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【オープンイノベーター列伝/01Booster代表・鈴木氏】「日本社会全体でイノベーションを創出していくために」

オープンイノベーションの新たな手法として、大手企業とベンチャー企業が共同で新規事業創造やイノベーションを目指す「コーポレートアクセラレータープログラム」が注目されている。その草分け的存在が、01Booster社だ。同社は、「日本を事業創造できる国にして世界を変える」「1000億企業を100個創造する」をスローガンに掲げ、イノベーション創出のための様々な取り組みを行っている。代表・鈴木氏に、01Booster社の取り組み、そして日本国内におけるイノベーション創出の課題点について伺った。

【上写真】株式会社 ゼロワンブースター 代表取締役 鈴木 規文

1999年カルチュア・コンビニエンス・クラブ入社。管理部門を統括するコーポレート管理室長。東証マザース上場、東証1部指定替えプロジェクトメンバー。2006年エムアウトにおいてアフタースクール事業「キッズベースキャンプ」を創業するとともに、兼務で新規事業開発シニアディレクターを歴任。同事業を東急電鉄に売却、3年間のPMIを経て、同社取締役退任後、2011年事業創造アクセラレーター01Boosterを創業し、起業家支援、企業向け新規事業開発支援事業を行っている。


「イノベーション」と一口に言っても、定義は山ほどある

——現在01Boosterさんでは、相当数のコーポレートアクセラレータープログラムが走っていますね。

15本ほどのプログラムがこれまで生まれていますが、これはほんの一部です。それ以前に、体制づくりや意識変革のための啓蒙活動など、イノベーション創出力を上げるための働きかけを数多く行っています。大企業だけではなく、行政、学校、商工会議所など、日本全国の組織に対して地道に活動をしています。

——イノベーションが成功する企業と、そうではない企業、違いはありますか?

各社違うサービスを提供していますし、事業創出のプロセスも各社で様々です。そのため、何をもって「成功」とするかはそれぞれ異なります。そもそも、イノベーションと一口に言っても、破壊的、持続的、急進的、漸進的など、定義は山ほどあります。「一体何を生み出したいのか」をしっかり議論することが大切ですね。私たちは「事業創造カンパニー」として、大手企業にもスタートアップにも入り込み、それぞれ最適解を探りながら、ハンズオンで一緒に事業を創っています。

——大企業とスタートアップが協業する中で、注意すべきこととは?

役割の違いを理解することですね。イノベーションの創出において、大手企業とスタートアップが担う役割は、歴史的にも異なります。役割が違うのだから、壁にぶつかるのは当たり前です。両者の対立にフォーカスした議論をよく見かけますが、それより、いかに役割分担をして社会全体でイノベーション創出のプロセスを導くか、考えることが重要ですね。


日本のイノベーション創出力向上のために、必要なこと

——日本全国の様々な企業や組織と接する中で、どのような課題を感じていますか?

日本はバブル崩壊から20年以上経過しています。その間、企業はほとんど新規事業を生み出していません。特に破壊的イノベーションは皆無といっていいでしょう。20年以上というと、部課長クラスの方の中で新規事業を創った経験がある方は、ほぼいないということ。企業としては、本業が頭打ちなので新規事業を創りたいが、企業の中にイノベーション創出の勘どころのある方がいない。だから新しいものを生み出せない、ということが大きな課題ですね。

——だからこそ、コーポレートアクセラレーターへのニーズが高まっているのですね。

ただ、日本企業は優秀で勤勉です。新しいものを生み出すのは苦手ですが、一度イノベーション創出活動を経験すれば、驚くほどのスピードで熟練します。そのため、コーポレートアクセラレーターでスタートアップとの協業プロセスを通じて勘どころを身に付けると、社内でアントレプレナーシップを持つ人がすぐにまた新規事業を生み出していきます。実際に、様々な企業でイノベーション創出の熱量が高まり、事業創造しやすい環境や人材が生まれてきていると感じます。

——ハンズオンで企業に入り込んで支援しているからこその変化ですね。また、01Boosterさんでは、起業家育成や発掘の取り組みも行っていらっしゃいますよね。

本気で事業を創造するためのコミュニティを作っています。起業家育成のためのアクティブラーニングプログラム「0→1Dojo」の開講や、日本全国でのイベント開催など、日常的に色んなことをしています。また、「Global Accelerator Network」というアクセラレーターの国際団体に加盟し、世界のスタートアップにリーチできるような活動も行っています。

——スタートアップへの出資も行っていらっしゃいますね。判断するポイントは?

一番大切にしているのは、「人」ですね。ファウンダー達が本気になって世界を変えようとしているのか。まさに寝食を忘れて、そのことばかり考えている。そんな人たちを応援しないわけにはいかないですよね。


「バブル崩壊後、日本企業はほとんど新規事業を生み出していない」と指摘する01Booster代表・鈴木氏。そうした現状の中、01Booster社は本気で事業を創造するためにアクセラレータープログラムから出資に至るまで多種多様な取り組みに着手している。明日公開する記事では、鈴木氏とeiicon founder・中村が対談。事業創造に着手している方々に向けて、実用的な「お勧めの書籍」について伺った。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:佐々木智雅)