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【対談】<01Booster代表・鈴木氏×eiicon founder・中村> 事業創造に着手している方々にお勧めの書籍とは?

オープンイノベーションの新たな手法として、大手企業とベンチャー企業が共同で新規事業創造やイノベーションを目指す「コーポレートアクセラレータープログラム」が注目されている。その草分け的存在が、01Booster社だ。同社は、「日本を事業創造できる国にして世界を変える」「1000億企業を100個創造する」をスローガンに掲げ、イノベーション創出のための様々な取り組みを行っている。今回、eiicon founder・中村が01Booster社のオフィスを訪問。昨日公開した記事に続き、事業創造に着手している方々に向けて、実用的な「お勧めの書籍」について伺った。

▲株式会社 ゼロワンブースター 代表取締役 鈴木 規文

1999年カルチュア・コンビニエンス・クラブ入社。管理部門を統括するコーポレート管理室長。東証マザース上場、東証1部指定替えプロジェクトメンバー。2006年エムアウトにおいてアフタースクール事業「キッズベースキャンプ」を創業するとともに、兼務で新規事業開発シニアディレクターを歴任。同事業を東急電鉄に売却、3年間のPMIを経て、同社取締役退任後、2011年事業創造アクセラレーター01Boosterを創業し、起業家支援、企業向け新規事業開発支援事業を行っている。


イノベーションを起こそうとする人に、お勧めの書籍

中村ところで、01Boosterさんのオフィスには本がたくさんありますね。社員の方々もよく本を読んでいらっしゃるんでしょうか?

鈴木はい。輪読をして、その解釈を議論する「真剣な雑談」をしていますね。特に古典はよく読ませます。

中村古典ですか?

鈴木ビジネス書の古典ですね。シュンペーター、フリードリヒ・ハイエク、ケインズ、マルクス、エンゲルス、孫子―――。

中村大学の授業で読まれているような文献ですね。

鈴木大学であまり勉強していなかったから、今改めて勉強しています(笑)。やはり時代を超えて長く生き残っているものには、真理がある。実際に大手企業やスタートアップの事業を支援していると、「あの本に書かれていたことはそういうことなのか」と気付くことが多いんですよ。事業を創るという戦場に立って初めて、古典の意義深さを痛感しています。

中村なるほど。特にオープンイノベーションに関わる人たちに読んで欲しい本を推薦するとしたら?

鈴木定番ですが、ヘンリー・チェスブロウの『オープンイノベーション』『オープン・サービス・イノベーション』『オープンビジネスモデル』、クレイトン・クリステンセンのイノベーション三部作(『イノベーションのジレンマ』『イノベーションの解』『イノベーションの最終解』)は必読書ですね。これらは既に読んでいる方も多いと思います。しかし、ここに書かれている内容を、正しく解釈するのはとても難しい。おそらく、「オープンイノベーション」の定義を正しく把握している新規事業担当者はほとんどいないのではないでしょうか。どうしても、自分に都合の良いように曲解をしてしまうんです。

中村だから輪読して、「正しい解釈とは何か」を徹底的に話す時間を大切にしていらっしゃるんですね。

鈴木そうですね。当社では合宿や出張の機会が多いので、しょっちゅう「真剣な雑談」を行っていますよ。

▲鈴木氏によるお勧めの書籍として、『近江商人学入門―CSRの源流「三方よし」』(末永国紀)や『兵法孫子―戦わずして勝つ』(大橋武夫)も挙げられていた。


自分を奮い立たせる愛読書

中村私も、オープンイノベーションに関わる方にお勧めしたい2冊があります。まずは、ピーター・M・センゲの『学習する組織』。「あなたの組織は学習障害を抱えていないか?」という投げかけがあり、「『経験から学ぶ』という妄想」「今日の問題は昨日の『解決策』から生まれる」など、はっとさせられるフレーズがたくさんあります。今まで良いことだと思っていたことが実は違ったんだと、様々な気付きがある本ですね。特にこれは大企業の新規事業担当者の方に読んでいただきたいですね。

鈴木組織が学習障害を抱える、というのはまさにそうですね。特に日本の企業は過去の成功体験にとらわれて思考停止に陥りがちです。パラダイム転換が必要だと切に感じています。

中村2冊目は、スティーブン・G・ブランクの『アントレプレナーの教科書』です。新規事業を成功に導くための4つのステップ「顧客発見」「顧客実証」「顧客開拓」「組織構築」が解説されています。新しいものを創造してビジネスにしていくには、どんなプロセスが必要なのかを学べる、まさに事業創造やスタートアップの教科書と言える一冊です。

この2冊は私自身も新規事業担当者として、大切に読み返しています。鈴木さんも、何度も読み返すような愛読書はありますか?

鈴木ビジネス書とは少し離れますが、司馬遼太郎の本はよく読みます。特に長州系が好きですね。『世に棲む日日』という吉田松陰と高杉晋作を中心とした幕末の長州藩を描いた作品は、事業がなかなかうまく行っていなかった時に貪るように読みました。これを読むと、「自分の思想に従って死に物狂いになって行動する人たちが、日本にもいたんだ」と想いを馳せられる。そして「自分にもできるのではないか」と、自分を奮い立たせる気持ちが生まれてくるんです。私のモチベーションの源泉ですね。

中村司馬遼太郎の『世に棲む日日』、私も早速読んでみます!今でもよく読み返しているんですか?

鈴木言われてみれば、事業が軌道に乗って忙しくなってきてからは読んでいないですね。最近は、先に挙げたビジネス書などテクニカルな本ばかり。初心に立ち戻るためにも、近いうちにまた読み返します。


取材後記

日本企業でも少しずつ、イノベーション創出への熱量が高まってきている。しかし、いざそれを自社で実践しようとする時、自分が話している「イノベーション」と、相手の「イノベーション」は、果たして合致しているだろうか。互いに、自分に都合の良いように解釈していないだろうか。前提となる定義を曖昧にしたままだと、互いにバラバラの方向に走ってしまいかねない。今一度、『オープンイノベーション』を読み返して、その解釈について周囲と「真剣な雑談」をしてみるといいかもしれない。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:佐々木智雅)