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【アクセンチュア×オープンイノベーション(1)】 オープンイノベーション拠点「アクセンチュア・デジタル・ハブ」を開設、日本が抱える社会課題を解決に導く。

世界的なコンサルティング会社のアクセンチュアが、オープンイノベーションに力を注いでいる。eiicon labではその取り組みをシリーズでお伝えしていく。今回フォーカスしたのは、同社が2016年7月に開設したオープンイノベーション拠点「アクセンチュア・デジタル・ハブ」だ。

このデジタル・ハブには、オープンイノベーションやデジタル領域のビジネスを専門に手がける同社の社員が常駐。同社のクライアント、スタートアップ企業、研究機関、自治体などが日々来訪し、ワークショップやビジネスマッチングなどが行われている。

デジタル・ハブのコンセプトは「Feel」「Connect」「Innovate」。デジタル・ハブに来れば、先進デジタルテクノロジーを「体感」し、様々な人と「相互連携」し、新しいビジネスモデルや商品、サービスを「創出」できるという。開設して半年程度だが、オープンイノベーションの実現に向けた様々な取り組みが進んでいるそうだ。デジタル・ハブを統括するアクセンチュアの保科 学世氏に、設立の背景や狙いについてお聞きした。

 

■「課題先進国の日本」だからこそ生まれるイノベーションがある。



▲アクセンチュア株式会社 アクセンチュア・デジタル・ハブ統括 デジタルコンサルティング本部 マネジング・ディレクター 保科 学世氏

 

「驚異的なスピードでテクノロジーが進化して、将来の予測が難しい環境において、もはや大企業であっても1社だけで新しいビジネスを創造していくには限界があると思います。新しいビジネスモデルや商品、サービスをスピーディかつ継続的に生み出していくためには、組織や業界の壁を超えたエコシステムを作ることが大切です。

そこで当社はお客様の支援を行う中で、スタートアップや研究機関、さらには政府・自治体などとの相互連携も促すことで、企業の成長や社会課題の解決を促進していきたいと考え、デジタル・ハブを設立しました」

——このように語る保科氏は、政府・自治体との連携がデジタル・ハブの特長の一つだと説明する。

「少子高齢化などのすでに浮き彫りになっている社会課題だけでなく、これまで目を向けられてこなかった潜在的な課題も特定し、解決に導くのがデジタル・ハブのミッションの一つです。

シリコンバレーでもイスラエルでも無く、課題先進国である日本でこそ取り組める課題に向き合うことで、日本におけるイノベーションの優位性を発揮できると思うのです。ですので、デジタル・ハブを通じて政府・自治体との連携も促すことで、市民生活に根付いたイノベーションを積極的に起こしたいと思っています」

 

■優れた技術やアイデアを発掘し、世の中に広める。




さらに、日本と世界との違いを保科氏はこう話す。

「例えば、AIの話をすると、AIに仕事を奪われる、という議論がよく交わされます。しかし、日本では今後確実に労働人口が減るのであり、むしろAIやロボティクスなどのテクノロジーを積極的に仕事の現場で活用しなければ、労働力が不足してしまいます。こうした日本の現状をむしろチャンスと捉え、世界に先んじて課題に取り組み解決していくことで、日本発のイノベーションを世界に生み出していけるのです」

こうした考えのもと、同社は、日本が多くの課題を抱えているヘルスケア領域でのオープンイノベーションを生み出していくために、排泄予知ウェアブル「DFree(ディーフリー)」を開発するスタートアップ企業のトリプル・ダブリュー・ジャパンと協業を果たした。

「ヘルスケアの中でも高齢化が進む日本の介護領域には、多くの課題があります。当社はトリプル・ダブリュー・ジャパンとの協業を通じて、神奈川県にある特別養護老人ホームでDFreeの検証実験を進めています。今後、より実践的で効果の高い技術・サービスに作り上げていくことで、介護領域でのイノベーションを加速させたいと考えています」

ここで、保科氏はアクセンチュアならではのオープンイノベーションのスタイルを強調する。

「当社は、企業の戦略立案からシステム設計、実際の運用までを一貫して手がけることで、同業他社との差別化を図ってきました。オープンイノベーションの取り組みにおいては、この優位性を活かし、スタートアップ企業などが持っている優れた技術やアイデアを、迅速且つ確実に世の中に広めていく橋渡し役を担っていきたいと考えています」

デジタル・ハブでは、常駐するデータサイエンティストが専門的なアドバイスを提供することもできれば、デザイナーがサービスのプロトタイプを作り出すこともできる。新しいイノベーションを生み出す際に、デジタル・ハブがもたらすメリットは計り知れない。

 

■先進デジタルテクノロジーを「体感」できる場。



最後にデジタル・ハブのコンセプトの一つである「Feel」についてご紹介したい。ここでは、最新のデジタルテクノロジーを文字通り「体感」できるのだ。

この日は、アクセンチュアの坂田 英宣氏に、ショッピング、海外旅行、コールセンター、それぞれのシーンでデジタルテクノロジーがもたらすイノベーションを実際にデモで紹介していただいた。

例えば、ショッピングのデモは、壁面のデジタルパネルで希望する商品のサイズや色、おすすめのコーディネートをスムーズに確認し、コーディネートに必要な商品の試着をパネル上で簡単に店員に依頼できる、といった内容だ。既に購入した人の口コミもチェックできる。

当然、この裏にはセンサーやモバイルなどの技術が組み込まれている。デジタルテクノロジーを活用することで、ショッピングにおいてどのような顧客価値を提供できるのか、店舗スタッフの業務にどのように貢献できるのか、こうしたデモを通じてヒントを得ることができるわけだ。

実際来訪した企業からの評判も良く、このデモをきっかけにして、オープンイノベーションに向けた議論が進むことも多いそうだ。デモを通して、我々の生活の中にも、こうしたデジタルテクノロジーがどんどん組み込まれてくることを確かに感じ取れた。

デジタル・ハブは、様々な企業や組織が気軽に利用できる場所だ。興味を持った方は、デジタル・ハブのWebサイトをアクセスしてほしい。

 

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)