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【連載/4コマ漫画コラム(15)】新規ビジネスにおけるお金の使い方① 正攻法だけでは成功しない


心配なので従来法と権威に頼ってお金を失う

新規事業を進めていくために、多くの大会社でStage Gate法が導入されています。「次のステージに行くためには、これらの項目を達成しなければならない」という類のものです。販売開始にこぎつけるまでに、多くのGateをくぐらなければなりません。新規事業というのは、「どうすればいいか」が明確になっていないことが多いので、その代わりに、どの事業にも通じるような「進め方の基本」を提示しているのが、本来のStage Gate法です。つまり、「進める」ためにあるのです。

ところが、「新規事業を興すことが我が社にとって最重要課題の一つだ」とか口では言いながら、いざ、目の前に怪しげな新規事業プロジェクトが現れると、とても心配になってしまい、「こんなのやらない方がいいのじゃないかな」という気持ちが先に立って、「進めるため」ではなくて「止めるため」にStage Gateが使われるケースが多々あります(漢字では『捨事門』と書きます(ウソ))。

新規事業プロジェクトのメンバーの日々の活動は、その雰囲気とルールに押されて、「事業を成功させるため」という目的のはずが、気が付くと「Stage Gateを通過するため」だけに費やされてしまっています。「経営陣の心配を解消するため」に、やたらと「高い確度」が求められがちです。

例えば、「本当に市場はあるのか」「品質は大丈夫なのか」「ちゃんと儲かるのか」などに「しっかりとした確度」を求められがちです。もちろん、これらの「問い」は新規事業を成功に導くために必須のものですが、心配性の経営陣は、その問いを解決するための方法として、「確度が高い(と思い込んでいる)従来の方法や権威のある方法」を求めがちです。

そのため、「市場はあるのか」については、むちゃくちゃ高額の市場レポートをコンサルタント会社に作成させたり、「品質は大丈夫か」については、「既に確立している」既存の事業の品質保証体系をそのまま(一歩も譲らず)適用しようとしたり、「ちゃんと儲かるのか」については、そんなことは最初から全てを見通せるわけがないのに、「ビジネスモデルが明確でない」とかのコメントばかり(聞こえがちょっとカッコイイ?)を答申・提案のたびにオウムのように繰り返したりします。

 そうして、新規プロジェクトでは「権威のある」コンサルタントを高額でやとったり、「従来の品質保証を守る」ために多額の開発と時間をかけてしまったりして、あっという間にお金がなくなってしまいます。そして、結局、「こんなにお金を使いやがって」と経営陣に怒られて「もうやめよう」という結果に陥ります。「心配」は「やめれば」完璧に拭えるので、いいのかもしれませんが。


「お客様に届けるため」に「できていないこと」「わかっていないこと」にお金は使う

新規事業の立ち上げのお金は「事業を成功させるため」に使うものです。そのためには、「成功させるため」に、「何ができていないのか」「何が分かっていないのか」を常に「自分の頭で考える」ことです。「会社が用意した『やり方』をやれば必ず成功する」、なんてことはありません。むしろ、会社のやり方に合わせていると、失敗確率が上がる場合の方が多い、と断言しても過言ではありません。

「こうやれば必ず成功する」という秘策はありませんが、大事なのは「早く本当のユーザーを見つけて、話をして、使ってもらって、売ってみる」ということでしょう。それは一本道ではありません。「こういうのがユーザーだ」と思って話をしているときは「いいね」と言ってくれていたのに、いざ「使ってみてください」というと、「そんな時間は取れない」とか言って断られたりすることは多々あります。ましてや「本当にお金を出して買ってくれる」まで行きつけるのは至難です。

つまり、Stage gate的に「ステップ」を「しっかり踏みすぎ」て、調査ばかりやったり、仮説を詳細に作ったり、(必要もない)高いレベルの技術を開発してもダメで、早く「これで充分じゃないか」と思えるモノやサービスを作って、「ユーザー」に届けてみて、ダメだったら、また、繰り返すのです。そのためにお金を使いましょう。


ケチで本質的なやり方を

そういう本来やらなければならないことに、「ケチ」な感覚を重畳させて、お金を使いましょう。「ケチろう」とすると、「何とかしよう」と「自分の頭で考える」ので、やらなければならない本質的なことに行きつきやすいのです。

私がやったやり方の一例を紹介すると、知ったかぶりをしている高額のコンサルタントに調査を頼んだりせず、その業界(新規なので、自分たちは知らない業界)で定年を迎えてヒマにされている方を個人コンサルタントとしてよく雇いました。すごく安い上に、業界内から見た本当の競合を教えてくれたり、実際のユーザーになってくれそうな人や会社を紹介してくれたりします。

また、当たり前ですが、技術を全て自前で揃えて市場参入しようというのも止めましょう。最初から事業としてうまく行くかどうかが分からないのに多額のお金と時間が開発につぎ込まれてしまいます。自社技術を強みにしたい事業であっても、最初は他社の技術を組み合わせて「売れる」ものを作るくらいの方がいい。その最初の商品から学ぶことが山ほどあり、結果的に効果的なお金の使い方になります。

「そんなこと言っても、社内のルールは厳然と存在しているからなあ」と思うかもしれませんが、それに「穴」を明けて、成功に突き進むエネルギーとやる気が必要です。社内のルールをうまく変えたり、例外として認めてもらったり。もちろん、「犯罪」はだめですよ。でも、「破ったり無視してもいいルール」が山ほどあることを、「破ってみると」分かりますよ。(バリっ!)


■漫画・コラム/瀬川 秀樹

32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。

瀬川秀樹先生連載/4コマ漫画コラム