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コンテンツビジネスの影の立役者・DNPが、共創の力でクリエイターとファンをつなぐ

コンテンツビジネスの影の立役者・DNPが、共創の力でクリエイターとファンをつなぐ

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大日本印刷株式会社(以下DNP)では、印刷事業をコアとしながらも、パッケージやエレクトロニクス、ICTなど、さまざまなビジネスを拡大してきた。アニメやマンガ、ゲーム、スポーツなどのコンテンツを活用したビジネスを展開するコンテンツコミュニケーション本部も、DNPの事業の多角化を象徴する部門の一つである。

コンテンツコミュニケーション本部が2017年に立ち上げたDNPクリエイター共創サービス「FUN’S PROJECT」は、アニメやマンガ、ゲームなど日本が誇るコンテンツの魅力を国内外のファンに向けて発信すると同時に、コンテンツを創出するクリエイターやコンテンツホルダーとファンをつなぐ多種多様なサービスを提供しており、業界内外から注目を集めている。

アニメ制作会社・出版社・ゲーム会社・クリエイター・業界団体・自治体などさまざまなプレイヤーとの共創も積極的に進めており、その一例として、昨年は高度なブロックチェーン技術を持つスタートアップであるBlockPunk社とはパートナーシップ契約を締結し、改ざん不可能なデジタル証明書を付帯したアニメの複製原画の販売を行っている。

DNPがオープンイノベーション活動の推進を目的としてスタートさせた「DNP INNOVATION PORT」では、「FUN’S PROJECT」のプラットフォームを活かして共創できる企業を募集するプロジェクトを立ち上げる方針だ。

今回はコンテンツコミュニケーション本部の河野氏と藤井氏、さらにはBlockPunk社のジュリアン氏に、DNPとBlockPunk社との共創についてお聞きするとともに、今後、共創を通して生活者に提供していきたい価値、DNPからパートナーへ提供できるアセットやリソース、求めるパートナー像などについて詳しく伺った。

<写真左→右>

■大日本印刷株式会社 コンテンツコミュニケーション本部 アミューズメントビジネス推進部 プロデュース課 課長 河野祐輔氏

2007年、新卒でDNPに入社。さまざまなビジネスを広範に手がけるトータルソリューション本部に配属。印刷物やシステム開発、映像制作、SNS関連事業など幅広い業務を経験する。その後、多くのコンテンツ系企業の商品開発を担当し、2017年にコンテンツコミュニケーション本部に配属。現職に至る。

■大日本印刷株式会社 コンテンツコミュニケーション本部 イベント・MD推進部プロデュース課 藤井大希氏

2010年、新卒でDNPに入社。情報コミュニケーション部に配属され、営業として家電系メーカーのカタログなどを担当。その後アミューズメント系の企業を担当する中で、さまざまな新規事業に携わる。2016年にはコンテンツコミュニケーション本部の前身となるクリエイティブビジネス本部の初期メンバーに。現在は「東京アニメセンター」の企画・プロデュース、商品開発などを担当。

■BlockPunk社 CEO/Co-Founder ジュリアン・ライハン氏

イギリス出身。ロンドンでコンサルタントとして働いた後、ワーナ・ブラザーズでデジタル配信のバイスプレジデントを務める。その後、日本でのNetflix立ち上げに際し、アニメと日本コンテンツ調達の責任者に就任。アニメ業界を取り巻くマーチャンダイジングの問題をブロックチェーンとプリント・オン・デマンドで解決したいと考えBlockPunk社を設立。同社のCEOを務める。

DNPがある市谷の坂は、日本でもっとも多くのコンテンツが通った坂

――そもそもDNPがコンテンツビジネスに注力していることを意外に思う方が多いかもしれません。まずはDNPとコンテンツとの関わりについて簡単に教えていただけますか?

DNP・藤井氏 : 確かにDNPが「コンテンツを扱っている」というイメージを持っている人は少ないかもしれません。ですが、実はどの会社よりも多くのコンテンツを扱ってきました。

長年、コミックスの印刷なども手がけてきたので「(DNP本社がある)市谷の坂は、日本でもっとも多くのコンテンツが通った坂だ」と言う人もいるほどです。さらにDNPは多くの出版社とお取引させていただいているので、出版社のコンテンツをお借りする形でさまざまなイベントの企画・実行にも関わるなど、昔からたくさんのコンテンツを扱っていました。

しかし、いつまでも裏方で支えるだけでなく「自分たちで能動的にコンテンツを活用したビジネスができないだろうか」と考えるようになったのです。そこで社内の人たちから意見やアイデアを募ったりしていたのですが、その中からいくつか「これは面白い。実現できるかもしれない」というものが出てきました。

――そのようなアイデアがDNPの手がける「FUN’S PROJECT」というサービスに発展していったのでしょうか?

DNP・藤井氏 : その通りです。私たちが社内のアニメ好きの人たちからヒアリングをしたところ、イラストレーターやアニメーターに憧れている若者が多いにも関わらず、そうした技術を学べる環境が少ないということがわかりました。また、アニメ制作会社の方々からは制作現場の人手不足が深刻であることも伺っていました。

そこでクリエイターになりたい人たちがオンラインでいつでも気軽に学べるサービスを作ろうということで誕生したのが「FUN’S PROJECT COLLEGE」です。また、ファンとクリエイター、ファンと作品の距離を縮めたいということでスタートしたのが「東京アニメセンター in DNPプラザ」の運営です。

――昨年、BlockPunk社と共創して複製原画販売に関するプロジェクトを進められたと伺っていますが、以前から外部のパートナー企業とのオープンイノベーションに対して積極的だったのでしょうか?

DNP・河野氏 : オープンイノベーションを意識して動いていたというよりも、BlockPunk社が有するブロックチェーンの技術と私たちがチャレンジしたい事業の間に親和性があったので、「それなら一緒にやってみよう」という流れで進んでいったイメージですね。社内で用意できないものなら、外を探せばいいだろうということで。

DNP・藤井氏 : すべてを自分たちだけで進めていたら、いつ完成するかわかりませんからね。外部のプロと手を組んで早く大きく育てようという考え方はあったと思います。

――今回、「DNP INNOVATION PORT」において、『クリエイターとファンをつなぐ新たなコンテンツサービスの共同開発』を目指して積極的にオープンイノベーションを推進していくと伺いました。共創パートナーには、どのようなアセット・リソースを提供できるとお考えですか?

DNP・河野氏 : まずは、多くのクリエイターやファンがユーザーとなっている「FUN’S PROJECT」というサービスを活用でき、クリエイター向け育成コンテンツやファン向けECサイトを提供することが可能です。さらに先ほど藤井からお話をさせていただいた、DNP本社にほど近い「東京アニメセンター」というスペースを提供することもできますね。

また、印刷に関する幅広い技術はもちろん、ICT系の技術も活用いただけると思います。ある程度のアセットは何でも揃っていると思うので、ぜひとも積極的に使っていただきたいと思っています。

印刷技術×ブロックチェーンで世界中のアニメファンに公式グッズを提供

――それでは次に、BlockPunk社と共創することになった経緯、きっかけについて教えていただけますか?

DNP・河野氏 : 2018年にデジタルビジネス・イノベーションセンターの方から「ブロックチェーンをやっている面白い人がいる」ということでジュリアンさんを紹介いただきました。

BlockPunk・ジュリアン氏 : 私たちはプリント・オン・デマンドやマーチャンダイズに関するノウハウを持っているパートナーを探していました。当初はDNPのような大企業がスタートアップである私たちの話をまともに聞いてくれるとは想像もしていませんでしたが、実際に会ってみるとすごく話が盛り上がったのです。それで「何か一緒にやってみよう」ということになりました。

――ブロックチェーンとマーチャンダイズ、コンテンツビジネスを掛け合わせるというアイデアは、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか?

BlockPunk・ジュリアン氏 : 私は以前、Netflixで日本アニメの配信を担当していました。Netflixの作品は全世界約200カ国に一斉配信できるため、配信と同時に世界中に多くのファンが生まれます。

作品を好きになったファンは、作品に関連するグッズを買おうとするのですが、グッズを販売している国や地域が限られているため、ファンであってもグッズを手に入れることができないのです。

インターネットの進化によって、映像作品に関しては全世界の人々が同じタイミングで楽しめる時代になりましたが、作品のグッズに関するマーチャンダイズや流通がそれに追いついていないという実情があるのです。

DNP・河野氏 : 海外の多くの国ではアニメグッズの偽物があふれています。現地のファンの人たちは本心では公式グッズを買いたいと思っていても、公式グッズがないから仕方なく偽物を買ってしまいます。

偽物が売れることで、ますます偽物が増えていく…そうした悪循環がさまざまな国で起こっているのです。ファンはもちろん、クリエイターやコンテンツホルダーにとっても不幸な状況ですよね。

ジュリアンさんたちは、そのような状況をブロックチェーンとプリント・オン・デマンドを掛け合わせて解決していくような取り組みをされていると聞き、私たちとしても何か一緒にできることはないだろうかと考えたのです。

――確かにその通りですね。それでは実際に両社で行った複製原画に関する取り組み、共創内容について教えていただけますか?

DNP・河野氏 : アニメーションスタジオ「MAPPA」が制作した『ゾンビランドサガ』という作品の複製原画(スマートアートプリント) を、世界中の方々に向けて販売しました。

DNP・藤井氏 : DNPが有するプリモアート®という高精細の印刷技術を用いて作成しているため、オリジナルの原画を非常に高いクオリティで再現していることが特徴です。

DNP・河野氏 : スマートアートプリントの所有者情報はブロックチェーンに記録されています。所有者はスマートフォンなどでNFCチップをスキャンすることにより、この複製原画が公式グッズであり、自分の所有物であるということをデジタル証明書によって確認できる仕組みです。

©ゾンビランドサガ製作委員会

▲2019年秋には、東京アニメセンターで「ゾンビランドサガ展」を開催、グッズ販売なども行われた。

――DNPの印刷技術とBlockPunkのブロックチェーン技術、まさに両社の強みを活かしたプロダクトですね。実際に販売してみての結果についてはいかがでしたか?

BlockPunk・ジュリアン氏 : 北米、南米、アジア、ヨーロッパなど、さまざまな国のファンから注文が殺到し、私たちが想像していた以上に売れているという印象です。アンケートも取らせていただいたのですが、満足しているお客さまが非常に多かったこともあり、私としては大きな手応えを感じています。今後は複製原画だけでなく、アパレルなど商品ラインナップも増やしていければと、いろいろと構想しているところです。

DNP・河野氏 : 購入したほとんどの方々が喜んでくださっているのが印象的でしたね。一方でブロックチェーンの効果効能という部分では、もう少し工夫すべきところがあったかもしれないと思っています。

DNP・藤井氏 : 今後、購入したお客さまによる二次売買などが始まると、ブロックチェーンの仕組みが生きてくるはずですよね。

DNP・河野氏 : そうですね。プロダクトとしての可能性は十分に実感できました。今後もナレッジを蓄積していくことで、事業も拡大させながら、市場全体を盛り上げていきたいと考えています。

――BlockPunk社はDNPの他にも多くの大手企業と共創していると思いますが、DNPと組んだことで得られたメリット、ノウハウなどはありますか?

BlockPunk・ジュリアン氏 : DNPは世界最大規模の総合印刷会社ですからね。プリント技術や商品化のノウハウに関しては、今後もいろいろと勉強させていただきたいと思っています。

また、私たちはスタートアップなので、どちらかと言えばクオリティよりもスピードを重視しており、完璧でなくても取り敢えず商品化して、データを集めて次回のバージョンアップにつなげていくという考え方でビジネスを進めがちです。

しかし、DNPは当然ながらクオリティコントロールに関して一切の妥協がありません。そうしたクオリティに対する厳しい姿勢は、私たち自身も大切にしなければならないと感じました。

共創するにあたって「誰に何を届けたいのか」という目線は合わせておきたい

――今後、コンテンツコミュニケーション本部が共創を行う際、パートナーに求めたい技術領域、マインドなどはありますか?

DNP・河野氏 : VRなどの表現・見せ方に関する技術、あるいはコンテンツ流通に関する技術、デジタルマーケティング領域の技術やノウハウなどを持っている企業は大歓迎ですね。実際に「東京アニメセンター」でVR系の技術を持っている企業と実証実験を行ったこともあります。

DNP・藤井氏 : BlockPunk社のブロックチェーンのように、将来的に時代のトレンドになり得るような技術を持っている方々とは積極的にお会いしたいですね。

そうは言っても、単純に「この技術は面白いですよ」というだけではなく、その技術を活用して世の中にどのような価値を届けたいか、どんな課題を解決したいか、といったビジョンが明確な方々と組みたいと思っています。

DNP・河野氏 : ジュリアンさんとも「ファンとクリエイターをつなげる」という目的が一致したからこそ共創できたという側面もありますからね。共創するにあたっては「誰に何を届けたいのか」という目線は合わせておきたいところです。

――最後にこの記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。

DNP・河野氏 : コンテンツを通じ、生活者の皆さんとクリエイターやコンテンツホルダーをつなぐことで、より良い社会を実現していきたいと考えています。そのためにも既存の枠に捉われずにさまざまな取り組みを進めていくつもりですし、そうした社会を実現するための技術やアイデア、ビジョンを持っている方々と共創していきたいですね。

DNP・藤井氏 : コンテンツコミュニケーション本部は、コンテンツとICTを組み合わせ、グローバルで事業を展開していくことをビジョンとして掲げています。また、日本の国内市場が縮小を続ける中、コンテンツ業界のお客さまの多くも海外に目を向けているので、これからどのような事業を行うにしてもグローバルという視点は欠かせないと思っています。ぜひ、私たちと一緒にグローバルで勝負できるサービスやプロダクトを生み出していきましょう。

取材後記

世界トップクラスの印刷会社であるDNPには、出版社やアニメ制作会社など、日本を代表するコンテンツホルダーとの協業を通じてコンテンツ業界を支えてきた豊富な実績とノウハウがある。BlockPunk社との共創事例を見ても明らかなように、DNPの持つアセットや技術、ネットワークを活用することで、生活者とコンテンツ、さらにはクリエイター、コンテンツホルダーを巻き込む形での大きなイノベーションを起こすことも不可能ではないはずだ。

コンテンツやマーチャンダイズに関わる技術・アイデアを持つ企業は、ぜひこの機会に彼らが掲げる共創プロジェクトへの参加を検討してはいかがだろうか。自社のビジョンやビジネスを圧倒的な速度でスケールさせるチャンスを見逃す手はない。

※DNPの共創テーマについてより詳しく知りたい、コンタクトを送りたい場合はコチラ▼

(編集:眞田幸剛、取材・文:佐藤直己、撮影:古林洋平)

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