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【連載/4コマ漫画コラム(16)】新規ビジネスにおけるお金の使い方② 一点突破では突破できない

【連載/4コマ漫画コラム(16)】新規ビジネスにおけるお金の使い方② 一点突破では突破できない

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一点突破では突破できないレベルアップ

前回のコラムで、「新規事業を推進していくのには『早く本当のユーザーを見つけて、話をして、使ってもらって、売ってみる』ということが大事で、そのためにお金もパワーも使いましょう」という話をしました。新規事業を立ち上げていくためにはレベルアップをしていく必要があります。

事業によって多少の違いはありますが、大まかにいうと、

  • Level 1: ユーザー(候補)が話を聞いてくれる
  • Level 2: プロトタイプを使ってみてくれる
  • Level 3: (一人でもいいので)お金を払ってくれる
  • Level 4: 特定の小さなグループが買ってくれる
  • Level 5: 沢山の人が買ってくれる

ということです。

準備しなければならない各項目の内容はLevel1-5によって異なります。つまり、「どんな『モノ』『ソフト』が必要か」「どう『メンテ』『販売』『配達』するか」……などの項目が、狙うレベルによって違ってきます。

そして、上記Level1-5を達成していくためには、「全部」の項目がそれぞれ必要なレベルに達していなければなりません。何か一つの項目だけが十分すぎるレベルになっていても他の項目が足りなければ、意味がありません。

単に「話を聞いてくれる」ために色々なことを

例えば、「Level1: 話を聞いてくれる」ためには、何が必要なのでしょうか?

「話くらい聞いてくれるのでは?」と思われるかもしれませんが、「本気で話を聞いてくれるかどうか」が問題です。そのためには、ユーザーになってくれるかもしれない人が「本気の興味」を持ってくれることが重要です。「ユーザーの興味」は、「自分(や自分の会社)にとって、役に立ちそうだな」と思ってくれて初めて引き出すことができます。

単に、「この技術はすごい」という話をしても、それが自分にとって何の価値を生んでくれるのかが示されないと、興味は深まりません。また、「そこの部分(技術だけとか)は良さそうだけど、本当の私の課題は別のところにあるのよね~」と心の中で思われたままでは、上っ面の「いいね!」のコメントをもらうだけに留まってしまいます。そこで、まず、ユーザーが持っている課題を想定して、その課題を解決する「サービス全体」を描くことが大事です。

事業名を「XXサービス」と言ってみれば

ここで「サービス」という言い方をしているのは「価値全体」に視野を広げやすいからです。事業提案をする時に、事業名称を考えますが、ついつい(特に技術系の人は)「高速XXデバイス」というようなモノの名前をつけてしまいがちです。

そうではなくて「(ユーザーの)YY輸送時間半減サービス」というような名前を付けると、「サービス」なので、「モノ(ハードウエア)」や「ソフトウエア」だけでなく、「人的作業」や「どう届けてくれるか」「何かあったらどうしてくれるか」なども含んだ「全体」を説明しなければならなくなり、それによってユーザーが「興味」を具体的に持てるようになります。

そうでないと、ユーザーは話を聞いている間に、「あれはどうなっているのかな」という心配事が先に立って、その事業の魅力の説明は耳に入らなくなります。

「ニセモノ」で本当の価値を狙う

さて、Level2は、いよいよ「プロトタイプをユーザーに使ってもらう」です。

ついつい「立派なプロトタイプ」を作ろうとしがちですが、「お客様に興味を持ってもらう」ことが狙いであるというのはLeve2でもLevel1と全く同じです。そのためには、「サービス全体」のプロトタイプを作ることが必要となります。「プロトタイプ」というと、人によって持つイメージが異なりますが、Level2でのプロトタイプは「ユーザーが価値を感じてくれればいい『ニセモノ』」です。

例えば、最終アイデアとして、「オフィス業務での全ての手書きや音声を、デジタル(テキスト等)にしてお客様の時間の無駄を削減するサービス」という事業案だとしたら、プロトタイプとして、「全ての手書きや音声」を「どんなニセモノのやり方を使ってもいい」ので、「とにかくデジタルにしてユーザーに届ける」という「プロトタイプ」を作りましょう。つまり、「本当の技術」で解決する必要はないのです。

例えば、「手書き文字や会話をテキストにしてくれるホワイトボード」をそのサービスの一部として考えるのであれば、ユーザーのオフィスのホワイトボードの前に段ボール箱を置かせてもらい、その段ボール箱の中にアナタが入って、隙間からホワイトボードを見て、段ボール箱の中で一生懸命PCで手書き文字や会話をテキストにすればいいのです(安部公房の「箱男」みたいに(^o^;))。いかに「ユーザーに価値を提供できるか」が焦点なので、色々な工夫をすれば、お金も時間も節約できます。

Level3の「(一人でもいいので)お金を払ってくれる」のも、まだ「ニセモノ」が残ったサービスで構いません。それを認めてでも「お金を払って使ってくれるユーザー」がいるという確証が得られるのは素晴らしいことです。会社としての「正式発売」はLevel4からにして、Level3は「プロジェクトとしてのテスト販売」のような言い方の工夫も必要でしょう。

繰り返しになりますが、「(技術などの)一点突破」ではダメです。「サービス全体のあらゆる項目」を、「必要なレベルで揃えていく」ことが重要です。その「全体」を提供するために頭と体とお金を使いましょう。

……って、言いながら、お題の「新規ビジネスにおけるお金の使い方」で説明すべき項目全体は全くカバーできないまま、この項は終わりです(すいません……)


■漫画・コラム/瀬川 秀樹

32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。

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