の部分は、開発を進めていくなかでクリアになりました。コニカミノルタさんの3Dレーザーレーダーは、検知したデータの処理が丁寧だったので、こちら側としては非常にやりやすかったです。しかし、低反射率の物体の解析はデータ形式も新しく、初めは上手くいきませんでした。実は、最初に取り組んだ物体検知の方に時間とリソースを割き過ぎてしまい、プロジェクトを進めるバランスも崩れてしまっていたんです。その際に、両社うまく進んでいない期間がありました。そこで、改めてゴールの擦り合わせを細木さんたちと行い、お互いの目指すゴールと期待するアウトプットを擦り合わせしました。それから、アプローチを変えて再度トライし、何とか低反射率の問題点も克服できました。

――そうだったんですね。最初の打ち合わせからしっかりと意見を交わしていても、スムーズにいかない部分は出てきてしまうんですね。

コニカミノルタ・細木氏 : 最初に取り組んだ物体検知の部分は、当社でもある程度確立できている技術だったので、ある程度順調に進むのではと予想はしていました。ただ、低反射率の課題検討との配分については、こちらも正直考え切れていなかったんです。物体検知の検証を複数回まわして、そろそろ着地させましょうと話をしていて、「あれ、低反射率の方はまだまだですよね?」と話になりました。我々は最初の段階で仮説を提示されて、必要以上に安心してしまったんですね。こちらからも都度お伝えすべきだったと思っています。――そういったちょっとしたボタンの掛け違いが、気が付くと大きなズレになってしまったんです。

――なるほど。

コニカミノルタ・細木氏 : どれだけ準備していても、定例ミーティングをやっていても、お互いの意識の擦り合わせは腹を割って話さないといけないと実感しましたね。軌道修正してからは、さすがRistさんで。最後はかなり追い込んでいただき、物体検知・低反射率ともに技術的な課題解決に向け大きく前進しました。

Rist 遠野氏 : このプロジェクトが始動したのが7月下旬。物体検知の方にリソースを割き過ぎてしまい、低反射率の方に取りかかったのが9月で、11月上旬にようやく納得のできる解析結果を導くことができました。こちらのディレクション不足もあったと、反省する点もあります。最初に取り組む項目を設定するだけではなく、その取り組み結果に対する期待値の部分もこまめにすり合わせを行う必要があったと思います。特に今回のような新規技術開発の場合では、できるかどうか確実ではないことに取り組んでいるので、進捗をこまめに共有しながら、残りの期日とリソースを踏まえて、お互いが納得する落としどころを相談するような進め方が必要だと感じました。

 コニカミノルタ・細木氏 : ただ、軌道修正できたのも、定期的にWeb会議を行っていて、必要な部分はお互いの顔を見ながら話を進めていたからなんです。Ristさんは基本京都にいらっしゃるのですが、東京に出てきていただいて対面で打ち合わせをしていただくこともありました。特に3Dレーザーレーダーのデータフォマットである三次元データは、扱い慣れていない部分もあると思ったので、face to faceで具体的な解説を行いました。そういった状況を踏まえた密なコミュニケーションが、問題解決を加速させた理由の一つになっています。

ハイウェイテクノフェアをきっかけに、3Dレーザーレーダーはさらなる飛躍を目指す。

――今回の3Dレーダーレーザーによる、コニカミノルタさんとRistさんの共創は、元々ハイウェイテクノフェアへの出展を目指していたのですか?

コニカミノルタ・細木氏 : そうですね。協業がうまく進んだ場合はぜひ出展内容に含めたいと思っていました。そのため、ここまでに効果を最大限高めたいと目標にして進めていました。出展内容は、2つの取組んだ課題のうち低反射率の物体に対して、3Dレーザーレーダーがどのように距離を推定するかを紹介する内容になっています。

<ハイウェイテクノフェアにおける「行動モニタリングシステム」の展示内容>

――ハイウェイテクノフェア出展後は、こんなことにチャレンジしたい等はありますか。

コニカミノルタ・細木氏 : 今回、Ristさんとの協業で培った画像認識技術で、ある程度の成果は出てきましたが、事業に落とし込む時には改良が必要な点がまだまだあります。お客様に満足いただける技術にしていくには、やり切れていない部分があるので、そこを突き詰め、3Dレーザーレーダーを事業として成長させていきたいですね。

Rist 遠野氏 : 私たちの強みは、具体的に確立されていない技術を確立させる、0→1の領域だと思っています。この方法でいけば、あとは時間を掛けて開発していけば大丈夫だねという部分を見つけることが得意なんですよ。大企業だと0→1が苦手でも、1→10や1→100に成長させていく運用面が得意な会社が多いと思います。だからこそ弊社はアイデアベースから提案させて頂きたいと思っていますし、目標地点についてもクライアントが満足できる部分までお付き合いしたいと思っています。

――今後、オープンイノベーションを目指す企業に、こうすればプロジェクトがドライブしていくといったアドバイスがあればお願いします。

コニカミノルタ・細木氏 : まずは大企業とスタートアップ、お互いの立場を知ることが重要だと思います。リソースの配分などは大企業とコンパクトに進めているスタートアップとは違います。何でもかんでもお願いしたら、スタートアップのリソースは当然枯渇してしまいます。足りてない部分は大企業側が考えていきながら、お互いがリーズナブルに走っていけるように、会話を重ねていくことが重要だと思います。

Rist 遠野氏 : スタートアップは大企業がどのように開発を進めるのか、そのプロセスを理解することが必要だと思います。スタートアップはどうしてもスピードを大切にして、細かい検証のエビデンスを取っていなかったりする。まずは良い結果が絶対条件なので、複数の仮説を試して上手くいった仮説を元にさらに開発を進めていくため、上手くいかなかった仮説を丁寧に検証することは後回しになりがちです。一方で、大企業は上長への報告といったプロセスが発生します。だからこそ、どのような仮説でどんな条件を試したかといった細かなドキュメントを作るなど大企業が必要としている部分にまで手を回した方が、結果的に早くプロジェクトが進んでいきます。

――今回、コニカミノルタさんとRistさんはeiiconを介して出会い、共創を進めてきました。最後に、eiiconを使う効果・メリットなどをお話いただけると嬉しいです。

コニカミノルタ・細木氏 : 冒頭で、スタートアップからパッケージがある前提で話を受けて、自分たちのやりたいことがイメージできないこともあるとお話しました。しかし、それもいい部分もあります。競合や差別化、社会のニーズには常にアンテナを立てる必要がありますが、eiiconを通してさまざまな企業と会うことで、今スタートアップを含めた周囲でどんなことが起こっているのか、先入観を持たずにフラットな状態で前提がすりあった上で具体的な話を聞けて、展示会等とは違った情報をインプットできています。

 Rist 遠野氏 : eiiconだと、大企業の担当者の顔が見えるのがいいですよね。実は、細木さんのeiicon に掲載されている3Dレーザーレーダーの記事も僕は見ていて。情熱のある人だし、やりたいことも具体的で、ぜひこの人と共創していきたいと思ったんです。オープンイノベーションで「何ができるか」も大切ですが、そのベースにあるのはやっぱり「誰とやるか」なんですよね。

取材後記

今回、3Dレーザーレーダー×AIという、最先端技術が融合した共創事例を語っていただいた。交通インフラやセキュリティなど、あらゆる領域で実用化が期待され、今後も様々な企業から注目を集めることだろう。――今回ご紹介したコニカミノルタとRistが生み出した技術は、本日(11/28)から2日間、交通インフラに関わる最新技術を展示したハイウェイテクノフェアに出展される。両社が生み出した次世代技術をいち早くキャッチアップしたい方は、ぜひ足を運んでみてほしい。

●コニカミノルタ×Ristによる「車両と人の行動モニタリングシステム」が出展される、11/28-11/29開催「ハイウェイテクノフェア」の詳細は、下記URLよりご確認ください。

http://htf.express-highway.or.jp/htf2018/info/

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:古林洋平)


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