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ポストソーシャルゲーム創出を目指すプログラム【後編】―エンタメをより自由にする4つの切り口とは

ポストソーシャルゲーム創出を目指すプログラム【後編】―エンタメをより自由にする4つの切り口とは

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日本を代表するSNSとして広く知られている「mixi」、スマートフォンアプリとして世界的な人気を誇る「モンスターストライク」など、コミュニケーションを軸とした有名サービスを生み出し続けている株式会社ミクシィ。同社はポストソーシャルゲームを生み出すべく、初のアクセラレータープログラム「CROSS ACCELERATOR」の開催を発表し、共創企業を募っている。

インタビューの【前編】では、同社がポストソーシャルゲーム構想によって実現したい世界観や、今回のアクセラレータープログラムに取り組むに至った背景などを中心にお聞きした。

今回のインタビュー【後編】は、アクセラレータープログラムの運営事務局をリードする江本氏、村田氏、元橋氏に、ポストソーシャルゲームを実現するための具体的な手法や、アクセラレータープログラムの募集テーマとして掲げている「遊び方を自由に」「時間を自由に」「空間を自由に」「通信環境で自由に」という4つの切り口ごとに求めているアイデアや技術、募集企業のイメージなどを伺った。

また、同社が現在進行形で推進しているベンチャー企業との共創事例に加え、ミクシィとして共創相手に提供できる具体的なアセット、リソースの数々についても前回以上に詳しくお聞きした。

【写真中】 株式会社ミクシィ デジタルエンターテインメント事業本部 インキュベーション事業部 部長 江本真一氏

NECにてインフラエンジニアを経て、新規事業部門でWeb2.0やコンテンツ管理領域のソリューションに携わる。2011年にグリーへ入社。SNS事業およびクリエイティブセンターを統括、さらにはVR事業、VTuber事業といった新規事業を推進。ミクシィ入社後はデジタルエンターテインメント事業本部にて、ゲーム開発、M&A/PMI、エンタメ事業全般の推進を担当。

【写真右】 株式会社ミクシィ デジタルエンターテインメント事業本部 インキュベーション事業部 村田明子氏

2014年ミクシィに入社後、台湾版「モンスターストライク」などゲームタイトルのグローバルマーケティングを担当。2019年よりデジタルエンターテインメント事業本部に異動し、様々な新規事業の検討や企画に携わる。現在は江本氏、元橋氏と共に「CROSS ACCELERATOR」の事務局業務を担当。

【写真左】 株式会社ミクシィ デジタルエンターテインメント事業本部 インキュベーション事業部 元橋佳織氏  

2017年ミクシィに入社後、人事労務部門での業務を経て、マーチャンダイジング部へ異動し、「XFLAG STORE」の店舗業務企画・運営を担当。2019年よりデジタルエンターテインメント事業本部に異動し、組織開発戦略グループにて組織内プロセスへの介入。組織パフォーマンスの向上への企画、運営をリード。現在は江本氏、村田氏と共に「CROSS ACCELERATOR」の事務局業務を担当

ゲームが好きな人とスポーツが好きな人が一緒に遊べるサービスを作りたい

――前回のインタビューでは、ミクシィが構想しているポストソーシャルゲームは、「友達と遊ぶという目的のためにプレイできるゲーム」であり、普段スマホでゲームをしない5000万人のユーザーにもリーチできるものを目指すとお聞きしました。より具体的なイメージを教えていただけますか?

江本氏 : ミクシィは「フォー・コミュニケーション」というミッションを掲げているので、コミュニケーションの活性化に資するようなサービスを提供していくことが前提になります。その一つの形がSNS「mixi」や「モンスターストライク」であり、最近ではスポーツ事業などにも取り組んでいます。パッと見は一貫性がないようにも思えるかもしれませんが、すべてのサービスの核となっているのは、家族や友達といった「親しい人同士のコミュニケーションの活性化」を目指すという考え方です。

今回のポストソーシャルゲーム構想も「フォー・コミュニケーション」を目指すものとなりますが、従来型のゲームでは限界があるので、そこを超えていくようなファクターが必要だと感じています。これは村田が口にしていた言葉ですが、「ゲーム好きとスポーツ好きが一緒に遊べるようなサービスを作りたい」という例えが非常に分かりやすいと思っています。

――貴社が創出を目指すポストソーシャルゲームというのは、今、多くの人が想像しているような「ゲーム」ではないということですよね。

江本氏 : そうですね。ゲームという言葉は使っていても、「広義のエンターテインメント」という意味合いで捉えていただければ良いと思います。今、日常生活で使われる様々なアプリを寄せ集めた “スーパーアプリ” という言葉が流行っています。中国の「WeChat」が近い存在であり、日本の「PayPay」もスーパーアプリを目指すようですが、私たちは、そのスーパーアプリのエンターテインメント版を作りたいと考えているのです。

遊び方・時間・空間・通信環境をいかにしてシームレスにするか

――今回のプログラムでは、「遊び方を自由に」「時間を自由に」「空間を自由に」「通信環境で自由に」という募集テーマを掲げていますが、それぞれのテーマについて具体的に考えていること、共創したい企業のイメージなどについて教えてください。

江本氏 : まずは一つ目の「遊び方を自由に」ですが、ユーザ視点で考えると、まずゲームをプレイしている人がいます。最近はゲーム実況なども流行っているので、人のプレイをただただ見ている人もいます。さらにはその間にYouTuberなどのインフルエンサーと呼ばれる人たちがいて状況を伝えます。

現在はその3つぐらいの役割があるのですが、ゲームを楽しむ人がもっと多様な関わり方をしてもいいと考えています。見ている人がコメントを投稿したり、ギフティングできるサービスもありますが、もっと様々な人が、様々な関わり方で参加できる遊び方を増やしていきたいと思っています。

村田氏 : プレイヤーと観客はたくさんいるのですが、見ているうちに「何かやらせて!」と参加したくなることって結構あると思っているんです。ただ、今の状況では自分でゲームをダウンロードしていないと遊べません。「ちょっとやってみたい」と思った人たちが、アプリの有無やログインの有無という垣根を超えてシームレスに参加できるような仕組みを作っていきたいです。

このテーマに関しては、すでにそのようなことが実現できるプラットフォームを持っている企業や簡単にログインできる技術や仕組みを持っているような企業との共創イメージを持っています。

――「時間を自由に」についてはいかがですか?

江本氏 : 時間のシームレス化については2段階あると考えています。1段階目は普段の生活の時間とエンタメの時間をシームレスにしていくアイデアです。最近ヒットしている位置情報を活用したゲームなどでは、プレイヤーはとくに意識することなく毎日の通勤時間をエンタメ時間に変えています。

2段階目は、何もしなくてもゲームに参加しているというもので、最近話題になっている“放置ゲー”が分かりやすいと思います。自分が時間を使わなくてもゲームに参加できれば、これまでの映画やテレビ、音楽、ゲームといったエンターテインメントのように可処分時間の取り合いすら起こりません。

――そのようなアプリを使えば使うほど有利になれば、普段ゲームをあまりしないという人でも「参加してみようかな」と思いますよね。

江本氏 : フリマアプリやECアプリと連携して、普段の行動スコアが高い人の多いギルドが有利になるとか、レベルが高くなるといった仕掛けがあれば、普段ゲームをしない人を誘うきっかけにもなると思います。

村田氏 : 人々の日常の行動データを取得するようなサービスを運営している企業、ウェアラブルデバイスなどのハード・ソフトを開発している企業、あるいはセンサー系の技術を持った企業などと共創できるテーマだと考えています。

――次に「空間を自由に」についてお聞かせください。

江本氏 : 昔のMMORPGは、デジタルの世界で特定の人同士がコミュニケーションを取り合える状況は作り出せていたのですが、リアルの世界と地続きになっていなかったので、広がりに限界がありました。私たちの取り組みでは、もう少しリアルな空間とデジタル空間をシームレスにしていかなければならないと考えています。

たとえば現在当社がベンチャー企業と取り組んでいる3Dリアルアバターなども、リアルとデジタルをシームレスにする有効なソリューションの一つになると思います。

村田氏 : ざっくりした言い方になってしまいますが、みんなが居るこの場所を瞬間的にエンタメ空間にできるような技術があればいいなと考えています。たとえばスマートフォンをかざすことでARが出てくれば、わざわざ特殊なデバイスを用意しなくても済みます。空間をシームレスにするという意味では、位置情報の技術なども提案いただけるとありがたいですね。

――それでは、遊び・時間・空間などのシームレス化を支えると考えられる「通信環境で自由に」についてはいかがですか?

江本氏 : やはり本丸は5Gということになるでしょうね。最大のポイントは「同時多接続」の実現にあると考えています。通信環境が整ったとされる現在でも、数万人が集まるようなコンサート会場では、みんなが一斉にスマホを使うと帯域が細くなってつながりにくくなってしまいます。

また、5Gを使って「同時多接続」が問題なく出来るようになったとしても、5Gのスマホを持っている人はいいが、4Gしか持っていない人は参加できないという問題が起こるかもしれません。そんなとき、5Gのスマホが一台あれば周囲の人も問題なく接続できる、そんな環境を構築できるような技術を持つ会社があれば、ぜひ共創させていただきたいと思います。

出会って3カ月で成果発表へ。ベンチャー企業とのスピーディーな共創事例

――先ほどベンチャー企業と3Dリアルアバターに関する取り組みを進めているという話がありましたが、貴社の共創事例の一つとして詳しくお聞かせいただければと思います。

村田氏 : 概要からお話ししますと、KDDIさんが主催する「∞Labo(無限ラボ)」という、スタートアップとパートナー連合が連携して新しい事業を生み出していく事業共創プラットフォームがあるのですが、私たちミクシィは昨年からパートナー連合の一社として∞Laboに参加していました。

そこで3Dリアルアバターの技術を持つベンチャーであるVRC社と出会い、今年1月から話し合いが始まって共創を進めていくことになり、3月24日には∞Laboのイベント「MUGENLABO DAY2020」で実証と発表を行うことになりました。

――1月から話し合いが始まり、3月に発表というのはかなりスピーディーですね。具体的にはどのようなポイントで共創し、ミクシィとしてどのようなリソースを提供されたのでしょうか? 

村田氏 : VRC社の技術でリアルアバターを生成、そのVRリアルアバターを踊らせたりといったアイデアをミクシィサイドから提供させていただきました。また、現在は当社のエンジニアがモックを作って検証を進めている最中です。今後も必要に応じてデザイナーやプランナーなど、社内の人材をジョインさせていく方針です。

「リアルな接点の場」も、アセットとして提供できる

――今回のアクセラレータープログラムで貴社が共創企業に提供できるアセット、リソースなどについて改めてお伺いできますか?

江本氏 : 一番アピールできるのはマーケットインの部分になると思います。前出の通り、私たちは「フォー・コミュニケーション」を追求しているので、バイラルマーケティングに強みを持っており、これまで蓄積してきた口コミのメカニズムに関する様々なノウハウを提供することができます。

加えて「XFLAG PARK」や「XFLAG STORE」といったユーザーとのリアルな接点の場も持っています。また、渋谷の町全体をイノベーションの場にしようという協会、「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」にも参画しているので、渋谷の街を実証フィールドとして提供することもできると考えています。さらに、国内だけでなく海外でも調査ヒアリングを実施することが可能です。

――「プロジェクトサポートグループ」のサポートを受けることもできるとお聞きしました。

江本氏 : そうですね。プロジェクトサポートグループは、社内で動いている様々なプロジェクトを横断的にサポートしているチームであり、エンジニアやデザイナーに加え、サウンドチームも在籍しているので、多角的なサポートができると思います。

元橋氏 : デジタルエンターテインメント事業本部にはマーケティングを支援するグループもあるので、デモデイまでの期間はもちろん、その後の事業化フェーズにおいても継続的にサポートさせていただけると思います。

また、ミクシィ社員へのインタビューやヒアリングも実施できます。社内では様々なプロジェクトが走っているので、彼らの意見を参考にしながらデモデイに向けてのブラッシュアップを行うこともできるはずです。

――最後になりますが、今回のプログラムに対する意気込み、エントリーを検討されている企業の方々へのメッセージをお願いします。

江本氏 : 私たちだけでは考えつかないような発想、アイデアに期待しています。人々のコミュニケーションをもっと活性化させていきたいという意気込みのある企業さんは、ぜひご応募ください。

村田氏 : 当社にとっても初めてのアクセラレータープログラムになりますし、何よりもエンタメを作るので、一緒に楽しんで取り組んでいただけると嬉しいです。一緒に楽しいものを作って、それをユーザーさんに届ける喜びを共有したいですね。

元橋氏 : 人と人の間にあったコミュニケーションの垣根を越えて、新たなコミュニケーションの輪をどんどん広げていき、日本から世界に発信できるようなものを作っていきたいです。ぜひ一緒に楽しんで取り組みましょう。

取材後記

今回のインタビューを通じて、「CROSS ACCELERATOR」で募集テーマとして掲げられているポストソーシャルゲームを生み出すための4つの切り口について、具体的な注力項目や共創企業のイメージが明らかになった。コンテンツ開発経験を持つエンタメ系企業はもちろん、4つのテーマに親和性のある技術やサービスに強みを持った異業種のベンチャー、スタートアップにとっても大きなチャンスとなりそうだ。

また、3Dリアルアバター技術を持つベンチャー企業との共創事例などを考えても、同社内のスピーディーな意思決定、豊富なアセット・リソースは非常に魅力的であることは間違いない。プログラムの応募締め切りは2020年5月10日までなので、興味のある方々は今すぐにでも検討を進めてはいかがだろうか。

▼CROSS ACCELERATOR 詳細はこちら(応募締切:5/10)

(編集:眞田幸剛、取材・文:佐藤直己、撮影:古林洋平)

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