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【連載/4コマ漫画コラム(5)】プレゼンのコツ:忖度(そんたく)しながら直球を投げよう


■事前に陥る「ネガティブイメージトレーニング」

これまで長い時間をかけて検討してきた提案を上司や関連部署の人にプレゼンする時がいよいよ迫ってきた。「さあ、勝負!」と、気合も入る。 そして「最後にAさん(プレゼンの相手)を思い浮かべて提案書をもう一回見てみよう」ということになる。それはとてもいいことだ。プレゼンの時のシミュレーションを心の中でやって、内容を精査する。 ところが、Aさんのことを考え続けているうちに、心の中で浮かぶAさんは怒りだしたり、しかめっ面をして腕を組んだまま動かなくなるようなイメージに段々となりがちで、「この部分はやっぱりまずいのじゃないかな」とか思ってしまって、提案の重要な部分が段々と削り取ってしまう。

また、いつも提案の時にAさんが「この資料のどこにそんなことが書いてあるんだ!」と怒ることを思い出して(こういうことを言う人は割といる)、やたらとどうでもいい追加情報を記載して、プレゼン資料が分厚く、そして文字も小さく、無茶苦茶分かりにくくなってしまったりもする。 オリンピックの選手がやるメンタル面を強くするためのイメージトレーニングでは「勝った時や成功した時のいいイメージ」を思い浮かべる。ところが、これは逆の「ネガティブイメージトレーニング」になってしまっているのだ。 

「ネガティブイメージ」にはまってしまうと、プレゼンも自信なさげになり、失敗してしまう。羽生結弦がスケートを始める前に「できる!できる!できる!」と自分自身を思い込ませ、結果がダメだったときには、「あとちょっとだ!」「もっと頑張ろう」といつも前を向いているように、プレゼンの前は「できる!成功する!」というイメージだけを持って、ダメだったら、ダメになってからしっかりと次の手を考えるのがいい。現代のサラリーマンの提案なんて、命がかかっている訳でもないので、それでいいのだ(バカボンのパパ風)。  


■三つの忖度を

ただ、相手のことをよく考えて提案を準備したりプレゼンをするということは大切。 ポイントは三つ。

相手が、 

1.何が分からないか

2.何が(この提案を了承すると)困るか

3.いつもこだわっていることは何か 

を忖度(そんたく)することだ。 「忖度」とは、辞書では「相手の心を推し量ること」とある。提案作成とプレゼンで「推し量る」項目がこの3点。でも、さきほどの「ネガティブイメージ」に陥ってしまうのも「忖度」が原因。一般に「忖度」という言葉は悪い意味で使われる。「(勝手に)相手の心を推し量って、何もしないこと」という意味の場合が多い。 これではダメ。提案はしっかりする。勝ち取るものを勝ち取るのが提案だ。

つまり、「忖度」して、「その内容を生かした提案・プレゼン」をして、「提案を承認させる」のだ。 やり方としては、「柔らかく『忖度』しながらも必要な部分では『直球』を投げる」のだ。  


■忖度の具体的内容と方法

ではどうやって「忖度」するか。 1の「何が分からないか」は、実は事前には中々分からない。 プレゼン最中に、相手の様子を見ながら「ははぁん、ここは分かっていないな」と察することが大事。そのためには、相手の目や様子をしっかりと見続けること。プレゼンに集中して、スクリーンや資料だけに目を置いていてはダメだ。そして、「ここが分からないのかも」と思ったら、その場で臨機応変に説明を加える。「察すること」も「臨機応変に説明すること」もかなりの高等技術なので場数を踏むしか手はないけれど(もしくはメンタリストのDaiGoに弟子入りする)。 

2の「何が(この提案を了承すると)困るか」は、たいていは、その部署の「忙しさ(人が足りないなど)」と「お金(予算)」だ。その部署の内部に精通している人を事前に見つけて、具体的な状況を聞いておこう。そして、この「人」と「お金」について「なるべく負担がかからない工夫」する。もしくは、他の部門の協力を得て、対象となる部署の忙しさを減らしてあげたり、予算をどこかから奪い取ってくるなどの「政治的剛腕」もたまには必要になる。 

3の「いつもこだわっていることは何か」は、「提案を承認させるための『くすぐりポイント』」。それも「本当はいつもこだわっていたいのに日々はなかなかできていない」ようなことであると、より良い。例えば「会社の未来は結局は若手が創るのだから、若手に色々な経験をさせたい、と思っている」なんていうのは、とても使いやすい。「若手のXさんにこのプロジェクトに参加してもらえば、百人力であるのと同時に、Xさんにとってもとてもいい経験になります」などを提案の説明に盛り込む。相手が何にこだわっているかは周りの人に事前にヒアリングすれば、大体わかる。 

今回は触れなかったけれど、プレゼンで大事なのは「ストーリー」。簡潔で、魅力があって、分かりやすいことが肝要。「どうすればそういう『ストーリー』が作れるようになるか」の「秘術」を最後に公開します。 毎日(もしくは毎週)4コマ漫画を描いてみてください(^o^)。私は描きすぎで脳みそが「4コマ脳」になってしまっていますが。  


■漫画・コラム/瀬川 秀樹


32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。


瀬川秀樹先生連載/4コマ漫画コラム