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日本の勝ち筋はあるのか?グローバルから学ぶ、日本の未来。Business Development Week#2

日本の勝ち筋はあるのか?グローバルから学ぶ、日本の未来。Business Development Week#2

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日本最大級オープンイノベーションプラットフォーム「eiicon」が運営する、事業を活性化するメディア eiicon labが手がける最前線で活躍するビジネスパーソンによるブログコンテンツ『PRO bcon(プロ ビーコン)』。企業という枠を持ちながら、個として日本の事業創出を牽引するビジネスパーソンが「生の声」として発信している。

10月より始動したPRO bconでは、日本が生き残るために必要なTipsを探る場として、日本を代表するイノベーターであるPROBCONによる新たな事業を生み出すために考える週間「Business Development Week」を大手町SPACES.にて開催している。

日本全土の事業活性化をより加速させる企画として、隔週で実施するセッションでは各テーマにあわせ、実際に第一線で戦うPRO bconが登場。第2回目となるweek2のテーマは「グローバル」だ。

そこで今回、グローバルから学ぶ、日本の未来と題し、世界の中でどのように日本は戦っていくべきなのか、各国の最先端イノベーションを見てきている3名のPRO bconを迎え、事業活性化のTipsをシェアした。

MCは第一回目(week1)に引き続き、お笑いコンビ「しずる」とeiicon代表の中村亜由子が務め、事業創りに関わる者も気付けない、純粋な疑問をぶつけていき、事業創りに必要なエッセンスを紐解いていく。

開口一番、eiicon中村から、しずるの二人に対し、第一回目の「新規事業・事業開発—事業を創る為に最低限知らなければならない方法—」を経て、その後について心境の変化を聞いた。

「顧客のイメージや目的を考え、ビジネスを創っていくことで新規事業の成功する確度が上がる」という気づきを得たとしずるの二人。「これまで、お笑いのライブに来る人が何に興味があって、どんな目的で来るのか、考えたこともなかったが、顧客をイメージすることでその人が興味を持つプロモーションやコンテンツを打っていけば、より響くだろうし、逆にこれまでとは違った属性にもアプローチできるのではないかと気付いた。」と自身の生業と照らし合わせながら振り返った。

▲前回のテーマから学びと気づきを振り返るしずるの二人。

【写真左→右】 

●お笑いコンビしずる 池田一真氏

●eiicon company代表/founder 中村 亜由子

●株式会社ホワイトホール 代表取締役 白井 良氏

●アフリカスタートアップ支援投資家 寺久保 拓摩氏

●株式会社イントラリンク 事業開発 統括ディレクター オープンイノベーション・グループ プリッチャード ノエル氏

●しずる 村上 純氏

生まれたばかりの人工都市「深セン」に眠る、日本にはないビジネスチャンス

トップバッターのPRO bconは、中国「深セン」事情のプロフェッショナル、株式会社ホワイトホール 代表取締役 白井氏だ。

2006年に中国の深センにて起業。現在14期目を迎えるホワイトホールは、現地の情報を発信するメディアや現地調査、現地企業とのオープンイノベーション支援を行なっている。現在ではベトナム・インドにも拠点を持っているという。

深センでの起業のきっかけを聞くと、「当時は全く想定していなかった。」と予想外の答えが返ってきた。元々は日本の証券会社に勤めていた白井氏。香港に旅行に行ったタイミングがあり、そこから1時間程度で到着する深センへ遊びに出かけたのが、降り立ったきっかけだと言う。

白井氏によると、深センは“人工都市”。戦後の東京のように様々な場所から人々が集まり商売を営んでいる。人々の様子や街並みに触れ、日本が歩んできたバブル時代の前兆のようなものを感じ、「ここで起業をしよう」と一大決心。日本に戻り即座に辞表を出したそう。人生の分岐点のようなものを感じたと話した。

▲株式会社ホワイトホール 代表取締役 白井 良氏

2006年、中国の爆速都市「深セン」にて起業。 現地のリアルな情報を配信するメディアをはじめ、年間1,000人以上が参加する人気の現地視察ビジネスツアーやピッチイベント、調査レポートサービス、クロスボーダーアクセラレータープログラムなど日本企業の事業活性化をサポート。 2019年から株式会社ベクトル(東証一部)からの出資を受け、インドやベトナムにも横展開し、サービス拡大中。

中国・深センと日本のビジネス体系の違いと、深センにおける注目のビジネスとは?

eiicon中村から日本と深センとの違いについての聞かれると、白井氏はこう話す――「大きな違いでいうと、やはりきつく見えるようで実はゆるい法規制。新しい取り組みはすぐに実践できます。例えば、公共のバス・タクシーは全てEVで動いていますし、ドローンだって飛ばしてもいいんです。つまり、実証実験を行う場としては最適な場所なんです。何よりもまだできて40年しか経っていない都市。年齢も若く、市場の変化に慣れていますね。」 

さらに、人材の誘致、優秀な人を引き込む取り組みも数十年前から進んでおり、優秀な学生が深センで起業すると市から数千万も享受される。

また、「深センにおいて注目するビジネスは何か?」と、しずるから質問を投げかけたところ、白井氏はモバイクを紹介した。いわゆるシェアリングエコノミーの領域で、自転車をどこでも借りることができ、どこでも乗り捨てることができる。東京が実践しているシェアリングサービスとの違いとしては、「ステーションがない」ということ。自転車置場がなく、スマホでQR解除をすれば使用可能でGPSでどこにあるのかもリアルタイムで分かるという。

白井氏は、「中国の考え方で日本と違うポイントはデータ・ドリブンなんですね。まずデータを取る。データはお金よりも大事です。一方の日本はキャッシュファースト。人口の母数で考えても日本においてデータ・ドリブン型のビジネスは成り立たなくなりますが、中国・アメリカ・インドでは成り立ちます。」と話した。

最後に、そんなスピード感と考え方の違いの中で日本が戦っていく道筋を問われると、「オープンイノベーション=共創をしていく事だ」と述べた。「中国に勝つ、ではなく一緒に新しい価値を創っていくというスタンスを持つことが重要」と締めくくった。

※本トークセッションはYouTubeで配信中

※白井氏のPROBCONブログはコチラから。

観光だけではない、急成長する欧州のテクノロジーカンパニー

▲株式会社イントラリンク 事業開発 統括ディレクター オープンイノベーション・グループ プリッチャード ノエル氏

2002年、イントラリンクに5人目として入社し、海外ベンチャー企業の日本ビジネス展開を担当。2007年INSEADでMBAを取得後、英国のボーダフォン、米国のベライゾンで多国籍エンタープライズ向けモバイル活用に特化したイノベーション担当を務める。2015年にイントラリンクに再入社し、オープンイノベーション事業部を立ち上げた。

次に登壇したのは、株式会社イントラリンクのプリッチャード ノエル氏。イントラリンクはイギリスに本社を構え、スタートアップのインキュベーション支援を行う事業を手がけている。日本と欧州、両方のビジネスを長年見てきたノエル氏は、近年の欧州と日本との違いがどのように映っているのだろうか?

歴史深く、文化を大切にする国、イギリス。――観光などの目的で行く人は見かけるが、なかなかビジネスについて情報は入ってこない。ノエル氏は今、スタートアップを選択する若者が増えてきているが、体系として深センやシリコンバレーと少し違っていると話す。

というのもイギリスを含む欧州にはベンチャーキャピタルの投資数が深センやシリコンバレーと比べて少ない。したがってリターンを得るためには上場するほかなく、他国とも比べ、圧倒的にIPOの数が多いのが特徴だという。また、バイオ・ケミカル・医療・金融など幅広い領域のテクノロジーを持つスタートアップが増えており、裾野が広いという点も特徴としてあげた。さらに、ユニコーン企業も日本では2社に対し、48社と圧倒的な差があると話した。

一方、現在の欧州ビジネスのトレンドを聞くと、医者の口コミサイト、いわゆる食べログの医療版の事業が加速度的に広がりを見せているという。この事業は飲食店の口コミサービスから着想を得たもの。ノエル氏は後参入であったとしても、顧客ニーズとその国の文化や価値観にカスタマイズしたビジネスであれば広がる可能性は大いにあり、それもまたイノベーションであると話した。

スタートアップエコシステムを定着させよ。これが日本企業の勝ち筋となる。

最後にノエル氏から見る日本の勝ち筋を伺った。「日本には他の国にはない独特の文化や慣習がある。かなりイノベーティブで魅力ある国だと思う。一方でまだまだスタートアップエコシステム、イノベーションエコシステムが十分に循環できていない部分もある。ビジネスの土壌を創る、環境を整備するところから始めれば、今後もっと飛躍的に伸びていくビジネスが生まれると考えます。」と述べた。

※ノエル氏のPROBCONブログはコチラから。

世界トップレベルの起業家が集う、未開の地アフリカのビジネス事情とは?

本日最後に登場するPRO bconはアフリカスタートアップ支援投資家 寺久保氏だ。

▲アフリカスタートアップ支援投資家 寺久保 拓摩氏

バングラデシュのグラミン銀行でマイクロファイナンス事業に従事、金融の力で企業群を生み出すことが世の中に多くの価値をもたらすことを知り日本へ帰国。その後、2013年にサムライインキュベートへ入社し日本・イスラエルを中心に多数のスタートアップ・大企業を支援。2018年、日本初アフリカスタートアップを支援するVCを設立し、アフリカ大陸に移住。現在16社ほど現地スタートアップ企業へ投資をしている。

寺久保氏は昨年からアフリカに移住。ベンチャーキャピタルを立ち上げて、アフリカのスタートアップに対して投資をしている。なぜ、アフリカに注目したのか。寺久保氏は未だ誰も参入していない地でビジネスを拡大していこうと決心し、アフリカを選んだ。

実際に現地に行くと優秀な頭脳を持った起業家が多いという。日本と違い、優秀な人ほど起業する。具体的には、「グーグルで修行してからアフリカに帰って起業する若者が増えてきている」と話す寺久保氏。スマートフォンの普及や通信環境が整ってきたこともあり、アフリカの地でビジネスを起こしやすくなったのだ。

前提がない、仕組みがないからこそ、そこにビジネスを生み出すチャンスがある

一口にアフリカ大陸といっても、様々な国が集まっている。現在では、54の国・地域がアフリカ大陸に存在している。ケニアに代表される東アフリカエリアでは、すでに10年以上前から電子マネーが普及していると衝撃の事実を話す。これにはしずるの二人も驚きを隠せない様子だった。

また、ナイジェリアに関しては、現在の人口が2億人弱。2050年には4億人になると予想している。最終的には9億人ほどに増加するとも言われており、そうなると世界で三番目の人口数となる。

アフリカでは、「前提がないところがビジネスのしがいがあり、面白い」と話す寺久保氏。例えば日本では人々が当たり前のように持っている銀行口座だが、アフリカに関していうと人口の2割しか開設していない。

だからこそモバイルマネーが急速に普及した。このように私たちの生活の中では当たり前のようにある仕組みがないからこそ、そこにテクノロジーで新たな価値を付加し、求められるビジネスを創っていける場がアフリカである

その他にも、都心であっても住所がない、救急車を呼ぶ仕組みがない、といった例を挙げた。「社会インフラが整ってないからこそテクノロジーファーストで変革できるんです。」と寺久保氏は語る。――最後に日本の勝ち筋について、25億人にもなるアフリカとこれから1億人を切っていく日本。オープンイノベーションでお互いにWin-Winなビジネスを創っていけるのではないかと言う。

日本で生まれたデジタル技術をアフリカにどう当てはめていくのか、またその逆にアフリカで普及しているフィンテックやロジテックが、日本が直面する課題を解決していく可能性もあり得る。今後より通信環境も整い、よりアフリカが近く感じるようになれば、日本とアフリカのオープンイノベーションは当たり前になっていくのかもしれない。

※本トークセッションはYouTubeで配信中

取材後記

「日本におけるビジネスもままならないのに海外の話って大丈夫ですか?」――冒頭にしずるの二人が戸惑いを見せていたが、「知らないと始まらない」とeiicon中村が間髪入れずに背中を押した。確かに今回の3名のPROBCONから聞く話は普段国内で事業進めている中でなかなか聞けない内容ばかりであった。

ホワイトホール白井氏が述べたように、日本企業が今後生き残っていくためには海外企業と競争ではなく、共創でビジネスを加速させていかなければならない。遠い未来の話ではなく、すでに実践している企業も多い。国内と海外ビジネスのスピード感の違いに少し耳が痛くなるような話もあったが、ぜひ今回の内容から国境を越えた事業創りの一歩を踏み出して欲しい。そう感じるイベントであった。

(編集:眞田幸剛、取材・文・撮影:保美和子)

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Business Development Week イベントレポート

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