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世界216の国と地域から月間130万人がアクセスするWebメディア「MATCHA」が目指すビジョンとは?

訪日外国人客向けに情報を発信し、急成長するWebメディアがある。9言語で展開する「MATCHA(マッチャ)」には、現在、世界216の国と地域から月間130万人がアクセスする。これまでメディア運営を主軸事業としてきた同社だが、代表取締役社長の青木優氏は、「メディア運営はあくまで手段の一つ」だと言う。さまざまな国籍のスタッフが肩を並べる株式会社MATCHAが目指すものとは何か。次なる打ち手とは。青木氏に話を聞いた。

代表取締役社長 青木優

1989年生まれ。東京都出身。明治大学国際日本学部卒。大学在学中に1年間休学をし、世界一周の旅に出る。2012年ドーハ国際ブックフェアの運営に従事。都内のデジタルエージェンシーに所属した後、独立。13年12月株式会社MATCHAを創業し、代表を務める。


■訪日外国人向けWebメディア。肝は徹底した「外国人目線」

――御社が運営する「MATCHA」とはどんなメディアなのでしょうか。

MATCHAは、日本に来る外国人観光客向けのWebマガジンです。立ち上げから4年で、9言語※に対応しており、世界216の国と地域から月に130万人がアクセスするメディアに成長しています。現在、台湾、ルーマニア、バングラディシュ、タイ出身の社員が5名おり、外部ライターや翻訳者を含めて100名ほどでコンテンツを制作しています。
※日本語、英語、中国語簡体字、中国語繁体字、韓国語、インドネシア語、タイ語、ベトナム語、やさしい日本語(ふりがな付きの初級日本語)

――先行する外国人向けのWebサイトがあるなかで、MATCHAが支持される理由とは何でしょうか。

MATCHAが目指しているのは、観光ガイドや口コミサイトではありません。さまざまな国籍の編集者やライターが「ここはいい!伝えたい!」と感じた日本を、大きな熱量を持って発信する。徹底した「外国人目線」であることが最大の強みです。

以前に、香川県特集でセルフサービス式うどんを取り上げることになりました。これが日本人向けであれば少しの説明で成り立ちますが、食文化が異なる相手には、そもそもうどんとはどんな料理なのか、セルフサービス式うどんとはどんな形態なのか、どう注文したらいいのかを丁寧に説明することで、初めて役立つ情報になる。実際、中国語繁体字で写真を多用しながら解説したところ、非常に反応がよかった。

英語の編集者であるルーマニア人スタッフが「新幹線の車内で駅弁を食べる」という習慣に着目し、記事にしたこともありました。日本人であれば当たり前であっても、外国人である彼女にとっては、「新幹線に乗ったら周りの人が車内できらびやかな弁当を広げていたことが驚きで、地域ごとに特色がある弁当=駅弁という存在自体が面白かった」。日本人では思いつかない着想です。

発想はもちろん、文章そのものも外国人目線が欠かせません。例えば、「夏といえば風鈴」と聞いて日本人であれば、頭の中で「チリン」と音が鳴る。ところが海外の人からしたら「夏=風鈴」と言われてもイメージがわきません。「風鈴とは何か」「日本における夏」の説明がないと通じない。日本語で発信している情報もすべて翻訳しやすい文章、翻訳版を読む人のことを考えた構成にしています。

――大手企業から地方自治体までさまざまなクライアントと提携されていますが、具体的な事例とその成果についてご紹介ください。

株式会社東急ハンズとの提携では、「東急ハンズの魅力を訪日外国人に発信し、利用を促進すること」を目的とし、一過性の記事ではなく、海外向けのSEO対策をしっかりとして、長期的に見られるコンテンツの制作を目指しました。8言語で展開し、1年間で10記事を連載。東急ハンズが打ち出したい内容と訪日観光客のニーズをすりあわせ、キーワードを組み込んだ結果、合計25万PV、15万UUのアクセスがありました。また、 “Tokyu Hands”の英語検索では、本家のサイトより上位の4、5番目に表示されるようになりました。クライアントは「想定以上の効果」とのことで、現在、第2弾の取り組みを進めています。直近では、ANA、JR西日本との取り組みも始まっています。


■発信することで、日本の価値ある文化を残していく

――MATCHAの運営を通じて、御社が実現したいものとは何でしょうか。

当社の経営理念は、「日本の価値ある文化を時代とともに残す」ことであり、Webメディアの運営はあくまでもそのための手段です。MATCHAを通じて提供したい価値は2つあります。1つは、訪日外国人旅行客の滞在価値の最大化。訪日客は昨年2400万人を突破し、4年前と比較すると2.5倍に増えています。その大半が訪れるのは東京、京都、大阪ですが、日本の可能性はこの3か所だけにあるわけではなく、全国にあり、私たちはそこに価値を見出し、発信していきたい。訪日客にそうした情報を届けていくことで、滞在中の選択肢を増やして、日本での体験の機会を提供していきます。

もう1つは、日本の価値あるものを残していくこと。商業の均一化、過疎化や人材不足によって日本のいいものがすごい勢いでなくなっている現実があります。そこに課題意識を持っている企業や地域は多く、日本のよさを残したいと思いつつもこれまではどうしていいのかわからなかった。そういう人たちに、世界に向けて日本を発信できる場を作っていく。結果、その場所に人が来て、地域が潤い、いい場所いい物が残っていくという仕組みをつくっていきたいです。

――その実現のために求める、具体的なパートナー像を教えてください。

自治体はもちろん、今後はメーカーや海外向けに販売したい小売企業、航空会社や電鉄などその地域への移動手段を持っているところと組んで地域の情報を発信していきたいです。パートナー企業との関わり方としては、これまで記事の制作をメインにやっていましたが、最近は、海外向けサイトの最適化、SNSや広告の運用など、企業・自治体の海外向けマーケティングを支援することが増え、またそれらを一手に担える体制も整ってきました。今後は、必ずしも記事をつくるわけではなく、パートナー企業や自治体の要望、海外市場の動きを捉えた上で最善の方法を提案していきたいと考えています。