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サッポロビジネスコンテスト開催! | 次世代『酒・食・飲』の事業創造を目指す

サッポロビジネスコンテスト開催! | 次世代『酒・食・飲』の事業創造を目指す

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1876年の創業以来、開拓者精神を大切にし、「酒」、「食」、「飲」を中心として業界に先駆けたビジネスを展開してきたサッポログループ。同グループは今回、未来のビジネスを切り拓くために外部共創のビジネスコンテストを開催する。2018年12月3日からスタートするこのコンテストでは、「現代のライフスタイルに合わせた『酒・食・飲』文化の創出」・「健康社会の実現」・「需給最適化と余剰品活用によるフードロス解消」「欲しい時に欲しいものが手に入る情報最適化」という4つのテーマが掲げられている。

グループとして初の取り組みに、経営トップはもちろん社員の間でも、モチベーションが高まっているという。事前に社内で共創アイデアを募集したところ、90件近い熱意あるアイデアが集まったそうだ。――ビジネスコンテスト開催にあたり、その背景や、提供リソース、募集テーマについて、サッポロホールディングス株式会社 取締役 戦略企画部長 野瀬裕之氏に話を伺った。

▲サッポロホールディングス株式会社 取締役 戦略企画部長 野瀬裕之氏

1986年、サッポロビール株式会社に入社。酒類事業の営業を経て、2000年に商品開発グループリーダー。その後、ブランド戦略部グループリーダー、サッポロブランド戦略企画グループリーダー、焼酎戦略部長、ブランド戦略部長と、マーケティング畑を歩む。2015年よりサッポロホールディングス株式会社 取締役戦略企画部長に就任。現在は、神州一味噌株式会社 取締役、サッポロインターナショナル株式会社 取締役も兼ねる。

“開拓者精神”で、時代に先駆けたイノベーションを創出して来た「サッポロ」

――今回、ビジネスコンテストを開催する背景を聞かせてください。

野瀬氏 : 私たちサッポログループの140年余にわたる歴史は、イノベーションの連続です。まずサッポロビールの起源は、1876年北海道開拓使が当地の野生のホップを活かしたビールづくりを始めた『開拓使麦酒醸造所』にあります。そしてもう1つは、1887年に中小資本家が集まり設立された『日本麦酒醸造会社』、ヱビスビールの源流です。双方とも、何もないところから始まったのです。そして1899年、自社のビールを消費者に味わってもらう場として、銀座に日本初のビヤホールである「恵比寿ビヤホール」をオープンさせました。

――当時、メーカーが消費者とのタッチポイントを作ることは大変なイノベーションだったのではと思います。

野瀬氏 : おっしゃる通り、「恵比寿ビヤホール」は一つのイノベーションのカタチと言えるでしょう。さらに当社は、1909年にはビールを発酵させる過程で生まれる炭酸を活用して炭酸飲料「シトロン」を製造し、清涼飲料水事業に進出。1964年には米国へビールの輸出を開始し、グローバル企業の第一歩を踏み出しました。現在の米国においてサッポロブランドは、アジア系ナンバーワンビールブランドへと成長しています。

――一方で、サッポログループは「場」を生み出す事業も展開されています。

野瀬氏 : そうですね。1988年には、所有している土地を活用するリアルエステートビジネスをスタートし、サッポロファクトリーや、恵比寿ガーデンプレイス、GINZA PLACEを開業しました。――このように、ビール事業、飲料事業、海外事業、外食事業、不動産事業、私たちの事業はすべて時代に先駆けたイノベーションだったのです。

今後もサッポログループは、開拓者精神で未来に価値あるビジネスを創り、物語を紡いでいきます。しかしながら、昨今の変化の激しい時代に持続的な成長を果たしていくことは難しく、それは社内で完結できることではありません。私たちが140年以上かけて積み重ねてきたリソースと、世の中で様々な課題解決に挑むスタートアップとの掛け合わせで、新たなチャレンジをすることが不可欠だと考えています。そこで今回、初めての試みとしてビジネスコンテストを開催することとなりました。

▲1/21締切 SAPPORO Business Contest  エントリーページ

“食”に関わる「次世代の文化創出」と「社会課題の解決」をリードしていく

――今回、共創において実現したい領域・募集テーマとして、「現代のライフスタイルに合わせた『酒・食・飲』文化・体験の創出」・「健康社会の実現」・「需給最適化と余剰品活用によるフードロス解消」「欲しい時に欲しいものが手に入る情報最適化」といった4領域を挙げていらっしゃいます。そのテーマで実現したいことを聞かせてください。

野瀬氏 : サッポログループはお客様の豊かさへの貢献を目指し、サッポロビール、ヱビスビール、ポッカ、恵比寿ガーデンプレイス、銀座ライオンなどレストランを運営するサッポロライオンといった事業ブランドを擁しています。これらのブランドは、品質の良さや美味しさという価値においては高い評価をいただいています。そして、すべてのブランドがイノベーションによりスタートし、新たな文化を日本国内で創出してきました。

しかしながら現状を見ると、既存事業にはイノベーティブな感覚が不足していると痛感しています。今必要なのは、それら既存事業に再びイノベーションを興すことです。そこで、外部スタートアップの方々の新しい感覚と掛け合わせることで、現代のライフスタイルに合わせた新しい食文化の創出に寄与したいと考えています。

――食のあり方自体を変えていくということですねその他のテーマもお聞かせください。

野瀬氏 : 世界を見渡すと食の環境変化は深刻な社会課題です。ご存知のように、欧米諸国では肥満問題から「砂糖税」「チョコレート税」「ジャンクフード税」を導入するなど、健康リスクに対しては日本よりも海外の方がシビアな視点を持っています。

さらには、人口過剰による食糧不足は地球規模の課題であり、SDGsにも設定されています。「食・飲」に関わる企業として、美味しさ・品質の高さの追求は不可欠ですが、加えて社会課題解決に取り組むことが求められています。経営として、それができない企業は今後淘汰されていくでしょう。

フードロスにおいては業界全体の大きな課題として捉えており、真正面に受け止めて取り組んでいきたいと考えています。こうした健康やフードロスといった社会課題に使命感を持つスタートアップ企業に皆さんとともに、社会と企業のそれぞれのサスティナブルであり続けるため、新たな事業を創出していきたいです。

――例えば、どんなスタートアップと、どのようなことを実現していきたいと考えていらっしゃいますか?

野瀬氏 : 私たちの事業は大麦やホップ、レモンなど、植物由来の原料を加工したモノ造りが中心です。こうした“プラントベース”の技術や事業の可能性は、今後も大きく広がっていくと思います。最近の例で行くと、エンドウ豆から抽出した植物性タンパク質のハンバーガー用パティを開発する「ビヨンド・ミート(Beyond Meat)」というアメリカのスタートアップが話題ですね。この会社にはビル・ゲイツも出資するほど、世界的な注目の高い領域です。

――その他に注目されている領域はありますか?

野瀬氏 : 物流領域においても、テクノロジーを活用できると思います。酒類や飲料は重量があるためフレートコストも嵩みます。こうした課題をテクノロジーで解決できると、業界全体への貢献につながるでしょう。

ライフスタイルでも、様々な新サービスを展開できるはずです。例えば、その時の気分に合わせたお酒のレシピを提案するようなサービスがあると面白いと思います。また、私自身、商品開発やマーケティング畑のキャリアが長いため、お客様の生活を楽しく豊かにするようなサービスや、生産性を高めるような事業を生み出していきたいという想いがありますね。

――これまでの外部共創事例があれば、ぜひ教えてください。

野瀬氏 : マーケティングや商品開発の事例ですと、一般消費者のアイデアをもとに極小ロットでビールを作る「HOPPIN’GARAGE」を、2018年10月22日よりスタートしました。これは、食コミュニティ運営のスタートアップ企業キッチハイク社との共創で、ユーザーイノベーションによる新たなビールブランド創出を目的としています。

また、お客様と共同で新しいビールを開発する「百人ビール・ラボ」プロジェクトも好評を集めた企画です。これは2011年からスタートした企画で、ビール愛好家とオンライン上でLIVE会議を行うなど、半年間かけてビール開発の全工程を体験できるプロジェクトです。これまで、開発したビールはインターネットで限定発売するなど、様々な企画にチャレンジしています。

――ビール好きには嬉しい企画ですね。その他はいかがでしょうか。

野瀬氏 : 産学連携の事例で代表的なものは、「LOX-1レス大麦」開発・生産です。ビールの原料となる大麦には、ビールを劣化させる原因となる「LOX-1」という酵素が含まれています。私たちは岡山大学との共同研究で、この酵素を持たない「LOX-1レス大麦」の発見に成功しました。その後、カナダのサスカチュワン大学との共同研究により、この「LOX-1レス大麦」の商業生産ができる品種を開発・育成、さらにオーストラリアのアデレード大学とも協力し、現在はグローバルでの栽培体制を構築しています。この品種を原料とした「旨さ長持ち麦芽」は、当社の基軸ブランドである「サッポロ生ビール黒ラベル」に使用されています。

マーケティング、商品開発、実証フィールドなど、豊富なリソースを提供

――サッポログループとの共創によるメリットや、提供できるリソースについて教えてください。

野瀬氏 : まずはマーケティング支援ですね。商品・ブランド開発や、マーケットリサーチ、バリューチェーンの構築といったノウハウの提供を行うことができます。必要に応じて、広告代理店やデザイナーを含めた外部パートナーのネットワークも活用していただけます。

次に、プロダクト開発支援。サッポログループは、酒類の基盤技術や醸造ノウハウ、大麦とホップなどのバイオ研究、レモンや味噌などの調味料などの研究開発を行っております。そうした様々な研究開発部門との情報交流が可能です。また、食に関わるメーカーですから、品質の作り込みや、安全・安心を担保する品質保証に関しては高度なノウハウを保有しています。工場での製造・加工技術のサポートも提供できます。

――冒頭にお話いただいたように、サッポログループさんが持つ「場」を使った実証実験なども可能ですか?

野瀬氏 : もちろんです。多様な実証フィールドも魅力に感じていただけると思います。私たちは外食事業として「銀座ライオン」「ヱビスバー」「かこいや」など200店舗のレストランを展開しています。さらに「恵比寿ガーデンプレイス」「サッポロファクトリー」「GINZA PLACE」など、お客様とのタッチポイントとなるランドマーク拠点もあります。メーカーとして、自社でこれほどの実証フィールドを抱えているということは大きな特徴であり、私たちならではのメリットです。

また、お取引先である大手小売店様や、飲食店様、様々な場所に設置している自動販売機といった販売インフラを活用した取り組みができることも、サッポログループの強みだと考えています。さらに、経営管理や、財務分析の支援。知財ノウハウサポートといった、経営戦略の支援を行うこともできます。

――今回のビジネスコンテストの特徴も、ぜひ聞かせてください。社内でも気運が高まっているそうですね。

野瀬氏 : 人材インフラとしては、社内選抜でモチベーションの高いメンバーをアサインします。業界や組織の内情を理解した社員たちと、スタートアップの方々との共創チームを創出することで、実現性の高い事業やサービス創造、作り込みを目指していきます。先日、社員からも新規事業のアイデアを募集しましたが、90件近いテーマが集まりました。具体的な内容については精査をしているところですが、これは想定以上の数字でした。社員のイノベーションに対する意欲の高さ、創業以来の開拓者精神が今も確実に息づいていることを実感しましたね。

また、ビジネスコンテストに向けた50万円相当の調査費用の支援、そしてサムライインキュベート社による事業化に向けたメンタリングも、大きな特徴です。投資も見据えた大規模なビジネスコンテストの開催は、私たちにとって初めてのことです。今回、何より問われているのは私たち経営サイドの姿勢だと思っています。大上段に構えて提案を聞くだけでは、何も生まれません。スタートアップの方々と次世代に貢献するビジネスを生み出すために、私たちも本気で取り組んでいきます。

――最後に、応募企業に向けてのメッセージをお願いします。

野瀬氏 : 最初にお話ししましたが、サッポログループの原点は北海道開拓使です。140年以上前、新しくビール事業を起こそうという志を抱き、北海道の地に立った人たちがいました。おそらく当時の札幌は、空気も澄んでおり街の灯りもなく、綺麗な星空が広がっていたと思います。開拓使たちはその空の下に立ち、星を見つめていたことでしょう。きっと、「あの星をつかむ」「あの星になる」という大きな志を抱いて。その志は、現代において新たなイノベーションに挑む私たちにも確かに受け継がれています。次世代の星になる、新たな星をつかむ、そんな志を持つ方々と、ぜひ新たなビジネスの創出に取り組みたいと思っています。

 

取材後記

サッポログループには、酒類・飲料・食品はもちろん、不動産や飲食店など、そのパイオニア精神から展開された特徴的な事業・ブランドがある。これらをリソースとして活用できることはもちろん、情熱とアイデアが豊富な選抜社員と共創チームを組んでイノベーションに挑めることは、本プログラムの大きな魅力だ。「酒」「食」「飲」の新たな文化創出、そして社会課題の解決に興味のある方は、ぜひ応募を検討して欲しい。

※プログラム詳細はこちらから→https://eiicon.net/about/sapporo-bc/

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:古林洋平)

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  • 叶内一彰

    叶内一彰

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