スタートアップ側が選ぶ時代

最近急増している大企業が主催する「アクセラレータプログラム」。とてもよくまとまっているリストは今年4月のeiiconのこちらの記事。「2018年度アクセラレータープログラム108選」。(108とういう数字に煩悩を感じる(^o^;))

アクセラレータプログラムが「アクセル(加速)」するのは、本来は主催する事業会社の新規事業領域。それが同時に参加するベンチャーにとっても自らの事業を加速することにつながります。

アクセラレータプログラムそのものについては詳しい情報が色々あるので、今日は「スタートアップがアクセラレータプログラムを選ぶときのポイント」についてお話をしましょう。

昨今は大企業側がベンチャーを選ぶだけでなく、スタートアップ側が大企業(とそのアクセラレータプログラム)を沢山の選択肢の中から選べる時代になりました。


本気度をチェック

最初のポイントは大企業の本気度

オープンイノベーションがブームだし、イノベーションをやれと上から言われているからなんかやらなきゃ……という感じでやってしまっているプログラムも散見されます。

自身の既存事業がこのままでは衰退が見えている、だから、自ら一生懸命自分事として考えて「こういう新規事業領域をやろう」という具体的な方向性が設定されていて、そのために「XXができる技術やサービスがないとこの新規事業案は成り立たない。まだ具体的な特定はできないけれど、アイデアも含めてその『穴』を埋めてくれるスタートアップと組みたい!」という切羽詰まった渇望感まで至っているかどうかが「本気度」です。

本気かどうかを見抜くのはなかなか難しいですが、「AI, SDGs, IoT」などの流行りの言葉が散りばめられているだけでなく、その大企業で検討している新規事業領域や方向性が具体的に述べられているかどうかがポイントです。「新しい挑戦を!」などと「なんでもOK」というのは大体の場合、ダメです。


重要だから隠しているのか?

「そんな重要な社内の戦略的な情報はオープンにできないよ」とか言って、なんとなく何かを隠そうとしているように見えるところは、結局は「本気で何をしたいのか」をスタートアップ側に伝えることができず、いいパートナーにはなれません。そして、実は多くの場合は「隠す対象」となる戦略的な方向性や情報がまだ具体的に存在していないことも多くあると思われます。それをあたかも「大事な情報だから」というスタンスで「隠しているようにみせているだけ」。すっきりと、「なるほどこの会社はこれまでの事業からこちらの方に領域を拡大・変化させようとしているのだな」と納得できる情報や戦略がオープンになっていることが大事です。

スタートアップが活用できる大企業内の技術をオープンにしている場合も見受けられます。そのこと自体はスタートアップにとっても具体的なイメージを持つために大変役に立ついいことですが、それらの技術を使って「どういう新規事業領域をやりたいのか」が具体的に述べられていない場合は、結局はある意味の「羅列」でしかありません。自らが「こういう協業ができる」と発案する力が弱く人任せになりやすいとも考えられるので気を付けてください

また、アクセラレータプログラムを運営会社に丸投げしているのがバレバレな大会社も本気度が薄い証拠です。是非、その会社の担当者の方から直接話を聞いて、本気度を確認しましょう。

大企業の悪癖の一つといっていいのが、なんでも隠そう、漏れないようにしようという「高いセキュリティールール」。全ての(どうでもいい情報も含めて)パスワードをつけなければならなかったり、送信できるファイルのサイズが異様に小さかったり、テレビ会議(Zoomなど)が社外と使えなかったり……。全ては「本当に大事な情報だけでなく、何かあったら困るからとにかく外とはできるだけ遮断しておこう」という「ことなかれメンタリティー」の産物で、こういう風土の大企業と付き合うと、時間ばかりがかかってしまい、イライラが募ってしまいます。アクセラレータプログラムだけは特別な「ゆるいルール」を設定しているなどの努力をしている会社はまだマシです。

似たようなことでは「必要書類の数」。登録や開始する前の準備としての書類がやたらと多いのも、付き合っているうちに疲れ果てます。


メールのキャッチボールスピードで如実に分かる

これらの「付き合いにくい風土」が明確に現れるのが「メールのやりとりの速度」。私の経験では、大企業とのやりとりの大半が、「信じられないくらいに遅い」。

社内で何をやっているのかというと、大別すると「社内プロセスで多くの人の承認やチェックを受けるのに時間がかかる」ということと、もう一つは「忙しいから放置している」。放置して遅くなっても、日々、その社員の周りでの時間のスピードが大企業ではとんでもなく遅いので、放置していても気にならない。これも風土です。

スタートアップにとってスピードは生命線。その超貴重な時間をどんどん奪われてしまいます。

これは結構簡単にチェックできます。メールでやりとりをすればいいのです。すぐ返事が返ってくるかどうかはすぐ分かります。また、社内で時間がかかる場合でも、その理由といつ返事ができるかの返答をすぐ返してくれるかどうかも重要なポイントです。長く付き合っていくためには「すぐ返答をする」というキャッチボールのスピードを大事にする担当者であるかどうかはとても大事です。

「なんか中々返事くれないなあ」ということがあれば気を付けましょう。(多い……)

どう考えても5分で返事ができそうなことを一週間近く「しーん」としたままだ、とかいうことがあれば赤信号です。


私自身も5年前までは大企業に勤めていました。その時は、スタートアップや社外と付き合う場合は、戦略の情報開示とスピードをもっとも大事なファクターとして考えていました。

今は個人業として、大企業とのやりとりも多いのですが……ブチ切れるくらい遅いケースがむしろ増えている気さえします。

スタートアップのみなさんにとって大事なのが「時間」と「エネルギッシュに前進すること」。それらを阻害する匂いがする場合は……他を当たりましょう。


■漫画・コラム/瀬川 秀樹

32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。

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