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【イベントレポート】第27回NEDOピッチ「J-Startup」特集!〜日本のスタートアップを盛り上げる5社が登壇〜

民間事業者の「オープンイノベーション」の取組を推進し、国内産業のイノベーションの創出と競争力強化への寄与を目指し設立されたJOIC(オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会)。11月27日(火)、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)とJOICの共催で、イノベーション及び具体的な事業提携事例の創出を目指すイベント「第27回NEDOピッチ」が実施された。

今回の第27回NEDOピッチは、経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成支援プログラム「J-Startup」 をテーマに開催された。国内スタートアップの中でも有望な5社による自社の研究開発成果や事業提携ニーズについて、大企業やベンチャーキャピタルなどの事業担当者に対し、創造性の高いプレゼンテーションを行った。

【J-Startupとは?】

経済産業省、JETRO、NEDOの三者によるスタートアップ支援プログラム。トップベンチャーキャピタリスト、アクセラレーター、大企業のイノベーション担当などがイチオシの企業として推薦した中から厳正な審査を経て選ばれた92の企業を「特待生(J-Startup企業)」として認定。グローバル企業への成長、ロールモデルとして国内のスタートアップを盛り上げる担い手となってもらうべく、集中的な支援を行っている。


Idein株式会社

https://idein.jp/

▲代表取締役/CEO 中村晃一氏

先進的なコンピュテーショナルセンシング・データ分析技術によって人・モノ・インターネットを繋ぎ、生活を豊かにするプロダクト・サービスを生み出すことを目的に2015年に設立。近年進歩の著しいパターン認識や信号処理の技術をセンシングへ応用し、実世界のあらゆる事象をソフトウェアで扱うことを目指している。設立以来、機械学習モデルの開発や応用アプリケーションの開発、推論の高速化等に取り組んできた。

データ通信、プライバシー、大規模データ処理の問題を気にせず、必要なときに必要なデータだけを取り出せる高度なセンシング技術を、手軽で安価に利用できる未来に向けて挑戦を続ける同社は、エッジコンピューティングを取り入れてコストを下げることに成功。ディープラーニング(深層学習)において、AI×IoTの橋渡しになりたい同社の目標に大きく近づいた。

これまで導入を阻む最も大きな壁はコスト。クラウドを利用して画像や音声をあげると通信料で月数十万円かかってしまうところ、同社製品Actcastはデバイス価格も運用コストも100分の1。大規模なPoCによって、世界進出を目指している。


株式会社mediVR

https://medivr.jimdo.com/

▲代表取締役社長/循環器内科専門医 原正彦氏

株式会社mediVRが開発しているのはVRを用いた医療機器。仮想現実・3次元トラッキング・人工知能技術を応用しつつ、個人に最適化した運動リハビリテーションを自動で行うことができる技術だ。この技術は、「リハビリテーション支援システム、リハビリテーション支援方法およびリハビリテーション支援プログラム」として特許を取得。同技術及び人工知能技術を用いて運動リハビリテーションを個々の患者に適した形で提供するプロダクトの開発を進めている。

現在、脳梗塞やパーキンソン病、高齢者など医療現場では、運動リハビリテーションを必要とする人が増えている。歩く上で必要な下肢の筋力、姿勢のバランスそして認知能力の中でも特に認知能力は、現代の医療技術では向上が難しい。

そこで歩行機能に重要な体幹バランス及び二重課題型の認知処理能力を定量的に評価するためのプロダクトを、医療機器クラス1の測定機能付自力運動訓練装置として、2018年末から2019年初期に販売開始予定。落ちたものを拾うなど理学療法士のアプローチを通じて機能が向上することを目指している。1日80分の利用で初年度の導入コストをペイできることから、病院や介護施設などへの販売を見込んでいる。


株式会社アラヤ

https://www.araya.org/

▲代表取締役 金井良太氏

株式会社アラヤが開発しているのは、「不動産価格設定・需要推定」などのデータ分析・予測・最適化ソリューションや「路上障害物検知」などの画像・IoTセンサー識別ソリューションに加え、同社が独自開発したディープラーニング演算量削減技術(Microsoft Innovation Award 2018の最優秀賞を受賞)を用いたディープラーニング小型化ソリューションや、「AI学習用データの高速生成」などのFA機器・ロボット制御ソリューションなど多岐に渡っている。このように広範囲のサービスを提供する同社で最もニーズがあるのが、人間の行動認識。導入コストを削減するために、ディープラーニングの演算量を少なくし、モデルの圧縮に特別なアルゴリズムを活用している。

現在、ドローンやロボットを使い、ディープラーニングを通じて自立的・自発的に行動できる取り組みを実施。リアルタイムで映像処理をするコストを下げるため、独自のディープラーニングを圧縮する技術を用いて、情報理論的観点から精度を落とさずにコストカットを可能とした。KDDIと東京大学の研究室と行っている研究開発プロジェクトでは、ドローンやロボットが未知の情報を自分たちで見つけられる仕組みを5Gで実現する考えだ。


株式会社バイオーム

https://biome.co.jp/

▲代表取締役/博士(農学) 藤木庄五郎氏

生物の遠隔測量において日本有数の技術を保持している同社のマネジメントチームは、生態学分野において卓越した知識を保有している。その知識を活用し得られたデータを解析、加工し、付加価値を付けてクライアントに提供できるサービスを研究・開発している。なかでも「現実世界(リアル)はゲームよりも面白い」をコンセプトに、出会った“いきもの”を集めて世界を冒険するコレクションアプリとして開発した「バイオーム」は、非常にユニークだ。

AIを使ったディープラーニングによる画像解析に加え、撮影時期や環境条件を含め学習させることで、生物の種類を判定する上で合理的な仕組みを構築した。現在、国内の生物6万2000種類に対応。具体的には、気温、降水量、どういった植物が周囲に生えているかなどから、生物の名前を判定する。仕組みができればtwitterなどの画像からも判定可能という。

同社が目指しているのは、バイオームに聞けば生物に関する全ての情報を得られる、というサービスを築くこと。世界中の生物に関する情報をデータ化し、利用可能にしていくことで、これまで自然相手で困難だったソリューションの提供も可能。iOSアプリは、来春リリース予定。


レキオ・パワー・テクノロジー株式会社

http://www.lequiopower.com/

▲COO 古田国之氏

革新的な医療機器とIT技術を駆使して、世界の医療空白地帯を埋めることに取り組むスタートアップ企業であるレキオ・パワー・テクノロジー株式会社。同社が誇る超音波スキャナー(エコー)は、発展途上国や教育現場向けに開発された。日本の保険診療現場や医療現場で使用されている超音波画像診断装置の価格とは異なり、圧倒的低価格で提供できる製品設計が成されている。PCにUSBを接続すれば駆動電力を確保でき、停電時にもPCバッテリーで使用できることから、野外や不安定な電気事情の地域でも使用することができる。

価格は約20万円〜50万円。教育用途の個人デバイスとしても使用できる価格帯とサイズを実現した。産婦人科や結石、腫瘍、介護など多くの現場での利用が考えられる。こうした技術を安心・安全に利用してもらうため、同社はユーザーへの教育も並行して行う考えだ。使用者ビューをリアルタイムで見せたり、無料教材のダウンロード、多言語教材の展開も視野に入れている。そのためにも、AIの学習プラットフォームやライフデータ・メディカルデータを合わせるなど、多彩なユースケースをつくるため、さまざまな事業者と組むことを検討している。


取材後記

「高度なセンシング技術を低コストで実現」、「VRを用いたリハビリテーション」、「AIを用いたデバイスの小型化、人工意識(好奇心)に向けた研究」、「環境のデータベースを用いて地球の未来に向けた情報収集」、「これまで医療の届いていない地域へ普及できるデバイスの開発」などーーJ-Startupに認定された企業ならではの製品開発やソリューションにおける話題が豊富なイベントとなった。

アイデアや技術を駆使し、どう未来を変えていくのか。経済産業省が期待するスタートアップのロールモデルとなる可能性を、十分に感じさせる発表内容だった。逆に、こうしたポテンシャルの高いスタートアップ企業が国内に数多くあることを考えれば、J-Startupという取り組みがいかに重要か、このイベントに来場した多くの人が認識できるいい機会となったのではないだろうか。

(取材・文:平田一記)