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【連載/4コマ漫画コラム(12)】新規ビジネスの見極め方 ② :偶有性のこの世で足掻く



■まずは「揺るがない」

前回もお話ししたように「新規ビジネスが成功するかどうかを確実に見極める方法」はありません。今回は、「揺るがない方向を持って」「揺るぎまくる偶然に頼る」ことで「少しは成功するかどうかが見極められる」という話(よく分からない表現だな……)をしましょう。

新規事業を立ち上げ、成功させるには時間がかかります。その間に色んなことが起こります。それを乗り越え、成功に向かって一歩ずつ足を進めるには、まず、「目指すビジネスの方向性」をしっかりと持つことです。

どういう類のビジネスを立ち上げたいですか?まさか「会社に言われたので、とにかく売上が100億以上のビジネス」とかじゃないですよね?会社からの指示がそういう「極浅」のものであっても、あなた自身の想いをしっかり持ちましょう。

当たり前ですが、ビジネスの本質は「人の役に立つこと」です。それには大きく分けて2つあります。

1.困っている人やコトをなんとかしてあげる(「-」を埋める)

2.もっと楽しい何かを提供する(「+」を作る)

どうも最近はこの二つ以外に「人々の強欲に火をつける」というビジネスも多いですが、それは本稿では対象外です(怒りながら笑)

あなたの目指すビジネスの類・方向は1ですか?2ですか?例えば、「キレイな水が手に入りにくい人をなんとかしてあげるビジネス」であれば1、「ロボットを使ったこれまでなかったワクワクゲームを作るビジネス」というのであれば2ですね。

「ビジネスの類・方向」とは「長期(例えば30年とか)に渡って目指すこと」です。具体的なビジネスは、その手前(3年以内とか)にあるはずです。長期の志や方向性をしっかりと「揺るぎなく」持ち続けるのはとても大事なことです。そして、一見真逆の「揺らぎまくる」活動を始めましょう。


■そして「揺るぎまくる」

新規ビジネスは、「新規」です(超当たり前だけど、どうしても忘れがち)。なので、「前例」や「こうやればいい」はありません。その方向に向かって「やってみて」「間違ったりして」「なるほど、と分かって」「『分かったことを活かし』て、また『やってみる』」ことを繰り返すしかありません。それは、私たちは「偶有性」の「世界」にいて、それに合った「やり方・姿勢」で臨むしかないということです。

「偶有性」と言う言葉は、もともとは哲学用語のようなのですが、近年は、あの脳科学者の茂木健一郎さんがよく使われています(が、意味は茂木さん特有のものになっている感じもあります)。茂木さんの定義をしっかり読み返さずに、私が自分なりに理解している「偶有性」の意味を紹介すると、

“この世の中は偶然と必然の間にある。その両方が混ざっている状態が「偶有性」(偶然を有する性質)。生まれたての赤ん坊から見ると、この世は全て偶然のように見える。ハイハイしているうちに偶然、頭を箪笥の角にぶつけると痛い。『こういうものに頭をぶつけると痛いんだ』と学習して、そうならないようにしていく。『ぶつかると痛い』が『必然』として学習されるのだ。

ところがどこまで行っても『完全な必然』はない。箪笥のように見えていたモノが実はクッションだったりすると、痛くない。『あれ?痛くないのもあるんだ』。では、なにがぶつかると痛いものなのか。どうぶつかると痛いものなのか。人は一生懸命『偶然(この世を形成しているランダムなあれこれ)』の中から、なんとか『必然(こうすればこうなる)』を見出そうと『足掻いている』生き物である。”

そう、人は『偶然』を活かしながら『必然』を編み出す努力をして前に進むしかないのです。既存事業であれば、ほぼ固まってきているので、偶然の必要があまりないかもしれませんが、新規事業であれば、いかに偶然と出会い、偶然を推進力として前に進むかがとても大事なポイントになります。

歴史でもそうですよね。ニュートンが目の前でリンゴが落ちたのを見て引力を思いついた(本当かどうかは別として)のも、スティーブジョブズがPARCを訪問してGUIをAppleのコンピューターに活かしたのも偶有性を活かしたからです。


■見つめ続けて偶然を掴む

でも、偶然は偶然です。そして偶然はあまりに沢山やってきます。私たちは毎日無限といっていいほどの予定や予想もしていなかった偶然に出会います。その偶然の嵐の中から、いかに「これは?」という「前に進むための偶然」に気づけるかどうかに、先ほどの「揺るぎない長期の志や方向性」が鍵になります。視線を高くして、それを常に見つめ続けていると、いい偶然に出会える確率が各段に上がります。その偶然を足掛かりにして、少しでも前に進めば、「新規ビジネスが成功するかどうか」が今よりずっとよく見えるようになります。「見極める」とまではいかなくても。

ニュートンだって、いつも考えていたからこそ「リンゴが落ちる」なんていうある意味当たり前の「偶然」を捕まえられたのです。物理現象の場合は冷徹までに「偶然は純粋に偶然である」ことが多いですが、人との出会いの偶然は結構人為的に作れます。常に「長期の志・方向性」を周りに話して、「偶然」に期待を持って色々な人に会うと、「前に進める偶然との出会い」がどんどん増えていきます。オープンイノベーションの肝ですね。

逆に「売上と利益が大事!」とだけ叫び、「そんなやつらに会っても無駄だ!」なんて言っていると「いい偶然」はやってきません。え?アナタの上司?それはそれは……そんな上司に当たっちゃったのも偶然ですけどねぇ。


■漫画・コラム/瀬川 秀樹

32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。


瀬川秀樹先生連載/4コマ漫画コラム