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【イベントレポート】「大手企業からの起業」をテーマにイントラプレナーの2人が登壇。社内起業、新規事業立ち上げの「裏側」を伝える。

ソフトバンクグループ新規事業提案制度「ソフトバンクイノベンチャー」で事業化検討決定されたアイデアの実現に向け、支援を行うSBイノベンチャー(https://www.softbank.jp/corp/group/sbiv/)。同社が開催した「6月特別講演企画」は【大手企業からの起業】をテーマに、博報堂DYグループの株式会社SEEDATA、CEOの宮井弘之氏と、株式会社インテリジェンスの新規事業である「eiicon」のファウンダー・中村亜由子が、事業着想のきっかけや具現化するまでの流れ、実際の事業運営など、社内起業にまつわる秘話を紹介した。

▲株式会社SEEDATA CEO 宮井弘之氏 http://seedata.co.jp/

2002年博報堂入社。情報システム部門を経て、博報堂ブランドイノベーションデザイン局へ参画。新商品・新サービス・新事業の開発支援に従事。幅広い業界のリーディングカンパニーと300を超えるプロジェクトを経験。得意分野は、消費者調査(定性・定量)・成長戦略立案・ファシリテーション・コミュニティデザイン・イノベーション共創支援。

▲株式会社インテリジェンス eiicon founder 中村亜由子 https://eiicon.net/

2008年にインテリジェンスに入社。1年目はメディアプロデュース統括部に配属されDODAの編集に携わり、2年目に元々希望していた営業部へ異動する。産休・育休中に自ら考案したオープンイノベーションプラットフォームの新規事業案が、パーソルグループの新規事業起案プログラム「0to1」の初代採択事業として2015年12月に採択され、事業責任者となる。


起業にまつわる秘話に、来場者が熱心に耳を傾ける。

冒頭、SBイノベンチャーの市川美穂乃氏が挨拶。「今日の話をこれからの事業作成に活かしてほしい」と呼びかけた。続けて、宮井、中村の両氏が自身の取り組む事業内容を説明。SEEDATAは消費者の動向を調査・データ化して販売することを主な事業としており、eiiconはオープンイノベーションを起こしたい企業同士を独自のプラットフォーム上で結びつけている。この後、トークセッションが開かれた。主な内容は以下の通り。モデレーターはSBイノベンチャーの佐橋宏隆氏が務めた。


アイデアの出方はさまざま。やりたいことを優先し、理由は後付けでもいい。

佐橋:お二人とも、社内のコンテストに応募して新たな事業をスタートさせました。事業を立ち上げるアイデアはどこから出てきたのでしょうか。

宮井:仕事の中で出てきた問題を新規事業にしました。きっかけは莫大なデータをたった1社のためだけに使うのはもったいないと感じたことです。博報堂の業務では1回のプロジェクト、つまり、クライアント1社のために大量にデータを集め、その上で新商品の開発、宣伝・PRを行います。ただ、このビジネスモデルですと、データはそのクライアント1社しか使えませんし、時間も費用もかかります。一方、最初からデータを作成しておけば納期も費用も3分の1で済みます。データだけを販売するビジネスを始めたいと考えました。

中村:私の場合は「痛み」が主な要因です。現在eiiconで手がけている企業同士のマッチング機能がなければ、例えば、地方の企業ですと片道7時間かけて目的の企業に会わなければならないということが起こり得ます。実際、私の親族がメーカー勤務で地方在住です。時間をかけて会いにいったのに話がまったく進まなかった、ということをよく聞いていたので、なんとかしなければならないと思ったのです。

佐橋:新規ビジネスを手がけるに当たり、課題を見つけるのはとても大事なことだと思います。しかし、一方で、専門領域ではないと浅い課題認識しかできないということはありませんでしょうか。

宮井:それはその通りだと思います。でも、詳しくない場合でも、アイデアを検証すれば深めることができます。逆にアマチュアの強み出せますので、専門か専門でないか、入口はどちらでもいいと考えています。

佐橋:中村さんは社内コンテストに応募する際に、アイデアを検証するなどしましたか。

中村:そうですね。会社側から求められることはありませんでしたが、自主的に400社ほどにインタビューは実施しました。

佐橋:やはり新規事業を始めるのは、これがやりたい、というよりは、課題を見つけるというプロセスを踏んだほうがよさそうですね。

宮井:必ずしもそうとは限らないと考えています。やりたいことがあり、後付けでもっともらしい理由をつけてもいいのではないでしょうか。

中村:私も理由は後付けでいいと思っています。新しいことをやろうとすると必ず批判されるので、大切なのは自分を妄信して、猛進できるかどうかかもしれません。

佐橋:お二人とも、仕事をしながら新規事業を起案されました。その時の仕事を手放してまで新規事業を始めようと考えたのはなぜでしょうか。

宮井:アイデアが自分の中から湧いてきたので、やるぞ、と決めました。アイデアが急に出てくるのは、私の基本的なスタイルです。

中村:私は真逆で、新規事業を手がけることは予め決めていました。いついつまでに行う、と計画を立てていて、その通りに進めました。


反発は必ずある。

佐橋:非常に特徴ある二人ですね。事業を進めるに当たり、大企業だから苦労したことなどはありますか。

宮井:私の事業はデータをリーズナブルに提供するので、単価を落とすことに非常に抵抗感を持たれました。また、クオリティが担保されなければいけない、そうしないと博報堂のブランドとして出せない、などと言われることもありましたね。一方で、会社がバックにあるからこそ、できることもあります。大きな仕事をしたい、社会へのインパクトを出したい人は、社内を利用したらいいのではないでしょうか。私自身も個人で今の成果を出そうとしたら、きっと後何年もかかっていたはずです。

中村:関わる人が多くいて、全員の承認を取るのは非常に大変でした。なかなか物事が進まないので、そのうち、やりますと宣言してやってしまうか、事後報告のスタイルに切り替えました。

佐橋:それでは、新規事業を手がけて良かったなと思う点をお聞かせください。

宮井:お金の流れに理解が深まったことがあります。それと、役員クラスの方々と話す機会が増えました。視座が違いますので、とても勉強になります。

中村:会社員として決められた枠組みの中で働くのとは、仕事への向き合い方や手応えが変わります。新規事業を手がけて良かったと思っています。


寄せられた質問と会場からの質問

――社内で企画案を通すコツを教えてください。

中村:社内外に味方を見つけることだと思います。企画が一回で通ることはまずありません。社内の根回しは必要でしょう。それと、社外の声は意外と社内を動かすので、外部の味方を見つけるのも大切だと思います。特に私の場合は、人材サービス会社なのに、人材と直接的に関係のないことを提案しました。多くの方の賛同を得るのは必須のことでした。

宮井:審査する人は、本気かどうかを見ています。1回反対されて止めてしまうような人は信用されません。1回でくじけないことが大事です。私の知っている人で、5回応募してやっと通ったという人もいます。

――最後に、社内起業を行うに当たり、アドバイスをお願いします。

宮井:アイデアはあるがやれない人、やりたいという思いはあるがアイデアのない人、どちらのタイプもいると思います。どちらのタイプにもチャンスはあります。自分とは異なる人を見つけて、コンビを組めばいいと思います。

中村:反対されるのが当たり前だと考えてください。批判もされますが、くじけずに前に進むことが大切です。


取材後記

新規事業や社内起業というと、どこか華やかで楽し気な雰囲気があるかもしれない。確かに、表向きには自らのアイデアで事業や会社を動かすのだから、華々しさはある。しかし、その裏側にあるのは泥臭い作業の連続だということが、イントラプレナー2人の話から、改めて知ることができた。2人とも、新規事業は必ず反対される、と言っていたことも印象に残る。新しいことを始めるにはアイデアやひらめきはもちろんのこと、自らを信じ前に進んでいくことが欠かせないのだろう。社内起業、新規事業の立ち上げを目指す方は、ぜひ2人の姿勢を参考にしてほしい。

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)