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日本企業は「二階建て経営」への移行で復活する。日本のイノベーションを牽引するJIN専務理事・西口氏、eiicon lab初登場。

日本企業は「二階建て経営」への移行で復活する。日本のイノベーションを牽引するJIN専務理事・西口氏、eiicon lab初登場。

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一般社団法人Japan Innovation Network(JIN)は、日本を「Innovation Nation」に変革することを目指し、大企業・中堅企業のイノベーションを支援するアクセラレーターだ。国連開発計画(UNDP)との共同運営にて、世界の課題をビジネスで解決するオープンイノベーションのプラットフォーム「SHIP(SDGs Holistic Innovation Platform)」の運営も行っており、わが国のイノベーションを牽引する、トップクラスのプレゼンスを持つ組織である。そのJINの設立を手がけ、現在専務理事を務める西口氏がeiicon labに初登場。JIN設立の経緯やオープンイノベーションの課題点など、お話を伺った。

▲一般社団法人Japan Innovation Network(JIN)専務理事 西口尚宏氏

テンプホールディングス株式会社社外取締役

一般社団法人日本防災プラットフォーム代表理事

文部科学省 国立研究開発法人審議会委員

上智大学経済学部卒、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院卒(MBA)。日本長期信用銀行や世界銀行グループ(ワシントンDC)、マーサー社のグローバルM&Aコンサルティングのアジア太平洋地域代表(ワールドワイドパートナー)、産業革新機構(INCJ)執行役員、経済産業省「フロンティア人材研究会」の委員などを経て現職に就任。慶應義塾大学ビジネス・スクールなど国内外にて講義・基調講演の実績多数。著書に「M&Aを成功に導く 人事デューデリジェンスの実務」(共著、中央経済社)、「M&Aを成功させる組織・人事マネジメント」(日本経済新聞社、共著)がある。

日本企業は、事業創出の力が弱まっている今こそ「二階建て経営」へ移行すべき

――JINは、「大企業からはイノベーションは興らない」という定説を覆すために誕生したとうかがいました。そのように思い至った経緯を教えていただけますでしょうか。

産業革新機構(INCJ)時代に、すばらしい技術やアイデアがあるにもかかわらず事業モデルをつくれないケースをいくつも目にしており、そのころからこの現状を何とかしたいという思いを持っていました。

そうしたなか、経済産業省による「イノベーションを起こせる人材育成」というテーマで取り組む「フロンティア人材研究会」が発足。その研究会での活動を通して、イノベーションの本質的な課題は「人材育成」ではなく「経営改革」にこそあると気付いたのです。

――人材育成の研究を行っていたら、逆に経営改革の必要性に辿りついたということですか?

ええ。日本企業のほとんどは、いかに本業の効率性を高めるかを第一に考えた事業展開を行っています。それは、与えられた課題を時間内に処理することを徹底して教え込まれる日本の教育に起因していると考えられます。そのおかげで「効率性」を高めることにかけてはトップクラスの日本企業ですが、新しいことを生み出す力は弱まっていると言わざるを得ません。

そこで「フロンティア研究会」は、イノベーションを興し続ける産官学のベストプラクティスの調査を世界中で行い、その結果から日本企業が行うべき経営変革の方向性を結論付けました。その方向性とは、「効率性」と「創造性」の両面を追及する「二階建て経営」に移行するということです。これを「二階建てのイノベーション経営」と呼んでいます。この実行組織として研究会委員の有志が集い、2013年7月にJINが設立されました。

――「二階建て経営」とは、具体的にどういった経営手法なのでしょうか。

「一階」では本業の効率を追求する経営を行い、「二階」ではトップのコミットメントによる次世代の事業を作り出す経営論です。すでに欧米企業ではスタンダードになりつつあり、ISO化の議論も始まっています。

JINでは、イノベーション経営の普及、実践、イノベーション・プラットフォームの構築などを通して、企業の「二階建て経営」への移行を多角的にサポートし、日本をイノベーションが興り続ける「Innovation Nation」に変革することを目指しています。第一段階として、イノベーションを興せる会社を100社生み出したいと考えていますが、すでに30社を超える大手企業が「二階建て経営」への移行を完了し、トップ自ら新規事業の創出に取り組んでいます。

国連開発計画(UNDP)との協業により生まれた「SHIP」

――JINと国連開発計画(UNDP)が共同運営する「SHIP(SDGs Holistic Innovation Platform)」についても教えてください。

SHIPは、2015年9月国連総会で採択された17の目標と169のターゲットからなる「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成を目指す国内外の企業を対象にした、新事業創造のためのオープンイノベーション・プラットフォームです。私たちJINがUNDPにSDGsを達成するビジネスを促進する際の「イノベーション」の有用性を提案し、協業が実現しました。

SHIPの会員種別は大きく分けて3つ。まずは法人・個人を問わず登録できる無料の「SHIPコミュニティメンバー」。現在、法人30社、個人300名が参加しています。2つめは有料の「SHIP法人会員」。世界中の課題やニーズを集めているデジタルプラットフォームの閲覧が可能です。そして最後は「SHIPプログラム参加者」。導入編やテーマ別などのプログラムがありますが、海外人材を巻き込んだワークショップなどを通して、SDGsの17全部のゴールを俯瞰して自社ビジネスとの関係を見い出したり、自社の事業活動に近いSDGsについて様々な角度からビジネスの機会を見つけるプログラムとなっています。

多くの大企業では、イノベーションを受け入れるための業務環境が整っていない

――西口さんから見て、日本におけるオープンイノベーションの課題はどこにあると思いますか。

そうですね。オープンイノベーションを成功させるには、「人材×業務環境」のエコシステムを構築することが不可欠だと思います。どんなに優れた人材がいてもそれを支える業務環境がなければイノベーションは起こせません。オープンイノベーションにおいても同じことが言えるでしょう。

せっかくオープンイノベーションの活用でアイデアや技術を取り込んでも、受け皿がなければ何も起こりません。魚を釣っても調理方法を知らなければ料理が完成しないのと同じように。これに近いことが起こっているのではないでしょうか。大企業が従来の事業に特化した業務環境であるがために、イノベーションの試行錯誤が十分に行えていないことが課題になっていると思いますね。

――最後に、eiiconに期待することを教えてください。

現在、取り沙汰されている「働き方改革」と「イノベーション」をリンクさせてみてはいかがですか。たとえば、イノベーションを軸にして優秀な人材を企業間で堂々と貸し借りし合える紹介と派遣のハイブリットのようなサービスがあったら、企業だけではなく優秀な人材からみても会社を辞めることなく様々なイノベーションに携われるためニーズがあると思います。これは、人材サービスを本業としている御社だからこそできるサービスだと言えるでしょう。

JINは今年で丸4年となりますが、常に試行錯誤を続けてきました。そういう意味で、試行錯誤の先のeiiconさんの3年後が実に楽しみです。

取材後記

2015年9月、歴史的な国連サミットにより採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、すべての人に普遍的に適用される17の開発目標「SDGs」を目指して、各国の力を結集して世界のあらゆる課題解決に取り組むことを掲げている。JINがSHIPを共同で運営する国連開発計画(UNDP)の政策・プログラム支援局長であるマグディ・マルティネス・ソリマン氏は、昨年来日した際に日本企業が持つ、利他の精神を高く評価していたという。

国連が日本にかける期待は、私たちが思っているよりもはるかに大きい。ところが、近年ようやくわが国でもオープンイノベーションが浸透してきてはいるが、西口氏が話す通りオープンイノベーションを受け入れる環境の整備はまだまだこれからだと言える。SDGs実現のためにも、そして日本の経済成長のためにも、早期の課題解決を期待したい。

(構成・取材:眞田幸剛、文:佐々木智晴、撮影:加藤武俊)

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