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デモデイ前夜に聞く。採択スタートアップ3社の「進化」とは

デモデイ前夜に聞く。採択スタートアップ3社の「進化」とは

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テクノロジーが急速に進化する今、「競争」ではなく「共創」こそが、新たな価値を生む上で重要だと語る日本IBM――。同社がスタートアップとの「共創」により革新的な事業の創出を目指すプログラム、IBM® BlueHub(アイ・ビー・エム ブルーハブ)が今年度も進行中だ。

6期目を迎える今回は、昨年10月に採択企業4社が発表され、約6カ月にわたるプログラムがスタートした。プログラム期間中、各チームは「テクノロジー」と「ビジネス」の両面から、IBMの豊富なリソースを活用できるほか、外部のベンチャーキャピタリスト(VC)のメンタリングも受けることができる。

そして、7月14日には、各チームがプログラムの成果を発表するデモデイがオンラインで開催される。題して、「Startup with IBM.」だ。今期のデモデイは、これまでと少し赴きが異なる。従来のデモデイを進化・拡大し、IBM全体のイベントとして実施するという。スタートアップの成果発表だけではなく、「ニューノーマルのデジタル変革とデータ活用」に関するパネルディスカッションも予定されている。https://eiicon.net/about/startup-with-ibm2020/

eiiconでは、デモデイの開催に先立ち、IBMとともに共創を進めてきたスタートアップ3社(Datumix/キママニ/Gemsmith Partners)を取材。プログラムを通して得た成長やデモデイに対する意気込みについて聞いた。

ビジネス・ファイナンス・テクノロジー、3方向から支える豪華なメンタリング体制

――まず各社が、IBM BlueHubに応募した理由についてお伺いします。プログラムのどのような点に魅力を感じ、参加を決めたのでしょうか。

Datumix・大住氏: 当社は物流業界向けのソリューションを提供している会社です。このプログラムに参加するまでは、物流業界のクライアントさんと1社独占に近い形でした。それはありがたいことではあるのですが、これからスタートアップ本来のスピード感で成長することを目指すなら、他のお客様にも当社のサービスを展開していく必要があります。プログラムに応募したときは、まさに新しい導入先を探しているタイミングでした。

新しいクライアントを探すという目的の中で、いくつか同様のプログラムに応募しました。その中で、「IBMさんと一緒にやっていきたい」と思った理由は、ビジネスとファイナンスの両面から同時にアドバイスいただけるプログラムだったからです。

IBMさんは、業務プロセスのコンサルティングサービスを展開しておられるので、提案力などビジネス面でのノウハウが豊富で、顧客基盤も魅力的です。また、著名なVCさんがメンターとして参画されているため、ファイナンス面からもサポートいただける点が魅力的でした。

【写真左】 Datumix株式会社 代表取締役 CEO 大住敏晃氏

【写真右】 Datumix株式会社 最高執行責任者 COO 奥村知樹氏 

■事業概要/AI+デジタルツインでスマート物流を実現する「OPTIMUS AI」の開発・運営

担当VC/DNX Ventures Managing Director 倉林陽氏

――確かに、「ビジネス」と「ファイナンス」それぞれのプロフェッショナルからメンタリングしてもらえる点は、IBM BlueHubならではですね。キママニさんはどういった理由から応募を?

キママニ・村上氏: 当社がプログラムに応募した理由は2つあります。ひとつは、メンバーをモチベートしていく必要があったからです。というのも、プログラムへの応募を検討している際、初めてエンジニアを採用するというタイミングでした。組織としてどうモチベートしていくべきかを考えたとき、合宿もあり、期間を決めて一気に進められるこのプログラムは魅力的だと感じました。

もうひとつが、IBMさんの持つAI技術です。当社は「KibunLog(キブンログ)」という気分を記録できるC向けアプリを開発しています。将来的には、その技術を応用したアプリを薬事承認させることを目指しているのですが、比較的時間のかかるビジネスモデル。

ですから、上市(承認された新薬として市場販売を開始すること)までに「KibunLog」の取得データを用いてB向けのビジネスを立ち上げようと考えていました。IBMさんはAIが強いですし、データサイエンティストもいらっしゃいます。データを活用したビジネスの創出を目指すにあたり、本プログラムが有効なのではないかと思いました。

【写真】 株式会社キママニ Founder/CEO 村上遥氏

■事業概要/感情をケアする「KibunLog」アプリの開発・運営

■担当VC/iSGS Investment Works Inc. 代表取締役/代表パートナー 五嶋一人氏

――なるほど、IBMの持つ「テクノロジー」にも親和性を感じて応募をされたんですね。Gemsmith Partnersさんはどうでしょうか。

Gemsmith Partners・伊藤氏: 当社の背景からお話すると、実は私、弁護士として一度社会に出た後、東京大学の大学院へと進学し、現在も大学院に在籍しています。大学院で「データサイエンスティスト養成講座」という教育プログラムがあり、そのプログラムで同じ班になったメンバーと一緒にプロダクトをつくり始めたことが起業のきっかけでした。大学の起業相談室にも通っていて、そこから勧められたプログラムが、IBM BlueHubでした。

自分たちはテクノロジーがメインになるので、このプログラムは、担当のVCさんがつき、IBMさんからもテクノロジーとビジネス両方のコンサルタントがつくことに魅力を感じました。特にVCさんからのメンタリングは、今後ビジネスをつくる上で有益になると感じましたね。

【写真左】 Gemsmith Partners株式会社 最高経営/技術責任者 伊藤暢洋氏

【写真右】 Gemsmith Partners株式会社 技術部長 近藤亮磨氏

■事業概要/業務プロセスの自動化基盤「fractal」の開発・運営

担当VC/Salesforce Ventures Partner, Japan Head 浅田賢氏

プログラムから得られた、3社3様の成長

――2019年10月のキックオフ合宿からスタートし、そこから3月のデモデイに向けて約6カ月間、どのようなメンタリングから、どう成長できたのか。プログラム開始時と現時点の変化について教えてください。

Gemsmith Partners・伊藤氏: 私たちは、プログラム参加時点で、プロダクトは開発したものの、どう売っていくかが分からなかった段階にいました。自分たちが保有する技術を他の形でどう適応できるのか、アドバイスをもらえたことが、一番大きかったですね。

プログラムの序盤は、週に1回のペースでお会いし、リーンキャンバス、事業計画書の書き方から教えてもらいました。10案ほど考え、その10案をもとにみんなで議論をして、フォーカスすべきところを決めていったという流れです。議論を重ねる中で、自分たちが「他社とは違う独自のものにすべき部分」が見えてきました。

――プログラムに参加する前は、どうお客様にアプローチを?

Gemsmith Partners・伊藤氏: 以前は友人のツテで何社かお話をしていた程度でした。プログラムが始まってからは、IBMさんに外資系大手クレジット会社さんを紹介していただき、お会いしました。

金融業界はレギュレーション(規制)が厳しい業界です。「RegTech(レギュテック)」という言葉もありますが、私たちの「分散する知識をセキュアにつなぐ技術」と相性がいい業界だということで、ご紹介いただいたんです。

Gemsmith Partners・近藤氏: 以前ではアプローチが難しかった業界にも視野が広がりましたね。ご紹介いただいているのは金融業界ですが、プログラムのなかでヘルスケア分野やマーケティング分野といった私たちの技術と相性の良い分野も明らかになりました。

――なるほど。VCさんからは、どのようなアドバイスがありましたか。

Gemsmith Partners・伊藤氏: 資金調達に向けて、最初に何をすべきかから教えてもらいました。私たちは人員計画や財務数字が大事だと思っていたのですが、VCさんからはむしろ、「お客様の課題が何か」「私たちの技術で、その課題をどう解決できるか」「市場規模はどのくらいになるか」を説明できればいいと、アドバイスをもらいましたね。

――「御社独自の技術」のどこに焦点をあてて「ビジネス」にするか、何からどう着手すべきかが、プログラムを通して見えたというイメージですね。それでは、Datumixさんはどのような変化がありましたか?

Datumix・大住氏: 私たちは新たなお客様を探す中で、「どういうクライアントにターゲットを絞るべきか」「どういうアプローチがあるのか」など、自社だけでは得られない視点に気づかせてもらえたことが、一番大きな変化でした。

当社がメインターゲットとする物流業界は、多種多様な事業会社から構成されています。たとえば、倉庫を運営する事業会社、倉庫の中の荷役業務を請け負う会社などです。メンターの方たちには、物流業界をセグメントに分け、各セグメントの課題は何か、どういうサービスが刺さるかを一緒に議論していただき、頭の中を整理してもらいました。

――頭が整理される前は、どんな風に営業活動をされていたのでしょう。

Datumix・大住氏: 物流倉庫の業界団体に加盟している会社が900社程度あるのですが、そのすべてに当たる、とりあえず行ってみるの繰り返しでした。でも、その方法では、やはりダメで…。頭が整理されたことで、各セグメントに即した提案ができるようになりました。

Datumix・奥村氏: 加えて、プログラム開始以前は、「ビジネスを広げるために、今どうすべきか」という短期的な視点で動きがちでした。しかし、VCさんの見方は少し違っていて、「IPOからの逆算で、今どうすべきか」という視点でアドバイスをもらえました。当社も将来的にはIPOを行いたいと考えているので、その視点はとても参考になりましたね。

――「IPOからの逆算」という考え方は、たしかにVCさんならではですね。キママニさんは、プログラム前後でどのような変化がありましたか。

キママニ・村上氏: このプログラムでは、B向けの新しいビジネスを立ち上げることを目標に取り組んできました。具体的には、既存のC向けアプリ「KibunLog」を活用し、従業員向けのメンタルヘルス向上プログラムを開発するという内容です。そのテスト運用を、IBMさん社内の部署で実施させてもらいました。フィードバックもたくさんいただき、それらの意見をもとにブラッシュアップすることもできました。

――では、プログラムを通して、新たなB向けのプロダクトが開発でき、プロダクトのテスト運用もIBMさんの中でできた、と。

キママニ・村上氏: そうです。加えて、VCさんには、営業活動をサポートしていただきました。当社には営業基盤がないため、自分で売り込むことに対して尻込みをしていたんです。そんな中、VCさんには営業資料を一緒に作成して頂きました。このサポートがあったからこそ、頑張れたのだと思います。IBMのメンターの方たちやVCさんと議論をすることで、エンジニアとしても現場や顧客の声への理解も深まり、B向けにもすべきことがあると気づくことができました。

――キママニさんは、アクセラレータープログラムの参加経験が豊富ですが、IBM BlueHubならではのよさがあれば教えてください。

キママニ・村上氏: IBMのメンターさんは、各事業部の中で実際にコンサルタントとして活躍している人たちです。なので、意思決定がとても速く、テストもその部署の中で進めてもらえましたし、フィードバックもすぐにいただけました。この点は本プログラムの特徴であり、よい部分だと思います。

プログラムの集大成、デモデイで注目すべきポイント

――7月14日にデモデイが開催されますが、特に注目してほしいポイントなどはありますか。

キママニ・村上氏: プログラム開始以前は、私一人だけの会社でした。プログラム期間中に3人までメンバーが増えて、体制が強化されました。このプログラムを経て、プロダクトもブラッシュアップされ、いよいよ事業を拡大していく段階です。

そうしたタイミングでもあるので、デモデイに合わせて資金調達を開始したいと考えています。たくさんの方に聞いていただき、投資をご検討いただければと思います。

Gemsmith Partners・伊藤氏: 私たちは、プロセスのオートメーションから抽出できる知識を、企業間でセキュアに共有知としてつくっていくことにフォーカスすると、このプログラムの中で決めました。この部分をできるだけ多くの企業に知っていただいた上で、当社との協業の可能性を検討してもらえたらと思います。

金融業界だけに限らずヘルスケア領域にも導入できる技術だと考えています。特にそういった業界でパートナーとなっていただける方々に、注目してほしいです。

Datumix・大住氏: 現在、私たちはクライアントとともに、設備と機械のAI化を進めています。それを実機に導入し、現場の動きとともにアップデートする「デジタルツイン」が私たちの強みです。今後の展開として、人の意思決定・判断をAI化することに取り組んでいきたいと考えています。

これを当社は「ヒューマン・デジタルツイン」と呼んでいますが、倉庫などで行われる現場の意思決定をデータとして取り込んで学習させ、指示を仰ぎたいときに、インターフェースが「こうしてください」と答える仕組みです。こうした技術に興味をお持ちで、導入をご検討いただける事業会社さんなどに、ぜひ聞いてほしいですね。

取材後記

「ビジネス」「テクノロジー」の各分野に長けたIBMメンターに加え、著名なVCが各チームに1人ずつ配置される本プログラム。メンター陣の豪華さは群を抜いている。それぞれのメンタリングをへて、各社がどのような成長を遂げたのか――。デモデイでは各プロダクトの全貌とともに、プログラムの成果がお披露目される。

より詳しく知りたい方は、7月14日(火)に、オンラインイベントへ参加してほしい。当日は3社による発表のほか、「ニューノーマルのデジタル変革とデータ活用」に関するパネルディスカッションも催される予定だ。

< Startup with IBM. 開催概要 >

■日時 : 2020年7月14日 (火) 17:00 〜 19:00

■会場 : オンライン開催 (参加方法は別途ご案内させていただきます)

■参加費 : 無料 

■内容 : 

●パネルディスカッション 「ニューノーマルのデジタル変革とデータ活用」

●IBM BlueHub Demo Day

・「第6期スタートアップによるピッチ」

・「卒業生による講演」

※詳細・申込は以下

https://eiicon.net/about/startup-with-ibm2020/

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:加藤武俊)

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