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【連載/4コマ漫画コラム(17)】大企業との話し方 ① 普通の人が普通でない


大企業と付き合うとイライラするのは

「一緒になってやっていくこと」がオープンイノベーションのポイントです。そのためには、相手を理解することが必須ですが、自分の「当たり前」が相手にとっては「特異なこと」になっている場合が多く、すれ違いが起こりがちです。

一般的に、中小企業やベンチャーから見ると、大企業は「とにかく何事も全て遅い」と思われています。「なんでそんなに時間がかかるのだろう」とイライラしてしまいます。大企業内で何が起こっているかを理解できれば、そのイライラを少しでも減らせて、どう話をすればいいかも分かるかもしれません。よく言われる「官僚的だから」とか「大企業病だから」というぼんやりした理由だけではなく、私なりの表現で解説をしてしまいましょう。

「大企業が遅い理由ベスト4」です……ベストじゃないか。


【1】関係ない人が関係する

大企業なので、沢山の人がいます。そのため、「役割分担」が進んでいます。あることを決めるにもバラバラになった「役割」の担当の人の了解が必要です。また、案件ごとに「役割分担」を決めていては効率が悪い(と思い込んでいる)ので、全ての案件をカバーできるように(最小公倍数的に)、その案件には関係がない人も関係するようなルールを作ってしまいます。稟議書に30人以上のハンコが必要という酷い会社もあります。


【2】意外と小さい

「大企業だからお金も人も潤沢にあるだろう」と思いがちですが、これも「役割分担」の名の下に細分化されてしまっていて、個人個人は意外と持っていません。社長や部長のようにある肩書を持っている人は、確かに「権力」という「命令する力」を持ってはいるのですが、具体的な「お金」や「人」については、各部門に配分されてしまっていて、自分ではほとんど持っていないことが多いのです。そのため、立場上の「権力」を活かして、「よし、この案件をやるぞ!」と号令を発しても、結局はバラバラ化された「小さな人たち」に振られるだけなので、結局は動かない、ということが多々あります。

また、会社としては大きいのに、「小さい」ところに長いこと押し込められているので、「人間も小さく」なってしまっている人が多いのも大企業の特徴です。そういう人は、この「役割分担の罠」から抜け出すエネルギーも失っています。


【3】内が怖いので外を怖がる

大企業の人の多くは「外」を怖がります。理由は単純で、「外」を知らない、経験が少ない、からです。外を実は知らないのに『外は怖いぞ』といらぬ忠告をしてくれる「(強面の)内向きな人たち」に毎日囲まれて洗脳されているのも原因です。

ただ、正当な「内が怖いので外を怖がる」というのもあります。ベンチャーや中小企業にとっても「大企業は怖い。全てを持っていかれるかもしれない」という恐怖心が先に立ちがちなので、最初の打ち合わせからNDA(秘密保持契約)を締結しようとする場合がよくあります。ちゃんと経験を積んだ大企業の人であれば、これは受けません。

なぜなら、大企業なので、自社の中での研究開発活動の全てを把握することはできないため、ベンチャーや中小企業が開示したアイデアなどと同じものを、実は自分が知らない社内の別の部署が既に思いついたり検討していたりしている可能性があるからです。その別の部署が自ら特許を出すと、NDAを結んでいたら「当社が開示したアイデアを盗んで特許出願しただろ」と訴えられかねません。「内で何が検討されているかを全ては知らない、という『怖さ』があるので、外を怖がる」というのは正しい姿勢と言えます。

最初の打ち合わせはNDA無しで行い、本格的に情報共有をしようとなってからNDAは締結するようにしましょう。補足ですが、NDAの対象期間を「それでは、前々回の最初の打ち合わせから」と、過去に遡ってカバーしようとする会社がありますが、これも同様の理由でダメです。


【4】お金は体を通らない

大企業の従業員にとって「お金は自分の体を通らないもの」になってしまっています。会社全体として売上や利益を上げても、それに自分がいくら貢献したのか、さっぱり分かりません。また、経費も部門全体では分かっていても、自分が使った総額はほとんど分かりません。私みたいに個人業をやっていると、お金が自分を直に通過していく感じがあります。「今回の出張で使った新幹線代は、講師代に含まれているから、経費X%の仕事だな」とかを日々感じて生きています。大企業に勤めている時は、税金もいくら払っているかも実感がほとんどありませんでした。つまり「お金は自分と関係ないところで流れている」という感覚になっています。

そのため、中小企業やベンチャーにとっての「目先の現金の重要性」も理解できません。「ルールによると納品後90日手形になります」というような社内手続きは知っていても、中小企業やベンチャーでいつ・どういうお金が必要かというリアルな想像ができないのです。ですから、現金に困るときには、素直に伝えましょう。「開発費の半分の前払いをお願いします」などと。ストレートに言わないと大企業の人はピンときません。


イライラに耐えずに

どうですか?大企業内が『遅い』理由はご理解いただけましたでしょうか?

「理解はできたとしてもイライラは変わらないし、どうすればいいの?」

そうですよね。そのイライラに耐えて付き合い続けようとすると「奴隷」のようになってしまうかもしれないので、二つのどちらかにしましょう。

①(直観的にでも)付き合いたくない大企業とは付き合わない

②大企業なので、色々な人がいる。ダメなやつは諦めて、いい人を探す (大企業の中で「普通の人」というのは他の世界では「普通」ではなくて「不通(話が通じない)」であることが多いので。上記4つの理由なんて平気で突破する大企業の人は必ずいます)。

……「そうは言っても」でしょうけれども。


■漫画・コラム/瀬川 秀樹

32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。

瀬川秀樹先生連載/4コマ漫画コラム