2017年よりイノベーション創出に向けた取り組みを進めている沖電気工業(OKI)。2018年1月にはトムソン・ロイター社より「グローバル・テクノロジー・リーダー100社」に選出されたOKIは、アイデアソンの開催やイベントのへの積極的な参加はもちろん、マネジメント層へのセミナーなど社内改革も急ピッチに実行。短期間に関わらず急速な進化を遂げている。そして2018年4月にはイノベーション推進部が発足。イノベーション創出活動「Yume Pro」(ユメプロ)を始動させ、さらに変革にドライブをかけていく。

そのOKIが2018年5月、オープンイノベーションの活動拠点となる「Yume ST」(ユメスタ)を虎ノ門本社に新設、そのオープニングイベントを5月31日に実施した。当日は「Yume ST」オープニングイベントに先立ち、記者発表が行われた。ここではOKIのイノベーション活動の紹介に加えて、OKIを含む3社で共同開発したインセンティブ・ポイントプログラム「Yume Coin」(ユメコイン)の発表が行われた。


記者会見~OKIのイノベーション改革、3社共創による「Yume Coin」紹介

■「Yume Pro」の目指すイノベーション

記者会見は、イノベーション責任者(CINO) 横田氏によるOKIイノベーション創出活動の紹介からスタートした。OKIがイノベーションに取り組む背景にあったのは、強烈な危機感だった。「技術力は高いが、持続的にイノベーションを起こす社内体制が不十分だった」という。そこで、2017年の夏よりジャパン・イノベーション・ネットワーク(JIN)をパートナーとして、改革に取り組んでいった。そして2018年4月にイノベーション推進部を発足。トップコミットメントのもと、「Yume Pro」(ユメプロ)と銘打ったイノベーション創出活動など本気で取り組んでいくことを表明した。

※「Yume Pro」特設サイトはこちらからご覧いただけます。 

▲沖電気工業株式会社 執行役員 経営基盤本部長 兼 Chief Innovation Officer(CINO) 横田俊之氏

以前eiicon labの横田氏インタビュー記事(https://eiicon.net/articles/470)でも紹介したが、「Yume Pro」の大きな特徴は、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)17目標169ターゲットに掲げられている社会課題の解決にフォーカスしていることだ。特に「医療・介護」、「物流」、「生活・住宅」の3つに注力し、事業機会を発掘していくという。そして、「イノベーション・パートナーとしてのOKI」ブランドを今後3年間で獲得していく狙いだ。

 

■イノベーションルーム「Yume ST」について

記者発表が開催されたのが、この日お披露目されたイノベーションルーム「Yume ST」だ。全体的にシックな色遣いのOKI本社の中で、この部屋はカラフルで異彩を放つ。共創パートナー候補との議論の場として、またワークショップやセミナー、イノベーション研修の場として活用していくという。

「Yume ST」のテーマは、ワクワク感や非日常感だ。「Yume Pro」ロゴの扉を開けると、まず目に飛び込んでくるのは両端にそびえる2本の太い樹木と、天井に広がる豊かな緑。「子供の頃、ツリーハウスを作ってみたいと思ったことはありませんか?」と、横田氏は問いかける。そう、「Yume ST」は幼い頃に夢見たツリーハウスのような、ワクワク感を感じさせる空間だ。2本の樹木はOKIとパートナーを表しており、その間にある「うんてい」は、両者の絆を表現しているという。四方の壁は全面ホワイトボードとなっており、雲に絵を描くような遊び心を呼び起こす。様々な工夫で、創造力が解放されそうな空間だ。

▲窓側の2本の柱が「樹木」となっており、オレンジ色の「うんてい」がその架け橋となっている。


■3社共創による「Yume Coin」の紹介・デモ

次に、OKI、株式会社ベネフィット・ワン、ZEROBILLBANK JAPAN株式会社(ZBB)の3社共創で開発された「Yume Coin」の紹介が行われた。これは、OKIのIoT端末、ベネフィット・ワンの福利厚生プログラム、ZBBのブロックチェーン技術を組み合わせたインセンティブ・ポイントプログラム。サービス利用者の健康促進・改善など有益な行動をとった際、その対価としてインセンティブ・ポイントである「Yume Coin」を自動付与。貯まったポイントを、ベネフィット・ワンが提供する食事券やエンターテインメントチケットなど約2万点の商品と交換ができる。これにより、利用者の行動変容を促進するという仕組みだ。

3社は、「Yume Coin」の実証実験を6月より開始。まずは3カ月で、インセンティブ・ポイントがモチベーションに与える効果を検証。1年で健康活動の見える化と行動変容の仕組みを実証。3年で「医療・介護」、「物流」、「生活・住宅」の3分野へ、行動変容の仕組みを提供することを目標としている。

▲「Yume Coin」のアプリを使ってポイントを確認、商品を選ぶこともできる。

OKI イノベーション推進部長 大武氏が、実際に端末の画面を投影しながら、「Yume Coin」のデモンストレーションを行った。ポイントは、朝活や書類の期限内提出、定時退社などで獲得できる。会議中にいい意見が出た時などは、社員同士でポイントのやり取りもできる。また、「Yume ST」の“うんてい”に10秒間ぶらさがったらボーナスポイントが付与されるというチャレンジテーマも設定できるという。ポイント獲得ランキングも表示でき、ライバルと競いあったりしながら楽しくポイントを積み上げていくことが可能だ。

▲沖電気工業株式会社 経営基盤本部 イノベーション推進部長 大武元康氏

3社の協業は2018年に入ってからトントン拍子に進んだという。連携の背景について、OKIイノベーション推進部長の大武氏は「ZBBさんは、イスラエルからのリバースイノベーションにより、尖った技術を築いていらっしゃる。ベネフィット・ワンさんは、福利厚生で深いお付き合いがあり、信頼関係があった。3社でイノベーションが創出できると感じた」と言う。

また、ZBBの堀口氏は「OKIのセンサー技術は、社会インフラとして広がりがある。議論をしていくうちに、これは面白いことになる、有意義なことができると感じた」と強く語った。ベネフィット・ワンの野呂氏は「センシング技術とブロックチェーン技術は、当社だけでは成しえない。3社のリソースを掛け合わせるからこその、イノベーティブな活動だ」と、発言した。

▲【写真右】ZEROBILLBANK JAPAN株式会社 代表取締役社長 堀口純一氏/【写真左】株式会社ベネフィット・ワン インセンティブ事業部長 野呂健作氏

質疑応答では、記者からOKIのイノベーション活動や、「Yume ST」、「Yume Coin」について、期待に満ちた質問が投げかけられた。そして記者会見のフィナーレには、3社の代表(株式会社ベネフィット・ワン 代表取締役社長 白石徳生氏<写真左>、ZEROBILLBANK JAPAN株式会社 代表取締役社長 堀口純一氏<写真右>、OKI 代表取締役社長 鎌上信也氏<写真中央>)によるフォトセッションが行われた。


「Yume ST」オープンニングイベント 

記者会見に続き、OKIのイノベーションに関わる様々な関係者を招き、「Yume ST」オープニングイベントが行われた。80名ほどが訪れ、用意された座席は満席となった。

 

◆「世の中に役立つことをイノベーションで解決しよう」(挨拶/OKI代表取締役会長 川崎秀一氏) 

イベントは、OKI 代表取締役会長 川崎氏の挨拶で始まった。大手企業を顧客として、顧客の要望に着実に応えながら成長してきたOKI。それゆえ、自ら課題を探し解決していくような、イノベーティブな姿勢が育ってこなかったという。「ビジネス環境が激化する中で、ここを変えていかねばならない」と、イノベーション活動に至った背景について話した。さらに、「単にイノベーションを起こすのではなく、世の中に役立つことをイノベーションで解決しよう」という想い、そして「『Yume ST』を活動拠点として、共創パートナーと共に新しいビジネスを創出していきたい」と、時にユーモアをも交えながらも、熱を込めてイノベーションに対する想いを語った。


◆「OKIの姿勢は、イノベーションの好事例」(講演/JIN専務理事 西口尚宏氏)

次に、一般社団法人Japan Innovation Network(JIN)専務理事 西口尚宏氏による講演が行われた。西口氏は、OKIのイノベーション活動に当初からパートナーとして深く関わっている。その立場から、「OKIのイノベーションに対する本気度」を強く感じているという。短いスパンでフィードバックを実施し変革をしてきたOKIは、「たった半年で、イノベーション推進体制を整えた。なんとなく体制を整えずに時間が過ぎていく企業がとても多い中、OKIはトップが本気になって取り組んでいる」と語った。

また、共創パートナーとのディスカッションの場としての「Yume ST」の意義、経営陣とミドルが一体となって変革を進めていくOKIの姿勢は「イノベーションの好事例」だとしながら、「イノベーション創出は、走り続けていくことが必要。引き続き爆速で走り続けて欲しい」と、エールを送った。


オープニングイベントでも、記者会見と同じく、イノベーション責任者(CINO) 横田氏による「Yume Pro」「Yume ST」の紹介、イノベーション推進部長 大武氏による「Yume Coin」のデモンストレーションが行われた。イベントの後は懇親会が実施され、参加者は「Yume ST」のワクワクするような空間で、イノベーション談義に花が咲かせた。


取材後記

OKIがイノベーション創出に向けて具体的に行動し始めたのは2017年夏頃だという。トップが強烈な危機感と変革への意識を持ち、わずか半年の間にイノベーション専門組織を発足させ、実際に共創事例も生み出している。イノベーションを始めるのに「遅すぎる」ことはない。爆速で変化を続けるOKIと共創パートナーたちにより、これから「Yume ST」でどんなワクワクするイノベーションが生まれていくのだろうか。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:古林洋平)